近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
那歩島で社会勉強なのじゃ
脳無のハイエンドモデルを倒した妾は、用事は終わったので後処理は現場のヒーローたちに任せて、雄英高校に帰る。
ちゃんと九州土産も購入したので、その辺りはバッチリだ。
ただ現地の人たちの厚意で、予定以上にたくさん貰うことになる。
クラスメイトだけでは捌ききれないから、相澤先生に押しつけて学校中に配ってもらう。
とにかく、妾たちは雄英高校に戻った。
だがその後、新しくトップヒーローが駆けつけたり、ヴィラン連合が現れたりと色々あったようだ。
戦いにはならず、脳無の回収を諦めてすぐ撤退する。
細胞の一片すら残さずに焼き尽くしたので、回収できるはずもない。
それに被災地には続々とヒーローたちが集まってきていたし、どのみち逃げ帰るしかなかったのだろう。
九州の事件から、しばらく経ったある日のことだ。
ヴィラン連合が、重要な物資を輸送しているという情報を掴む。
ナンバーワンや他のプロヒーローが追跡や奪還を行ったが、崖下に落ちた輸送トラックには、空っぽの生命維持装置しか残されていなかった。
恐らく脳無を運んでいたのだろうが、それ以上はわからず終いだ。
それはそれとして雄英高校のヒーロー科。一年A組は、本州から遠く離れた島、
プロヒーローの仮免許を取得したとはいえ、まだ高校生だ。
だがオールマイトの引退とヴィラン連合の台頭で、次世代のヒーローの育成が急務になる。
そこで高齢を理由にプロヒーローが引退した
次のプロヒーローが来るまで代わりを務めることになったのだ。
ようは経験を積ませるための舞台を、わざわざ用意したのである。
島にヴィランはいない。外から来る人も観光客ぐらいだ。
これならヒーロー仮免許を取得したばかりの高校生でも、問題なく務まる。
そういうことで民宿を間借りし、臨時の雄英ヒーロー事務所にさせてもらった。
電話対応も自分たちでやらないといけないが、一足早くヒーロー活動を行えるので貴重な経験と言える。
ただし規定により、教師やプロヒーローのバックアップは一切ない。
全て自分たちで解決しなければいけないけれど、
何事も経験で、この島の出来事はきっと彼らの糧になるはずだ。
まあ、やらかした際の責任は、各々が取らなければいけないのは要注意だけど、行き当たりばったりで動く妾とは違うし、大丈夫だ。
ちなみに妾はいつも通り、のんびり日向ぼっこさせてもらう。
本州よりも赤道に近いようで、温かな日差しを受けて、絶好のお昼寝日和だ。
イズクが二人組の子供たちに詰め寄られてタジタジになっていても、手を貸したりはしない。
何事も経験だと、後方腕組み師匠ポジとしては黙して語らずだ。
じっと見守っているが、これも一足早い社会勉強である。
こんな何もない島にヴィランが来るはずもないと、長閑な風景を眺めて再確認する。
たまには、こういうゆったりとした時間も良いものなのだった。
その日の夕方、一年A組の皆は島民の心を掴んだのか、皆さんが宿舎に差し入れを持ってきてくれた。
次のプロヒーローが来るまで、よろしくねということらしい。
人の優しさが身に沁みる一時であった。
なお、その日の夜にヴィランを見たと呼び出された。
城趾に行ったら巨大なカマキリが襲いかかってきたが、しかしそれは幻だ。
昼間に出会った男女の子供たちの狂言だとわかり、爆豪少年がブチ切れてイズクが宥めるという、一幕があった。
それはそれとして夜が明け、次の日の朝になる。
任務に出かけたイズクは昨日の少年、カズマ君に出会う。
彼はお姉さんの代わりに謝って、さらに姉がヒーローが嫌いだと教えてくれる。
だが実は弟の身を案じて、危険なことをして欲しくないだけだった。
「カズマ君は、どんなヒーローになりたいの?」
「悪いヴィランをやっつける。……強いヒーロー」
モジモジしながら答える大きな帽子を被った彼は、強さに憧れるのは男の子らしいなと思った。
「そうなんだ。僕は、師匠のように困っている人を助けるヒーローになりたいんだ」
「困っている人を、……助ける?」
カズマ君が、きょとんとした顔でイズクに尋ねる。
弟子は順序は違うけれど、目指してるモノは同じヒーローなのだと教えた。
だが妾は、そこで自分の名前を出す意味はあるのかと心の中でツッコミを入れる。
実際に少年は、イズクの次に妾をじーっと見ているし、ちょっと恥ずかしい。
とにかくお互いに頑張ろうと握手をしたので、これにて一件落着だ。
このまま、いつも通りの日常が戻って来ると思いきや、夕方になって事態は急変する。
フェリーが防波堤を突き破って、港の奥深くまで入り込んできたのだ。
勢いは止まらずに陸に乗り上げ、そのまま横転する。
さらに乗り込んでいたヴィランたちが個性を使い、停泊していた船を一つ残らず破壊してしまう。
雄英ヒーロー事務所にも、当然連絡が入った。
だが残念ながら、通信設備を破壊されたのか、電話が途中で切れてしまう。
「師匠! これは一体!」
「本当にヴィランが出たのじゃろう。おかげで、おちおち昼寝もできんわ」
狐耳は、別にデビルイヤーではない。
それでも人間を遥かに越えているので、島で何が起きているかぐらいはわかる。
ヴィランが派手に暴れているのか、コマンドーの合図のように賑やかだ。
「とにかく漁港に向かいます!」
「うむ、それが良かろう。
じゃがヴィランは複数ゆえ、残りは事務所に待機したほうが良かろう」
「わかった! こっちも、いつでも動けるようにしておこう!」
委員長の飯田少年がはっきりと告げて、皆も表情が引き締まる。
現時点では、漁港に行けば確実にヴィランと遭遇するだろう。
しかし他の場所からも破壊音や悲鳴が聞こえてくるので、すぐに事務所に困った住民が駆け込んで来そうだ。
取りあえず妾とイズクは、他の皆とは別行動させてもらう。
プロヒーローの助けを期待できないし、まだ学生なので交戦は避けるべきだ。
しかし彼らは仮免許持ちだし、孤立無援な状況を打開しないと、どんどん追い詰められていく。
助けが呼べない以上は、今ある戦力で解決するしかない。
ここは妾が重い腰を上げてでも、招かれざる客は全員お帰り願うことに決めたのだった。
漁港に到着すると、陸地に乗り上げて横転しているフェリーと、破壊された各施設や船舶だらけで酷い有様だった。
間違いなくヴィランはこの島に来て、破壊活動をしている。
イズクは通報してきたマホロちゃんの無事が気になるようで、妾も確認しに行くのに異論はない。
「恐らく彼女たちがおるのは、あっちの方角じゃな」
匂いがするし声も聞こえるので、小さな島なら位置を特定するのは容易いことだ。
妾が道案内して、イズクは