近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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エンデヴァー事務所
インタビューの練習なのじゃ


 那歩島(なぶとう)の特別カリキュラムは、色々あったが無事に終了した。

 名残惜しいが仲良くなった島民の人たちとお別れして、妾たちは雄英高校に帰って来る。

 

 イズクは夢の中でワンフォーオールとの繋がりを強め、さらに力を引き出せるようになった。

 妾は悲しい過去には興味はないので右から左に聞き流しているが、弟子が熱心に教えてくれる。

 後方腕組み師匠として、微笑みながら相槌を打つぐらいはしていた。

 

 

 

 それはそれとして、一年A組と一年B組の対抗戦が行われた。

 心操少年も特別枠として参加し、大活躍する。確実に次世代のヒーローが育ってきていると実感した。

 

 なお妾は一切手を出さずに日向ぼっこをし、重要性が低い会話は右から左に聞き流していたら、いつの間にか終わっていた。

 

 最終的にはA組が勝利して、皆が大きく成長したという結果だけが残る。

 

 あとは心操少年は二年生になったら、ヒーロー科に編入するらしい。

 取りあえず、それだけ知っていれば十分だ。

 

 妾にとっては、のんびり平和に日向ぼっこするのが、何よりも大事なのである。

 

 

 

 なお、それとは別に泥花市(でいかし)でヴィランが暴れて、かなりの被害が出たようだ。

 幸い地方だったので死傷者は抑えられたようだが、それでも痛ましい事件が起きたことに違いはない。

 

 現場のヒーローは非難されずに、叱咤激励の言葉をかけられたことだ。

 エンデヴァーの強火ファンである見ろや君の発言以降、やはり風向きが変わりつつあるのかも知れない。

 

 

 

 そしてサー・ナイトアイが雄英高校を訪れて、エリの治療を受けるようになった。

 彼女は個性の訓練を頑張っていて、少しずつだが成果も出ている。

 

 おかげでサー・ナイトアイの予知も、数秒から数分に回復した。

 これには表面上は平静を装っていても、内心で曇っているだろうなと思えた通形少年や事務所の面々も、満面の笑顔であった。

 

 

 

 

 

 

 やがて時は流れて、インタビューの授業が行われる。

 妾は基本的に弟子任せで、そういった特別な授業も心の中で応援することしかできない。

 

 今回は相澤先生だけではなく、ミッドナイトとマウントレディを講師に呼んで行うようだ。

 

 簡易的だが、ヒーローインタビューの舞台も作成されている。

 そこで実際にカメラとマイクを向けられた際に、どのように受け答えするかを練習するらしい。

 

「技も披露するのか? インタビューでは」

 

 常闇少年が、轟少年のインタビュー練習を見て質問した。

 それに関して、マウントレディが答えていく。

 

「あらら、やだわ雄英生! 皆が貴方たちのことを知ってるわけじゃありません!

 必殺技は己の象徴! 何ができるのかは、技で知ってもらうの!

 特にチームアップ連携! ヴィラン犯罪への警鐘! 命を委ねてもらうための信頼!

 ヒーローが技名を叫ぶのには、大きな意味がある!」

 

 妾は完全に、その場のノリで叫んでいた。

 表面上は平静を装って我関せずだが、内心では顔が真っ赤になっている。

 

 でも自分が良く技名を口にするのは癖のようなものだし、直りそうにない。

 しかしマウントレディの説明なら、これまで通りで問題なさそうだ。

 

 だったら別に、気にしなくても良いかと開き直った。

 

「ちょっと前までは、カメラ映りしか考えてなかったはずだぜ。あの女」

「マウントレディだけじゃないよ。

 今、ヒーローたちは皆、引っ張られてるんだ。

 ナンバーワンヒーローと、ナンバーゼロにな」

 

 相澤先生はそう言い、妾に視線を向ける。

 しかし自分は別に、他のヒーローを引っ張っている気はない。

 

 始終マイペースで、行き当たりばったりに行動しているだけだ。

 成り行きで手を貸しても、ヒーロー活動をしている自覚は皆無である。

 

 なので今のは、相澤先生や他のプロヒーローの勘違いだ。

 

