近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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ショッピングモールに行ったのじゃ

 実技試験で、新しい幽波紋(スタンド)を覚えた。

 限界以上に波紋疾走(オーバードライブ)の出力を上げると、過剰分が外に溢れ出て明確なヴィジョンを持つようだ。

 

 しかし、ぶっちゃけ100パーセントを長時間維持するのは困難である。

 体に負荷がかかり過ぎるので、幽波紋(スタンド)が実体を持てるのは極めて短い。

 技として使うには色々問題があるし、歴代継承者と対話して力を貸してもらう必要がある。

 

 唯一オールマイトだけは最初から協力的なので、自由に引き出して扱えた。

 だがそれも、100パーセントを越えるというリミッター解除が必須になるのは変わらない。

 

 なので少しでも負担を減らすために、少し前に修得した(りゅう)を応用する。

 部分的に限界を越えることで幽波紋(スタンド)は実体化しないが、歴代継承者の個性を使うことができるのだ。

 

 先程の黒鞭はイズクの右腕から出ていたので、なるほどと納得できる。

 

 

 

 そのような情報を、試験が終わったあとにイズクに教えてもらった。

 

 理論を組み立てても、実際に試すのは初めてだったようだ。

 そして師匠を驚かせたくて秘密にしていたのだと、イズクは照れながら答える。

 

 

 

 何やかんやで弟子は着実に成長し、トップヒーローへの道を歩んでいるのは間違いない。

 全てを妾が教えるのではなく、己の知恵や力で困難を切り抜けてこそ、本当の意味で強くなれる。

 

 

 

 だが七代目がオールマイトに話したいことがあるとか言って、幽波紋(スタンド)として実体化することを希望するのは困った。

 一応望みを叶えたが死柄木弔の正体を知ることになり、悩みのタネが一つ増える。

 

 

 

 しかし林間合宿も全員が行けることがわかったので、一年A組の雰囲気も明るくなった。

 それに彼の正体が何であれ、どうせやることは捕まえて刑務所にぶち込むことだ。

 

 何も変わっていないと思えば、ウジウジ考えるよりも気楽になるのだった。

 

 

 

 やがて休みの日に、皆でショッピングモールに行くことになる。

 各々が買いたい物が異なるので、現地まで行ったあとは集合時間を決めて自由行動になった。

 

 そして、妾は特にすることがない。

 空中で丸くなってのんびり日向ぼっこしてようと思ったが、そこで一人の少年が近づいてくる。

 

「おっ! 雄英の人だ! 凄え! サインくれや!」

 

 黒いパーカーを着用した若者が、イズクに馴れ馴れしそうに触れようとする。

 それを見た妾は瞬時に実体化し、強引に間に割って入った。

 

「何をしに来た。死柄木弔」

 

 ちょっと前に彼の過去イベントを終わらせたばかりなのに、再登場とは恐れ入る。

 なお、全く嬉しくないが無視するわけにもいかない。

 

「言ってる意味が、良くわからないな」

 

 とぼけた口調で誤魔化しているが彼の生命エネルギーは独特だし、死臭もしているので一目でわかる。

 

 そしてイズクも気づいたようで、警戒して数歩後ろに下がって距離を取った。

 

 そんな妾たちに、死柄木弔は悪魔のような笑顔を浮かべて声をかけてくる。

 

「お茶でもしようか。お狐様」

「嫌だと言ったら?」

「その時は、周りの奴らを殺す」

 

 死柄木弔の提案に、妾は少しだけ考える。

 

(奴を倒すのは容易じゃ。しかし、ワープゲートの個性を持つ黒霧の姿が見えぬのが気になるのう)

 

 恐らく、遠くから様子を伺っているのだろう。

 何しろ目の前の男は、AFOの大切な駒だ。一人でノコノコ出歩くなど考えられない。

 

(周辺被害を抑えるためにも、今は言うことを聞いておくか)

 

 妾は念話でイズクに方針を伝える。

 そして一先ずは、彼の言う通りにすることに決めたのだった。

 

 

 

 場所を移動してベンチに座り、妾はいつでも動けるように実体化したままだ。

 死柄木弔は五本の指を当てると崩壊する個性を持っているため、決してイズクには触れさせないように距離を取らせた。

 

「話は手短に頼むぞ」

「ああ、こっちも暇じゃないし、ヒーローと談笑するつもりない」

 

