近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
今こそ反撃のときなのじゃ
妾たちはヴィランを倒し、洸汰少年を助け出した。
しかし運悪く、スマートフォンは壊れてしまう。
ただし受け取ったときには、液晶はちゃんと点灯していた。
問題は大男を拘束したあとで、もう一度タッチしたがうんともすんとも言わないのだ。
最新機器が苦手な妾が触ったからではないが、自分が壊したと思われても仕方がない。
とにかく、じっとしてても状況は好転しない。
捕まえたヴィランと保護した洸汰少年を連れて、急ぎ別れた場所に戻る。
だが何故か、皆の表情は暗かった。
理由を聞くと凶悪なヴィランの集団に襲われて、必死に守ろうとはしたが一瞬の隙を突かれて、爆豪少年を攫われてしまったらしい。
これを聞いたイズクの表情が明らかに曇る。
あそこで一対一の勝負にこだわらなければ、爆豪少年が拉致されることもなかった。
きっと、そう思ってしまったのだろう。
しかし相澤先生の説明を詳しく聞くと、妾たちが離れて間もなく襲撃されたのだ。
ヴィラン連合は、最初から綿密な計画を立てての犯行だった。
爆豪少年を確保したあと、形振り構わずに逃走したのがその証拠だ。
数名のヴィランを足止めとして用いて、付いてこられない者は置いていく。
やむを得ない事情か、最初から捨て石にする気だったのかはわからない。
一つ言えることは、妾が洸汰少年を保護して急ぎ帰還しても、結果はさほど変わらなかったことだ。
それに洸汰少年は確実にマスキュラーに殺されていた可能性が高く、助けに行かないという選択肢はなかった。
不幸中の幸いだが、怪我人は多くても重症者は出ていない。
ヴィランに攫われたのも爆豪少年だけで、他には行方不明者はいなかった。
それでも雄英高校の職務怠慢を責められても仕方ない結果だが、ワープゲートの個性を防ぐのはトップヒーローだろうと不可能だ。
しかしそれは言い訳でしかなく、どれだけ認めたくなくてもヴィランに完全にしてやられたのだった。
だが林間合宿では好き補題にされたように見えても、まだ完全敗北したわけではない。
八百万少女が離脱しようとした脳無に、発信機をこっそり取りつけたのだ。
そして位置情報を割り出すことに成功した。
ただし、そこに爆豪少年が居るかは不明だ。
けれど助けられる可能性が少しでもあるなら、諦めるにはまだ早い。
とにかく、こうして波乱の林間合宿は幕を閉じた。
しかし、本当の戦いがこれから始まる。
イズクが爆豪少年の奪還作戦にどうしても参加したいと言うし、妾も後味が悪い終わりは嫌だ。
それに。うっかり拉致された責任がなくもない。
相澤先生に頼み込んでメンバーの一人に入れてもらう。
こういうときには、プロヒーローの免許が役に立つのだった
翌日、各メディアでは雄英高校の失態で持ちきりになる。
拉致された爆豪少年の性格の悪さが、火に油を注いでいるのは明らかだ。
だからと言って、助けに行かない理由にはならない。
彼はイズクの幼馴染で、妾にとっての友人でもある。
それに責任を感じているため、今回は嫌々ではなく自分から志願した。
なお、相変わらずメディアではヒーローの責任を追求している。
揚げ足取りや視聴率稼ぎもあるだろうが、とにかく非難が酷い。
そういうニュースを見ていると、本当に国民は守ってもらう気があるのかと疑問に思う。
前世のヒーローものでは、世界を救った英雄をボロカスに叩くのは良くある。
さらには世界の敵認定されて、かつての仲間たちや民間人にさえ武器を向けられることもあった。
正直マジ勘弁だし、妾もそんな展開は嫌だ。
それを思い出すということは、この世界の人々はヒーローに対する風当たりが強く、民度は決して良くはないということである。
今やっている報道でありありと見せつけられ、やはりヒーローは絶対になりたくない職業だと、再度決意を新たにしたのだった。
しかし気になるのが、襲撃してきたヴィランたちが利用している可能性が高い施設だ。
