近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
次の試験に進んだイズクたちは各々の個性を有効に使いながら、救助活動を頑張っていた。
最初は減点されたが、反省して効率化を図る。
救助者に対して、要救助者のほうが圧倒的に多い。
とにかく時間との戦いで、他校と協力して動いたほうが良いだろう。
ただし、妾は除く。
能力が突出して一人で幅広く対応できてしまうため、足並みを揃えるとかえって効率が落ちてロスになるのだ。
なおイズクは、まだその域には達していない。
他の受験者と協力して救助活動を続けて、なかなか良いペースで進んでいるように思えたが、途中で会場のあちこちが爆破される。
どうやらヴィランによる大規模テロが発生したという設定で、ヒーローたちの対応能力を見るようだ。
リーダーはギャングオルカで、人型のシャチのような姿をしている。
見た目が怖いので子供人気はあまりないけど、戦闘能力はかなり高く、ヒーロービルボードチャートJPでは十位の実力者らしい。
興味がなくて試験中は沈黙を貫いている妾に、イズクがそのように教えてくれた。
しかも部下も大勢引き連れて、各方面で暴れ回っている。鎮圧は難しそうだ。
なお、それとは関係なく、ヴィランっぽい見た目のヒーローランキングは第三位らしい。
当人はその辺りを気にしてそうだから、もし話す機会があったら地雷を踏まないように注意したほうが良さそうだ。
それはそれとして、試験会場に大勢のヴィラン役が乱入して、イズクたちに襲いかかってくる。
必然的に避難民や要救助者も巻き込まれるので、何としても防がなければいけない。
いきなりハードルが上がり、戦いながら救助活動をしなければいけなくなる。
受験者たちは難しい判断を迫られるが、ヒーローを志す者なら立ち向かうべきだ。
時には逃げる選択もアリだが、現在の状況がそれを許さなかった。
妾はのんびり日向ぼっこをしながら、彼らの対応を黙って見守る。
救護所のすぐ前にヴィランが出現したので、大ピンチだ。
まずは個性の振動で時間を稼ぐ。
だがギャングオルカの超音波攻撃を受けて、あっさり麻痺させられる。
どれだけ優秀でもまだ学生だ。
トップヒーローとの間には天と地の差があった。
「この実力差で
彼の発言は紳士でも、やはり見た目が怖いのでヴィランっぽい。
大勢の全身黒スーツの部下たちを引き連れているので、とにかくヤバい。
幸いすぐに一年A組の面々が集まってきて、轟少年の氷で一先ず動きを封じる。
さらに空を飛んで夜嵐少年が現れて、凄まじい突風で敵をまとめて吹き飛ばす。
「ヴィラン乱入とか! なかなか熱い展開にしてくれるじゃないっすかぁ!」
夜嵐少年は気合十分で、全く恐れてはいないようだ。
轟少年と何やら因縁があるようだが、今は仮免許試験中である。
そのようなことを気にしている余裕はなく、戦力が集まっている今のうちに要救助者の避難を進めるほうが大事だ。
イズクも後方に下がって、怪我で動けない人を抱え、皆と一緒に安全な場所に移動する。
だが足止めに残った彼らは、残念ながら連携が取れないようだ。
さらに個性が反発し合い、仲間割れまで始める有り様だった。
隙だらけの状態でヴィランたちが放ったセメントガンを受けてしまい、身動きが封じられていく。
その最中でも言い争いは続き、夜嵐少年は己の過去を語る。
彼にとってヒーローとは熱さであり、かつてはエンデヴァーの大ファンでサインを頼んだが断られ、とても冷たい目をしていたことが印象に残った。
さらに雄英高校の推薦入試で轟少年と出会い、彼も同じような目をしていた。
なので夜嵐少年にとっては、轟親子だけは絶対にヒーローとして認められない。
しかし彼の過去が語られている間も試験は続き、再び炎と風は反発し合ってしまう。
おまけに運が悪いことに、狙いが変わった炎は、麻痺して動けない真堂少年に向かっていく。
二人だけでなくヴィラン役の人たちも、これには不味いと思ったようだ。
間一髪で
「何を! してんだよ!」
普段は滅多に怒ったりしないイズクが、珍しく声を荒げている。
だが無理やり攻撃を避けたせいで、着地が上手くいかずに失敗してしまう。
何とか真堂少年へのダメージは避けたが、地面を転がり盛大に土煙が舞ってしまう。
さらに悪いことは続くようで、喧嘩に夢中になっている二人に、ギャングオルカの超音波が襲いかかった。
「取りあえず! 邪魔な風だぁ!」
距離は離れていたが、それでも空中の夜嵐少年は麻痺してしまう。
次に轟少年を掴んで同じく超音波を放って、あっという間に二人を行動不能にする。
その隙にとヴィランたちが迫ってくるが、イズクが抱えて紙一重で回避した真堂少年がまだ痺れが残りながら復帰する。
地面を大きく揺らして、避難するだけの時間を稼ぐ。
だが雨降って地固まるで、散々叩きのめされてようやく過ちに気づく。
動けないが辛うじて個性を使って、炎と風の連携攻撃でギャングオルカを拘束したのだった。
少しだけ時間が過ぎて、イズクは部下のヴィランたちを叩きのめす。
その後、渦巻く熱風を吹き飛ばして行動を開始したギャングオルカに、鋭い飛び蹴りをお見舞いする。
「二人から離れてください!
