近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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オールマイトとデヴィット博士なのじゃ

<八木俊典>

 室内に私とデイヴの二人だけになったので、マッスルフォームを解除した。

 湯気をあげながら元の体型に戻ると、心配そうに声をかけられる。

 

「おいっ! 大丈夫か! トシ!」

 

 親友が私の容態を気にかけてくれるのをありがたく思いながら、笑顔で返事をする。

 

「助かったよ。

 マッスルフォームを維持する時間は伸びてはいるが、流石に一日中となるとキツくてね」

 

 ワンフォーオールは緑谷少年に継承したことで、今の私は大きく弱体化している。

 それでもAFOとの戦いで重症を負ったときよりはマシになり、短時間なら全盛期と同等の力を引き出すことができた。

 

「メールで症状は知っていたが、まさかそこまで回復しているとは──」

 

 デイヴにもメールで報告しているので、一応知ってはいる。

 だがまさか本当に、瀕死の重傷からここまで回復しているとは思わなかったようだ。

 

 取りあえずその辺りのことを詳しく調べるために、私は医療カプセルに寝かされる。

 そしてI・アイランドの各種機械で、様々なデータを収集することになった。

 

 

 

 日本の信用できる医療機関でも、同じようなことを行っている。

 しかし情報は常に更新し続ける必要があるし、この島の科学力は世界一だと言っても過言ではない。

 

 デイヴはその中でもトップの科学者で、最新の私のデータを見て驚愕の表情を浮かべていた。

 

「どういうことだ! トシ!

 肉体だけでなく個性数値まで、何故これ程回復しているんだ!」

 

 検査が終わって医療カプセルから起き上がった私に、デイヴが取り乱して汗をかきながら話しかけてくる。

 

「オールフォーワンとの戦いでの損傷が回復したとはいえ!

 やはりこの数値は異常すぎる! 一体! キミの体に何があったと言うんだ!」

 

 事前に情報を伝えていても、見るのと聞くのは大違いだ。

 デイヴは現実を目の当たりにして、普通ではあり得ないほど混乱していた。

 

 私は親友にある程度は事情を説明するつもりで、この件については正直に打ち明ける。

 

「長年ヒーローを続けていれば、あちこちガタが出る。

 しかし、それを解決する画期的な呼吸法があるんだ」

 

 デイヴはとても信じられないという顔をしているが、言葉だけでは信用できないだろう。

 

「呼吸法だって!?

 じゃあキミは、たかが呼吸法でここまで回復したと言うのかい!?」

 

 私もそう簡単に納得してくれるとは思っていないので、論より証拠だ。

 スリッパを履いて少し歩き、室内に置いてある花瓶の前で立ち止まる。

 

 そしてまだ開花前の蕾の薔薇を一輪引き抜いた。

 

「その薔薇をどうするんだい?」

「まあ、見ていてくれ。デイヴ。……コオオオオッ!」

 

 緑谷少年は常時波紋の呼吸を維持しているが、私はまだ気を抜くと元の呼吸に戻ってしまう。

 だが今のように意識すれば、薔薇の生命エネルギーを活性化させて開花させることも可能になる。

 

「ばっ、薔薇の花が!? どういうことだ!?」

 

 満開になった薔薇を花瓶に戻して、私は微笑みながらデイヴを見つめる。

 

「これが波紋の呼吸さ。

 まだ緑谷少年ほどではないが、私でも花を咲かせるぐらいはできる」

 

 しばらく真剣に考え込んでいた親友だが、何かを思い出したようだ。

 顔であげて率直に尋ねてくる。

 

「そう言えば先程、狐の少女と話してなかったか?」

「ああ、この件についてデイヴに打ち明けるように言われてね」

 

 呼吸を意識的に維持しつつ、私は個性を発動させてマッスルフォームになる。

 

「実はこの個性なんだが、波紋が混じって変異したようなんだ!

 まあ肉体の傷も完治したし不便にも感じていないから、特に問題はないんだけどね!」

 

 ハッハッハと笑い飛ばすと、親友は最初は唖然としていた。

 だがやがてプッと吹き出して、二人揃って大笑いし始める。

 

「これなら平和の象徴は安泰だな!

 日本がヴィラン犯罪発生率を6パーセントで維持しているのは、ひとえにキミがいるからだ!」

 

 親友は楽しそうに笑っているが、今の世界情勢はお世辞にもあまりよろしくはない。

 

「他の国が、軒並み20パーセントを越してると言うのに!

