近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
狐火で作り出した青龍は夜空に眩く輝いていて、かなり目立っていたらしい。
証拠映像も撮られており、妾が大活躍している場面も多かった。
小っ恥ずかしいのでわざわざ見たりはしないが、イズクは師匠の記録は全て保存している。
いくら後方腕組みポジは楽で良いと思っていても、妾への憧れの強さと行動派オタクっぷりには、ちょっと引いてしまう。
あとはステインの演説に触発されて、裏社会に潜んでいたヴィランが活性化している。
ついでに、のじゃロリ狐っ娘の異議ありが、割りと多方面に影響を及ぼしたりしていた。
良くも悪くも、社会全体が大きく変わろうとしているのは間違いない。
AFOやヴィラン連合が健在なのもあって、奴らをぶっ潰さないと悪い流れに傾きかねない。
そうなったら十中八九でお昼寝タイムを邪魔されるに決まっているため、ボコボコにしてやんよと内心で気合を入れる。
さらに何か知らないが公安の偉い人、
高待遇を約束するから、ヒーローとして活動してくれませんかとお願いしに来たのだ。
他には次代の平和の象徴の候補者がどうとか言っていたが、そんなの妾の知ったこっちゃない。
公安直属のヒーローになるつもりもないし、イズクに免許を配布の話も断らせてもらった。
青春時代は今だけしか体験できないし、弟子はまだ遊びたいざかりの子供だ。
いくら強くても、精神的に未熟なのに過酷な戦いに飛び込ませるべきではないだろう。
むしろ大人なら止めるべきだと判断し、引子さんに保護者役を任されている妾は断固拒否した。
そもそもオールマイトだっていい歳なんだから、そろそろヤバいのはとっくにわかっていたはずだ。
これまで全く気づかなかった民衆も色々アレだけど、公安がろくな対策を講じてないのは職務怠慢すぎでしょと、逆に反論させてもらう。
妾は、ヒーローは好きでも嫌いでもない。
しかし民度が最悪ですぐ責任問題に発展するので、絶対にやりたくない。
ストレスで口ではなく、手が出てしまいそうだからだ。
将来的にイズクがトップヒーローになるのは構わないが、それでも後方腕組み師匠ポジとしては、危ういときだけ手助けする程度に留まるだろう。
ハガレンではないけど、凄腕の実力者でも主婦をやってるのが気楽で良いのだ。
そう考えてはいるが、
おみ足でも舐めそうな勢いだった。
なので社会システムが崩壊しそうな状況まで追い詰められたらママエアロと、内心でドン引きしながら玉虫色の返事をする。
どうにも諦める気配がなさそうだったし、家の前に居座られたり、首を縦に振るまで何度も来られたら迷惑だからだ。
それに平和でのんびり日向ぼっこができる今の世は、案外気に入っている。
いよいよピンチになったら重い腰を上げて真面目に仕事をするのも、やぶさかでない。
ただし、オールマイトもそうだが、一人が抜けただけで社会システムが崩壊の危機になるのは、あまりにも欠陥がすぎる。
たとえ妾が延命させたとしても、終わりも見えないのに延々働き続けるなど真っ平ごめんだ。
なので今後は、平和の象徴のような特別なヒーローに頼らなくても、社会が崩壊しない新しいシステムを構築するのが急務だ。
もし改善が見られない場合は、残念だが足抜けさせてもらうかも知れない。
それに万が一の保険なら良いが、あまり頼りにされても困る。
そのようなことを
それはそれとして、職場体験は無事に終わった。
グラントリノと別れ、妾とイズクは雄英高校に戻ってくる。
一年A組の教室で久しぶりにクラスメイトと再会し、弟子は嬉しそうだ。
話題はヒーロー殺しステインだが、話題沸騰中なので無理もない。
