近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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お狐様vsナインなのじゃ

 しばらく走ると、自宅が壊されたうえに、ヴィランに襲われそうになっている二人を見つける。

 

 敵との距離が近すぎて、このまま攻撃すると巻き添えになりそうだ。

 そこでイズクは要救助者を確保した後は、一旦離脱して雑木林に逃げ込む。

 

 そのまま駆け抜けた先で二人を解放し、弟子が優しく語りかける。

 

「大丈夫? 走れるかい?」

「「うんっ!」」

「早くここから離れて!」

 

 二人が手を繋いで、急いで駆け出すのを静かに見送る。

 

 続いて妾たちは、雑木林の小道を歩いてくるヴィランに顔を向けた。

 

「イズク、奴は複数の個性を持っておる。油断するでないぞ」

「複数の個性!? まさかAFOの仲間!」

「それはわからぬが、無関係ではないじゃろうな」

 

 妾も色んなことができるが、別にAFOの仲間ではない。

 ぶっちゃけ奴には近づきたくないし、生理的に受けつけないし気持ち悪いと感じていた。

 

 そして目の前のヴィランは、見た目も雰囲気もAFOと似ている。

 ボコボコにしてタルタロス送りにした奴のことを思い出して、微妙な表情になってしまう。

 

(いかんな。今は考えるよりも、ヴィランを倒すことを優先せんと)

 

 イズクは、雑木林を抜ける小道の出口で待ち構える。

 奴は律儀にもそこを通り、ゆっくりこちらに歩いてくる。

 

 いざとなれば身を隠して戦えるので、悪くない判断と言えた。

 地の利を得ることは重要で、ピンチのジェダイの騎士も逆転勝利する程だ。

 

 しかし、妾は少し違った。

 

(周辺被害が出たら、弁償せんといかんのではないか?)

 

 今回はプロヒーローや、雄英教師の助力は借りられない。

 一年A組の自己責任なのが決まりになっている。

 

 もちろん、言葉通りの意味ではないだろう。

 しかし何処から何処まで保険が適応されるのかは、明確にされていない。

 

 ヴィランに支払わせるのが鉄則だし正当防衛が成り立つだろうが、自分から壊したほうが被害がデカいのは問題だ。

 

 妾は内心で、色々面倒臭いなと溜息を吐いた。

 その間にイズクが大声で、ヴィランに呼びかける。

 

「止まれ! 何故あの子たちを狙う!」

「……退け」

「退くわけないだろ!」

 

 既にイズクは、波紋疾走(オーバードライブ)に入っている。

 

 いつでも戦闘可能だが、弟子はヴィランとはいえ、問答無用で殴り倒すような性格ではない。

 脳筋の妾に似なくて良かったと言える。

 

「邪魔をするなら、……殺す」

「でやああっ!!!」

 

 イズクは跳躍して飛び蹴りを放ったが、半透明の壁に阻まれて止められる。

 

「見えない壁!? 空気の壁か!」

 

 そして今度はヴィランが、指先からレーザー光線のようなモノを撃ってきた。

 

 なので、そちらは妾が迎撃する。

 

法皇の青(ハイエロファントブルー)!」

 

 飛び退いたイズクを援護するために、硬質化した狐火を放つ。

 敵の光線に正確に命中して破壊されるが、次々と弾丸を作り出しては休みなく射出できるので、何も問題はない。

 

「弾幕の速さ比べじゃ!」

「コイツ!」

 

 ヴィランは指先から光線を発射するが、それは十本が限界だ。

 しかし妾のほうは制限がなく、いくつでも同時に出せる。

 

 まあ途中で作るのが面倒になるから適当だが、それでも負けはしない。

 

 今は子供たちを守るためにも、目の前の敵を倒すことを優先する。

 そしてイズクは、妾が作り出した隙を逃しはしない。

 

山吹色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)ーッ!」

 

 死角から勢い良く飛びかかり、ヴィランに強烈な蹴りを叩き込んだ。

 しかし、これも空気の壁に防がれてしまう。

 