「くっ!」
動きを読んでいたギャングオルカに防がれたが、無傷とはいかない。
片手ではなく両腕を交差させて何とか防御したが、金属製の手甲がヒビ割れる。
そのまま弾かれるように離れたが、流石はトップヒーローだ。
接近戦は不利と判断し、すぐに超音波攻撃に切り替えた。
しかしイズクは読んでいたようで、すぐに次の手を打つ。
ヒーローコスチュームに装着されたバックパックから、小さく折り畳まれた布のようなモノを取り出して、コオオオオと大きく呼吸をして波紋を流した。
「波紋ヘア・アターック!」
「うおおおおっ!!!」
波紋を流すと特殊な布が急激に膨らみ、巨大なエアバッグがイズクの前に展開される。
そしてギャングオルカの超音波がぶつかり、互いに打ち消し合う。
「流石は師匠直伝の技! 発目さんに頼んで良かった!」
妾としてはネタ技として教えたが、まさか実戦で二度も使うとは思わなかった。
おまけにサポート科の発目さんも興味津々なようで、イズクと二人でああでもないこうでもないと話し合い、改良案として今回のアイテムが作成される。
波紋を流すと布の表面積が急激に広がり、防壁として使用できる。
耐熱や耐爆、耐衝撃なども強化されるため、色々と便利だが名称は変わっていない。
別に髪の毛は使っていないのだが、弟子なりのこだわりがあるのだろう。
とにかく超音波攻撃を防いだあとは、戦闘不能の二人を巻き込まないように素早く移動する。
実際にそれは上手く行き、直後に試験終了が宣告される。
全員合格とはいかなかったが、一年A組の半数以上は無事に仮免許を取得できたのだった。
試験中は色々あったが、無事に終わった。
轟少年と夜嵐少年も互いに謝罪をして、仲直りだ。
今後は緊急時に限り、ヒーローとしての活動が許される。
だが同時に責任も背負うことになるので、その辺りを注意しなければいけない。
オールマイトが引退したことにより、今まで抑圧されてきたヴィランたちが一斉に動き出す。
ヒーローにとっては、波乱の時代の幕開けになるのは間違いなさそうだ。
I・アイランドで知り合ったメリッサ・シールドさんによると、他の国ではヴィラン犯罪が軒並み20パーセントを超える。
だが日本だけは、8パーセントを下回っていた。
それは平和の象徴であるオールマイトあってのことで、彼の存在がヴィランたちの抑止力になっているからだ。
なのでそのナンバーワンヒーローが引退となれば、これまで大人しくしていた連中が表に出てきたり、何らかの事件を起こすのは当たり前である。
これまで維持されてきたヒーローとヴィランの均衡が崩れた際に、次世代の彼らが平和を守るために協力して頑張らないといけない。
そして落ちた人は残当としか言いようがないが、まだ再試験のチャンスがある。
合格すれば仮免許を取得できるので、一次試験と通過できて良かった。
イズクは仮免許を取得した際、泣くほど嬉しかったようなので、妾は素直に祝福したのだった。
<八木俊典>
AFOが収容されているタルタロスに直接出向き、
奴が嘘をついているか、真実を語っていないか、本当に知らないのかはわからない。
全身を拘束され、生命維持装置で辛うじて延命し、脳波を常に観測しているとはいえ、ヴィランの帝王であるAFOなら人を騙すのは簡単だ。
だが辛うじて現在逃亡中の
ただその心や目的は、決して私と同じではない。
きっと何らかの策略を巡らせているのだろうが、AFOは話す気はないだろう。
その後も尋問が続き、やがて面会はあと三分だと言われる。
奴はまだ話足りないようで、今度は私に尋ねてきた。
「世間はキミの引退にかなり動揺したと思うんだが、様子はどうだ?」
しかし外の情報は遮断されているので、答えることはできない。
だがAFOは残念だと口にしても、本心は違う。
面白がって想像を働かせ、それを言葉にしていく。
「きっと、こうかな? 今頃メディアはキミの居なくなった不安。