「まあ、一番大きく変わったというか! 大変だったのは、お前ら三人だな!」
上鳴電気少年が妾たちのほうに顔を向けて、おもむろに話を振ってくる。
「そうそう! ヒーロー殺し!」
「命があって何よりだぜ! マジでさ!」
「心配しましたわ!」
「お狐様が助けてくれたんだってな!」
矢継ぎ早に色々言われて三人は戸惑いつつも、砂藤力道少年の発言で視線が妾に集まる。
「凄いね! 流石お狐様!」
「……そうだな。助けられた」
轟少年が同意を示し、イズクも静かに頷く。
妾はいつものように呑気に空中で丸くなりながら、何か知らんけどめっちゃ褒めてくるなと思う。
だが別に興味はないので、アクビをしながら右から左に聞き流していた。
途中でステインの動画や憧れや信念などに、話題が変わる。
しかし結局何だかんだ言いつつも、捕まって刑務所行きになったのは変わらない。
もう出てこないだろうし、どうでも良いと適当に流すのだった。
イズクは
咄嗟の状況判断から戦闘へも、呼吸をするようにスムーズに移行できるようになった。
まだまだ過剰分が多いが、足りないよりは良い。
それに意識がある限りは
心身への負担も大幅に軽減しているので、超サイヤ人状態が当たり前になった孫悟空のようだ。
ただまあ足場が不安定な場所でうっかり滑らせてしまい、波紋で吸着していたので落下は免れたが、コウモリのように逆さ吊りの状態になってしまった。
幸いすぐに元の位置に戻れたので最下位は免れたが、それでも思わぬ失敗で大きく出遅れてしまう。
やはり弟子はまだ、全体的に経験が足りてない。
焦らず長い目で見て、今後の成長に期待するのだった。
林間合宿に行くには、期末の筆記と実技をクリアしなければいけないらしい。
イズクなら問題ないと思っているが、教師を相手に生徒二人一組で協力して戦うことになる。
弟子は爆豪少年と組んで、相手はオールマイトだ。
しかも、能力を制限するために体重の半分の重りをつけたりはしない。
手加減はせずに万全の状態で、プロヒーローと戦うことになる。
普通なら、加減しろ馬鹿と叫びたくなる。
しかし今年の雄英高校の生徒は、全体的に底上げされていた。
立ち塞がる壁が高いほど燃えるし、今後はヴィランの活性化が予想されるので、この機会に少しでも強くなって欲しいとのことだ。
妾にはちょっと理解できないが、弟子や皆が良いなら別にいい。
いつも通りに話半分に聞き流して、ウトウトと日向ぼっこをするのだった。
やがて三日間の筆記が終わり、実技に移る。
クラスメイトの試験は一通り済んで勝ったり負けたりだったが、次は弟子の番だ。
都市を模した演習場に、ヒーローコスチュームを着用したイズクと爆豪少年が入る。
二人共、かなり緊張しているのがわかった。
「かっちゃん! この試験は! 先生がヴィラン役で、僕たちがヒーロー役という設定で!
つまり、ヴィランの戦闘能力を鑑みて、戦うか逃げるかを選択するわけだけど──」
いつも二人の間には妾が間に入っていた。
しかし今回の試験は手を貸さないため、霊体になって上空からのんびり様子を伺う。
(仲は悪くはない。じゃが二人共、肩に力が入りすぎておるのう)
イズクも爆豪少年も、かつてはオールマイトに憧れていた。
今は何故かのじゃロリ狐っ娘がナンバーワン的な立場になっているが、それでも特別な存在なのは確かだ。
それに二人は、昔からのライバル同士である。
共通の敵には連携も取れるが、久しぶりなのもあって少々ギクシャクしていた。
妾は今度は感覚を研ぎ澄ませて、遥か遠くのオールマイトの様子を探る。
(さて、オールマイトは、ふむ……何で絶好調なんじゃ?)
