近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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近距離パワー型のヴィランと遭遇したのじゃ

 いつもと違う景色を眺めていると、何だかワクワクしてくる。

 イズクは長距離マラソンを頑張って走っていても、妾は基本的に後方腕組み師匠ポジであり、せいぜい声援を送るぐらいだ。

 

 なので気楽ではあったのだが、そんな良い気分を邪魔する輩は何処にでもいる。

 

 今もビル街の大通りの遥か先に、水を操る二人組のヒーローと筋骨隆々のヴィランが激戦を繰り広げていた。

 休日の昼間なのもあって大変混み合っており、周囲の人たちは遠巻きに様子を伺いながら、ヒーロー頑張れーなどと熱い声援を送っている。

 

 何気に取材陣まで駆けつけてテレビ中継しているため、何とも呑気というか危機感が足りていない。

 

 しかし周りで囃し立てる人々とは違い、戦況は思わしくなかった。

 どう見ても押しているのはヴィランの方で、二人組のヒーローは防戦一方でかなり危うい状況に見える。

 

「しっ、師匠! 不味いです! このままだと!」

 

 周囲で他人事のように観戦している人々とは違い、イズクは平和ボケしておらず冷静に状況を分析していた。

 なので妾は実体化し、弟子に肩車をして少しだけ浮遊して、のちのヒーロー活動に役立てようと真面目に見学させている。

 

 こっちは長距離マラソンコースを走っていただけなので、ここに来た時には既に戦いは始まっていた。

 おかげで進路が塞がれるだけでなく、物凄く後方からしか見られない有様だ。

 

 妾は超感覚で視界に収めなくても状況把握ができるが、イズクはそうはいかない。

 しかし今の発言から冷静に見ているように一安心し、はっきりと告げる。

 

「ヒーローとは、命をかけて市民を守るのが役目じゃ。

 それにこの地域のヒーローは彼らだけではないゆえ、力尽きる前に援軍が駆けつけるじゃろう」

 

 そうすればヴィランは倒されて、二人組のヒーローも死なずに済む。めでたしめでたしだ。

 

 しかしイズクは、何やら妾の顔をじっと見ている。

 言いたいことがあるようだが、何となく予想はつくので大きく溜息を吐く。

 

「言っておくが妾は、あの中に飛び込むのは嫌じゃぞ」

「でも、師匠なら! あんなヴィラン!」

 

 イズクが妾を高く評価してくれるのは、少々恥ずかしいが嬉しくはあった。

 しかし、それはそれで、これはこれだ。

 

「妾は強いが個性でしかなく、イズクは一般人じゃ」

 

 民間人がヒーローとヴィランの戦いに乱入するのは、命を捨てるようなものだ。

 

「そして今は、ヒーローがヴィランと戦っておる。

 このあとのことを考えると、あまりよろしくないのう」

 

 終わり良ければ全て良しで済むこともあるが、むしろあとになって大きな問題になることも多い。

 特に失敗してヒーローや周辺住民に迷惑をかけると、悲惨である。

 

「イズクも、家族に迷惑をかけるのは嫌じゃろう?」

「そっ、それは! そうですけど!」

 

 実際にはどうなるかはわからないが、目に見える地雷をわざわざ踏むのも馬鹿らしい。

 しかし見て見ぬ振りで犠牲者が出たら寝覚めが悪いため、結局は微妙に渋い顔になり、大きく息を吐いた。

 

「じゃがまあ、いよいよとなれば妾が出よう」

 

 流石に見殺しにするのは寝覚めが悪いので、限界が来たら選手交代するのもやぶさかではない。

 

「しかし、それまでは様子見じゃ。

 ご当地ヒーローに任せようではないか」

「しっ、師匠! ありがとうございます!」

 

 イズクは嬉しそうに声をかけるが、別に褒められるようなことを言ったつもりはない。

 何しろヒーローの敗北が確定的になるまでは、手を貸さずに呑気に眺めているのだ。

 

(割と酷いことを言っておるが、妾はヒーローではないしのう)

 

 やはりヴィランは、ヒーローが打ち破ってこそだ。

 一般人がボコボコにしたら彼らの信頼が低下し、社会情勢が不安定になりかねない。

 