 とにかくその後もインタビューの練習が進んでいき、やがて弟子の番になる。

 

「デク君……でしたっけ? 活躍見ました」

 

 イズクがマイクを向けられて、ガチガチに緊張するのはいつも通りだ。

 しかし今回は別に、撮影されているわけではない。

 

 だが練習でもこの有り様なのは、初めて知った。

 挨拶さえまともに答えられていないことから、これは前途多難だと内心で息を吐く。

 

「ご自身では、どのようにお考えでしょうか?」

 

 まるで、ガチガチという効果音が見えるようだ。

 声を出すことさえ、思うようにできていない。

 

「貴方の技は、お狐様リスペクトが多いように思いましたが、やっぱり憧れてる?」

 

 だがマウントレディがこの質問をしたとき、弟子の様子が豹変する。

 

「はいっ!!!」

「ここは声デカいんかい!」

 

 今までろくに喋れなかったイズクが、初めて大声で発言した。

 皆は驚くし、マウントレディも条件反射でツッコミを入れてしまう程だ。

 

「でも! それだけじゃ駄目だと思って!

 自分なりに師匠の技を! カスタマイズしてみたりもします! 例えば──」

 

 これまでの緊張具合が嘘のように、イズクはとても良く喋る。

 マイクを構えたマウントレディは、ちょっと引いていた。

 

「……長え~」

 

 しかし、ようやく正気に戻ったようだ。

 ある程度話して満足したとも言うが、どうやらイズクは妾のことを尊敬しているらしい。

 

 後方腕組み師匠ポジとして振る舞ってきたし、嫌われていないのは大変ありがたい。

 

 だが、ヒーローの名門である雄英高校に入ったのだ。

 他に頼りがいのあるプロヒーローや、指導者を見つけて少しずつでも師匠離れしてくれるかと思いきや、イズクの激重感情は薄まるどころか、どんどん強くなっている。

 

 だが取り憑いてお世話になっている宿主に、早く独り立ちして自分をのんびり隠居させてくれとは言えない。

 

 しかし妾は、あまり頭が良くないし、師匠に相応しいとは到底思えなかった。

 やはり他に、適任者が見つかって欲しい。

 

 残念ながら今のところは、イズクのお眼鏡に叶う者は出てきていない。

 こういうのは他人がどうこう言っても、弟子が納得しなければ意味はないのだ。

 

 取りあえず雄英高校に入学してまだ一年目だし、焦らず長い目で見ていけば良いだろう。

 

 それにイズクの期待に答え続けるのも、人として正しいことしているので悪い気分にはならない。

 困っている人を助けるのは、当たり前だからだ。

 

 しかしいつか致命的な失敗をして、弟子に失望されるのは怖い。

 師匠やヒーローを真似ても、メッキのように表面だけそれっぽく振る舞うのがせいぜいだ。

 

 おまけに原典が前世のサブカルチャーから来ているので、正直不安しかない。

 内心では、いつ化けの皮が剥がれるのではないかとビクビクしている。

 

 さらに考えながら動くのは向いていないし、行き当たりばったりはいつものことだ。

 自分の行動の結果、何が引き起こされるかも良くわかっていない有り様である。

 

 毎回やらかしたあとに、やっちまったぜと頭を抱えてしまう。

 

 やはり誰か他の適任者が見つかって欲しい。

 その人がイズクの新しい師匠になって、妾は隠居や引退という形で徐々にフェードアウトしたかった。

 

 そしてのんびり日向ぼっこをする毎日を送りたい。

 現時点では候補者すら見つかっていないが、諦める気はないのだった。

 

 

 

 

 

 

 それから、しばらく時が流れる。

 年末を皆で仲良く過ごしたあと、大晦日はプロヒーローの護衛付きで一日だけ我が家に戻れることになった。

 

 まあイズクの場合は、妾の付き添いで単独行動がデフォルトになっている。

 なので、ぶっちゃけ今さらだ。

 

 九州地方でハイエンドモデルの脳無を倒したときも、学校に戻る前にこっそり家に寄って引子さんに九州土産を手渡していた。

 

 狐っ娘は腰は重いが、いざ動き出すとフットワークが異常に軽い。

 

