近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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何だか知らんがとにかくヨシなのじゃ

 I・アイランドがヴィランに占領された。

 妾たちは警備システムを取り戻すために、最上階の制御ルームを目指すことになる。

 

 非常階段を登っていくのがプランAだが、手っ取り早く片付けるために妾はプランBを提示し、皆もそれに同意した。

 

 そういうわけで、邪王炎殺青龍波で隔壁をぶっ壊して外に出る。

 続いて全員をゴックンと飲み込ませ、一気に最上階までショートカットした。

 

 そのまま突っ込むぞ。掴まれ的なシチュを行いつつ、外から壁を破壊して二百階に突入する。

 

「さてと、最上階に着いたわけじゃが、予想通りじゃな!

 全員、妾の後ろに!」

 

 視界が塞がれているので青龍を解除すると、当然ながらヴィランが勢揃いしていた。

 この階に集まっているのは予想していたが、いきなり鉢合わせとは運がない。

 

「撃て! ガキどもを撃ち殺せ!」

 

 皆を妾の後ろに下がらせて、自分だけは庇うように前に出る。

 そして次々と飛んでくる無数の銃弾を、器用に指で摘んでいく。

 

「何っ!?」

「ばっ、馬鹿な!?」

 

 やがて、マガジンを撃ち尽くしたようだ。

 カチカチと引き金が鳴る音が聞こえ、妾は手で受け止めた弾を残らず地面に落とす。

 

「ふむ、こんなところか」

「なっ、なんて奴だ!?」

 

 続いて弾丸が落下した音が響く中で、妾はバトル漫画で覚えた適当な構えを取って、不敵な笑みを浮かべる。

 

「お返しじゃ!」

 

 先程の銃弾がスローすぎてアクビが出る速度で突進し、ヴィランたちを次々と殴り飛ばしていく。

 

 彼らはプロテクターを着用しているが、衝撃を殺しきれるわけもない。

 あっさりと全員が再起不能となった。

 

「甘いのう。ここは、妾の距離じゃ」

 

 イズクの半径10メートル以内にいたのが悪い。

 たとえ拳が届かなくても風圧で吹き飛ばし、背後の壁に激突させれば関係なかった。

 

 しかし安堵の息を吐いたものの、一難去ってまた一難だ。

 

 通路の向こうから騒ぎを聞きつけてすぐに増援がやって来ようとしているのを、狐耳が感知する

 

「やれやれ、キリがないのう」

 

 妾はどうしたものかと少し考える。

 突入した時に壁をぶっ壊したし、今も乱戦状態だった。

 ヴィランがここに集まってくるのも当然のことで、代わりに他が手薄になっていると予想できる。

 

 ならばと、メリッサさんに顔を向けて尋ねる。

 

「メリッサ嬢よ。制御ルームはここから遠いのか?」

「いいえ! すぐ近くよ!」

 

 ならば、やることは決まった。

 妾はメリッサさんだけでなく、道に迷っていたので回収した爆豪少年と切島少年、それに一年A組のメンバーに呼びかける。

 

「ここは妾とイズクに任せよ!

 他の者はメリッサ嬢と制御ルームに行け!

 警備システムを取り戻すのじゃ!」

 

 ここは俺に任せて先にいけ的なシチュは、オタクなら人生で一度は体験してみたいシチュである。

 

 そしてこの場の皆は、妾の指示に従ってくれたようだ。

 もう少し葛藤とかあっても良いとは思いはしたが、のじゃロリ狐っ娘がどうやっても負けるイメージが湧かなかったのだろう。

 

 とにかくあっさり彼らと別れて殿を務める妾とイズクは、ヴィランに取り囲まれて銃口を向けられていた。

 しかし、全く恐怖は感じていない。

 

「イズク、やれるな?」

「はい、師匠!」

 

 イズクはまだ少々ぎこちないが、恐れ知らずの笑顔を浮かべて力強く頷く。

 

「先に行った皆が心配じゃ!