「イズク! 離れよ! 魔術師の青(マジシャンズブルー)!」

「お前も、個性を複数使えるのか!?」

 

 妾は雑木林に燃え移らないように気をつけて炎を放つと、ヴィランは驚きの声をあげた。

 

 だが奴は今度は突風を作り出し、炎を相殺する。

 こちらもすぐに、火の粉になった狐火を消した。

 

 雑木林に燃え広がるのを防いで距離を取り、仕切り直す。

 イズクも追撃を受ける前に離脱し、妾の隣に着地した。油断なく相手を観察する。

 

「この力! この個性! 奪う価値がある!」

「奪うじゃと! 個性を複数持っておるし、やはりAFO絡みか!」

 

 つまりコイツはAFOと同じなのだ。

 有用な個性を奪って、自分の力に変えて強くなっていく。

 

 もしワンフォーオールが奪われたら大変だが、今の彼が注目しているのは弟子ではなく、妾のようだ。

 

「じゃが、残念じゃったのう! 妾の個性は奪えぬぞ!」

「何故だ?」

「人間が、海ほどの量の水を飲み干せるはずがあるまい!」

 

 妾の生命エネルギーは桁違いだ。

 海水で例えたが、合っているかはわからない。

 

 しかし実際に一尾で十分戦えているので、目の前の彼との差は歴然だった。

 だがそのことを、ヴィランに教える必要はない。

 

「自信過剰だな!」

「ヴィランの言えた義理か!」

 

 突風と炎が再び激突した。

 先程よりも効果範囲を狭くし、出力を上げたので、今度は相殺させない。

 

「くっ!?」

 

 ヴィランは空気の壁を作って直撃を免れた。

 

 しかし高熱と突風の影響で、一時的に気流が大きく乱れ、雑木林をなぎ倒す程の風が吹き荒れる。

 

 妾は浮遊で踏ん張っているし、イズクも波紋で地面に吸着している。

 だが雑木林にかなりの被害が出てしまい、内心でやっちまったぜと冷や汗をかく。

 

 また仕切り直しかと思いきや、飛ばされたヴィランの背中から龍のような使い魔が現れた。

 

 大口を開けて真っ直ぐこちらに向かってくるが、妾も黙ってやられる気はない。

 目には目をで、右手を天に向けて大声で叫ぶ。

 

邪王炎殺青龍波(じゃおうえんさつせいりゅうは)ッ!」

「お前も召喚の個性を!?」

 

 互いの龍と龍が激突し、凄まじい衝撃波と火花が散る。

 爆心地である雑木林に留まると、倒木などでダメージを受ける可能性があった。

 

 妾はイズクに念話を送り、一旦ここから離れることにする。

 しかし、奴はまだ別の個性を隠し持っていたようだ。

 

 低空に雷雲が集まったと思ったら、今度はいきなり雷が落ちてきた。

 

「ちと揺れるが我慢せい!」

「うわあっ!?」

 

 咄嗟にイズクを抱えて緊急脱出し、妾たちは雑木林の外に飛び出した。

 

 青龍は雷が直撃して消えてしまったが、元々そんなに力を込めていない。

 また召喚すれば良いので、現時点では問題はなかった。

 

「雷を避けただと!?」

 

 何とか避けられたが、緊急なうえに無理やり弟子を回収したのだ。

 跳躍したあとに頭から地面に激突しそうになったので、空を飛んで強引に姿勢を元に戻し、何とか両足を地面につけて踏ん張る。

 

「避けられたのが、そんなに意外か?

 雷よりも速く動けば良いだけであろう?

