近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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救出作戦なのじゃ

 隠れ家的なバーに、ヴィランたちと爆豪少年が居るのは間違いない。

 

 既に宅配ピザを装い、入り口の扉の前から声をかけて注意を引いている。

 そして次の瞬間、外から壁をぶち破って突入を開始した。

 

 すぐにシンリンカムイが樹木の個性で、全ての敵を捕縛する。

 

 さらに炎で燃やされる前に、グラントリノが蹴りを叩き込んでダウンさせた。

 スピード勝負と言うだけはあり、文字通りでヴィランに何もさせずに片付く。

 

 妾は何も起きなくて良かったと、青龍に乗りながらホッと息を吐く。

 

「流石若手実力派だ! シンリンカムイ! そして目にも止まらぬ古豪! グラントリノ!

 もう逃げられんぞ! ヴィラン連合! 何故って? ……我々が来た!!!」

 

 ババーンとヒーローたちが格好良く整列しているが、妾とイズクは青龍に乗って外で待機である。

 理由は広域戦闘が可能なのに、屋内では動きが制限されて十全に活かせないからだ。

 

 だがまあヴィランのアジトに横付けし、周囲に気を配っていれば良いので楽でいい。

 

 そして先程の見開きシーンの背景にも、ちょびっとだけ入っていた。

 わざわざアピールする気ないので、どうでもいいことだ。

 

「あの会見後に! まさか! タイミングを示し合わせて!」

 

 ヴィランたちが何やら喚いているが、無駄なことだ。

 ワープゲートの黒霧も掴まっているし、入り口もエッジショットと警察隊が固めている。

 

 外にはエンデヴァーを始めとする、手練れのヒーローたちが目を光らせていた。

 もはや、何処にも逃げ場はないのだ。

 

「怖かったろうに、良く耐えた! ごめんな! もう大丈夫だ! 少年!」

「怖くねえよ! 余裕だ! くそー!」

 

 取りあえず、爆豪少年は無事に保護されたようで何よりである。

 

 妾たちの出番はなかったが、ヒーローは暇を持て余すぐらいがちょうどいい。

 

「せっかく色々こねくり回したのに、何そっちから来てくれてんだよ! ラスボス!」

 

 死柄木弔が、憎しみを込めた視線をオールマイトに向ける。

 だがヴィランは全員押さえられて、簡単に逃げられる状況ではない。

 

「黒霧! 持ってこれるだけ! 持って来い!」

「脳無だな!」

 

 オールマイトだけでなく、他のヒーローも警戒する。

 ……しかし、何も起こらない。

 

「どうした! 黒霧!」

「すみません! 死柄木弔!

 所定の位置にいるはずの、脳無が! ……ない!」

 

 きっと、もう一つの拠点に脳無を待機させていたのだろう。

 ヴィランにとって予期せぬことが起きたということは、あちらに突入したヒーローが上手くやってくれたのだと、妾たちはそう判断した。

 

「やはりキミは、まだまだ青二才だ! 死柄木!

 ヴィラン連合よ! キミらは舐め過ぎだ!

 少年の魂を! 警察の弛まぬ捜査を! そして! 我々の怒りを!」

 

 オールマイトや他のヒーローも、かなり怒っているようだ。

 基本的にその場のノリで生きている妾は、責任問題を回避して友人が無事ならそれで良しである。

 

 しかしそれ以外の者たちから、ヴィランに向けられる威圧感が半端ではない。

 

「おいたが過ぎたな! ここで終わりだ! 死柄木弔!」

 

 今のオールマイトの怒りをまともに受けると、一般人は怖くて何もできなくなる。

 もしくは、オシッコをちびってしまうだろう。

 

 そのぐらい怒髪天で、絶対に逃がすものかという気迫を感じた。

 

 だからなのか、黙っていたヴィランが騒ぎ始める。

 しかしエッジショットによって気絶させられ、結局は何もできなかった。

 

「なあ死柄木。聞きてえんだが、お前さんのボスは何処にいる?」

 

 グラントリノが死柄木弔に尋ねると、何やらブツブツ呟き始める。

 世の中を憎んでいることが、良くわかった。

 

 だが妾はそこで第六感が反応し、珍しく慌てて右手を構えて大声で叫ぶ。

 

「お前が! 嫌いだーっ!!!」

隠者の青(ハーミットブルー)!」

 

 死柄木弔が絶叫するのと、妾が捕縛用の茨を伸ばすのはほぼ同時だった。

 

 黒いヘドロが爆豪少年の周囲に突然現れて、体を覆い尽くす前に捕獲する。

 そして、急いで強引にこちら側に引き寄せた。

 

「脳無!? 何もないとこから!?」

「何だアレは!?」

「エッジショット! 黒霧は!」

「気絶してる! コイツの仕業ではないぞ!」

 

 もはや一刻の猶予もないため、爆豪少年にへばりついている黒いヘドロを狐火で器用に焼却していく。

 

 黒霧の仕業でないとすれば、十中八九でAFOだろう。

 彼は悪の帝王の大切な駒で、ヒーローに捕まるのは非常に困るからだ。

 