 さっさと片付けて、妾たちも急ぎ向かうぞ!」

「はいっ!」

 

 妾は不敵な笑みを浮かべて呟くのと同時に、ヴィランたちはマシンガンを撃ってくる。

 そして再び、激しい戦いが始まったのだった。

 

 

 

 

 

 

 どれぐらい時間が経ったのか、ようやくヴィランの増援が投入されなくなる。

 なので妾とイズクは、メリッサさんとクラスメイトのあとを追った。

 

 すぐに中央エレベーターの前にある制御ルームに到着したが、そこで警備システムが通常モードに戻ったことを伝える放送が流れる。

 

 そして激戦の跡が色濃く残っている制御ルームに飛び込むと、何故か金属の壁や柱で仲間が捕まっていることに気づいた。

 妾はタケノコっぽい物を素手で引っこ抜いたり壊したりして、彼らを傷つけないように解放していく。

 

「状況はどうなっておる!」

 

 しかし、至るところに金属の壁や柱が乱立している。

 イズクも超パワーで強引にこじ開けたりして、捕らわれていた一年A組の生徒たちを自由にしていった。

 

「すまねえ! 博士がヴィランに攫われた!

 個性を増幅する装置も奪われちまった!」

「なんじゃと!?」

 

 切島少年が心底申し訳なさそうに説明してくれたが、数名はメリッサさんの護衛について、残りはこの場に残ってヴィランと戦っていたらしい。

 結果的にセキュリティは通常モードに戻ったが、敵は博士と個性を増幅する装置を奪って逃走するという、考えうる限り最悪の展開になってしまった。

 

「執事のおっさんは……一応無事だし、今はいいか!」

「何だか良くわからぬが、そういうことなら──」

 

 執事のおじさんは肩を撃たれて気を失っているが、一応は無事のようだ。

 

 そして今すぐ話すような内容ではないと判断したのか、妾は頭を抱えながらも超感覚でヴィランが逃げた方角の見当をつける。

 続いてイズクや他の者たちに、大声で呼びかけた。

 

「オールマイトの到着を待っている時間はない! 妾たちで救出するぞ!」

「はいっ! 師匠!」

「俺たちも行くぜ! もちろんいいよな!」

「やられっぱなしでいられるかってんだ!」

 

 本当に面倒なことになったが、ヴィランを見逃すという選択肢はない。

 それに事情は良くわからないけれど、博士を連れ去られたままにもできなかった。

 

 ぶっちゃけ情報が足りないため、同行は許可したくはないが一年A組の生徒たちに通路を走りながら聞く必要がある。

 妾が守れば問題ないという結論になる。

 

 それでも面倒だからマジで勘弁してくれと思う。

 取りあえず制御ルームのメリッサさんと倒れている執事の護衛を半数を残し、タワーのヘリポートを目指して急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 やはり最上階のヘリに乗って逃げるようだ。

 飛び立つ直前にギリギリ追いつくことができたが、ヴィランのやることは基本的に悪いことであった。

 

 ゆえに奴らが何かを仕掛ける前に、先手必勝で潰しておくに限る。

 妾は彼らがこちらに気づき、ちょうどヘリに乗り込む直前に右手を構えて大声で叫ぶ。

 

「悪いが、博士を返してもらうぞ! ヴィランよ!

 隠者の青(ハーミットブルー)!」

 

 妾の右腕から茨が急激に伸びて、油断していた彼らの横を抜けてヘリに寝かされている博士に巻きついた。

 

 それを手元に引き寄せることで、あっさり人質を取り戻す。

 

「ヒーローは守るべき者が多くて、不自由じゃからのう!

 これぐらいの不意打ちは、許されるじゃろう!」

 

 何やら怪我をしているようなので、すぐに隠者の青(ハーミットブルー)を解除して同行している一年A組の生徒に預ける。

 

「まさか卑怯とは言うまいな! ヴィランよ!」

「この! クソヒーローが!」

 

 まさか速攻で取り返されるとは思っていなかったようだ。

 ヴィランのリーダーらしき仮面をつけた男が、悔しそうに返事をする。

 

「そして妾は! お前たちを逃がすつもりもない!」

 

 彼は怪我をしているようなので、簡易的でも良いので治療をしないと不味いだろう。

 妾はその場から動かずに、イズクに念話を送って波紋で回復させるようにと指示を出しておく。

 

 本当にヒーローは守る物が多くて大変だと思いつつ、まだヴィランが立ち直っていない間に、次なる攻撃を仕掛ける。

 

法皇の青(ハイエロファントブルー)!」

「不味いっ!」

 

 高速で青い宝石を射出したが、ヴィランのリーダーは慌てて金属を変化させて巨大な壁を作る。

 

 だが、その程度で防げるはずがない。

 相手が守りを固めるなら、その分だけ手数を増やせば良いのだ。

 