 オールマイトも、このぐらいはできるぞ」

 

 実際にオールマイトが雷を避けられるかは知らない。

 だが平和の象徴だし、多分やれるだろう。

 

 妾は驚いているイズクを地面に下ろす。

 続いて、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるヴィランと対峙する。

 

「お姉ちゃん!?」

「お兄さん!?」

 

 しかし雑木林から飛び出した妾たちの近くには、先程逃がした二人の子供が居た。

 偶然なのか、それとも騒ぎが気になったり、心配で戻ってきたのかは知らない。

 

 だが、この状況はとても不味い。

 

「お前! 雷を避けられるんだったな! なら、避けてみろ!」

 

 流石に三人を抱えて避けるのは難しい。

 イズクは特殊な訓練を受けているが、子供たちは違う。

 殺人的な加速には耐えられず、下手をすれば三半規管だけでなく肉体がぶっ壊れる。

 

 悩んだのは一瞬で、すぐに結論を出す。

 

「イズク! 二人を連れて下がるのじゃ!」

「わっ、わかりました! でも、師匠は!」

「妾は! 堪えてみせる!」

 

 ヴィランは妾が少しでも逃げようとすれば、迷うことなく子供たちに雷を落とす。

 

 ならばと、三人を庇うように有効射程距離ギリギリに立つ。

 どうせノーダメージなので、気合で耐えたほうが面倒がなくて良い。

 

 いつの間にか、雨雲は島全体を覆うほどに巨大になっていた。

 やがてそこから、次々に凄まじい雷が妾をめがけて降り注ぐ。

 

「師匠ーーーッ!?」

「お姉ちゃーん!?」

「そっそんな! 僕のせいで! お姉ちゃんが!」

 

 どれぐらい時間が経ったのか、やがて雷は止んだ。

 しかし、雨雲はまだそこに存在していた。

 

「はーはははっ! これで邪魔者は消えた!

 もはや、俺を止められるヒーローはいない!」

 

 地面は焼け焦げて穴だらけになり、土煙がモウモウと舞う。

 一般人なら生きてはいないし、ヒーローやヴィランも直撃すれば戦闘不能は避けられない。

 

 しかし、妾はあいにく普通ではなかった。

 

 少しずつ土煙が薄くなる中で、ガイナ立ちをする余裕がある。

 それに戸惑うヴィランに不敵な笑みを向けて、大きな声を出した。

 

「妾を侮るでないぞ! ヴィラン!」

 

 来るとわかっていれば耐えられるし、気合を入れれば頑丈になる。

 

 そもそも海に何発雷を落としても、大した影響はない。

 膨大な生命エネルギーを有しているのは、それだけで強力な武器になるのだ。

 

「師匠!」

「「お姉ちゃん!」」

「ばっ、馬鹿な!? あれだけの雷を受けて! 無傷だと!?」

 

 ヴィランは驚いてたじろぎ、妾の無事を知った弟子と子供たちは大喜びだ。

 ちなみに当たり前だが妾は巨大ロボットではないし、第七ハッチも開いていない。

 

「これは何かの間違いだ! そうか! わかったぞ!

 立っているのもやっとのはずが、強がりを!」

 

 確かに普通のヒーローなら皆を安心させるために、大ダメージを受けても痛くないと痩せ我慢をすることは良くある。

 恐れ知らずの笑顔というやつだが、妾は本当に余裕なのだ。

 

 巫女服や体が土煙や瓦礫で汚れたので、表面をほんの少し再構成したけど、それだけである。

 

 しかし理解不能な現実を目の当たりにしたヴィランは、己の出した結論が正しいと信じているようだ。

 妾に再び雷を落としてきた。

 

「効かぬと言っておろうが!」

 

 雷は二度落ちてきた。しかし妾はそれを、右手と左手で受け止める。

 さらに逆に支配して操り、青雷に形態変化させ、次に両手をヴィランに向けた。

 

 その場のノリで大声で叫んだ。

 

「無限のパワーを! 食らえええええ!!!」

 

 両手の先から、受け止めた雷を増幅して放出した。

 

「ぐわあああぁーーーッ!!?」

 

 何処の暗黒卿だよとツッコミを入れる者が、この場に居なかったのが幸いだ。

 

 ヴィランは黒人のジェダイのようにライトセーバーを持っていないので、雷をまともに受けた。

 

