近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
戦いが終わって精神的に落ち着いてきたからか、謎の発光現象は少しずつ収まってきた。
しかし、それで個性が制御できるかは別問題だ。しばらくは妾にくっついたままで過ごしてもらう。
先程は狭い路地裏関係なしに、かなり動きが制限された。
なので、途中でお店に寄っておんぶ紐を購入する。
ついでに長丁場になりそうなのに簡単に食事やトイレを済ませたあと、その後はよっこらせとエリちゃんを背負う。
「何だか、お母さんみたい」
「母ではないが、妾が拾ったことには違いない。
最後まで面倒は見るから、安心して良いぞ」
彼女のことは良く知らないが、指定ヴィラン団体の若頭である
両親が今どうしているかは、何となくだが想像はつく。
どう考えても、あまり明るくはない。
わざわざ触れるのは彼女のためにならないと考え、口にはせずに今だけでも母親代わりを務める。
取りあえず、エリちゃんを泣かせる行動はNGだろう。
「あっ、ありがとう」
「礼はいらぬ。困っている者を助けるのは、当たり前のことじゃからのう」
なお、お母さんみたいという発言だが、別に息子や娘はいない。
だがおんぶ紐で背負っているので、何となくそう見えるのだろう。
「それより今のうちに、個性の勉強をしておくのじゃ。
別にできなくても良いが、せっかくの機会を逃すのは惜しいからのう」
「がっ、頑張る!」
「うむ、少しずつで良いからのう」
彼女を安心させるために穏やかな表情を浮かべる。
しかしお母さん扱いは小っ恥ずかしいので、さっさと話題を変えた。
「窮屈な思いをさせて悪いのう。
今は妾の近くが、一番安全ゆえな」
「あっありがとう。わっ私は大丈夫だから」
いつ襲われるかもわからないし、個性の暴走も考えると、妾が確保しておくのが一番安全だろう。
取りあえず
「遅くても今日中には片付くゆえ、それまで我慢して欲しいのじゃ」
「私のことは、心配しないで良いよ!」
「そうか。エリちゃんは強い子じゃな」
「えっ、エリでいい! ううん、エリって呼んで欲しい!」
妾は、ちゃん付けを止めたエリの頭を優しく撫でる。
彼女もまんざらではなさそうだが、ぶっちゃけのんびりしている時間はない。
何しろ、これから
彼らも言い分があるだろうが、それはこっちも同じである。
後ろめたくなければ、証拠隠滅や時間稼ぎをせずに、抜き打ち調査をさせてくれるはずだ。
実際にそうなるかはまだわからないが、十中八九で妨害されると考えているし、やはりリアルタイムアタックのようになりそうだった。
「今回は妾が前に出る。イズクは後ろに控えて、エリを守ってやってくれ」
「はい! 師匠!」
「今回は悠長に戦っている余裕はないゆえ、妾が全員叩きのめしたほうが早う終わるからのう」
イズクが戦闘に参加すればその分だけ疲労が蓄積して、移動速度が落ちてしまう。
おんぶしているエリだけでなく、動けなくなった弟子も抱えて疾走するのは流石に面倒だ。
荷物が増えるだけ、ヴィランへの対応も難しくなる。
倒せても進行速度が低下して、最悪証拠品を処分され、治崎に逃げられてしまう。
そういう理由で必要最低限の準備が終わったら、さっさと突入するのだった。
恐らく戦闘能力の高い組員たちを、時間稼ぎもしくは警戒のために待機させているのだろう。
ちなみに妾たちは、今は彼らからは見えない位置に隠れている。
他のヒーローに応援を要請しているが、あまりにも急なので間に合うかは微妙なところだ。
サー・ナイトアイやバブルガールなど、事務所の面々は全員出動ではある。
他にも手の空いている警察隊も呼んだが、それでも数が足りていない。
「……全く、面倒なことになった」
「作戦を台無しにして、すまぬとは思っておる。
じゃが! 目の前で泣いている小さな女の子一人救えずして! 何がヒーローじゃ!」
たとえそのせいで作戦が失敗したとしても、妾は何度でもエリを助ける。
だから、自分の行動に後悔は全くない。
心残りがあるとすれば、重い腰を上げたことで仕事が増えて、面倒に思うぐらいだ。
「後先を考えずに余計な世話を焼くところは、オールマイトにそっくりだ」
「それは嫌じゃなあ」
「最高の褒め言葉を理解できないとは、オールマイトと違って、ユーモアのセンスはないようだな」
始終暑苦しくてアメコミから出てきたようなオールマイトと一緒にされるのは、全く嬉しくない。
しかしサー・ナイトアイの言葉に嘘はないようで、本当に褒めていたのか微かに笑っていた。
「だが、未来が見えないのは初めてだ。
そして他の者の未来も、お狐様の行動で変化した」
「つまり、どういうことなのじゃ?」
ただ単に妾に、サー・ナイトアイの個性が通じないだけかも知れない。
しかし彼は、それを別の意味で考えたようだ。
「私が予知した未来は、今まで何をしても変えられなかった。
だがお狐様の行動次第で、絶望の終わりを、希望の明日に変えられるかも知れない」
微笑んだと思ったら、何やら難しい顔をして考え出した。
サー・ナイトアイは随分と忙しい男のようだが、今は妾もそうだ。
