近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
I・エキスポの見物を終える頃には、日が沈みかけていた。
このあとはレセプションパーティーに参加するので、皆と別れる。
その途中でメリッサさんから渡したい物があると言われ、イズクにフルガントレットをプレゼントされる。
何でも100パーセントの出力を出しても、三発まで肉体の損傷を抑えられるらしい。
原作のズームパンチのように、波紋で和らげなくても良いのは楽で良い。
その後はメリッサさんにお礼を言って別れて、ホテルの部屋で着替えを済ませて会場に向かう。
当たり前だが妾は巫女服のままでいつも通りだが、道中でオールマイトから連絡が入る。
そしてイズクではなく妾と話したいようだが、スマートフォンのような最新機器は苦手だ。
あまり触らないように気をつけて、弟子から直接受け取って狐耳をつける。
「何かあったのか?」
「いや! 何もないと言えば何もないんだがね!」
どうにも歯切れが悪いオールマイトに、妾はふむと少し考える。
(これは十中八九で、面倒事が起きる前触れじゃな)
まだ確定ではないが、その可能性は極めて高いと言ったところだろう。
そうでなければ用もないのに連絡などしてこないだろうが、正直時間が勿体ない。
「用件があるなら早う話すことじゃ。そうでなければ、切るぞ」
「わかった! 今話すよ!」
どうやら色々と事情があるようで、彼なりに思い悩んでいる様子が伝わってくる。
「タワーで行われるレセプションパーティーなんだが、キミたちは少し遅れて来て欲しい!」
「どういうことじゃ?」
妾がはてと首を傾げていると、彼は続きを話していく。
「もしかしたら、何か良からぬことが起きるかも知れない!
まあ、確証はないんだけどね! ハッハッハッ!」
何とも曖昧な用件だが、聞いている妾も嫌な予感がしてきた。
こういう直感は、過去に一度も外したことがないのだ。
とにかく全然嬉しくはないが、用件はわかった。
一応それとなく気を配っておくことを伝えて、イズクに通話を切ってもらうのだった。
オールマイトに言われた通りに適当に寄り道して時間を潰し、集合場所に少しだけ遅れて到着する。
不確定情報を伝えて不安を煽るわけにはいかないので、知っているのは妾とイズクだけだ。
なので遅刻を責められるのを覚悟していたが、どうやら遅れてきたのは妾だけではなかったらしい。
女子は化粧や着替えに時間がかかるし、今回は着慣れていないドレスである。
ある意味では仕方ないと言えるので、最後にメリッサさんが到着するまでそういう雰囲気で流された。
しかし爆豪少年と切島少年は遅刻どころか連絡がつかないとは、如何なものかである。
そんなことを考えていると突然、大音量で放送が流れた。
「I・アイランド。管理システムよりお知らせします。
警備システムにより、I・エキスポエリアに、爆発物が仕掛けられたという情報を入手。
I・アイランドは、現時刻を持って、厳重警戒モードに移行します」
何とも厄介なことになったようだ。
しかし恐らくこれが、オールマイトが妾に連絡を入れた理由だろう。
遅れてくるようにと指示したのは、二方面作戦を狙っているのだと容易に予想がつく。
取りあえず緊急事態ゆえに実体化して地面に降り立ったが、タワーの隔壁が下りるのを呑気に眺めていた。
「師匠! これは一体!?」
「ヴィランに襲撃された可能性が高いと、そう考えるべきじゃろうな」
オールマイトは、確証を得られていないようだった。
なので詳しいことは教えてくれなかったが、今回のような傍迷惑なテロ行為をするのは大抵がヴィランだ。
そう考えておけば間違いなしと思いつつ、妾なりの推論を口に出す。
「警備システムを掌握すれば、この島の全ての人々が人質になる。
ヒーローも迂闊には動けぬじゃろうし、本当に面倒なことになったのう」
心底嫌そうな顔でクソデカ溜息を吐いて、頭を軽くかく。
そしてどうしたものかと考え、ガックリと肩を落とす。
「妾は機械操作は苦手なのじゃ」
「師匠、スマートフォン使えませんものね」
「テレビのリモコンや炊飯器は大丈夫なのじゃが」
