近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
色々あって自宅通いではなく、全寮制になった。
しかし妾は基本的に日向ぼっこしているだけなので、生活リズムは前とあまり変わらない。
強いて言うなら家事手伝いをするのが自宅ではなく、雄英高校の寮になったぐらいだ。
半径10メートルでは全体の一部しか清掃できないが、やらないと落ち着かないのでしょうがない。
取りあえず初日は誰の部屋が一番かを見て回ったが、何故か狐のグッズがやたらと飾られていた。
どうやら謎のブームが来ているようだ。
しかしヒーロー公安委員会が販売を開始した妾のグッズは、まだ発売されたばかりで物珍しい。
個人的にはちょっと恥ずかしいが今だけの流行で、そういうこともあるよねと受け入れる。
ちなみにイズクは、昔からそういうのは好きなようだ。
知っているので別に何とも思わないが、クラスメイトまでそうだったとは予想外だった。
やがて、夏休みの後半が始まった。
今後は仮免許取得を目的に進めていくようで、厳しい試験なので合格率は例年五割を切る。
そこで一人、最低でも二つの必殺技を作るようにとのことだ。
それさえ出せれば勝ち確定で、なおかつヒーローを象徴するような技が好ましい。
今どき必殺技を持たないヒーローは絶滅危惧種と言われたが、妾は特に決まった型は持っていない。
基本的に高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対処し、あとは脳筋ゴリ押しでぶん殴っているだけだ。
なので妾の必殺技は何かと聞かれれば、のじゃのじゃラッシュだろう。
数々の凶悪ヴィランだけでなく、彼らの帝王であるAFOもゴミ収集車に叩き込んだので、その威力は折り紙付きだ。
まあ自分は脳筋スタイルのため、あれこれ考えるのが苦手なだけでもある。
今のところは上手くいっているので、問題はないだろう。
とにかく妾たちは体育館ガンマに移動し、それぞれが必殺技を編み出すべく修行を開始した。
時々教師のアドバイスや指導が入ってはいるが、やはりそう簡単にはいかないようだ。
今後のヒーローは、戦闘力が特に重視される。
仮免試験も当然、それに沿った内容になるのは想像に難しくない。
つまり、できないでは済まされない。
各々が修得に躍起になっているようだ。
コスチュームの改良も並行して行っているようで、連日とにかくやることが多い。
まさにプルスウルトラと言っても、過言ではないほど過酷であった。
イズクも行き詰まっているようでなかなか前に進めず、最初は自分で考えたり教師にアドバイスを聞いて頑張っていた。
しかし最終的には、困って妾に泣きついてくる。
普通の生徒なら必殺技を編み出すのは問題はない。
だが弟子は、波紋だけでなくワンフォーオールを受け継いでいる。
さらには歴代継承者の個性も扱うことができたりと、選択の幅が広すぎるのだ。
色々思い悩んでしまうのも無理もないだった。
「しっ、師匠~!」
何日かは後方で腕組みをして、黙って見守るだけに留めていた。
しかし一向に成果が出せずに堂々巡りであり、このままでは目標にしている二つの必殺技どころか、一つも修得できないまま仮免許試験に挑むことになるかも知れない。
なので妾は重い腰を上げざるを得ずに、小さく溜息を吐く。
「はぁ、しょうがないのう」
教師陣も、イズクばかり指導できるわけではない。
今はオールマイトがマッスルフォームで戦い方を見せているが、彼は何でもやればできる天才型だ。
一つずつ地道に理論を組み立てていく弟子とは、ぶっちゃけ相性が悪い。
見かねた妾は実体化して、よっこらしょと地面に降り立つ。
そして失望されないように、たまには師匠らしいことをするかと口を開く。
「結論から言えば、イズクに必殺技は不要じゃ」
「ええっ!?」
いきなり前提条件を崩されたことで動揺する。
そしてイズクが口を開く前に、妾はすぐ続きを説明していく。
「オールマイトは良く必殺技名を叫んでおるが、結局のところはただの打撃じゃ」
「言われてみれば確かにそうですね」
少しだけ申し訳なさそうな表情でオールマイトを見つめるイズクだったが、彼は別に気にしていないようだ。
ハッハッハッと豪快に笑い飛ばしていた。
「そしてイズクも、
超パワーでの打撃は、ただそれだけで必殺の一撃として十分なのじゃ」
妾はすぐ近くにあったコンクリートの塊を後ろ蹴りで粉砕して、後方腕組み師匠らしく説明していく。
「イズクやオールマイトのような増強系の個性は、鍛えれば威力が上がっていく。
それ自体が必殺技になるゆえ、難しく考える必要はないのじゃ」
もっと発想を柔軟にするべきだ。
ただのパンチやチョップも増強系の個性なら必殺に成りうるので、イズクはただ近接戦闘の技術を鍛えていけば良い。
弟子もそのことに気づいたようで、ハッとした表情を浮かべる。
「そうか! 僕は無意識に拳ばかり使っていた!
なら例えば他の部位! 足技でも良いんだ!」
そうですよね師匠という顔で見ているが、後ろ蹴りでコンクリートの塊を粉砕したのは、別に深い考えがあったわけではない。
だが失望されたくはないので、良く気づいたなと言わんばかりの表情で静かに頷く。
とにかく、これまで拳をメインにして戦ってきたイズクだが、足技も必殺の一撃になる。
「続きはオールマイトに教えてもらうといい。
同じ増強系で先輩じゃし、参考になるじゃろうよ」
「ありがとうございます! 師匠!」
「うむ、あとは任せておきたまえ!」
これで妾の役目は終わったと判断して、再び霊体になってふわりと浮かび上がる。
そしていつも通りに我関せずと、くるりと丸くなる。
周囲で一年A組の生徒たちが頑張っている姿を眺めながら、のんびり日向ぼっこを始めるのだった。
誤字脱字機能を使ってくれる方々には、本当に助けられています。いつもありがとうございます。
書き終えたら順次予約投稿していますが、やはりどうしても漏れが出てしまうので。