近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
イズクのインターン先だが、最初は前回の職場体験でお世話になったグラントリノに連絡した。
けれど、今はちょうど用事で忙しいらしい。
なのでオールマイトに相談し、色々あってかつてのサイドキックであるサー・ナイトアイの事務所に行くことになる。
なお、今の御時世はヴィランの動きが活発になっているため、生徒を受け入れると責任問題やら安全確保やら何やらで大変なので、実績のある事務所に限るとのことだ。
生徒の身の安全も大切だが、オールマイトが引退した今、少しでも強いヒーローを育てないといけないため、そういう方針になったらしい。
ただオールマイトとサー・ナイトアイは、ある理由で気まずいようだ。
ゆえに先にヒーローインターンを行っている、通形少年の紹介という形を取る。
事前の面接のような感じで、雄英高校の待合室で相談する。
そこで何の意味があるかは知らないけれど、イズクに将来はどういうヒーローになりたいのかを尋ねてきた。
「どんなに困ってる人でも、笑顔で──」
考える余地もなくイズクの口から出た言葉だが、そこで黙ってしまう。
そして妾を少しだけ見つめて、真面目な表情で話しだした。
「誰にも心配させることのないぐらい! 必ず勝って! 必ず助ける! 最高のヒーロー! です!」
イズクがはっきりと答えたあと、何故か真剣な表情を浮かべるオールマイトと通形少年の視線が、妾に重なった。
確かに自分は、たとえダメージを受けても瞬時に回復できるし、それ以前に気合で耐えてノーダメージも可能なので、心配とは無縁だ。
ヴィランに逃げられはしても、大抵は一方的にボコボコにして勝利して、助けを求める人はちょっと面倒だが必ず助けてきた。
だが妾が最高のヒーローかと言えば、大いに疑問だ。
不真面目さに定評がある、日向ぼっこが大好きな狐っ娘守護霊である。
近距離パワー型であっても、別に人助けが趣味の熱血漢ではなかった。
なので勝手に理想のヒーロー像にしているこの場に者たちに、はっきりと告げる。
「今の発言はイズクの目指すヒーロー像で! 妾とは無関係じゃろうが!」
「そっ、そうかな?」
「そういうことにしておこうか!」
二人は納得していないようだが、一先ず話を戻すことには成功した。
しかし弟子は相変わらずこっちを見ているし、何だか無性に小っ恥ずかしくなってしまう。
だが、とにかく通形少年は快く引き受けてくれた。
イズクをサー・ナイトアイに紹介してくれることになったので、一先ずは良しとするのだった。
雄英高校から電車で一時間かけて、サー・ナイトアイの事務所に到着し、通形少年と一緒に執務室に向かう。
そこでイズクはオールマイトに変装して笑わせようとするが、残念ながら思いっきりスベったようだ。
最低でも一回は笑わせないと門前払いになるっぽいので、弟子はとにかく必死である。
サイドキックのバブルガールが、巨大な装置に繋がれて強制的に笑わせられているのは一先ず放置して、頑張って元ネタの説明を始める。
そういったことに全然興味がない妾には、これっぽっちも理解できないやり取りだ。
しかし不幸中の幸いで、お互いオールマイトの大ファンだったようだ。
威圧感のある眼差しではあるけれど、凄くマニアックな説明を理解できる者は極少数である。
最後には意気投合していたので、結果良ければ全て良しだ。
その間に、通形少年がバブルガールを装置から外して、弟子のことを説明する。
取りあえず滑り出しとしては上々で、このままインターンも受けてもらえそうだ。
しかし最後に契約書に判子を押す段階になって、まさかのお断りであった。
けれどチャンスはくれるようで、三分以内にサー・ナイトアイから判子を奪い、自分で契約書に押すという条件を出す。
だが、彼の個性は予知だ。
波紋を使おうが身体能力を高めようが、その全てが余裕を持って避けられ、イズクはただひたすら翻弄され続けている。