もう一つ、八百万少女の発信機の反応がある施設が異なる。
そのどちらかに、爆豪少年がいるかも知れない。
だが、どうにも絞り込めない。
妾の直感では、隠れ家的なバーが怪しい。
けれどもう片方も、危険な匂いがプンプンしてくる。
つまり突入するなら、二つ同時が望ましいわけだ。
ヒーローと警察も、同じ判断を下した。
同じく合宿に参加した一年生も奪還作戦に行きたそうだったが、突入先で何が出てくるかわからない。
場合によっては、AFOの妨害もあるかも知れないし、脳無との戦いも予想される。
ヒーロー候補は成長しているが、プロと比べるとまだ実力不足だ。
取り返しのつかない大怪我を負ったら困るし、絶対に駄目だとお断りさせてもらうのだった。
そのように、色んな事情や思惑がある。
だが、妾がすることは至って単純明快だった。
邪魔するヴィランを叩き潰して、爆豪少年を助け出す。ただそれだけである。
手の届く範囲の人たちを助けるのはいつものことで、結局やることは変わらないのだ。
それに、ここで師匠らしいところを見せないと弟子に失望されかねない。
家事手伝いしか取り柄のない、のじゃロリ狐っ娘だと格下認定されてしまう。
将来的には専業主婦も良いし、妾も望むところだ。
しかし、まだイズクが独り立ちしていないのにそれは不味い。
引子さんにもよろしく頼むと言われているし、取りあえず彼がプロヒーローになるまでは、後方腕組み師匠ポジを維持するつもりだ。
ちなみに今は、作戦会議の真っ最中だ。
とある建物を間借りして、有名なプロヒーローたちがズラリ勢揃いしていた。
「何で俺が雄英の尻拭いを。こちらも忙しいのだが?」
トップヒーローのエンデヴァーが、不満そうな顔をして愚痴をこぼす。
「まあそう言わずに、貴方もOBでしょう」
モニターの向こうには、ベストジーニストが映っている。
別々の場所から会議に参加していた。
妾とイズクは、塚内直正さんと一緒に行動している。
参加メンバーの中でも一番の新参者なので、大人しく座っておく。
「雄英からは今、ヒーローを呼べない。
大局を見てくれ、エンデヴァー」
舌打ちするエンデヴァーだが、本心ではわかっているのだろう。
それに関しても文句は口にせず、黙って彼の言葉を聞く。
「今回の事件は、ヒーロー社会崩壊のキッカケにもなりうる。
総力を持って、解決に当たらねば」
続いてベストジーニストが、爆豪少年について語る。
彼なら確かに本当に暴れていそうだし、それを見逃すヴィランかは微妙なところだ。
「生徒が仕掛けた発信機では、アジトは複数存在すると考えられる。
我々の調べで、拉致被害者が今いる場所はわかっている。
主戦力をそちらに投入し、被害者の奪還を最優先とする」
つまり妾とイズクは、当初の希望通りに爆豪少年の奪還メンバーに参加ということだ。
もしこれでもう片方のアジトに派遣されたら、わざわざ志願した意味がなくなる。
妥当な判断で、ありがたくもあった。
「同時にアジトと考えられる場所を制圧し、完全に退路を断ち、一網打尽にする」
今回の作戦にはグラントリノまで借り出されているので、ヒーロー側の本気が伺える。
AFOが動くと仮定して、最低でもこのぐらいの戦力は必要だと考えたのだろう。
「今日はスピード勝負だ! ヴィランに何もさせるな!
先程の会見! ヴィランを欺くよう、校長にのみ協力要請をしておいた!
さも難航中かのように、装ってもらっている!」
いよいよ作戦が開始される。
妾は呼吸を落ち着けて、イズクや他のヒーローと共に外に出る。
「あの発言を受け、その日のうちに突入されるとは思うまい!
意趣返ししてやれ! さあっ! 反撃のときだ!
流れを覆せ! ヒーロー!」
会議しているビルは、敵拠点からかなり近い。
命令があれば、今すぐにでも突入できる。
妾は少しだけ嫌な予感はするものの、何かあったらぶっ飛ばせばいいので問題なしと判断し、実体化して他のプロヒーローと一緒に外に出ていくのだった。