近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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イズクvsマスキュラーなのじゃ

 出水洸汰少年が居そうな場所には、心当たりがあった。

 合宿所も候補の一つだが、どちらを先に探すかで迷う。

 

 しかし直感では秘密基地に居そうな気がしたので、多分そっちが正解だ。

 幸いそこまで遠くないので、すぐに見えてきた。

 

 彼の気配も感じ取ることができたが安堵するのは早く、同時に招かれざる客も存在することに気づく。

 

「イズク!」

「はい! 師匠!」

 

 以心伝心とはいかないが、イズクとの付き合いは長い。

 妾が何を言いたいのか、念話を使わなくてもすぐに理解してくれた。

 

 なので、ある程度近くなったら飛び降りてすぐに青龍を消す。

 

「洸汰君から! 離れろおおおーっ!!!」

 

 自分よりも、イズクのほうが堪忍袋の緒が切れていたようだ。

 瞬時に波紋疾走(オーバードライブ)に入り、ヴィランらしき大男に向かって真っ直ぐに落下していく。

 

 すると敵もこちらに気づいたようで、何故か満面の笑みを浮かべて迎え撃ってくる。

 

「会いたかったぜぇ! 狐えええええっ!!!」

 

 どうやら筋肉を身に纏う増強個性のようだ。

 イズクの山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)と真正面から激突しても、周囲が吹き飛ぶだけで一歩も引かない。

 

 しかし、洸汰少年から注意が外れて隙ができた。

 と言うか巻き込まれて飛ばされていたので、妾は隠者の青(ハーミットブルー)を伸ばして巻きつけ、速やかに保護して手元に引き寄せる。

 

 

 

 そして、双方の拳は互角だったようだ。

 反動の衝撃で地面が大きく陥没して、両者の体が吹き飛んで後方に下がる。

 

「イズク! 目的は達成した! 洸汰少年を連れて、速やかに離脱を──」

「いえ! まだです! 師匠! ヴィランを野放しにはできません!」

 

 確かにその通りだが、時と場合によりけりだ。

 今現在、増援のヒーローたちがこの場に急いで向かっているが、一箇所にまとまったほうが守りやすい。

 

 そして妾の目的は、洸汰少年を保護して安全な場所に送り届けることだ。

 野放しにできないは正しいが、目の前のヴィランを捕縛することではない。

 

 しかし、弟子が師匠の意見に反論するのはとても珍しかった。

 これまで何事もおんぶに抱っこで、妾の面倒は増えるばかりで減ることはなかったのだ。

 

 だがイズクは、親鳥の後をヨチヨチ歩きで付いてくる雛ではない。

 ちゃんと意志のある人間なので、自主性は大切に育てていくべきだ。

 

(明らかに妾に依存しすぎておるしのう。自立を促すのも良かろう)

 

 しかし、約三年もかけてイズクを肯定し続けたのじゃロリ狐っ娘である。

 そう簡単に師匠離れするとは思えないし、あまり強く突き放すと嫌われそうだ。

 

 なのこういう機会を逃さずに、少しずつでも自立を促すのが良いと判断する。

 

 

 

 妾は少しだけ考えて、洸汰少年を安全な場所に下ろしてイズクに手を伸ばした。

 

「スマートフォンを貸すのじゃ。五分だけ待ってやろう」

「ありがとうございます! 師匠!」

 

 イズクと洸汰少年は、同じ師匠に憧れているようだ。

 秘密基地で親睦を深めていたので、そんな友人を害するヴィランは許せなかった。

 

 絶対に自分の手で倒してやると怒りに震えており、さらにヒーローらしい義憤も上乗せされている。

 

 

 

 妾のほうが冷静だが、薄情とも言える。

 とにかく弟子からヒビは入っているが、辛うじて動いているスマートフォンを渡してもらう。

 

 そしてタッチして、現在時刻を確認した。

 

(しかし、壊れておらんで良かったのう。

 これなら電話で連絡が来るし、プロヒーローの護衛もおる。

 ヴィランも、迂闊には手出しできまい)

 

 だが、もし五分過ぎたら無理やりでも止めに入る。

 自分が筋肉ヴィランをボコボコにするつもりだが、それまではイズクに好きにやらせるつもりだ。

 

 弟子が己の意地を通そうと大声で叫ぶのを、後方腕組み師匠として黙って見守る。

 

「大丈夫だよ! 洸汰君! 必ず助けるから!」

「必ず助けるって? ははははっ! 流石はヒーロー志望者って感じだな!」

 

 大男のヴィランは何がおかしいのか、イズクの発言に大笑いしている。

 

「何処にでも現れて、正義面しやがる。

 緑谷って奴だろう? お前。ちょうどいいよ」

 

 ヴィランの右腕が、再び無数の筋繊維をまとって戦闘態勢に入った。

 

「お前は、率先して殺しとけってお達しだぁ!

 じっくりいたぶってやりてえが! 狐が控えてるんでなぁ!