 キミがアメリカに残ってくれればと、何度思ったことか!」

 

 デイヴの気持ちもわからなくもないが、私には私の考えがあるのだ。

 

 それに、今アメリカに行くわけにはいかない。

 お狐様がAFOの生存を確認し、奴は恐らく日本にいる。

 

 ヴィランの帝王を野放しにはできない。

 放置すれば災厄は世界中に広がるため、何としても巨悪を倒さないといけなかった。

 

「それ程悲観する必要はないさ。

 優秀なプロヒーローたちがいるし、キミのようにサポートしてくれる方たちもいる。

 私だって全盛期のように一日中は流石に無理だが、オールマイトとして活動できるんだ」

 

 私はデイヴに近づいて肩を軽く叩いて続きを話すと、親友の顔に少しだけ影が差す。

 確かに強がっていても自分は全盛期の頃とは違い、ずっと平和の象徴でい続けることはできない。

 

 ワンフォーオールは緑谷少年に託したのだ。

 しかし、それを親友に打ち明けることは出来ない。秘密を知ればAFOに狙われるかも知れないのだ。

 

 そしてデイヴは、かねてより抱えていた不安を口にする。

 

「しかし、オールフォーワンのようなヴィランが、何処かにまた現れる可能性も──」

「デイヴ」

 

 彼が口に出そうとしていた不安を遮るように、私は強く言葉をかける。

 

「私はその時のためにも、平和の象徴を下りるつもりはないよ。

 ……それに、希望だってある」

 

 俯いていたデイヴは顔を上げて、私と視線が交差した。

 

「希望? 緑谷少年のことかい?」

 

 親友の発言を受けて、私はある意味では正しいと思った。

 

「はっはっはっ! 希望の一人ではあるね!」

 

 ワンフォーオールのことは、詳しくは話せない。

 だが彼女は別に口止めはされていないし、ヒーローとして一般公開もされているので別に良いだろうと判断し、大げさに紹介させてもらう。。

 

「お狐様のことさ! 彼女は本当に凄い! デイヴもきっと驚くさ!」

「日本のニュースは見たが、にわかには信じられないな」

 

 彼女の行動は、あまりにも現実離れしている。

 映像だけ見ても、信じられないのもわかる。

 

 何しろお狐様の強さは一般的なプロヒーローから見ても、明らかに常軌を逸しているからだ。

 

 例えるなら、私やAFOのような特別な存在だろう。

 たった一人で大勢のヴィランやヒーロー、果ては国家だろうと戦えてしまう。

 

「デイヴ、キミもいつか、わかるときが来るさ」

 

 まだ半信半疑ながらも、デイヴはさり気なくお狐様の情報を集め始めている。

 

 するとタイミングが良いのか悪いのか、最新のデータがたった今届いた。

 それを見た彼は、驚きで目を丸くする。

 

「ヴィランアタックが、5秒だと!?」

 

 岩山のアトラクションで、ランダムに出現するロボットを全て破壊するタイムを競うらしいが、たったの5秒とは恐れ入ったものだ。

 

「あー……これは私では無理な記録だな。相性が悪い」

 

 自分ではやり過ぎて、アトラクションを壊してしまいかねない。

 緑谷少年も力を抑えて立ち回っただろうし、開始した瞬間に全撃破で5秒というデタラメな記録は流石に出せなかった。

 

 轟少年のような氷の全体攻撃があれば数秒でクリアできるだろうが、あれはアトラクションは無事だがヴィランだけを倒すものではない。

 いくら記録を更新できても、ヒーローとしてはあまり好ましくはないだろう。

 

「とても信じられんが、証拠のライブ映像もあがっている。

 ……過去の情報も加工された形跡はないし、信憑性は高いか」

 

 あまりにも規格外なヒーローを認知した親友は、苦笑気味な顔で私を見てくる。

 

「ちなみに彼女だが、アメリカに引っ越す予定は?」

 

 いきなり何を言い出すかと思いきや、彼女の実力を考えれば当然という結論に至る。

 しかし私はすぐに肩をすくめて、首を横に振った。

 

「彼女は私以上に、日本から離れたがらないだろう。

 緑谷少年も将来はわからないが、まだ学生の身だ」

 

 残念そうな表情を浮かべるデイヴだったが、やがて顔つきが変わっていく。

 

 それは悲壮な決意を秘めた表情だ。

 私がどうかしたのかと尋ねる前に、親友から真面目な顔で思いもしなかった激白を聞かされるのだった。

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