近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
メリッサさんにアイアイランドを案内してもらい、デヴィット・シールド博士に会いに行くことになった。
目的地に到着して扉を開け、妾は親友との感動の再会をのんびり眺める。
そしてイズクは、彼のことを良く知っているようだ。
行動派オタク特有の早口で色々と解説してくれた。
「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか?
メリッサ。緑谷君にアイエキスポを案内してあげなさい」
「わかったわ。パパ」
そういうことになったが、妾はあることを思い出してオールマイトにフヨフヨと近づく。
続いて、こっそり耳打ちをする。
「デヴィット博士に、ワンフォーオールが変異したことをちゃんと伝えておくのじゃぞ」
「ああ、もちろんさ!」
かつての相棒なので、オールマイトの個性に関しても把握しているだろう。
だが現在は前と変わっているため、その辺りの意見のすり合わせをしないと後々面倒になりそうだ。
取りあえず承諾したので、妾は満足そうに頷く。
続いてデヴィットさんにナンバーワンヒーローのことを頼み、用が済んだのでイズクの元に戻るのだった。
I・エキスポを見物していると、一年A組のクラスメイトとばったり出会う。
どうやらヒーローとして呼ばれたり、スポンサー企業だったりで少し早くやって来たようだ。
何とも、凄い偶然もあったものである。
今日はまだプレオープン中なので、全員ではない。
だが明日の一般公開日には、皆が集まるらしい。
妾は日向ぼっこでウトウトしながら聞いていると、突然爆発音が聞こえてくる。
これには興味を惹かれたので、皆でその会場に向かることになったのだった。
そこには一年A組のクラスメイトが、どれだけ早く標的のロボットを破壊できるかを競う、アトラクションに参加していた。
そして切島少年と爆豪少年の二人が好タイムを出して、観客を湧かせている。
なおイズクも成り行きで参加することになり、第二位の記録となった。
「やりました! 師匠!」
「うむ、見事じゃったぞ」
しかし超パワーにアトラクションが耐えられるかと言うと、微妙である。
なので
それでも堂々の二位なので、妾は弟子の健闘をおおーと手を叩いて褒める。
さらに轟少年があとに続いて全部まとめて凍らせて一位を取ったのだが、あとでちゃんと溶かせるので問題はないのだろう。
とにく全員終わったので次のアトラクションに移動するかと思いきや、イズクが眩しい笑顔で妾に声をかけてくる。
「じゃあ、次は師匠の番ですね!」
「えっ?」
何を言ってるんだと唖然としてしまう。
するとすぐ近くに居る、メリッサさんやクラスメイトたちから期待の視線を向けられる。
正直面倒だから、やる気は全くなかった。
しかし弟子の期待を裏切るのは心苦しく、もしここで断ると師匠の威厳が損なわれるかも知れない。
しばらくどうしたものかと悩んだ末に、妾は大きな溜息を吐く。
「まあ、これぐらいなら良かろう」
「ありがとうござい……ああっ!」
イズクが条件反射で礼を言おうとしたときに、あることに気づく。
「師匠は、10メートル以上は離れられなかったんだった!
どっ、どうしましょうか!」
弟子は提案したあとにしまったという表情に変わるが、妾はすぐに首を横に振る。
そして、呑気に返事した。
「問題ない。妾はスタート地点から、一歩も動くつもりはない」
「「「えっ!?」」」
イズクだけでなく周りで話を聞いている者たちも、今の発言に驚くのだった。
ヴィランアタックの参加登録を済ませた妾は、実体化してスタート地点に立った。
そしてもう一度周囲を確認したあと、呼吸を整えて目を閉じて感覚を研ぎ澄ませる。
続いて狐火を一点に収束して、青龍へと姿を変えていく。
「ヴィランアタック! レディー! ゴーッ!」
審査員のお姉さんの合図が出たと同時に、妾は目を見開いて大声で叫ぶ。
「
事前に準備しておいた青龍が天へと登っていき、大きく弾けた。
だが飛び散ったのは火の粉ではなく、無数の小さな龍だ。
それは地上に降り注ぐように落下していき、障害物を器用に避けて止まることなくアトラクションの岩山へと向かっていく。
そして次の瞬間には、全てのヴィランロボが爆発していた。
アトラクションが始まってから、たったの数秒のことである。
係員のお姉さんも他の観客と同じで、これにはとても興奮していた。
「すっ、凄い記録が出ました! ごっ、5秒です! 過去最速です!」
技のモーションに時間がかかるため、どんなに頑張っても5秒は切れないだろうが、良しとしておく。
取りあえず、師匠の面目を保てたのだ。
肩の力を抜いて何かそれっぽい台詞はないかと考え、また前世のサブカルチャーから引用させてもらう。
「『壊す』…そんな言葉は使う必要がないのじゃ」
もちろん、ちゃんとビシッとポーズも取っている。
「なぜなら妾は、その言葉を頭の中に思い浮かべた時には。
実際に対象を破壊して、すでに終わってるからのう。
だから、使った事がないのじゃ」
もちろん嘘ではあるが、しかし久しぶりに運動して弟子に良いところも見せられたのだ。
ここは偉大な兄貴に倣って、意味があるようでない名言で締めくくっておくに限る。
「『壊してやった』なら使って良いぞ」
だが実際に喋っているのは、のじゃロリ狐っ娘なので、格好良いよりもただただ可愛いだけかも知れない。
しかしそんな師匠を見て、弟子は大興奮である。
「師匠おおおおっ!!! 今のはどうやったんですか!
いえっ! 追尾性能があるのは知っていましたけど!
それは! 障害物や先の景色が見えるからの追尾であって──」
行動派オタクのイズクが先程の攻撃について質問攻めしてくる。
確かにロボの殆どは遮蔽物に隠れていて、地上からでは見えない。
いくら追尾可能とはいえ、スタート地点から全ての敵を狙うのは不可能だ。
周りの人たちや、審査員のお姉さんも気になっているようだ。
ワクワクしながら答えを待っているが、別に隠すようなことでもない。
妾は静かに息を吐いてジョジョ立ちを止めて、いつも通りのほんわかした雰囲気で説明をしていく。
「アトラクションの地形なら、イズクが戦ったときに覚えた」
このアトラクションは地形は変わらずに、変わるのは敵の配置だけだ。
「それに音や振動で、何処に出現したかはわかる。
あとは感覚的に障害物を避けて、追尾するだけじゃ」
妾以外にできるかは知らないが、そこは別に気にすることではない。
周りの人たちは、さっきから驚いてばかりだ。
そして審査員のお姉さんが、称賛の声をひっきりなしにかけてくる。
あとは記念写真や撮影をお願いされるなど、凄くグイグイ来る。
そういう面倒が苦手な妾は、面目を保ったしこれ以上は付き合ってられないと、霊体になって空中に逃げさせてもらう。
このままではもっと精進しなければと決意を新たにして、今度は念能力的な意味で感謝の正拳突きまで始めかねない。
ゆえに何も言わずに黙って見守るのも師匠の役目だと都合良く解釈し、この場は退避させてもらった。
「緑谷君の師匠! 凄いね!」
メリッサさんが凄く眩しい笑顔で妾を褒めて、イズクも胸を張って答える。
「僕の自慢の師匠なんだ!」
妾としては後方腕組み師匠ポジが安泰なら、それ以上は特に望んではないない。
イズクの信頼を守り抜いたし、今日は良い天気だ。
仕事は終わったとばかりにアクビをして体を丸め、いつも通りのんびり日向ぼっこを始めるのだった。