近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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三話連続投稿なので読み飛ばしにご注意ください。


ハイエンドモデルの脳無なのじゃ

 死穢八斎會(しえはっさいかい)を壊滅させてからは、平穏な日々がしばらく続く。

 妾はのんびり日向ぼっこしたり、エリの母親役として世話を焼いたりする。

 

 ヴィランと戦ったり、事件や事故に巻き込まれるよりは断然マシだ。

 

 そしてイズクは、雄英文化祭のために忙しく動いている。

 ようやく普通の高校生活っぽくなってきた。

 クラスメイトと親交を深めて、毎日が楽しそうだ。

 

 後方腕組み師匠ポジの妾としては、ただ黙って眺めているだけで、何となくだが仕事をした気分になれる。

 実際はそんなことはないけれど、現時点では妾の力を必要としていないのは良いことだ。

 

 エリの育児や個性の訓練に集中できるし、あまりあっちもこっちもと手を伸ばすと処理能力の限界を越えてしまう。

 

 真面目に集中すればやってやれないことはほぼない、多機能な狐っ娘ではある。

 しかし基本的に考えなしの行き当たりばったりの脳筋だし、そんなことより日向ぼっこのほうが大事だ。

 

 あとは、興味を持つ範囲がかなり狭い。

 ヒーロービルボードチャートJPも、存在こそ知ってはいるが、やっぱり興味はない。

 

 表彰するので会場に来ての登壇をお願いされたけど、弟子の授業もあるし面倒そうだから辞退した。

 

 ランクインしても妾の生活に大きな変化はなく、逆に面倒事が増える可能性もあるし、あまり乗り気ではなかったのだ。

 

 そういうことで露骨に嫌そうな顔をしてお断りすると、意外なことにすぐ引き下がってくれた。

 どうやら妾が不参加なのは予想していたようで、わかっていても直接足を運んで頭を下げるのが礼儀のようだ。

 

 

 

 とにかく、ヒーローランキングには興味はない。

 

 それにあとで、イズクや一年A組の皆が興奮気味に教えてくれる。

 わざわざテレビやニュースを見る必要はなかった。

 

 それによると、自分はどうやら第零位という特殊な順位のようだ。

 良くわからないが一応はトップ10入りという扱いで、何かが変わるわけではない。

 

 だがイズクだけでなく雄英高校の生徒や教師、さらには知り合いのプロヒーローたちまで大勢押しかけて、大々的に祝われた。

 飲食は弟子を経由しての感覚共有のため、師匠想いのイズクに感謝しつつ、皆の祝福を素直に受け止める。

 

 こちらからも、祝ってくれてありがとうとお礼を返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 そして時は流れて、九州地方にヴィランが現れた。

 しかもただのヴィランではなく、脳無だ。

 

 全国ニュースで流れたのでイズクや他の生徒が注目し、妾も何となく気になって覗き込む。

 

「むっ、これは不味いのう」

「そうなんですか?」

「うむ、勝てはしても、エンデヴァーも無事では済まぬじゃろうな」

 

 脳無が映ったのはほんの少しだが、妾は猛烈に嫌な予感を覚える。

 恐らく今までとは違う、ハイエンドモデルだ。性能が大きく向上しているのがわかる。

 

 少なくともトップヒーローと互角か、相性次第では手も足も出ずに一方的に倒される者も出てきそうだ。

 少し見ただけで大まかな予想を立てた妾は、イズクに声をかける。

 

「行くぞ。イズク」

「えっ? 行くって、何処へですか?」

「エンデヴァーの元にじゃ」

「ええっ!? いっ今からですか! 九州地方ですし、遠すぎますよ!」

 

 イズクの行っていることは正論だが、それは人間の常識だ。

 妾には当てはまらないので、先に学生寮の外に青龍を呼び出しておく。

 

「案ずるな。遅くとも日付が変わる前には、帰って来れるじゃろうよ。

 今さらあの程度の脳無に、苦戦などせぬしな」

「さっ、流石は師匠です!」

 

 イズクは感嘆の声をあげて、続いて他の生徒たちの顔を見てコクリと頷く。

 

「わっ……わかりました! 行きます!」

「担任の相澤先生には、九州に行きたくなった……いや、エンデヴァーの加勢に行ったと伝えておけば良かろう」

 

 気まぐれで京都に行きたくなったようなものだ。

 しかし実際、そのぐらいいい加減な理由である。

 

