近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

74 / 98
事件解決なのじゃ

 地下通路の天井を突き破って地上に飛び出した妾たちは、さらに巨大化した治崎と対峙する。

 

「滅茶苦茶だ! ゴミ共が!」

 

 今の治崎は、二階建ての家屋よりもデカい。

 横幅もトンデモないし、手足もいっぱい生えている。

 しかし恐れる必要はなく、落ち着いて彼の主張を右から左に聞き流す。

 

「エリの価値もわからんガキに! 利用できる代物じゃない!」

 

 無数の岩の槍を作り出して攻撃してきた。

 しかも今回は広範囲の無差別ではなく、妾だけを狙っているようだ。

 

 先程よりも数が多くて威力が高くても、迎撃は容易である。

 

真空(しんくう)ッ! 竜巻旋風脚(たつまきせんぷうきゃく)ーッ!」

 

 無数の岩の槍が一点に集中した所で、空中で高速回転する蹴り技で竜巻を起こして、間近に迫っていた多数の槍を全て粉砕した。

 

 さらにそれだけでは終わらず、巨大化した治崎に急接近する。

 格闘ゲームで言えば敵の超必殺技を迎撃して、ただ今のけぞり中なので、コンボチャンスだ。

 

 いつの間にストリートファイトになっているが、リュウなのかケンなのか不明である。

 しかしそれはそれとして、絶好の機会を逃す気はない。

 

 きっと地上に出た時点で、治崎とのラウンド2が始まったのだろう。

 取りあえずそういうことにして、隙だらけのヴィランに情け容赦なく超必殺技をブチかます。

 

神龍拳(しんりゅうけん)ーッ!!!」

 

 治崎の真下から突き上げるように、きりもみ回転しながら勢い良く飛び上がった。

 地下通路で放ったように拳、肘、膝で連続攻撃する。

 さらに炎の追加効果で、外から見るとまるで体格が変わってないかと錯覚するほど、激しく炎上させた。

 

 ただし格ゲーのように多段ヒットはしない。

 それでも二階建ての家屋ほどもある巨体を、軽々吹き飛ばす破壊力を秘めているのだ。

 

「がはぁっ!? ……こっこの! どいつもこいつも! 大局を見ようとしない!

 俺が崩すのは! この世界! その構造そのものだ!

 目の前の小さな正義だけの! 感情論だけの! ヒーロー気取りがぁ!!!」

 

 空中に投げ出されたボロボロの治崎だが、まだしつこく正論をぶつけてくる。

 

 自分は免許を持っているが活動はしておらず、今回も成り行きだ。

 そして基本的に、考えなしの行き当たりばったりで行動する。

 さらに感情次第で、方針もコロコロ変わる。

 

 大局とか何それ状態だし、全くもって彼の主張は正しかった。

 

 しかし、それはそれこれはこれだ。

 エリを虐待した治崎を許す気は、毛頭なかった。

 

 妾は色々と難しいことを叫んでいる彼に急接近し、意識を集中させて呼吸を整える。

 

「イズク! やれるか!」

「はいっ! 師匠!」

 

 事前に念話で指示を出していたイズクは力強く頷いて、浮遊の個性で距離を詰める。

 そしてコオオオオと深く呼吸をし、波紋疾走(オーバードライブ)の出力を限界まで上げた。

 

 

 次に妾とイズクは至近距離で拳を振り上げ、いつもの台詞を叫んだ。

 

「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」

「「オラオラオラオラァーーーッ!!!」」

「がはぎべえええーーーッ!!?」

 

 治崎はさらに何かを言おうとしていたが、これ以上は聞くに堪えない。

 オールマイトの幽波紋(スタンド)を追加した合計三人による、怒涛のラッシュを叩き込んで、強引に口を封じる。

 

 治崎と融合した肉の塊を一瞬で削ぎ落とし、さらに本体に何十、何百という拳を浴びせた。

 

 甚大な損傷を与えられたことで、いくら分解と再構築が可能だとしても、再生するよりも早く大きなダメージを与えていく。

 

 やがては個性を使うことも、ままならなくなる。

 治崎は回復すらできなくなり、全身複雑骨折して気を失った。

 

 そこに妾たちは、トドメの一撃を叩き込んだ。

 

「のじゃあっ!!!」

「「オラァッ!!!」」

 