テレビのリモコンは、電源を入れて番組のボタンを押すだけだ。
しかしスマートフォンは、多機能すぎてどの項目をタッチすれば良いのかわからない。
最初は真面目に覚えようとしたが、操作している途中で面倒になって放り投げてしまい、それ以降はイズク任せになっていた。
「とにかく、今はそんなことより、これからどうするかじゃ」
妾もあまり自分が苦手なことを語りたくないので、早いところ話題を変えたかった。
すると轟少年が自分のスマートフォンを操作して、話に乗ってくれる。
「携帯が圏外だ。情報関係は、全て遮断されちまったらしい」
「エレベーターも反応ないよ」
「爆発物が設置されただけで、警備システムが厳戒モードになるなんて」
各々が現状を把握するために、色々調べたり考えたりしている。
そこでイズクが飯田少年に向かって、真っ直ぐに歩いていき口を開く。
「飯田君、パーティー会場に行こう。
会場には、オールマイトが来てるんだ」
皆、オールマイトが来ていることに安心したようだ。
しかし、妾としては嫌な予感しかしない。
何しろヒーローは、守るものが多くて大変なのだ。
先程も言った通り、島民全員が人質になれば迂闊に動けなくなる。
だが様子を見に行くのは悪くはなく、今の妾たちは少しでも情報が欲しかった。
「メリッサさん。どうにか、パーティー会場まで行けませんか?」
イズクがメリッサさんに尋ねると、彼女は少しだけ考えて真っ直ぐに見返す。
「非常階段を使えば、会場の近くまでは行けると思うけど」
色々悩みどころではあるが、一先ずは彼の安否を確認する。
あとは高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処することに、妾はたった今決めたのだった。
予想はしていたが、パーティー会場はヴィランに完全に占領されていた。
妾たちならば、蹴散らすのは容易い。
しかしその場合は島民に犠牲者が出てしまうし、プロヒーローたちもそれがわかっているので何もできないのだ。
(警備システムに拘束されて、脱出できぬわけではないじゃろうしな)
おまけに、タルタロスと同じ防災設計で建てられているらしい。
妾は実際に見たことはないので、ほーんとしか言えない。
あとはオールマイトは、逃げるように言ってきた。
しかし妾にはチラチラとアイコンタクトを送ってきたので、わざわざ口に出すまでもないだろう。
(つまり、妾がヴィランを倒さねばならんのか。めっ……面倒臭い!)
情報を整理するために、妾たちは一先ずヴィランが集まっているパーティー会場から離れて、適当な個室に移動していた。
そこで実体化しているのだが、壁にもたれて凄く嫌そうな顔の狐っ娘になっていた。
ついでに、この場の皆が今後について相談しているのを、我関せずで聞き流す。
殴って終わりなら楽で良いが、今回はそうではない。
まず機械は苦手なのに、島民を解放するために警備システムを正常に戻さないといけなかった。
さらに当たり前のようにヴィランが邪魔をしてくるので、そっちもボコらないといけないのだ。
本当にヒーローは守るものが多くて嫌になるが、かと言って見て見ぬ振りもできなかった。
妾がどうしたものかと大きく溜息を吐いて顔を上げれば、いつの間にかこの場の全員の注目が集まっていた。
口には出さないが、意見を求めていることがわかる。
ゆえに後方腕組み師匠ポジとしては、何も言わないわけにはいかない。
本当は気が進まないが、渋々提案を口にする。
「最上階に行くぞ。ヴィランの相手は妾に任せよ。
代わりに皆は、メリッサ嬢を守るのじゃ」
「「「はいっ!!!」」」
いつの間にか、師匠か教師のポジションになっていた。
この状況では仕方がないし、指揮系統もわかりやすい。
一応はプロヒーローの引率があれば戦闘行動も許可できるし、皆のやる気が高まるのだ。
それに妾が不在の間にヴィランに襲われないとも限らないので、この際なので全員まとめて面倒を見たほうが気楽である。
ならばI・アイランドの事件が片付くまでは、分不相応で小っ恥ずかしいがやむを得ないと、渋々リーダー役を引き受けるのだった。