 ニュースで流れた知り合いが心配だから、ちょっと様子を見に行くのである。

 他の理由などないし、妾にとってはパッと行ってパッと帰って来るだけだ。

 

 ただ、担任の先生に連絡をしている時間はない。

 そっちは偶然この場に居合わせたクラスメイトたちに任せる。

 

 そして妾たちは、寮の外で待たせている青龍に飛び乗る。

 超特急で、九州地方に向かうのだった。

 

 

 

 移動にどのぐらいの時間がかかったのは、正確にはわからない。

 加勢に間に合うことが重要なので、とにかく早ければよいのだ。

 

 なお、殺人的な加速なので、一般人にはオススメしない。

 

 過去にも移動手段として使ったことがあったが、神野区ではオールマイトが先行して向かっていた。

 彼なら大丈夫だと思っていたし、目的地が近場なのもあってのんびりペースで向かったことを思い出す。

 

 あとは全盛期のオールマイトなら、このぐらいできても不思議ではない。

 妾が同じことをしても、そんなに騒がれないだろう。

 

 

 

 

 そのように色々と思うところはあるが、結局はそういうのは全部一旦横に置いておき、本当に軽い気持ちでパパッと移動する。

 

 関東から九州地方まで、一分かからずに到着した。

 弟子は悲鳴をあげながら青龍にしがみついていたが、無事なので良しとしていく。

 

 

 

 遠くに脳無を確認したので、少しずつ速度を落としていった。

 どうやら向こうも、こっちに気づいたようだ。

 

「強い奴! 来た!」

 

 今回の脳無は喋るらしい。

 妾がエンデヴァーよりも強いことを感じ取り、彼を無視して青龍に乗っているこっちに突っ込んでくる。

 

 さらに空を飛びながら腕部を巨大化させて、力任せにぶん殴ってきた。

 

「AFOの個性に似ておるな。……まあ、それだけじゃが」

 

 妾は狐火を放出し、接近してくる巨腕を残らず消し炭にする。

 再生能力持ちの脳無なので、ダメージは気にしなくて良さそうだ。

 

「ちと遅れたが! 助けに来たぞ! エンデヴァー!」

「すまん! 助かった!」

 

 再生しきるまで、少しだけ時間があった。

 なので今まで一人で踏ん張っていたエンデヴァーに、加勢に来たことを伝える。

 

 ホークスは地上で量産型の脳無を多数相手にしており、あまり余裕がなさそうだ。

 

「まずは邪魔者を排除する!」

 

 妾は右手を天に向け、意識を集中させて大声で叫ぶ。

 

龍星群(ドラゴンダイヴ)!」

 

 新しく呼び出された青龍は天に登っていき、やがて大きく弾ける。

 そして無数の小さな龍に姿を変えて、地上に次々と降り注いだ。

 

 事前にロックオンしておいた量産型の脳無に襲いかかり、次々に焼き払っていく。

 

「これで邪魔者は消えた。勝負といこうか」

「俺も──」

 

 エンデヴァーが声をかけてきたが、妾は首を振ってはっきりと断わる。

 

「エンデヴァーは熱が籠もって辛かろう。

 今はホークスたちに合流して、住民の避難をしたほうが良い。

 此奴は、妾と弟子だけで事足りる」

 

 エンデヴァーは一人で脳無を押さえていたからか、隠してはいるが息切れしていた。

 なので妾が住民の避難を任せると、少し迷ったが承諾する。

 

 これで空中に居るのは妾と弟子、それに脳無だけになった。

 

「待たせて悪かったのう」

「いいや! 力を! 俺の! 強さを! 試させて! くれえっ!」

 

 どうやら戦闘狂のようで、邪魔が入らずに強者と一対一で戦えれば、それで良いようだ。

 妾にとってもありがたいが、情をかける気は毛頭ない。

 

「死ね!」

 

 高速で突っ込んできた相手を、今度は力任せにぶん殴る。

 

「のじゃあっ!」

 

 受け止めきれずに巨腕が崩壊し、骨や肉が飛び散る。

 だが、すぐさま再生が始まった。

 

「ううむ、面倒な相手じゃ!」

「やはり! 今までの奴より! 強い!」

 

 一発殴れば体組織が耐えきれずに吹き飛ぶが、それでも再生してすぐに元通りになってしまう。

 

 ならばまずは回復能力を奪うかと、今度は右手に狐火を集中する。

 