 ちょうど良い所に、燃えるゴミは月水金のゴミ収集車が停まっていた。

 なので余分な肉を削ぎ落として、元の人間サイズまで小さくなった治崎を、勢い良く叩き込んだ。

 

「KOなのじゃ!」

 

 戦闘時間としてはラウンド1と2を合わせても、数分程度だろう。

 治崎の話が長かったが、格ゲーの時間切れにはなっていないはずだ。

 

 勝利演出のようにイズクのマフラーや妾の髪が風になびいたが、多分気のせいだろう。

 

 

 

 それはそれとして、少し遅れて地上に降りた妾たちは、完全に気を失った治崎に近づいていく。

 

「エリ! お主の個性が必要じゃ! 力を貸してくれぬか!」

「うん! 良くわからないけど、いいよ!」

 

 エリに個性を発動してもらい、彼と融合したヴィランを強制的に分離する。

 そうなる前の状態まで、時間を巻き戻したのだ。

 

 失敗したらその時はその時ですぐ中断して、当分融合状態で過ごしてもらうつもりだったが、ぶっつけ本番とはいえ成功して良かった。

 

 

 

 

 

 

 こうして色々あったが、死穢八斎會(しえはっさいかい)は壊滅した。

 ヴィラン犯罪や違法薬物の証拠も大量に出てきて、怪我人や大勢の逮捕者がでた大事件だ。

 

 死者がゼロなのが、不幸中の幸いだった。

 

「どういう理屈かはわからんが、お狐様。お前は未来を捻じ曲げた」

「さようか」

 

 一先ずあとは警察に任せて事務所に引き上げた妾たちは、サー・ナイトアイに呼び出される。

 

 そして執務室で同じ事務所のメンバーと一緒に、予知について聞かされた。

 

 彼によると最初の予知では、死穢八斎會(しえはっさいかい)に乗り込んでも、ヒーローや警察側の重軽傷者多数でてしまう。

 さらにエリは誘拐され、治崎は取り逃がして証拠品も未回収。

 

 サー・ナイトアイとイズク、その他の主要メンバーも殆どが死亡するという痛ましい結果になるらしかった。

 

 少なくとも最初の予知ではそうなっていたが、現実は違った。

 

 死穢八斎會(しえはっさいかい)の構成員は全員捕縛され、エリも無事で証拠品も全て押さえた。

 被害もあまり出ておらず、死傷者はゼロだ。

 

 ヒーロー側の完全勝利と言っても過言ではなかった。

 

 しかし妾にとっては、だからどうした状態である。

 

「興味なさそうだな」

「うむ、全く興味はない」

 

 そして妾は、自分の信念をはっきり口に出す。

 

「困っている人がおれば助けるし、目の前でヴィランが暴れていれば叩きのめす。

 その結果、未来がどうなろうと関係ないわ」

 

 妾は絶望の未来を知っても、深く考えたり思い悩んだりはしない。

 いつも行き当たりばったりで行動している。

 

 あまり賢くないので、知略を巡らすのには向いていないのもあった。

 

「ふっ、やはり貴様はオールマイトそっくりだ」

「やっぱり嬉しくないのう」

 

 サー・ナイトアイにとっては褒め言葉なのだろう。

 しかしやはり、あんな始終暑苦しいアメコミ熱血ヒーローと一緒にされても、全然嬉しくなかった。

 

 それはそれとして、妾は彼が腕に巻いている包帯が気になって声をかける。

 

「ところで、怪我はもう良いのか?」

「この程度、掠り傷だ。問題はない」

 

 サー・ナイトアイは、任務中に拳銃で撃たれたようだ。

 しかし本当に怪我は大したことはないようで、すぐに仕事に復帰する。

 

「いや、そっちではなく、個性のほうじゃ」

 

 彼は少し考えて、隠さずに教えてくれた。

 

「……個性か。今は、数秒先を予知するのがやっとだな」

 

 どうやら特殊な弾丸が使われたようだ。

 怪我は軽くても、サー・ナイトアイの個性が破壊されてしまう。

 

 不幸中の幸いなのは、薬は未完成だったので、個性が消失しなかったことだ。

 

「先程も言ったが、あの時の未来は絶望に閉ざされていた!