「馬鹿な!? 俺の防壁が破られるだと!?」

「いつまで耐えられるかのう?」

 

 妾は絶えず射撃を続けながらも、さらに青龍を展開して飛び上がったあとに備える。

 

 するとヴィランの防壁を三つほど破ったあとに、プロペラの回転音が聞こえて上昇を開始した。

 

 すぐに邪王炎殺青龍波で撃ち落とそうとしたが、狐耳の感知に反応があったので解除する。

 

「師匠! どうして!?」

「妾たちの出番は終わりのようじゃぞ」

 

 そう言って、飛び去っていくヘリを眺める。

 そのすぐあとに、オールマイトが跳躍だけでタワーの壁面を駆け上ってきた。

 

「もう大丈夫! 何故って! 私が来たぁ!」

 

 空中でポーズを取りつつヘリコプターに追いつくと、渾身の一撃を放つ。

 

「親友を傷つけた! 礼をさせてもらうぞ! ヴィランよ!」

 

 当然のようにヘリがオールマイトの超パワーに耐えられるはずもなく、爆発四散してしまう。

 

 それで再起不能になってくれれば楽で良いのだが、ヴィランはなかなかにしぶといようだ。

 

 屋上に落下して火に焼かれながらも、個性を使用して己を守る。

 さらに高速で金属の柱を伸ばして攻撃しつつ、博士を連れ去るためにコードのようなモノを生み出す。

 

 地下からコッソリ近づいてきたので、妾が断固阻止である。

 

「のじゃあっ!!!」

 

 右足で勢い良く地面を踏みつけ、衝撃波を発生させた。

 これで地下から伸びてきたコードは、完膚なきまでに粉砕する。

 

 そしてオールマイトを狙ったバカでかい柱は、両手を合わせて狐火を収束して一気に放った。

 

魔術師の青(マジシャンズブルー)!!!」

 

 ホースの水を絞って一気に放出したような、高威力の狐火の使い方だ。

 原作と違って色は青だが、妾のそれは金属の柱を呆気なく焼き尽くした。

 

 これにはヴィランはちょっとビビったはずだが、のじゃロリ狐っ娘ばかり構ってはいられない。

 

 オールマイトも今の不意打ちで、敵がまだ健在だということに気づいたようだ。

 注意をそちらに向けて、立ち上がる。

 

「ちいっ! オールマイトは個性が減退して! 往年の力がなくなったとか言ってた癖に!

 代わりに、厄介なヒーローが出てきやがったな!」

 

 炎の中から現れたヴィランは、仮面が外れていた。

 代わりに頭にへんてこな装置をつけているが、何よりも異常なのは広範囲の金属を操作していることだ。

 

 先程とは違い、生命エネルギーが桁違いに高まっている。

 だがオールマイトは恐れることなく、勢い良く飛び出して構えを取った。

 

「往生際が悪いな! テキサースッ!!! スマーシュッ!!!」

 

 ヴィランに渾身の一撃を叩き込もうとするが、残念ながら分厚い壁に阻まれて届かない。

 

「何っ!?」

「何だぁ! それは!」

 

 さらには動きが止まった一瞬の隙を突かれて、多方面から伸びてきた柱に叩き落される。

 

「流石はデヴィットシールドの作品! 個性が活性化していくのがわかる!」

 

 ヴィランは周囲の金属を際限なく取り込んで、ひたすら巨大化していく。

 

 妾はその様子をのんびりと眺めながら、どうしたものかなと思案する。

 

 いくら敵がパワーアップしても、結局やることは変わらない。

 問答無用でぶっ飛ばすだけだ。

 奴に関しては、見逃すという選択肢はない。

 

「ふはははっ! いいぞ! これは! 良い装置だ!」

「こっ、これが! デイヴの!」

「パパの作った、装置の力!」

 

 誰もが絶望に染まり、新しいタワーのように巨大になっていくヴィランを見ていることしかできない。

 

 なお、妾は相変わらずのんびりしている。

 自分の役目は終わったのでくつろいでいるだけで、ナンバーワンヒーローもいるし積極的に手伝おうとは思わない。

 

「さあて! 装置の価値を釣り上げるためにも!

 オールマイトをぶっ倒すデモンストレーションと行こうか!