 煙をあげて膝をつき、息も絶え絶えになってしまう。

 さらに体が麻痺して動けなくなり、絶好の機会が訪れる。

 

「イズク! アレを使うぞ!」

「はい! 師匠!」

 

 イズクに呼びかけ、詳しい説明は念話で済ませる。

 とにかくヴィランが回復する前に、片付けなければいけない。

 

 幸いと言って良いのかは知らないが、落雷の影響で周囲は穴だらけだ。

 これならヒーロー側が多少派手に壊しても、コラテラルダメージで押し通せる。

 

「はあああーっ!!!」

「コオオオオッ!!!」

 

 妾は大きく息を吸って気合を入れて、イズクは波紋疾走(オーバードライブ)の出力を限界近くまで高める。

 そしてまるで鏡写しのように双方構えを取り、同時に跳躍した。

 

 十分な高さを確保した後、浮遊で加速しながら大声で叫ぶ。

 

「スーパー!」

「イナズマ!」

 

 蹴りの姿勢に移行すると、まだ敵の雷が残っていたのだろう。

 バチバチと放電しながら加速し、イズクも緑色の雷が可視化されていた。

 

 滞空時間は極めて短く、すぐに無防備なヴィランに到達する。

 

「「キィーックーーーッ!!!」」

 

 体が麻痺して動けないヴィランは、空気の壁と龍を呼び出して防御しようとした。

 だが今の妾たちは、その程度では防げない。

 

 あっさり貫通して二人分の蹴りが直撃し、地面を抉りながら凄まじい勢いで吹き飛んでいった。

 

 普通の敵ならミンチより酷いことになるが、彼は頑丈なので再起不能になるだけで済むだろう。

 

 やがて吹き飛んだヴィランは偶然停まっていたゴミ収集車に、吸い込まれるように頭から突っ込んで止まった。

 

「やれやれなのじゃ!」

「やりましたね! 師匠!」

 

 取りあえずヴィランを一人倒したので、大きく息を吐いてポーズを取る。

 弟子も似て欲しくないところが似てしまったのか、ビシッとジョジョ立ちをした。

 

 まるで格ゲーの、勝利ポーズ集みたいだ。

 

 途中で子供たちに見られていることに気づいて、顔を赤くしてしまう。

 コホンと咳払いをし、慌てて姿勢を正す。

 

「二人共、怪我はないか?」

「お姉さんのおかげで、怪我はないわ! そっその! 守ってくれて、ありがとう!」

「ぼっ、僕も! 本当にありがとう!」

「どう致しましてじゃ。じゃが島に来たヴィランは、此奴だけでは──」

 

 妾が続きを話そうとしたところで、子供たち以外にも大勢の人々が集まっていることに、ようやく気づいた。

 

 敵意はなかったし、戦っている最中はもう少し遠い場所に居たのだ。

 なので特に気にせず、目の前のヴィランの排除に集中していた。

 

「島のヴィランは、今ので最後だぜ」

「さようか。爆豪少年たちが、ここにおるということは──」

「そうだ! 残りのヴィランは、俺たちがぶっ倒してやったぜ!」

 

 爆豪少年は強がりはしても、こういう場面で嘘をついたりはしない。

 それに他の一年A組の生徒たちと、大勢の島の住民も指摘しないようだ。

 きっと事実なのだろう。

 

「ならば、これにて一件落着じゃな。

 本当に、強うなったものじゃ」

「この程度じゃ! 狐女には勝てねえがな!」

 

 どうやら妾とヴィランの戦いを、遠くから見ていたようだ。

 爆豪少年は忌々しそうに舌打ちをする。

 

 しかし、彼らは本当に強くなった。

 面倒に思いつつも、戦闘訓練に付き合った成果と言える。

 

 とにかく一時はどうなることかと思ったが、島を覆う脅威は去って平和が戻ったのだ。

 あとは通信設備を修理して、外に連絡すれば全て解決なのだった。

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