 それと比べれば、遥かに希望に溢れているじゃあないか!」

 

 今のサー・ナイトアイはいつもの仏頂面だが、少しだけ微笑んでいるようにも見える。

 確かに個性が消えたわけではないし、時間が経てば少しずつ回復する可能性が高いと、医者も言っていた。

 

 ただ、完全回復はいつになるかはわからない。

 場合によっては、何十年経っても今とあまり変わらないかも知れない。

 

 しかし、それでもサー・ナイトアイは嬉しそうだった。

 この場の皆も、決して悲観してはいない。

 

(エリの個性もまだ不安定じゃし、試すにしても段階を踏まねばのう)

 

 治崎は、あのあとタルタロスに送られたから、二度と手が出せなくなる。

 なのでエリの個性を使い、元に戻しておく必要があった。

 一か八かの賭けだったが彼はヴィランだし、失敗しそうになったら途中で止めれば良いやと気軽に考えていた。

 

 ただサー・ナイトアイはそうではなく、後遺症や悪影響が出たら大変だし、絶対成功する保証もない。

 なので普通に時間経過で回復を待つか、しっかり訓練したあとに試すかの二択になるだろう。

 

 

 

 

 何はともあれ事件は一応解決したので、妾の出番はこれで終了だ。

 

 あとは通常のインターンに戻り、イズクの仕事ぶりを日向ぼっこしながらのんびり眺めているのだった。

 

 

 

 ちなみに死穢八斎會(しえはっさいかい)は壊滅したが、護送中にヴィラン連合に襲撃され、治崎は両手を失い、証拠品も奪われてしまう。

 さらには彼らの仲間も奪還される。

 

 後日ニュースで知った妾としては、試合に勝って勝負に負けた気分を味わわされるのだった。

 

 

 

 そしてエリは、雄英高校で面倒を見ることになる。

 いつまた個性が暴走するかわからないし、それを止められる存在は限られる。具体的には妾か相澤先生ぐらいだ。

 

 エリにとっては母親と父親代わりのようだが、あくまで当面の保護者なだけである。

 しかし否定すると精神的に不安定になりそうなので、一先ずは受け入れつつあえて触れずに流す。

 

 

 

 

 取りあえず、身の安全は確保できる。

 他の者に利用されることもなくなった。

 

 基本的には暇を持て余している妾が、エリの面倒を見ることになる。

 自分は別に雄英高校の生徒や教師ではなく、日向ぼっこをしたい欲はあっても、エリは自分が拾った女の子だ。

 

 他に引取先が見つかるか自立するまで、面倒を見るのが筋だろう。

 

 なのでママエアロと渋々ながら承諾し、イズクが授業中は一年A組の隣の空き教室で、子育てをすることになった。

 

 もちろん未経験なので手探りだ。

 幸い校内には、余計なお世話を焼いてくれる知り合いだらけである。

 エリも友達が大勢できて嬉しそうだ。

 

 

 

 だが、全てが上手くいっているわけではない。

 死穢八斎會(しえはっさいかい)の事件で、世間は大きな衝撃を受けた。

 

 特にサー・ナイトアイ事務所の処理能力を越えてしまい、インターンが続けられなくなる。

 

 本来なら他のヒーロー事務所や警察に事前に協力を要請し、足並み揃えて動くところだったのだ。

 

 しかし今回はサー・ナイトアイが一手に引き受けて、大立ち回りの末に解決した。

 

 普通ならあり得ないが、事件発生から解決までの過程が、たったの一日のうちに行われる。

 

 各関係者の根回しや面倒な処理は後回しにするしかなかったとはいえ、ここに来て一気に揺り戻しが来てしまう。

 

 さらには死穢八斎會(しえはっさいかい)は、全国規模で違法薬物の販売を行っていたようで、ヒーロー社会に緊張が高まっていく。

 

 そういう事で、まだインターンの途中ではあるが、少なくとも死穢八斎會(しえはっさいかい)の件が片付いて社会不安が解消されるまでは、全ヒーロー事務所でインターンは中止の決定が下されたのだった。

 

 

 

 一方で仮免許に落ちた生徒は、地道に講習を受けるなどして頑張っているようだ。

 今度こそ無事に合格できると良いが、こればかりはどうなるかわからない。

 

 だがそれはそれとして、雄英高校では文化祭が迫っていた。

 ヒーロー科も例外ではなく、何かしらの出し物やらなければいけない。

 一年A組の皆は頭を悩ませながらも、協力して前に進んでいくのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。