 それと! 俺を散々コケにした! そこのヒーローもな!」

「妾もか?」

 

 どうやらヴィランに、完全にロックオンされたようだ。

 オールマイトが来ればお役御免かと思っていたのに予定が狂った。

 これではいつ火の粉が飛んでくるかわからず、星空を眺めながら一眠りすることもできない。

 

「はぁ、仕方ないのう」

 

 妾はヴィランの攻撃を頑張って回避しているナンバーワンヒーローに、大声で呼びかける。

 

「オールマイトよ! 加勢は必要かのう!」

「確かに! 私は今! ちょっとだけ困っている!

 手伝ってくれるとありがたいね!」

 

 オールマイトに呼ばれたからには、見物しているわけにはいかない。

 彼がやられたら、次の標的は妾なのだから。

 

 あとは余裕ができたら狙われる可能性もあるため、ここは協力してさっさと倒してしまうに限る。

 

 イズクにも聞こえていたので、決意を秘めた顔で前に出たきた。

 だがそこで、妾はふと気づく。

 

「ちょっと待て。お主らも行くのか?」

 

 イズク以外にも一年A組の生徒たちが、ズラリ勢ぞろいしていたのだ。

 

「えっ? 加勢が必要なんだよな?」

「苦戦してるんだろ? 力を貸すぜ!」

「この期に及んでは、見て見ぬ振りはできませんわ!」

 

 これは妾を指名しなかったオールマイトの痛恨のミス、……ということにしておく。

 

 しかし今から説得するのは面倒だし、きっと言っても聞かないだろう。

 妾は大きな溜息を吐いて、後方支援なら別に良いかと考えを切り替える。

 

「まあ良い。博士とメリッサ嬢の護衛が最優先じゃからな」

 

 もっとも不味いのは、ヴィランに人質を取られることだ。

 なので、そこだけは再三気をつけるようにと伝えておく。

 

 そしてオールマイトの動きと目線から、早く来てー早く来てーという雰囲気を感じ取った。

 

 妾はイズクに念話を送って指示を出し、跳躍して一気に距離を詰める。

 ついでに右手を大きく振り上げて、ナンバーワンヒーローに迫っていた柱を粉砕する。

 

「のじゃあっ!!!」

山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)ーッ!!!」

 

 複数の金属の柱を妾とイズクで破壊していき、やがてオールマイトの近くに華麗に着地する。

 

「待たせたのう!」

「本当にね! もっと早く来て欲しかったよ!」

「仕方あるまい! こっちも色々事情があったのじゃ!」

 

 呑気に話しているが、ヴィランの攻撃を避けたり破壊したりしながらだ。

 それでいて、三人は着実に敵との距離を縮めていく。

 

「さっさと! 潰れちまえっ!」

 

 今度は無数の柱が一気に迫ってきた。

 活動限界がある二人を一旦後方に下がらせて、妾が前に出る。

 

 この程度なら、何とでもなるはずだ。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」

 

 のじゃのじゃラッシュで、ヴィランの攻撃を真正面から粉砕していく。

 さらに最短ルートを通り、相手との距離を縮める。

 

 おまけに一年A組の援護もあるので、あと少しでヴィランをぶん殴れる位置まで来られた。

 

「観念せよ! ヴィランめ!」

「観念しろ? それはお前だ! ヒーロー!」

 

 妾が突っ込んで一発叩き込もうとした瞬間、四方八方から金属の網で絡め取られて動きが止められる。

 

 そこにさらに、ヴィランが左腕を伸ばしてきた。

 何やら急激に太くなって、力を増しながら首を締めつけてくる。

 

「師匠!?」

「二つ目の個性だと!?」

 

 ヴィランは金属を操る個性だけでなく、もう一つ持っていたのだ。

 イズクやオールマイト、それに一年A組の皆が悲鳴をあげる。

 

 しかし妾はそれを冷静に分析し、不敵に笑う。

 

「ほう、筋力増強の個性か!」

「なっ!? 効いてないのか!?」

 

 左だけでなく右腕も伸ばして、妾に触れようとする。

 だがその前に霊体に戻り、金属の網の拘束から抜け出す。

 

「その通り! これっぽっちも効かぬのう!」

 

 そして再び実体化する。

 勢い良く体を一回転させて、ヴィランに強烈な踵落としを叩き込んだ。

 

「のじゃあっ!」

「がはあっ!?」

 

 そもそも妾とヴィランでは、生命エネルギーの桁が違う。

 たかが筋力を増強してマッチョになったぐらいでは、ダメージを受けるはずがない。

 

 象が蟻に噛みつかれても、痛くも痒くもないのと同じだ。

 

「どうせAFOの仕業じゃろうが、相変わらずろくなことをせんのう」

 

 人の嫌がることを率先してやるのが、AFOだと妾は認識している。

 今回の事件にも、裏から手を回していても納得である。

 

 しかもヴィランもまだ倒れていないらしく、無駄にしぶとい。

 

「ああ! この強奪計画を練っているとき! あの方から連絡が来た!

