近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
最優先目標である爆豪少年を保護したので、まずは警察に預ける。
妾から見える位置の脳無は片付けたが、パッと見で物陰に隠れていた敵は倒せていない。
なので、なるべく迅速に片付けた。
その後は青龍に他のヒーローたちを乗せて、もう一つのアジトに急行する。
先にオールマイトとグラントリノが行っているので、運が良ければAFOを倒していてくれるだろう。
だがこれまで散々引っ掻き回してくれた、ヴィランのラスボスだ。
妾もせめて一発ぐらいは殴らないと、気が済まない。
そんなことを考えていたのだが、どうやら現在は状況は思っていた以上に悪いようだ。
神野区の敵アジト周辺は瓦礫すら吹き飛んで更地になっており、その中央で巨悪と対峙するオールマイトは傷だらけだった。
しかもマッスルフォームが解除されて、少しだけ痩せて超パワーが失われたトゥルーフォームになっている。
「どうして!? だって! まだ時間は!」
イズクが悲鳴のような声を出して、青龍に乗っている他のヒーローにも動揺が広がる。
きっと、あの姿を見るのが初めてなのだろう。
妾は想像になるが、多分間違ってはいないだろう直感で、素早く疑問に答える。
「人質を取ったのじゃ!
さすればオールマイトは限界以上の力を引き出し、守らざるをえぬ!
時間にならずとも、マッスルフォームを強制解除させるのは容易じゃろう!」
オールマイトの背後には、ビルの瓦礫に挟まれて動けない女性がいる。
彼は傷つきながらも必死に守っているのがわかる。
「正々堂々戦えば、オールマイトは決して負けぬ!
じゃが、流石はAFOじゃな! 小賢しい手を使う!」
しかも、近くにテレビ局のヘリが飛んでいる。
妾たちはもちろん、オールマイトのトゥルーフォームが報道されていた。
それを見越して、AFOは変身解除を狙ったのだろう。
流石がヴィランのラスボスだけであり、個人的には吐き気を催す邪悪だ。
幸いなのは、ガリガリに痩せたわけではないことだ。
せいぜい一回りか、二回りほど縮んだ程度である。
しかし、戦闘能力の大幅な低下は避けられない。
この状態で攻撃を受けたらタダでは済まないどころか、即死してもおかしくはなかった。
それなりに近づいたからか、AFOの叫びがここまで聞こえてくる。
「キミが僕を憎むように! 僕もキミが憎いんだぜ!
僕はキミの師匠を殺したが! キミも僕の築き上げてきたモノを奪っただろう?」
オールフォーワンが長ったらしく喋っているが、まだ距離が遠い。
急いでも間に合いそうにないので、妾は右手を構えて意識を集中する。
「だからキミには! 可能な限り! 醜く惨たらしい死を迎えて欲しいんだ!」
攻撃が来ることがわかっていても、オールマイトは避けられない。
今ここで彼が動けば、AFOが背後の人質を躊躇なく殺すことがわかっているのだ。
「キミが守ってきたものを! 奪う!」
「やらせるか!
タイミングとしてはギリギリだった。
しかし間一髪で間に合い、黒い衝撃波がオールマイトを吹き飛ばす前に、青い炎が激突する。
大爆発が起きて、土煙が盛大に舞った。
そこに妾たちが周囲の煙幕を吹き飛ばしながら彼らの間に割り込んで、青龍を消して地面に降り立った。
妾はナンバーワンヒーローを庇うように前に立ち、AFOに顔を向けて恐れ知らずの笑顔で口を開く。
「オールフォーワン。妾が来るのが、ちいと早すぎたかのう?」
ヒューという口笛が聞こえてきそうだ。
特に気の利いた台詞が思い浮かばなかったので、いつも通りネタに走らせてもらった。
すると彼は周囲の砂煙を、風を起こして吹き飛ばす。
そして殆どのっぺら坊だが、とても嬉しそうに返事をする。
「いいさぁ! 僕とキミの仲だ!」
彼と親睦を深めたいとは、微塵も思っていない。
だが何故か、AFOの好感度は異常に高いのだ。
あとは知らないはずなのにネタ台詞にネタ台詞を被せるのは、マジで止めて欲しい。
気づかずに流されるよりも羞恥心が高まるし、真面目モードへの切り替え時がわからなくなる。
「しかし、今の攻撃を相殺されたのは驚いたよ。
あのオールマイトでも、防ぐのに精一杯なのにさ」
妾は何処でシリアス展開に切り替えたら良いものかと迷いながらも、こうなったらトコトンやってやると悪の帝王とやり取りを続ける。
「じゃろうな。特にPRはしてないからのう」
妾は滅多にテレビに出ないし、ヒーロー活動もしてはいない。
予測は可能だとしても、AFOが驚いても不思議ではなかった。
恥ずかしいしそろそろ終わりたいので、強引に幕引きにかかる。
「最後じゃな。オールフォーワン。
お祈りの時間ぐらいは待ってやるぞ」
「ほう、気が効くねえ! 与一!」
後ろでイズクが波紋でオールマイトの傷を癒やしているので、こういう時間稼ぎも無駄ではないはずだ。
しかし、どうして妾が与一になるのかわからない。
困惑しているのは悟られるのは恥ずかしいので、無視して続ける。
「誰じゃろうと、死刑囚には優しいものじゃろう?」
「ふふふっ! しかし、今日! キミは僕のモノになるのさぁ!」