そして新たなリーダー、エンデヴァーへの懸念が重なり、ヒーロー社会全体の団結を訴えている」
私は口は閉じたままだが、相変わらず恐ろしいほど頭が切れる奴だと思った。
AFOは昔から裏で人を操り謀を巡らすのが上手く、滅多に尻尾を掴ませない。
「一方で不安定になりつつある空気を察知して、ヒーローを支持しないいわゆる日陰者が行動を起こし始める」
犠牲になった人たちには申し訳なく思うが、奴を神野区で捕縛できたのは幸いと言える。
あとは
AFOのその後の発言から、後継者の行動を読んだり、かなりの期待をしているようだ。
さらに、ヴィラン同士の争いも頻発することを暗示する。
「仮にそうなっているとして、原因は全て、キミの偽りの姿と、引退……なわけだ」
全く持って正しいのが腹立たしいが、AFOのいつもの手だ。
私は拳を握りしめながらも、何とか冷静さを保とうとする。
「今後キミは人を救うこと叶わず、自身が原因で増加するヴィランを指をくわえ眺めるしかできず、無力さに打ちひしがれながら余生を過ごすと思うのだが」
AFOの言っていることは正しいが、全てではない。
しかし、隠していた心の内を言い当てられた。
「……教えてくれないか? どんな気分なんだ?」
私は心が苛立ち、勢い良く立ち上がってしまう。
「心を言い当てられると、人ってのは良く怒る!
残念だな! ここじゃ! 僕を殴れない!」
勝ち誇った笑みを浮かべるAFOに対して、私は冷静さを保つために深呼吸をする。
そして口を開いた。
「貴様だけが、全てわかっていると思うな。
貴様の考えは、良くわかっている。
お師匠の血縁である死柄木に、私……あるいは、私と少年を殺させる。
それが筋書きだな?」
どうやらその通りだったようで、AFOはそれがどうしたとばかりに言葉を続ける。
だが私は死柄木に殺されないし、殺されてやる気もない。
そして奴の思い描く未来には、決してならないのだ。
「ケジメをつけに来たって、それを言いに来たのか?」
確かにそれを言いに来たのだが、まだ重要なことを喋っていない。
だが面会時間が終わったので背を向けて、その場から立ち去っていく。
「貴様の未来は、私とお狐様が砕く! 何度でもな!
貴様こそ、ここで指をくわえ、余生を過ごせ!」
私はもう、これまで通りにプロヒーローを続けられる状態ではない。
AFOとの激戦で重症を負った時より、活動時間は伸びてはいる。
だが個性が切れたトゥルーフォームは全国ニュースで報道されたし、現役時代と比べれば大きく衰えている。
しかし、それでも希望はある。
限界を迎えて戦えなくなった私の代わりに、AFOに立ち向かって打倒してくれたヒーローだ。
彼女はヴィランの帝王に真正面から挑み、消耗していたとはいえ激戦の末に見事に打ち破った。
他のプロヒーローたちも強かったが、残念ながら力及ばずに次々と脱落していく中で、お狐様だけは奴と戦って最後まで生き残ったのだ。
まさに私が引退したあとの次代の平和の象徴として、相応しい実力を示したと言える。
ワンフォーオールを継承した緑谷少年の師匠という点でも、非常に頼りがいがあった。
I・アイランドでは協力し、指名手配されていた凶悪ヴィランを倒した実績もある。
当人はヒーローをやる気はないようだが、それでも頼まれれば嫌とは言わない。
何故なら彼女は平和を愛し、それを邪魔するヴィランには容赦はしないからだ。
(波紋の呼吸にも大分慣れてきた!
もう少し早く、彼らと出会えていたらと思いはするが! ……それでも!)
もっと早くお狐様と緑谷少年と出会えていれば、私はもっと長く現役のプロヒーローでいられただろう。
それに、ワンフォーオールも余裕を持って指導できたはずだ。
しかしタラレバに意味はないし、今は過去よりも未来を見るべきである。
一先ずは仮免許試験に合格してメッセージを送ってきた緑谷少年に、こちらからも労いの言葉を送るのだった。