 是非とも協力したいと言った!」

 

 無駄に良く喋るなコイツと思いながらも、AFOの情報は貴重だ。

 ここは黙って聞くことにして、安全のために少しだけ距離を取る。

 

「何故かと聞いたら、あの方はこう言ったよ!

 オールマイトの親友が悪に手を染めると言うなら、是が非でもそれを手伝いたい!

 その事実を知ったオールマイトが、苦痛にゆがむ顔が見られないのが残念だけどねぇ!」

 

 AFOはマジで性格が歪んでいた。

 妾は内心でキッショッとドン引きしつつも、あくまで冷静に状況を観察する。

 

「ようやくニヤケ面が取れたか! ヒーロー! はーはっはっはっ!!!」

 

 悪の帝王の陰湿な性格にちょっと引いたのが、表情に出てしまったようだ。

 ヴィランは、嬉しそうに大笑いしている。

 

 すると今度は四方八方から、巨大なブロックが高速で接近してきた。

 

「さらばだ! ヒーローッ!」

 

 流石の妾でも全方位への対応は、やれなくもないが少々面倒だ。

 なのでこの場に居る二人に、大声で呼びかけた。

 

「イズク! オールマイト! やるぞ!」

「はいっ!」

「おうっ!!!」

 

 普通のプロヒーローなら、為す術もなく圧死するだろう。

 そして妾だけなら霊体化するという手段が使えるが、この場には二人もいる。

 

 避けるという選択肢はなかった。

 ならばどうするかと言うと、近接パワー型のじゃロリ狐っ娘がやることは一つだ。

 

「のじゃあっ!!!」

「なっ!?」

 

 まずは一番近いブロックをぶん殴り、たったの一撃で粉砕する。

 だがまだまだ数が多く、他の二人も加わって残りも手早く処理していく。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」

「オラオラオラオラッ!!!」

「スマスマスマスマッ!!!」

 

 ヴィランが飛ばしてきた巨大ブロックを破壊していき、やがて最後の一つを粉々に吹き飛ばした。

 なお途中でイズクが装着しているガントレットが壊れたが、致し方ない犠牲である。

 

 とにかく攻撃が止んだ瓦礫の中央で、無傷の三人がヴィランを見て不敵に笑った。

 

「馬鹿なああああっ!?」

 

 あまりの有り得なさに、ヴィランが絶叫している。

 しかしオールマイトは、二人のラッシュに倣って叫び声を即興で考えたのだろうが、もう少し何とかならかったのかと、内心でちょっとだけツッコミを入れた。

 

 まあそれはそれとして、敵はまだ健在である。

 

「このヒーローどもがぁ!」

 

 ガチギレするヴィランだが、目の前の男をぶっ飛ばすのは確定した未来だ。

 今さら躊躇ったりはしないので、妾は急速接近して勢いのままに右ストレートを叩き込む。

 

「のじゃあっ!!!」

「ぐはああっ!?」

 

 だが相手はAFOに調整されたヴィランだ。

 咄嗟に金属の鎧で守ってダメージを軽減したようで、一発では足りなかった。

 

 ならばと、妾は頼りになる仲間たちに大声で呼びかける。

 

「もう一息じゃ! パワーを妾に!」

「「「いいですとも!!!」」」

 

 実際には違う言葉だろうが、妾にはそのような空耳が聞こえた。

 そしてその場のノリでの発言でしかなく、パワーを譲渡できるはずもない。

 

 しかし、明らかにおかしなことが起きていた。

 

(おおっ!? 何故かは知らぬが、力が溢れてくるぞ!?)

 

 いつの間にか屋上には、他にも大勢のプロヒーローが駆けつけ、その他にも勇気ある人々が大勢集まりつつあった。

 

 通信障害も厳戒モードも解除され、地上や近くのビルからタワーの様子を見ている者も多い。

 

 まあつまり、妾の行き当たりばったりのネタ台詞や映像は、I・アイランド中に拡散されてしまったのだ。

 

 しかし、今さら引っ込みがつかない。

 おまけに原因はわからないが、大勢の人たちからほんの少しずつだが力を分けてくれているのだ。

 

 なので妾は内心ではヤケクソではあるものの、両手を空に掲げて独特の構えを取って続きを叫ぶ。

 

「大地よ! 海よ! そして生きている全ての者よ!