コブラっぽいやり取りをしたあとに、妾は不敵に笑ってAFOに飛びかかった。
衝撃で地面が吹き飛んだが、勢いのままに右ストレートで力いっぱいぶん殴る。
「のじゃあっ!」
はっきり言って他のヒーローは、チャオズ状態で邪魔にしかならない。
弟子と怪我をしているオールマイトも同じくであり、後方支援に専念してもらったほうが戦いやすかった。
そして妾の行動を読んでいたのか、AFOは淀みなく個性を発動させる。
「『筋骨発条化』+『瞬発力×4』+『膂力増強×3』+『増殖』+『肥大化』+『鋲』+『エアウォーク』+『槍骨』!!!」
オールフォーワンが急激に肥大化する。
ただ殴ることだけに重点を置いた、独特の体型へと変化した。
妾はそれに、真正面から拳をぶつける。
殴打なのに空中で鍔迫り合いのような奇妙な現象が起きて、拮抗して周囲に凄まじい衝撃波が発生した。
「むうっ!?」
「これが殴ることだけに特化した! キミ専用の個性さぁ!」
全く効いていないとは言わないが、妾の拳を正面から受け止められるとは思わなかった。
双方が弾かれたように離れたけれど、二人共空を飛べるのだ。
「面倒なことをする!」
「久しぶりの兄弟喧嘩だ! 思う存分に殴り合おうじゃないか!」
空中でブレーキをかけた妾とAFOも、この程度で戦いを止めるはずがない。
すぐに再びぶつかり合い、激しい打ち合いが始まった。
「のじゃぁ!」
「あはははっ! 楽しいねえ! 与一!
昔を思い出すよ! そうだろう!」
コイツは何を言ってるんだと困惑しつつも、妾は決して手を休めない。
「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」
「あははははははっ!!!」
生意気にも、衝撃反転も重ねがけしているようだ。
妾はそれを、空中で踏ん張って何とか耐える。
「ちいっ!」
しかし反動を殺しきれず、腕部の巫女服が破れてしまった。
いちいち気にかけるのも面倒なので、咄嗟に飛び退いて上着を脱ぎ捨てて下着姿になる。
実はこっそり超重量の服を着ていたが、常時浮遊を使って見た目相応の体重に抑えていた。
DBでも凄く重いはずなのに床が陥没しないのは、多分妾と同じように舞空術でも使っているだろう。
まあ実際のことは良く知らないが、とにかく流石に悪の帝王なだけはあった。
これまでのヴィランよりも遥かに強いが、諦めるつもりは毛頭ない。
身軽になった妾はすぐに戦線復帰し、再び殴りつける。
「のじゃのじゃのじゃぁ!!!」
今からの妾は先程とは違い、遥かに重く、さらに速さが増している。
清々しいほどの脳筋ゴリ押しに、相手も真っ向から迎え撃つ。
「あはははっ!? ……んっ? むうっ!!?」
のじゃのじゃラッシュで、オールフォーワンをボコボコにする。
それは変わらないが、相変わらず無駄に硬い。
背後で破損した巫女服の上着が地面に落ちて、盛大な土煙が舞ったが気にしない。
「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」
「なっ、何だとっ! あの服! まさか!?」
ラッシュの速さ比べは、妾のほうが勝っているようだ。
ならば、あとはそのまま押し切れば良い。
「こっこの! 僕が! 押し負けっ!?」
AFOが個性でどれだけ増強しようと、妾はその全てをぶん殴って破壊する。
そうすれば問題なしだし、難しいことを考えられるほど賢くはない。
「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」
「まっ、まだっ! 続くのか!?」
絶え間ないラッシュに、AFOの肥大化した肉体が崩壊を始める。
流石の悪の帝王も、冷や汗をかきはじめた。
「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」
「いっいつ! 終わるんだっ!?」
AFOはもはや防戦一方で、拮抗したように見えたのは最初だけのようだ。
妾にスタミナ切れはなく、桁違いの生命エネルギーは常に全盛期のオールマイトのパワーを発揮させてくれる。
さらに、せっかくなので先程の疑問に答えてやることにし、妾は大声で叫ぶ。
「オールフォーワンーッ! お前がッ! 泣くまで! 殴るのをやめないッ!!!」
「与一! よっよくも! この兄に向かって!? おごぶっ!?」
AFOはもはや、エアウォークで踏ん張ることも、姿勢を保つこともできない。
そんな彼をボコボコにしている妾は、いつの間にかラスボスが気を失っていることに気づく。
できれば涙目で、この汚らしい阿呆がという台詞も聞きたかった。
しかし冷静に考えれば、流石にAFOはそんなこと言わない。
それはそれとして、遠くに辛うじて原型を保っていたゴミ収集車を発見した。
ならばやることは決まっており、妾はトドメの一撃を放つ。
「のじゃあ!!!」
ボロ雑巾のようになったAFOは、まるでゴルフボールのように空を飛んだ。
そしてゴミ収集車に吸い込まれていき、見事にホールインワンする。
そして燃えるゴミは月水金と書かれた看板が、タイミング良く閉じられたのだった。