 なので今この時点では、野次馬に混じって成り行きを見守るのが正解なのだ。

 

 そんなことを考えていると、水を操る二人組のヒーローが筋骨隆々のヴィランの渾身の一撃をまともに受ける。

 

 彼らは派手に吹き飛ばされて、勢いよく壁に叩きつけられた。

 コスチュームと同じで全身がズタボロになっているのがわかるが、それでも何とか起き上がろうとしている。

 

 しかし骨が何本も折れていて相当不味い状況のようで、残念ながら力及ばすに、血を吐いて地面に崩れ落ちた。

 

 

 

 そんな絶望的な様子を見て、周囲で見物していた人々から立て続けに悲鳴があがる。

 ようやく危機感を持ったようで、応援や撮影を止めて慌てて逃げ出す人がちらほらと現れだす。

 

 だが恐怖で足がすくんで、その場から動けない者もかなり多い。

 特に子供はヒーローが負ける光景を見たからか、大泣きして完全に動きを止めている。

 混乱が急激に広がり始めて、とてもではないが収拾がつかない。

 

 妾は静かに息を吐き、呟きを漏らす。

 

「時間切れじゃな。全く、他の増援のヒーローは何をやっておるのじゃ」

 

 これ以上混乱が広がれば、動けなかったり倒れた人を踏みつけても、我先にと逃げ出そうという人が大勢出てくる。

 

 二人組のヒーローも起き上がれないようだし、これ以上の戦闘続行は不可能だろう。

 もうここは自分が出るしかないと覚悟を決める。

 

 しかし前方の混乱した人集りは邪魔であり、避けていくのが面倒だ。

 妾はイズクに声をかけて、少しだけ身を沈める。

 

「準備は良いな? では、ゆくぞ!」

「はっ、はい! 師匠!」

 

 イズクが頷いたので、彼を抱えて空高く跳躍した。

 すると空を飛ぶのじゃロリ狐っ娘と少年を目撃した誰かが驚き、何故か大声で解説を始める。

 

「なっ!? 座ったままの姿勢! 膝だけであんな跳躍を!」

 

 確かにイズクに肩車をしたまましゃがみ、カエル飛びをしたのでそう言えなくもない。

 

 まあ実際には違うのだが、取りあえず混乱する野次馬は軽々飛び越えられた。

 

 そのまま筋骨隆々のヴィランと瀕死のヒーローの間に降り立ち、背負っていた弟子をよっこらしょと地面に下ろす。

 

「何だぁ? このガキどもはぁ?」

「きっ、キミたち! ここは危険だ!」

「そうよ! 早く逃げなさい! 危ないわ!」

 

 ヒーローの二人組は、倒れてもなお必死に妾たちを守ろうとしている。

 こういうのを本物というのだろうが、別に興味はないし今は大人しくしていて欲しいものだ。

 

 取りあえず安全が確保されるまではと、狐火を収束して三人の前に壁として形成する。

 

「邪なる威力よ退け!」

 

 別に五芒星の魔法陣は地面に刻まれていない。

 だがイメージしやすいので、採用させてもらった。

 

「イズクとそこの二人は戦いが終わるまで、そこから一歩も出るでないぞ」

「はっはい! 師匠! ご武運を!」

「こっ、これは一体!?」

 

 青い炎は熱をもっておらず揺らめいてはいるが、物理的な障壁として機能している。

 生命エネルギーでガチガチに固めているので、銃弾やミサイルだろうと平気で弾き返す。

 

 なお、どうしてそうなっているのかは、妾にも良くわかっていない。

 感覚的にやっているので、細かい理屈はどうでも良かった。

 

 それはそれとして、ヴィランは見逃すつもりはなさそうだ。

 

「ヒーローを殺すのを邪魔するってんなら!

 お前から殺してもいいんだぜ!」

「ほう、妾と遊んでくれるのか。それは楽しみじゃのう」

 

 イズクから半径十メートルは自由に動けるので、妾は三人を守るように堂々とヴィランの前に立つ。

 そのまま不敵な笑みを浮かべ、大声で叫ぶ。

 

「勇気とは! 怖さを知ることッ! 恐怖を我が物とすることじゃあッ!」

 

 のじゃロリ狐っ娘よりも、遥かに巨大なヴィランに挑むのだ。

 ここで気合を入れるためにある漫画の名言を口にして、さらに一歩踏み出す。

 

「いくら強くても、ヴィランは勇気を知らん!