 まあ考えなしの勢い任せの行き当たりばったりだから、イズクの家に寄るのも帰り道にふと思いついただけで、実際には深い意味はないのだ。

 

 とにかく、大晦日は久しぶりに緑谷宅で過ごす。

 イズクは家を離れているうちに、雄英高校であったことを、楽しそうに母に話している。

 

 妾は、たまに補足を入れる以外は特にすることもない。

 仲良し親子を、微笑ましく見守らせてもらう。

 

 しかし、涙もろいのは緑谷家の遺伝なのかも知れない。

 双方が感動の涙を流しまくる事態に、相変わらず慣れずに少々困惑する。

 

 だがいつも通りに、引子さんから今後もイズクをよろしく頼みます的なことを言われたので、小さな胸を張る。

 

「うむ、任せておくが良い」

 

 そうはっきりと、言い切ったのだった。

 

 

 

 やがて新年が始まり、インターンが再開される。

 次のヒーロー事務所は、エンデヴァーのところに決まった。

 

 メンバーもイズクの他に轟少年と爆豪少年で、一年A組の中では実力のある生徒だ。

 

 オールマイトが引退したあとのナンバーワンだが、プロヒーローの中でもっとも実力があると言っても過言ではない。

 きっと学ぶことも多いはずだ。

 

 ぶっちゃけ妾は後方腕組み師匠ポジをしているが、イズクに教えたことはあんまりない。

 

 アニメや漫画などの、前世のサブカルチャーから引用した、適当な知識や技術をそれっぽく伝えただけだ。

 正直、全然役に立てている気がしなかった。

 

 なので実績のあるプロヒーローがイズクの面倒を見てくれるなら、それに越したことはない。

 

 これで妾のなんちゃって指導から、弟子が解放されるのだ。

 表面は平静を装っているが、内心では万々歳なのだった。

 

 そういうことで、朝早くのバスに乗ってエンデヴァー事務所に向かう。

 途中で轟少年と爆豪少年に合流して、町中でナンバーワンヒーローと出会った。

 

「ようこそ! エンデヴァーの下へ! ……なんて気分ではないな!

 焦凍(しょうと)の頼みだから渋々許可したが!

 焦凍(しょうと)だけで来て欲しかった!」

 

 とんでもない親バカぶりだ。

 今もそれだけエンデヴァーは轟少年に期待しつつ、さらに愛情深いのだろう。

 爆豪少年の性格の悪さに反応して、友人は選べなどと説教を始める有り様だ。

 

「インターンを許可していただき! ありがとうございます!」

 

 一方でイズクはいつも通り誠実な対応だ。

 そんな弟子を、エンデヴァーをじっと見つめる。

 

 

 

 とにかく顔合わせは終わり、彼はついて来るようにと言って歩き出す。

 イズクたちはコスチュームではなく制服姿で、エンデヴァーの後をついて行く。

 

「ナンバーワンヒーローの活動! しっかりと学ばせてもらいます!」

 

 ヒーロー事務所も一番大きいようだし、イズクもきっと、学ぶべきことがたくさんある。

 そう考えてのんびりしていた妾だが、狐耳に妙な音を感知して周囲を見回す。

 

 それから少ししてエンデヴァーも気づいたようで、体に炎を纏いながら突然走り出した。

 

「申し訳ないが! 焦凍以外に構うつもりはない!

 学びたいなら後ろで見ていろ!」

 

 だがイズクたちも現場慣れしているので、エンデヴァーに遅れることなく走り出す。

 

 行き先には一人の老人が居て、個性でガラスを操作していた。

 何でも予言云々と言っていたが、妾にはサッパリである。

 

 とにかくエンデヴァーが犯人を取り押さえて、何故かホークスまでやって来てサポートを行う。

 

 おかげで事件は無事に解決したけど、異能解放戦線という書物が今回の原因らしい。

 デストロという人が書いたようで、今の時代を予見していた。

 

 だから捕まった老人が、予言書だと主張していたのだろう。

 

 ここまで考えたところで妾は面倒臭くなり、あとはイズクに任せる。

 妾は我関せずと、のんびり日向ぼっこさせてもらうのだった。

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