正直、今のままでは勝てる気がしなかった。
「貴様がどんなものか、いくばくか期待していたのだが。
象徴たる力を持ち、オールマイトに次ぐ実力のヒーローに師事していても、まるで凡庸。
ヴィランが調子づき、次代に陰りが見え始めるその時、ならばやはりワンフォーオールはミリオに継がせるべきだ」
一旦距離を取って作戦を練るイズクに、サー・ナイトアイはそのような言葉を投げかける。
「私はオールマイトを、今でも敬愛している。
だが後継の件だけは、意志を測りかねる」
ちなみにサー・ナイトアイはワンフォーオールを知っているので、今の発言は妾ではなく弟子のことだ。
そしてイズクが通形少年よりも劣っているとか、そういう話ではない。
しかし冷静に考えれば、オールマイトはその日のうちに即断即決だったので、深く考えずに衝動的に決めたとしか思えなかった。
その間にも時間は刻一刻と過ぎていき、サー・ナイトアイは冷静にイズクを見据える。
「長考する余裕があるのかね? それとも疲れたか、策がないか。
ミリオに貴様を紹介すると言われた時、私は驚いたよ」
さっきから聞いていれば、とにかくイズクを煽りまくる。
弟子の努力の全てが無駄だと言わんばかりの発言に、少しずつ怒り始めているようで、
「そろそろはっきり言おうか、ワンフォーオールを受け継ぐには、もっと相応しい人物がいる。……私は貴様を認められん」
今度はサー・ナイトアイが予知できても、反応できない速度まで高めれば判子を奪えると考えたようだ。
しかし、それでも当たらないし触れない。
「それとも師匠に泣きつくか? 情けない弟子の代わりに、判子を取ってくださいとな。
流石の私も、二人同時に相手にするのは難しい。勝機は十分にあるぞ」
さらに煽られながらも、イズクは頑張った。
しかし無情にも時間は過ぎていき、やがて三分経つ。
判子を取れないまま終わってしまう。
だが、すぐ後に気づく。
イズクは室内に多数点在するオールマイトのグッズを、全て避けながら動いていたのだ。
そのことが高く評価され、合格することができた。
「ええっ!? 何でですか! 全く達成できてないですけど!」
「印鑑を取り、自分で押せとは言ったが、できなければ不採用とは言っていない」
色々あったが採用され、門前払いにならなくて良かった。
妾は霊体のままのんびり様子を窺っていたが、ホッと胸を撫で下ろす。
そして三分経ったので通形少年とバブルガールも様子を見に来たけれど、二人共嬉しそうだ。
しかし、イズクが来るとわかった時点で、実は採用は決定していたと告白される。
使える人材なのも知っていたが、それでも本心から認めたわけではないようだ。
「象徴なき今、人々は微かな光ではなく、眩い光を求めている。
たとえ彼の意に反しようとも、今誰がその力に相応しいか。プロの現場で痛感してもらう」
サー・ナイトアイは、最後にチラリと妾に視線を向けた。
だが結局、口を開くことはない。
一体何が言いたいのかまるでわからず、はてと首を傾げる。
何にせよ辛い現実を見せて、ワンフォーオールの継承者を諦めさせることが目的であっても、イズクは必ずや試練を乗り越えられる。
妾はいつも通りのほほんとしながら、まあ何とかなるやろと、気楽に考えていたのだった。
それはそれとしてインターン一日目になって、パトロール兼監視を行うことになる。
話を聞くと今は秘密の捜査中で、
過去に解体されたヴィラン団体の人員を、どういう理由か集め始めているのだ。
最近はヴィラン連合にも接触したらしく、とにかく叩けば埃が出そうだった。
だが証拠は掴んでいないので今のところは黒に近いだけで、ヴィラン扱いはできない。
なので尻尾を掴むための、パトロール兼監視なのだった。
重ね重ね、誤字脱字機能と使ってくれる人たちに大変感謝しています。
何でそんなところを間違えるのか作者にもわからず、本当に助かっています。
そしてある程度キリがついたので、本日から一日二話投稿に切り替えます。読み飛ばしにご注意ください。