妾は呑気に上空から観察する。
オールマイトは、一時は呼吸器官が損傷して胃を摘出してガリガリに痩せ細ってしまっていた。
しかし今は波紋の呼吸法に変わってからは、若返って古傷も完全に癒えた。
体格的には全盛期よりもかなりスマートだし、イズクにワンフォーオールを託したことで、個性の残り火はゆっくりと消えつつある。
そのはずなのだが、今の彼は生命エネルギーのオーラがとてつもなく高まっていた。
とても年齢的にも引退間近なヒーローとは思えず、妾ははてと首を傾げ、原因を探るために目を凝らしてオールマイトを観察する。
(……アレはもしや)
彼の内に、かつてのワンフォーオールに近い何かが、新たに生まれつつあった。
例えるなら孫悟空が仲間から託された超サイヤ人ゴッドが解除されても、無意識のうちに己の力に変えるようなものだ。
ただし有限の生命エネルギーの泉に変化していたりと、弱体化もしてはいる。
だがそれでも短時間なら全盛期のオールマイトになれるし、肉体も若返って吐血することもなくなった。
(これは不味いことになったのう)
正直に言えば、イズクと爆豪少年に勝ち目はない。
開幕で一発殴られて、試験終了になりかねなかった。
そう考えた妾は慌てた様子で実体化し、二人の前に音もなく舞い降りる。
そして、簡潔に状況を説明した。
「全盛期のオールマイトが来るぞ!
こちらも全力で迎え撃たねば、一撃で再起不能じゃ!」
「「えっ!?」」
「では、健闘を祈っておるぞ!」
二人が妾に何かを言いかけたが、その前に霊体化して空中に飛び上がった。
流石に何もできずにリタイアするのは可哀想だが、自分が出たら試験にならない。
助言は、この一回だけだ。
すると狐耳に、遠くのオールマイトの声が聞こえてきた。
「さて、……私が行くぞ!」
いよいよ戦闘が始まるようだ。
彼は渾身の左ストレートで衝撃波を放ち、演習場を完膚なきまでに吹き飛ばしていく。
幸い事前に警告を出したおかげで、身を守るために各々の判断で慌てて動き出す。
「
「吹き飛べやぁ!」
二人がかりで、オールマイトが放った衝撃波を辛うじて相殺する。
だがやはり、全盛期の彼はとんでもない。
ぶっちゃけ、この世界はバグキャラが多すぎる。
今の彼は、のじゃロリ狐っ娘の一尾レベルの全開パワーと同等だ。
二人がかりでも、打ち消すのが精一杯だった。
「街への被害など! くそくらえだ!
試験だなどと考えていると、痛い目見るぞ!
私はヴィランだ! ヒーローよ!
真心込めて! かかってこい!」
ナンバーワンヒーローの威圧感で少しの間、動けずにいた二人だった。
しかしすぐに険しい顔つきになり、互いに視線でやり取りをしてコクリと頷く。
妾との戦闘訓練で連携を取るときに、良くやっている行動だ。
そっちは中学三年生の途中から、ワンフォーオールの修行にかかりっきりになる。
だが久しぶりではあるが、ちゃんと覚えていたようだ。
「やるよ! かっちゃん!」
「俺に指示するな!
お前が合わせろ! デクゥ!」
イズクは右、爆豪少年は左に回り込む。
口では何だかんだ言いつつも、外から見ていると息ぴったりだ。
(じゃが、相手が悪いか)
オールマイトは、恐ろしいほどのタフネスボディを持っていた。
爆豪少年の攻撃など、格ゲーの弱パンチ程度しかダメージを与えられない。
ゆえに警戒すべきはイズクだが、まだ
イズクは爆豪少年に注意を引いてもらい、背後から強襲した。
しかしその動きは読まれており、カウンターの蹴りで吹き飛ばされる。
「うわぁっ!?」
壁に激突して、あまりにも凄まじい衝撃に耐えきれずにビルが倒壊していく。
あっという間に生き埋めになってしまったが、弟子もかなりタフでオールマイトも一応手加減はしたので、死んではない。
続いて爆豪少年だが、イズクが作った一瞬の隙を突いてゼロ距離まで近づき、新必殺技のAPショットを連射した。
だがオールマイトは人間離れした反射神経で落ち着いて防御することで、ダメージを最小限に抑える。
続いて逃げられる前に、爆豪少年の頭をむんずと掴んだ。
そのまま勢い良く地面に叩きつけることで、戦闘不能に追い込んだのだった。
二人は気絶したのか、痛みですぐには動けないのかわからない。
しかし、少しだけ時間が流れたが何の反応もないため、オールマイトは頬をポリポリとかいて冷や汗をかいた。
何故かまだ試験終了にはならないので、辛うじて意識は残っているのかも知れない。
とにかく上空でのんびり日向ぼっこをしている妾に顔を向け、眩しい笑顔で声をかけてくる。
「いやぁ! すまないね! お狐様!