 ノミと同類じゃぁーッ!」

「ガキィ……俺を馬鹿にしてんのかぁ!?」

 

 妾は不敵な笑みを浮かべて、さらにヴィランとの距離を詰める。

 すると挑発をしたことでブチ切れた大男が、先に攻撃を仕掛けてきた。

 

「だったら! 血を撒き散らして死ねよおおおっ!!!」

 

 ヒーローに攻撃したときよりも、さらに幾重にも筋繊維をまとった。

 極太の剛腕で、力に物を言わせて殴りかかってくる。

 

 誰もが見るも無惨な挽肉のような死体に、変わり果てると思っただろう。

 

「遅すぎてアクビがでるのぉ」

 

 だが妾は飛んできた拳を片手で受け止めて、大きなアクビをする余裕まであった。

 ただし地面が衝撃を受けて足元が小さなクレーターのようになったが、自分は全くの無傷である。

 

「何いいいっ!? 俺の全力を! こうも容易くっ!?」

 

 ヴィランは何とか妾を押し潰そうと両手に筋繊維をまとい、青筋が立つほど力を入れる。

 

「うっ、動かねえええっ!!!」

 

 しかし、馬鹿でかい拳は一ミリも先に進まなかった。

 

 小さなクレーターができたり、衝撃波で盛大に土煙が舞ったが、妾にとってはそれだけである。

 

 流石にこれ以上足が沈むと格好がつないので、浮遊で今の位置を維持しているのは秘密だ。

 

「それで全力か?

 ヒーローは壊せても、たった一人の守護霊は壊せぬようじゃな」

 

 妾の挑発に悔しそうにするが、もう筋繊維の量は限界のようだ。

 これ以上大きくなったりしないようなので、相手の腕を離して軽く後方に跳躍して距離を取る。

 

「では、今度は妾の番じゃな」

 

 彼がヴィランの中で、どのぐらいの強さかは知らない。

 しかし全力の一撃を受け止めた感じでは、セーフモードののじゃロリ狐っ娘でも楽勝だ。

 

「右の拳で殴るか? 左の拳で殴るか? 当ててみるといい」

 

 後方腕組み師匠ポジは、崩れることはなさそうだった。

 

「みっ、右か!?」

「違うのう」

 

 イズクの信頼を裏切って関係がギスギスするのは嫌だし、適当な助言であとは自主性を尊重するポジションは、気楽でいい。

 

「じゃっ、じゃあ! 左だな!」

「それも違うのじゃ」

 

 とにかく目の前のヴィランの脅威度は定まった。あとは無力化するまでぶん殴るだけだ。

 

「りょっ、両方かあああっ!!!」

「その通りじゃ!」

 

 妾は呼吸を整えて、反撃に転ずるために一気に距離を詰める。

 

「もしや! ラッシュかーっ!!!」

「大正解じゃあ!!!」

 

 肉薄した妾は、敵が行動を起こすより先に、凄まじい勢いでラッシュを叩き込んだ。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」

「ぐわあああああっ!!!」

 

 危機を感じて、急いで全ての筋繊維を防御に回したようだ。

 しかし、無駄である。

 

 妾の高速パンチは、ヴィランの筋肉の鎧をあっという間に剥がしていく。

 すぐに個性の修復が間に合わなくなって、生身の肉体をぶん殴られることになった。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃぁ!!!」

「ぎゃあああああっ!!!」

 

 もはや個性の筋繊維が完全に剥がされて、大男のヴィランは全身がボコボコにされて複雑骨折する有様だ。

 それでも止めるつもりはないし、死なない程度に加減はしている。

 

 だがあまりやり過ぎても、後遺症が残ったり社会復帰に支障が出るだろう。

 程々のところでトドメを刺そうと考えたとき、視界の端にある物を見つけた。

 

「のじゃあっ!!!」

「ヤッダーバァアァァァァアアアアア!!!」

 