 しかし、それでも妾の話を聞きたいと言ったのだ。

 余程差し迫った事情があるとしても、警戒は決して緩めない。

 

 死柄木弔は少し苛ついているようで、とにかく話を始める。

 

「大体何でも気に入らないんだけどさ。今一番腹が立つのは、ヒーロー殺しさ」

「仲間じゃないのか?」

「俺は認めちゃいないが、世間じゃそうなってる」

 

 どうやら死柄木弔は、本心でそう思っているようだ。

 妾は、呆れた顔をして溜息を吐く。

 

 今の状況を仕組んだのはAFOなのは間違いないし、相変わらず良いように利用されている。

 

 しかし、それを口に出しても彼の信頼は揺るがない。

 何を言っても無駄だと軽く首を振り、続きを聞く。

 

「問題はそこだ。殆どの人間が、ヒーロー殺しに目がいってる。

 それと、お前にな」

 

 妾も注目されているようだ。

 しかしテレビやニュースには興味がないので、どうでもいいことだ。

 

「雄英襲撃も、保須(ほす)で放った脳無も、全部奴に食われた。

 誰も俺を見ないんだよ。何故だ?

 いくら能書き垂れようが、結局奴も気に入らないモノを壊していただけだろ?

 俺と何が違うと思う?」

 

 本当にわからないのかと疑問に思いつつも、だからこそヴィランをやっているのだと納得する。

 

 ようは死柄木弔は、子供の精神状態のまま体と個性だけが成長してしまったのだ。

 

 とにかく聞かれたからには答えねばならぬと、少しだけ考えて口を開く。

 

「ヒーロー殺しはやり方は間違っておったが、正しき社会のためだと信じて戦っておった。

 ならば、お前はどうじゃ。

 オールマイトの殺害を目論んでおったが、何も考えておらぬとは言うまいな?」

 

 妾には死柄木弔が何を目的で、ヴィランとして活動しているのかを知らない。

 それに雄英襲撃では、彼の理念は何も伝わってこなかった。

 

 なので最終目的について逆に尋ねたのだが、彼はしばらく考えて不気味な笑顔を浮かべる。

 

「ああ、何かスッキリした。点が線になった気がする。

 何でヒーロー殺しがムカつくか、何でお前が鬱陶しいか。……わかった気がする!」

 

 あまりにもキモい笑顔だったので、妾の尻尾がブルルと逆立った。

 

「キッショ! 何でわかるんじゃよ!」

 

 思わず何処かで聞いたような台詞を、口に出してしまう。

 場面と全然合ってないが、死柄木弔は気にせず喋り続ける。

 

「全部、オールマイトだ! そうか、そうだよな。結局そこに辿り着くんだ!

 あはっ! 何を悶々と考えていたんだろ! コイツラがヘラヘラ笑って過ごしてるのも! オールマイトがヘラヘラ笑ってるからだよなぁ!」

 

 コイツは何を言ってるんだと困惑してしまう。

 だが取りあえず、死柄木弔の中で答えは出たようだ。

 

 まるで妾など見えていないようで、なおも口を動かし続ける。

 

「あのゴミが! 救えなかった人間などいなかったかのように! ヘラヘラ笑っているからだよなぁ!

 ああ、話せて良かった! ありがとう! 俺は何ら曲がることはない!」

 

 妾としては、おっおうとしか言えない。

 しかし今の死柄木弔は凄く嬉しそうだし、下手に刺激してショッピングモールで暴れられるのも困る。

 

 どうしたものかと考えていると、麗日少女がこちらに近づいてくる。

 

「……デク君? お狐様? お友達……じゃ、ないよね?」

 

 その通りなのだが、どう説明したものかと悩む。

 

「連れがいたのか! ごめんごめん! じゃっ、行くわ!」

 

 死柄木弔は、おどけた様子でベンチから立ち上がる。

 その際に、小声で追ってきたりしたらわかるよなと脅してきた。

 

(ヒーローは守るものが多くて大変じゃと言うが、まさにその通りじゃな)

 

 被害を気にせずに戦えれば、ヴィランの増援も苦もなく倒せるだろう。

 しかし、ショッピングモールの人たちを守りながらは正直厳しい。

 

 あとでとやかく文句を言われるぐらいなら、妾は責任問題に発展しない安全策を選ぶ。

 その場から動くことなく警察やヒーロー事務所に通報し、必要最低限の役割だけは果たしておくのだった。

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