近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
エンデヴァー事務所でインターンをすることになった妾たちは、大勢のプロヒーローたちと出会う。
一応、ダイナミック轟家訪問の時に顔合わせはしている。
しかし正式な場では初めてなので、イズクはかなり緊張しているようだ。
プロヒーロー事務所では最大手なわけで、サイドキックも三十人以上も在籍していた。
それでも多忙だが、基本的に仕事は取り合いだ。
インターンでやって来た三人に、プロのお株を奪うつもりで頑張れとはっきり言われる。
そして依頼内容は多岐に渡り、一日百件以上も捌いているらしい。
流石は大手の事務所だと感心する。
だがそれでも妾には関係ないので、弟子の頑張りを後方から見守るだけだ。
自分が居なくても何とかなっているし、これはイズクの勉強である。
わざわざ重い腰を上げて、手を貸すこともない。
過度な干渉はイズクのためにならないし、妾がうっかりやらかす可能性もある。
なので非常時以外は、のんびり日向ぼっこしているのが良さそうだ。
幸い今回はエンデヴァーが教育してくれるので、わざわざ自分が動く必要はないのであった。
それはそれとして、救助、避難、撃退の三項目がヒーローに求められる基本らしい。
ナンバーワンは、これらをイズクたちに叩き込む。
付いて来られなければ置いて行くぐらいのスパルタだ。
だがそれぐらいやらないと、トップにはなれない。
今のところはエンデヴァーについて行くのが精一杯だが、ビルからビルに飛び移りながら会話をする余裕はあるようだ。
「サイドキックと! 連携しないんですか!」
エンデヴァーは移動に関して徹底しており、あとの処理はサイドキックに任せて、連絡が入ればすぐ次に向かう。
「先の九州でも、ホークスに役割分担してもらったが!
本来ヒーローとは! 一人で何でもできる存在でなければならないのだ!
そこのプロヒーローもそうだろう!」
一体誰のことを言っているのかと、少しだけ考える。
のんびり日向ぼっこをしていた妾は、この場にプロヒーローは二人しか存在しないことに気づき、おもむろに口を開く。
「やる気はないが、やろうと思えば大抵のことはできるのう」
免許はあっても、ヒーロー活動は仕事ではなく趣味だ。
気が向かなければ重い腰を上げることもなく、今も日向ぼっこをしていた。
「それだけの才能がありながら! 勿体ないことだ!」
「じゃが、ヴィランになるよりはマシじゃろう?
どれだけ素質があろうと、性格的に向き不向きはあろうよ」
「その通りだがな!」
強力無比の個性を持っていたAFOは、力こそ全てのヴィランの帝王として、秩序を壊して世界を支配しようとしている。
妾もその気になれば、恐怖で人民を支配して独裁国家を築けるだろう。
けど、どう考えても面倒臭そうだし、全然興味はないからやる気は毛頭ない。
そして強力な個性は、持っているだけでも全能感を覚えるモノが多い。
己を犠牲にして人々のために使うより、私利私欲を満たすために振るいたくなるのが普通だ。
自制できる者はそう多くはないし、最初は崇高な志でヒーロー活動をしていても、やがては道を踏み外すこともあるだろう。
実際に平和の象徴が居ない国では、治安がすこぶる悪い。
さらに日本でも、オールマイトが引退してたったの一ヶ月で、ヴィラン犯罪が3パーセントも増えていた。
なので妾のように、絶大な力があってもヒーロー活動をしない。
だがヴィランになるわけでもなく、のんびり日向ぼっこしているだけ、まだマシと言える。
「非常時なら、重い腰を上げるのもやぶさかでないがのう。
今はヒーローたちが頑張ってくれておるし、妾の出番はないわ」
「手伝ってくれれば、それだけ俺たちの仕事が減るんだがな!」
「面倒じゃし、嫌じゃ」
はっきり断っておく。
ヒーローの仕事を簡単に言えば、国民の苦情処理係だ。
オールマイトの引退後は意識が変わってきたようだが、それでもまだまだ民度は低い。
キッカケがあれば、現場のヒーローに不満をぶつけてくるのは容易に予想できる。
事件や事故が起きてからやって来る都合上、苦情が出るのは致し方ないが、文句を受け入れる気はなかった。
だが超常黎明期は全国各地が内乱状態で、行政がまともに機能しなかったと聞いている。
今は平和の象徴であるオールマイトの活躍で復興したが、それも最近になってからだ。
「比較的平和なのは良いが、人々は現状に満足しておる。
不安で夜も眠れぬよりはマシじゃが、全てがヒーローありきは、ちいと不味いのう」
「仕方あるまい! 力なき人々は、己の身も守ることはできんのだ!」
確かにエンデヴァーの言う通りだ。
しかしそれなら、もっとヒーローを手厚くサポートをして欲しいと思った。
確かに今は飽和しているが、暴れるヴィランや事故や災害に確実に対処はできない。
それに民間の事務所だけでなく、もっと公安のように国家に所属するヒーローを増やしても、良いのではなかろうかだ。
少なくとも現在の情勢では、己を犠牲にして国民のために汗水垂らして奉仕する気は全然起きない。
(ヒーロー活動は金のためと割り切るにしても、妾には必要ないしのう。
それに、自分が思い悩むことでもないか)
妾は守護霊なので、衣食住は必要ない。
それにイズクは将来、プロヒーローになって稼いでくれる。
まあつまり、やはり趣味で人助けをする以外は、活動する必要を感じない。
「日本が滅亡するような大事件が起きれば重い腰を上げるが、早々あるはずないしのう」
「それは、……そうだな」
エンデヴァーは何か言いかけたようだが、結局妾の発言を肯定するだけに留める。
まあヒーロー活動を長く続けていると、ヴィランの暴れっぷりを間近で見る機会は何度もある。
もしかしたら国が滅亡するのではと危機感を覚えるのも、珍しくないだろう。
だが日本中のヒーローたちが頑張ってくれるので、そんなことは決して起きない。
妾はナンバーワンの取り越し苦労だと軽く流して、引き続き弟子の頑張りを後方腕組み師匠として静かに見守る。
その後のインターンの期間中、三人は経験を山のごとく積み上げていく。
轟家に招かれて食事をするなどのイベントもあったが、別に初顔合わせではない。
相変わらず女性が相手ではイズクはガチガチに緊張するし、代わりに妾に話題を振られることも多々あった。
仲は悪くないので普通に会話をしつつ、弟子経由で食事を楽しむ。
この日は基本的に別居中の
しかし途中で悲しき過去も教えられたが、妾に何を望んでいるのかがわからない。
当たり障りない言葉で流すしかなく、本当にどうしたものやらだ。
エンデヴァーも
そもそも緩衝材代わりに便利に使いすぎだ。
話題を振って広げたり、取っ掛かりに取りあえず声をかけてくる。
それに明るい雰囲気で食事が進むから良いのだが、日中はのんびり日向ぼっこしていたのもあり、一日のうちでもっとも忙しい時間なのだった。
さらには夜にヴィランが事件を起こしたが、三人で協力してエンデヴァー以上の働きをして、人質にされていた
おかげで家族の絆が、一段と強まったのだった。
それはそれとして、以降は特に大きな事件も起きずに時は流れていく。
地方では色々あったようだけど、少なくとも妾の周囲は平穏と言える。
ヴィランが暴れ回るのが、この世界にとっての普通だ。
個人的には、そんなに平和とは言えない。
だがのんびり日向ぼっこができるだけ、まだマシなのだった。