 妾は最後に一際強力な一撃を叩き込み、何故か偶然停車していたゴミ収集車に、奇妙な断末魔の叫びをあげるヴィランをホールインワンした。

 

 看板によると、燃えるごみは月・水・金らしい。

 だがまあ人混みで塞がっているし、重要な加害者なので回収はされないだろう。

 そして別にヴィランを再起不能にしただけで、殺してはない。

 

 一先ずは何とかなったので、興が乗った妾はビシッとポーズを取って大きな声で叫ぶ。

 

「アリーヴェデルチなのじゃ!」

 

 何処かのギャングのような台詞が出たが、ぶっちゃけゴミ収集車とは合ってない。

 しかしのじゃロリ狐っ娘的には、きっちり122発叩き込めて満足だ。

 

 あとはプロヒーローや警察の仕事なので、この場に留まる意味はない。

 

「では、イズク。逃げるぞ」

 

 結界代わりに張っていた狐火バリアを解除して、イズクに声をかける。

 

「えっ!? あー……いっ、いいのかなぁ!?」

 

 突然話題を振られて戸惑うイズクに、妾は真面目に顔で続きを話していく。

 

「良いも悪いもない。妾たちはプロヒーローではなく、一般人なのじゃぞ?

 警察の説教やマスコミのインタビューなど、受けたくないぞ」

「そっ、それは確かに!」

 

 イズクは模範的な市民である。

 しかし、やっぱりお説教や面倒事ことは嫌なようだ。

 

「良心が痛むなら、この場に留まっても構わぬ。

 じゃが、妾は何も喋らぬぞ」

 

 そう言って妾は霊体化し、ふわりと空へと逃げる。

 

「ええっ!? そっ、それは困るっ!」

 

 そもそもイズクが行くというので、妾はそれに付き合っただけだ。

 本当はもっと色々あったが、ここぞとばかりに責任をなすりつける姑息なのじゃロリ狐っ娘である。

 

「わかったら、速やかに離脱するのじゃ!」

「はっ、はい! 大変ご迷惑をおかけしましたぁ!」

 

 そう言ってイズクが周囲の人たちに、ペコペコと頭を下げ始める。

 取りあえず謝罪が済んだのであとは逃げるだけだが、そうは問屋が卸さないようだ。

 

 何とか起き上がれるまで回復したのか、全身ズタボロの水を操るヒーローが弟子の背後に立ち、良い笑顔で肩をポンと叩く。

 

「俺たちのヒーローが、ここで帰るとかないよね?」

「ひいっ!?」

「イズク、頑張るのじゃ。これも修行じゃ。……多分な」

 

 妾はイズクの半径十メートル以上は離れられないが、都合が悪くなると弟子に丸投げである。

 

「そんな! 師匠! 助けてください!

 ああっ! ちょっと! 怪我をしてるのに、引きずらないでえっ!」

 

 イズクも怪我人が相手では本気で抵抗できないようで、大人しく引きずられていく。

 

 そして妾に、助けを求めても何処吹く風だ。

 霊体化して上空に逃れ、くるりと丸くなって日光浴をする。

 

 今日は天気が良いので絶好の日向ぼっこ日和だ。

 弟子の悲鳴を聞きながら心地良くウトウトするが、引子さんからも頼まれてるしあとで慰めてやるかと、少しだけ彼の身を案じるのだった。




以下、公表するとヤバいのでイズクにも伝えずに秘匿している能力

・狐火はただの炎ではなく、温度や形などを自在にコントロールできる
 簡潔に説明すると、ドラゴンボールの気弾と狐火は殆ど同じ

・尻尾が一本の状態はセーフモードで、出力をあげるたびに増える。最大九本
 ただし一尾でも過剰戦力なため、全解放で戦うことは多分ない

・スタンド使いはスタンド使いに引かれ合うからなのか、他者の個性に宿る魂的な存在、もしくは生命エネルギーのオーラっぽいモノが見える







以下、本人も気づいてない別の意味でヤバい何か

・お狐様は緑谷出久の外付けの個性因子であり、独立しているので彼は依然として空の器の無個性
 しかし取り憑いている緑谷出久に、幽波紋的な影響を常時与え続けていて、何らかのキッカケで個性とは異なる才能が目覚める可能性がある
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