 この妾に! ほんのちょっとずつだけ、元気をわけてくれ!」

 

 すると、さらに温かな生命エネルギーが流れ込んでくる。

 

 まるで意味がわからないが、世界的な恥をかかなくて済んだことだけはマジで助かった。

 

 また動けずに隙だらけであったが、チャージ時間はオールマイトや一年A組の皆、さらに駆けつけたプロヒーローたちが、十分に稼いでくれる。

 

 そうこうしているうちに巨大な玉ができあがり、妾はヴィランに狙いを定めた。

 

「できたぞ! 皆、下がれっ!」

「やらせるかあああっ!!! お前ら全員!!! タワーごと潰れろおおおっ!!!」

 

 元気玉は、まるで太陽のように眩く暖かな光を放っている。

 ヒーローたちが全員退避したのを確認した妾は、それを勢い良くヴィランにぶん投げた。

 

「元気玉じゃぁ!!!」

 

 往生際が悪く、まだ何かしようとしたようだ。

 しかしもはや超巨大なブロック程度では、止められるはずもない。

 

 あっさり消し飛ばされて、その奥のヴィランは青い光に包まれたのだった。

 

 その後の結果と言うと、ヴィランは死にはしないが再起不能になる。

 妾にその気がなかったとしても、良く死ななかったなとは思うがタワーは崩壊寸前だ。

 

 色んな意味で、周辺の被害が酷えことになったのだった。

 

 

 

 

 

 

 個性増幅装置の強奪事件は、無事とは言わないが幕を閉じた。

 

 そして今回の件だが、博士は強奪計画を中断しようとしていたが、ヴィランはとっくにI・アイランドに上陸してしまっていた。

 今さらなかったことにはできないと言われ、デヴィット博士は偽者だと信じていたようだ。

 しかしオールマイトは経験から本物の可能性があると判断し、なるべく被害が出ないように警戒を怠らず、計画通りに進めることに決める。

 

 一網打尽にする絶好の機会なのもあったのだろうが、時間的に対処は難しい。

 

 なので彼らの意識の外にいる妾に裏で動いてもらい、ヴィランの隙を作ることに決めた。

 

 結果だけを見れば、指名手配犯をI・アイランドに誘い込んで協力して逮捕したと言えなくもない。

 

 さらに個性増幅装置を破壊して、世に出るのを未然に防いだ。

 アレが量産されたら社会システムが容易く崩壊してしまうので、ぶっちゃけ存在しないほうがいい。

 

 世間一般には明らかにされておらず、せいぜいヒーローが協力してヴィランを倒した程度だ。

 

 

 

 つまり、世界的なトップヒーローであるオールマイトが頑張って、今回の一件は博士がヴィランを一網打尽にするための大作戦。……ということになったのである。

 

 個性を増幅する装置は最初から存在せず、凶悪なヴィランを釣り上げるための餌だ。

 

 彼が装着するとピカピカ光るだけの装置を頭部に装着し、勝ち誇っていた。

 それは完全な思い込みだが、限界以上の力を引き出せたので馬鹿にはできない。

 

 なお博士はもっとも危険な黒幕兼人質役を買って出て、大勢を巻き込んだのは褒められたことではないが、結果的には犠牲者も一人も出さなかった。

 あとは秘書の人もいたりいなかったりと良くわからないが、問題はないらしい。

 

 その際に博士は瀕死の重傷を負ったが、凶悪なヴィランを逮捕できたのだ。

 世間は彼の善性や勇気を称賛するように、平和の象徴であるオールマイトが色々と手を回してくれた。

 

 全体の流れはあながち間違いではないし、妾は別に興味もない。

 

 なので終わり良ければ全てヨシと、適当に流して博士とメリッサさんとお別れし、イズクと共にさっさと日本に帰国する。

 

 外国の食事も良いが、そろそろ地元の飯屋の稲荷寿司やキツネうどん、その他の油揚げ系の和食を久しぶりに食べたくなってきた。

 そういう意味でもやはり、I・アイランドに長く留まる気にはなれないのだった。

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