どうやら、やりすぎてしまったようだ! はっはっはっ!」
本当にコイツはバグキャラなんじゃないかと、妾は溜息を吐きつつ実体化し、音もなく地面に降り立つ。
「構わんよ。妾も真っ向勝負では、お主には勝てぬと思っておったしのう」
そう言ってチラリと、背後の崩れたビルの瓦礫に視線を向ける。
そして再び、オールマイトに声をかける。
「それでどうするのじゃ? 試験終了を宣言するのか?」
「私としては、ここで終わっても良いが」
オールマイトは少しだけ思案して、続いて不敵な笑みを浮かべて妾を見つめる。
「せっかくだから、お手合わせ願えないだろうか?」
そう妾に提案してくるが、正直困ってしまう。
本心では面倒だからパスしたくても、イズクも爆豪少年もまだ諦めていない。
なので今一番困るのは、試験終了と判断されることだ。
「まあ、良かろう」
「感謝するよ! じゃあ、やろうか!」
オールマイトも気づいてはいるのだろう。
だからこそイズクたちに勝ち筋を残しており、これから何をするのかと期待している。
制限時間も残っているし、わざと気づいていないフリをしているのだ。
ならば妾も、弟子と友人のために一肌脱ぐことを決めた。
しかし、守護霊ゆえに長距離の移動はできない。
なので足元に大きく丸い円を描いて、外に出たら負けのルールを定めた。
そんな感じて手合わせしていると、ナンバーワンヒーローだけあって強いと感じた。
こっちは超感覚で先読みして動いているが、向こうは長年の経験で予測して対処している。
互いに至近距離から動くことはできず、マトリックスのエージェントとの戦いのように超高速の応酬だ。
外から観察しても、常人には残像しか見えないだろう。
「やはり強いね!」
「お主もな!」
掴まれたり打撃を受けたら、その時点で試合終了になりかねない。
お互いに超高速で応酬しつつも、いかに相手の攻撃を避ける。もしくは弾くなどの防御が重要だ。
妾のほうがリーチが短いので不利ではあるが、それでも負ける気はない。
「たまには訓練に、付き合ってくれるかい!」
「嫌じゃ!」
即答であるが、妾は体を動かすよりも日向ぼっこのほうが好きなのだ。
何でそんな面倒な訓練をしないといけないのかと、本心で嫌がっている。
しかし、はっきり断られるのは意外だったようだ。
オールマイトは、ほんの少しだけ攻めの手が止まった。
もちろん十分に警戒はしているので大した隙ではないが、その瞬間だけ彼らは完全に外れる。
すると、突然ビルの瓦礫が盛大に吹き飛んで、周囲に砂煙が舞う。
さらにそこから黒い鞭のようなものは高速で伸びてきて、ほんの少しだけ硬直していたナンバーワンヒーローの体を縛りあげる。
「かっちゃん!」
「いちいち命令するな! デクッ!」
次に、地面に横たわっていた爆豪少年が飛び起きる。
身動きを封じられたオールマイトに急接近した。
「シット!」
そのまま爆破で攻撃すると見せかけ、大爆発の目眩ましで視界を塞いで隙を作った。
素早く背後に回り込みつつ、イズクも
不思議なことに
あらかじめ用意していた手錠で、オールマイトを同時に素早く拘束する。
おかげで残り時間があと一分を切ったところで、試験終了になったのだった。