「シンリンカムイ! 絶対に離すんじゃないぞ!」

 

 屋内は混沌としているが、妾も今はとても忙しい。

 それに、外にも混乱が広がりつつある。

 

「エンデヴァー! 応援を! ……なっ!?」

 

 応援を求めたシンリンカムイだったが、建物の外にも大量の脳無が湧いて出ている。

 それを見て、思わず言葉を失ってしまった。

 

 だがエンデヴァーは落ち着いて敵を焼きながら、避難区域を広げるようにと大声で呼びかける。

 

 何にせよ、非常に不味い状況と言えた。

 

「俊典! コイツは!」

「ワープなど持ってはいなかったはず! 対応も早すぎる!

 まさか! この流れを!」

 

 火傷をさせないように、付着した黒いヘドロだけを引き剥がして焼却するのは、なかなかに気を使う。

 しかし、これ以上混乱が広がるのは不味いので、イズクに声をかける。

 

「イズクはオールマイトたちの加勢を! ただし、あまり離れぬようにな!」

「了解です! 師匠!」

「くそっ! 俺も動ければ!」

「爆豪少年は最優先目標じゃ! ヴィランに奪われたら、妾たちの負けなのじゃぞ!」

 

 だから、決して奪われてはいけない。

 

 転移効果のあるヘドロを、念入りに焼いていく。

 イズクが屋内に突入して脳無と戦っているが、それを横目で見ながら治療を続行する。

 

 爆豪少年の気持ちもわからなくはないが、しかし彼が戦闘に加わったら、挑発されたエース状態になりそうだ。

 

「いいから大人しくしておれ!

 挽回の機会など、この先いくらでもあるわ!」

 

 全く世話が焼けると思いながら焼却を続けていると、あと少しで残らず取り除けそうだ。

 そんな妾はともかく、状況がまたもや変わった。

 

「不味い! 全員持っていかれるぞ!」

「私も連れて行けーっ!!! 死柄木ィー!!!」

 

 オールマイトが、急いでヴィランに走り寄る。

 だが残念ながら、あと一歩間に合わなかった。

 

「すみません! 皆様ー!」

「お前の手落ちじゃない! 俺たちも! 干渉できなかった!」

 

 シンリンカムイの謝罪を、エッジショットが訂正する。

 呼び出された無数の脳無と、苛烈な戦闘を続けていた。

 

「空間に道を開くワープゲートではなく! 対象のみを転送するゲートウェイだ!」

 

 そうこうしているうちに、ようやく爆豪少年の黒いヘドロを残らず除去できた。

 妾が注意深く見ても痕跡は残っていない。取りあえずは安心だろう。

 

「除去完了じゃ!

 さて、悪いが少々手荒になるぞ!」

 

 妾は呼吸を整えて感覚を研ぎ澄ませ、辺りをぐるりと見回して右手を天に掲げる。

 これ以上、奴らの好き勝手にさせるわけにはいかない。

 

 狐火を高密度で集めたあとに、大声で叫んだ。

 

龍星群(ドラゴンダイヴ)!」

 

 瞬間、巨大な青龍に姿を変えて天に登っていき、やがて夜空を明るく照らすほどの大爆発が起きる。

 

 そして今度は火の粉ではなく無数の小さな龍に変化し、地上に落下していった。

 それは障害物を器用に避けながら、脳無だけを狙い撃つ。

 

 銃弾すら容易く弾き返すヴィランの皮膚を貫き、容易く噛み砕いていく。

 情け容赦なく切り裂いて、ボロ雑巾に変えていった。

 

 まるでスパロボの、敵味方を識別する広範囲マップ兵器だ。

 そんな情け容赦のない攻撃が、突然脳無たちを襲った。

 

 そのまましばらく攻撃を続けたあとに、大きく息を吐いて右手を下ろす。

 

 続いてオールマイトに声をかける。

 

「脳無はあらかた片付けたはずじゃ。オールマイト」

「何かな?」

 

 バーの中の脳無は、プロヒーローたちが全て倒して拘束済みだ。

 生きてはいるがピクリとも動かない。

 

「因縁の相手なのじゃろう?

 妾はまだやることがあるゆえ、先に行くといい」

 

 先程は時間がなかったので、狙いを定める際に遮蔽物に隠れている脳無は攻撃目標には含まれていなかった。

 なので室内はともかく、外にはまだ多くのヴィランが残っているはずだ。

 

「……お狐様! 感謝する!」

 

 妾はうむと頷いたあとに、真面目なオールマイトに微笑みかけた。

 

「何なら妾たちが駆けつける前に、AFOを倒してくれても構わんぞ?」

「はははっ! それもそうだな!

 キミたちが来る頃には、全部終わっているかもね!」

 

 そう言ってナンバーワンヒーローとグラントリノは、他の仲間にもう一つのアジトに向かうことを告げる。

 

 そしてビルからビルに飛び移り、因縁の対決となるAFOの元に向かったのだった。

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