魔術師の青(マジシャンズブルー)!」

 

 これまでよりも強力な炎を放出して、脳無をチリ一つ残らず燃やし尽くした。

 

「ざん! ねん!」

 

 だが脳無は、咄嗟に首から上を分離して投げ捨てることで、炎から逃れたようだ。

 

 攻撃直後の妾に向かって、触手を高速で伸ばし、刺し貫こうとする。

 

「甘いわ! そのような小細工が、妾に通じると思うておるのか!」

 

 戦闘中は集中しているので、近距離の空間把握能力は非常に高い。

 余程気を抜かない限り、この程度の不意打ちに気づかないはずがなかった。

 

 実際、最初から最後まで脳無の行動はしっかり見えている。

 全く動揺せずに、落ち着いて構えを取った。

 

青の戦車(ブルーチャリオッツ)!」

 

 一瞬のうちに青い炎を収束し、剣の形に変えた。

 続いて妾は、飛んでくる無数の触手をズタズタに切り刻む。

 超高温の炎で燃やし尽くした。

 

「こいつはおまけじゃ!」

 

 さらに妾は、持っていた炎の剣を投げつけて、切り離した脳無の頭部を串刺しにする。

 原作では剣を飛ばしていたが、あいにくそんな仕掛けはない。

 

「焼き尽くせ!」

 

 とにかく剣の形に収束していた炎を解放し、脳無の頭部を焼く。

 たちまち炭化して飛行を維持することができなくなったからか、地上に落下していく。

 

 だがまだ生命エネルギーを感じるので、大きく溜息を吐いた。

 

「あの状態で、まだ生きておるわ。

 苦痛が長引くだけじゃというのに、無駄にしぶといのう」

「師匠にとっては、そうかも知れませんけどね! とっ、とんでもない敵ですよ!」

 

 後ろで青龍にしがみついているイズクが、的確なツッコミを入れる。

 

 だが妾にとっては、所詮その程度の敵だ。

 倒しても倒しても復活してくるなら、起き上がれなくなるまで叩き潰せば良い。

 どれだけ生命エネルギーがあろうと、無限ではないのだ。

 

 つまりボコボコにし続ければ、いつかは倒せる。

 いつも通りの脳筋的な作戦を実行に移すべく、妾たちはヴィランの後を追う。

 

 

 

 だが脳無は、こっちが到着するまで大人しく待つ気はないようだ。

 

 やたらめったら腕を振り回して暴れている。

 ヒーローたちが避難民を誘導しつつ、抑え込もうと囲んでいるが、危なくて手を出せないでいる。

 

 妾は青龍に乗って急接近しながら、イズクに念話で指示を出す。

 

「イズク! 合わせよ!」

「はい! 師匠!」

 

 奴の腕を避けて距離を詰めた妾は、イズクと共に大声で叫ぶ。

 

隠者の青(ハーミットブルー)!」

「黒鞭!」

 

 同時に放たれた青い茨と黒い鞭が、脳無の動きを完全に封じる。

 しかし奴は、いくつ個性を持っているかわからない。

 

 拘束は解けなくても周囲に被害が出ないとは限らず、早めに片付けたほうが良い。

 

 なので妾は、エンデヴァーに大きな声で呼びかける。

 

「今じゃ! エンデヴァー!」

 

 前もって打ち合わせをしたわけではない。

 だがエンデヴァーなら、やってくれると信じていた。

 

「任せろ! プロミネンス! バーストォーーーッ!!!」

魔術師の青(マジシャンズブルー)ーッ!」

 

 ナンバーワンヒーローは大技を放ち、脳無の全身が急速に炭化していく。

 さらに妾は空いている左腕を振るい、先程よりもさらに強烈な炎を放出した。

 

 辺りの住民は少し離れた場所に避難しているので、周辺被害を気にする必要はない。

 

 器物損壊がちょっと怖いけど、エンデヴァーや他のヒーローも巻き込んだので、妾だけが責任を取らされることもないだろう。

 

 そういう事で、思う存分力を振るう。

 本来は情報を聞き出すために生かして捕縛するのがベストだが、脳無は細胞の一片すら残さず、綺麗サッパリ焼き尽くしたのだった。

 

 

 

 ちなみにその後、エンデヴァーの強火ファンの少年がニュースで取り上げられて、一大ブームになる。

 妾は関係ないし興味もないけれど、ヒーローに対する風向きが少しずつ変わり始めたのだった。

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