 最初から、本気でいくぜぇ!!!」

 

 イズクは、勢い良く飛びかかってくるヴィランを迎え撃つ。

 波紋疾走(オーバードライブ)を維持しつつ地面に吸着し、凄まじいラッシュを繰り出した。

 

「血を見せろやぁ!!!」

「オラオラオラオラァ!!!」

 

 一撃が重いヴィランと、軽いが手数で圧倒するイズクの打ち合いだ。

 どちらも一長一短ではあるが、弟子は(りゅう)を修得している。

 

 防御も回避も前よりも格段にうまくなっており、そう簡単には倒れない。

 だが致命傷ではないが、いくつか掠ってしまう。

 

 イズクは僅かだが傷を負ってしまい、態勢を立て直すために一旦距離を取った。

 

「ははははっ! 血だ! いいぜ! 楽しいな!

 何だっけ! 必ず助けるんだろう!」

「……コオオオオ!!!」

 

 ヴィランも決して少なくはない、手傷を負っている。

 しかし、興奮して脳内麻薬が出ているのだろう。

 全く気にしておらず、好き勝手なことを言っていた。

 

 その間にイズクは意識を集中して波紋の呼吸を整え、少しでも傷の回復を促す。

 

「お前の個性は、いい速さだが! 力が足りねえ!」

 

 ヴィランの筋繊維が数を増して、体全体が太く大きくなる。

 そして勝ち誇った笑みを浮かべ、続きを話していく。

 

「俺の個性は筋肉増強! 皮下に収まんねえ程の筋繊維で、底上げされる速さ! 力!

 何が言いてえかって? 自慢だよ! つまりお前は俺の! 完全な劣等型だ!!!」

 

 先程よりも遥かに速く、重い一撃が放たれた。

 イズクは迷わず回避し、妾も洸汰少年をお姫様抱っこしてこの場を離れる。

 

(空のほうが安全じゃな。洸汰少年には悪いが、しばらく我慢してもらおう)

 

 地上では、激しい打ち合いが起きている。

 地面が破壊されたりえぐれたりと、周辺被害がとんでもない。

 

「わかるか! 俺の気持ちが! 笑えて仕方ねえよ!

 必ず助ける? どうやって! 実現不可の綺麗事! のたまってんじゃねえよ!」

 

 イズクはヴィランの猛攻を落ち着いて避けているが、一見すると防戦一方で情けなく映るかも知れない。

 

 だが手数は少ないが着実にダメージを与えていき、敵はまだ己が弟子の術中に嵌っていることに気づかないようだ。

 

「自分に正直に! 生きようぜええええっ!!!」

 

 再び手傷を負って距離を取ったイズクに、ヴィランが完全勝利を確信して大声で叫ぶ。

 

 だがそれは、弟子も同じだ。

 コオオオという効果音が見えそうなほど、波紋の呼吸が整えられる。

 生命エネルギーが急激に高まっていき、マスキュラーを打ち倒すための最後の仕上げに入った。

 

「ヒーローは! 命を賭して! 綺麗事を実践する仕事だ!

 そして僕は! 師匠の弟子であることを! 誇りに思っている!」

 

 準備が整ったのか、イズクは陥没するほどの力で地面を蹴った。

 そして勢い良くヴィランに向かって、右腕を振り上げる。

 

「ヴィラン! これが僕の生き方だ!」

 

 当然のように、迎え撃つために筋繊維の鎧を纏おうとする。

 だがヴィランは上手く操作できずにあちこち穴らだけで、特に一部は殆ど丸裸になってしまう。

 

「なっ!? 俺の個性が!? てめえ! 何しやがった!」

 

 しかしイズクは答える気はなく、不敵な笑みを浮かべて必殺の一撃を繰り出そうとする。

 

「震えるぞハート! 燃えつきるほどヒート!

 おおおおおっ! 刻むぞ血液のビート!」

 

 散発的に攻めて、手も足も出ないように見えたのは囮だ。

 最初からコレを狙っていたのである。

 

 気づかれないように腹部に集中攻撃し、今は筋肉の鎧はすっかり剥がれ落ちた。

 ヴィランの腹部は、完全に無防備になっている。

 

 イズクはそこを目がけて、勢い良く拳を繰り出して叫んだ。

 

「「山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)ーッ!!!」」

 

 そして、オールマイトを越えるかも知れない渾身の一撃が叩き込まれた。

 

 いや、正確には二発だ。

 

 瞬間的に波紋疾走(オーバードライブ)100パーセントを越えたことで、幽波紋(スタンド)が実体化していた。

 若かりし頃のオールマイトが、イズクと同じように力強く拳をめり込ませている。

 

 ジョジョでもたまに喋る幽波紋(スタンド)が出てきたが、それは非常に珍しいパターンだ。

 妾は歴代継承者の個性が各々の意志を持っているのは知っており、一応慣れてはいる。

 

 だがこれには洸汰少年は、大いに驚いて叫び声をあげていた。

 

「喋ったあああああ!!?」

「ふむ、あの幽波紋(スタンド)も、喋るのじゃな」

 

 この間、七代目と話したばかりであったが、確かオールマイトの幽波紋(スタンド)に意識は芽生えていなかったはずだ。

 ならば、一時的にイズクとシンクロして叫んだのかも知れない。

 

 その一方でヴィランは、同時に二発の拳を無防備な腹部に叩き込まれた。

 穴の空いた鎧では、攻撃を防げない。

 彼は悲鳴をあげることもできず、白目をむいて地面に陥没する。少なくないダメージを受けたのは間違いない。

 

 ぶっちゃけ生きているのが不思議なぐらいだが、もはや目が覚めても再起不能は間違いないのだった。

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