しばらくまともに話ができなさそうだし、無駄に時間を浪費している余裕もない。
そろそろ突入することに決める。
「イズク、行けるか?」
「問題ありません!」
「エリも良いか?」
「だっ、大丈夫!」
問題はないようだ。
妾は、以降はイズクとは念話を主にすることを伝える。
そして全国からヴィランを集めている
妾たちの目的は、証拠品を確保し、
本当に犯罪行為をしているかは、まだ良くわかっていない。
なのでエリの証言だけが頼りだったが、事情を詳しく聞くと、想像よりも遥かにヤバいことをしていたことが発覚した。
彼女は若頭である治崎の個性の分解と再生で。生と死を延々と繰り返させられていたのだ。
さらに血を抜き取って違法薬物を生産しているようで、これだけで最低最悪のヴィラン確定である。
あとは確かな証拠さえ押さえれば完全に潰せるが、残念ながらこっちの動きも相手にバレているので、やはり時間との戦いになってしまう。
最初に戻るが、
今すぐ動ける者は極少数だが、この機会を逃すことはできず、やるしかない状況になったのだった。
難しいことを考えても事態が好転するはずもなく、妾は自分がやらかしたことではあるが、やれやれと溜息を吐きながら立派な木造の門に近づいていく。
ちなみに逃亡防止のために、今動けるヒーローと警官隊で包囲している。
やはり急ぎ集めたので、人数が足りておらず穴だらけだ。
今の気分としては、ゴレイヌさんである。
一人で何人分になれば良いのやらと嘆きたくなってしまう。
それでもイズクとエリを連れて、もっとも危険な最前列に出る。
話し合いがまとまって捜索や捕縛に応じてくれれば良いが、望みは薄そうだ。
妾はヴィランではなく肩書はヒーローなので、説得を放棄する理由にはならない。
駄目元でも門の前まで来たのでインターホンを押そうとすると、向こうに待機している構成員の殺気が、急激に膨れ上がる。
「来るぞ! 全員、下がっておれ!」
予想していた事態なので、心構えはできていた。
なので轟音と共に内部から門が破られて、大男が姿を見せても動揺はしない。
吹き飛ばされた警官隊は、他のヒーローに任せる。
妾が目測で三メートル程はある巨人と対峙すると、彼は右腕に力を集めて極限まで膨らませ、大声をあげながら殴りつけてきた。
「何の用ですかあーッ!!!」
凄まじい破壊力だが相手が悪かった。
衝撃波で周りの人たちが吹き飛ばされ、盛大に砂埃が舞う中で、妾は指一本で受け止める。
「なっ、そっ、そんな馬鹿な──」
「何の用かじゃと? ちいと、聞きたいことがあってのう。
まあ、それはあとでゆっくりとで構わん。……今は、眠っておれ!」
妾は大男に急接近して、無防備な腹に掌底を叩き込む。
波紋は流せないが衝撃が全身に伝わり、少し遅れて軽々と宙を舞った。
「のじゃのじゃのじゃのじゃぁっ!」
さらに追撃して全身の骨という骨を粉砕し、完全に意識を刈り取る。
ヴィランが何かする時は、十中八九でろくなことにならない。
意識を奪うだけでなく、しっかり無力化しておくのだ。
「のじゃあっ!!!」
最後に大振りの一撃をお見舞いすると、衝撃の余波で正門が完全に破壊された。
大男は出ていった時よりも遥かに速く屋敷の中に逆戻りしていき、最後には何故か庭に停まっていたゴミ収集車に、吸い込まれるようにホールインワンした。
ただし大きすぎて入らなかったようで、もたれかかるように白目を剥いて気を失っている。
当然、今の騒ぎは聞こえているし、庭にいた構成員たちが驚いた表情でこちらを見ている。
打ち合わせ通りに妾とイズクが走り出し、ヒーローと警官隊もあとに続く。
「ヒーローと警察じゃ! 違法薬物製造と販売容疑で、捜索令状が出ておる!」
「捜索令状? 知るか!」
三人のヤクザが庭で待機していたが、彼らは大人しくする気はないようだ。
個性を使おうとしたので、その前に急接近して殴りつける。
「ノジャー!」
「「「アバーッ!!!」」」
大ダメージを与えて無力化したヤクザが、ボロ雑巾になって宙を舞う。
いちいち構っていられないので、トドメの一撃でゴミ収集車に叩き込んだあとは後続に任せる。
「このまま敵戦力を減らすぞ!」
「はい! 師匠!」
妾たちは足を止めることなく、最短ルートを駆け抜けていく。
感覚を研ぎ澄ませば、敵が何処に居るかは手に取るようにわかる。
たとえ身を潜めたり、個性で姿を隠そうと無駄なことだ。この世界から存在そのものを抹消しない限りは、至近距離なら妾にはお見通しである。
「ザッケンナコラー!」
「ナンオラー!」
「スッゾコラー!」
なお、別に彼らはクローンヤクザではない。
しかしお決まりの台詞を口にして立ち塞がるなら、容赦はしない。
妾は手加減して殴りつけ、さっさと片付ける。
「ノジャー!」
「「「アバーッ!!!」」」
三人のヤクザをボロ雑巾にした妾は、器用にゴミ収集車に蹴り飛ばし、次の敵を求めて走り抜ける。
「ダッテメッコラー!」
「ドグサレッガー!」
「ノジャー!」
「「アバーッ!!」」
次々と現れる
今回はエリの護衛と移動に専念するようにとイズクに頼んでいたので、とてもスムーズなのだった。