近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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ヒューマライズの本拠地に突入なのじゃ

 クレイドの国境線での戦いで、イズクは二指真空把(にししんくうは)を修得しようとした。

 途中までは順調で上達していたのだが、ヘリに命中する前にヴィランが矢で倒すことを諦めたようだ。

 

 今度は巨大化した鉄球が飛んできた。

 恐らく追尾する矢とは、別の者が使用した個性だと判断する。

 

「流石にコレは返せぬな」

 

 妾はそう言いつつ、イズクの前に出た。

 そして落ちてきた巨大な鉄球を、片手で受け止める。

 

 返せないのは二指真空把(にししんくうは)でだ。

 普通に投げ返せば問題はないが、今は自重しているのでわざわざやったりはしない。

 

「もっ、もう少しだったのに!」

「ボウガンの矢で練習すれば良かろう」

「それはそうですけど! これ程の精度と速度の個性は、なかなか!」

 

 確かにボウガンとヴィランの個性では、返す難易度に大きな差がある。

 日本に帰って練習して修得しても、彼女の矢を正確に返せるようになると限らない。

 

 イズクもそのことがわかっているので、このような決着は残念なのだろう。

 

 妾は取りあえず、鉄球を安全な場所に放り投げる。

 しかし一回で終わりではなく、おかわりが次々と落ちてきた。

 

 なので途中で面倒になり、雑に受け止めては人が居ない場所に雑にポイポイ投げ捨てていく。

 

 地面に足をつけたままだと足場が破壊されたり陥没してしまうが、浮遊状態なら問題はない。

 その場から一歩も動かずに対応する。

 

(矢を返すなら正当防衛になるじゃろうが、鉄球を放り投げてヘリを落とすのは流石にな)

 

 妾たちが凶悪犯罪に加担している可能性は、まだ消しきれていない。

 なので、なるべくならオセオン国内で暴れたくはなかった。

 

 できれば追手を振り切るために、さっさとクレイド国に入りたいところだ。

 鉄球が尽きたら動き出そうと考えていると、その前にヘリから一人のヴィランが降ってくる。

 

「人類の! 救済をおおおおっ!!!」

「ちいっ! 面倒な!」

 

 巨大な鉄球を持ち上げて、直接ぶつけようとしてきたのだ。

 

 妾はやむを得ず、迎え撃つために右手を構える。

 だがその時、懐かしい気配を感じ取って攻撃を止めた。

 

 するとヴィランの背後から氷が猛スピードで迫ってきて、綺麗に着地狩りされる。

 

「これは! 轟君!」

保須(ほす)の時と言い! お前の通信はわかりにくい!」

 

 さらに爆豪少年も加勢に駆けつけたようで、問答無用でヘリを撃ち落とした。

 今回に関しては妾は直接攻撃していないし、もし何かあっても責任問題にはならないだろう。

 

 何より彼らがヴィランをボコボコにしたことで、やはり当初の推測通り妾たちは悪事には加担していない。

 ただ面倒な事件に巻き込まれただけの可能性が高くなる。

 

「裏切り者めぇ!」

 

 だが氷漬けになったヴィランが情報を喋る前に、口封じに殺そうとする。

 炎では氷が溶けてしまうので、妾は別の技で矢を直接破壊する。

 

法皇の青(ハイエロファントブルー)!」

 

 数発ほど相殺すると、攻撃が止まったので矢筒が空になったようだ。

 しかし、もはやこれまでと諦めるのは良い。

 だが彼女は何を思ったのか、ヘリから飛び降りた。

 

「命は投げ捨てるものではないのじゃぞ! ええい! 世話の焼ける奴じゃ!」

 

 先程のヴィランとは違い、無防備な落下だ。

 情報を吐かされるぐらいならと、死を選んだようだ。

 

 妾は彼女が地面のシミになる前に、右手を向けて大声で叫ぶ。

 

隠者の青(ハーミットブルー)!」

 

 青い茨を高速で伸ばし、女性のヴィランを空中で拘束した。

 意識があればまた自殺しそうなので、首をキュッと絞めて無理やり気絶させる。

 

 ヘリの運転手にも茨を伸ばして、無事に確保した。

 なお、そちらは爆豪少年が機体を破壊したあと、パラシュートで脱出しようとしたので、自ら死を選ぶことはなさそうだ。

 

 しかし、先程のヴィランは人類の救済と言っていた。

 

 ならば今回巻き込まれた事件がヒューマライズ絡みなのは、ほぼ間違いなさそうだ。

 

 

 

 その後は轟少年と爆豪少年に詳しい事情を聞き、捕縛したヴィランを尋問して吐かせる。

 

 さらに情報チップやカードキーを調べるために、国境を越えてすぐの場所にある麓の町のネットカフェに立ち寄った。

 

 だがタイミングを見計らっていたように、ヒューマライズが声明を発表する。

 全25箇所のトリガーボムの設置区域を明らかにして、大パニックを誘発したのだ。

 

 ヒーローは対応に追われて、思うように捜索できない。

 しかしピンチはチャンスと言うように、今の妾たちは重要な手がかりを掴んでいる。

 

 ヒューマライズが設置区域を公表したのは、その地域に優秀なヒーローたちを集めてトリガーボムを起動し、根絶やしにするためだ。

 

 トップヒーローを失った社会は、大混乱するか崩壊してしまう。

 その隙に生じて個性能力者を絶滅させ、無個性者のみの世界にするのがヒューマライズ、フレクト・ターンの真の目的だ。

 

 妾が思うに、穴だらけの計画で上手くいくはずがない。

 それでも大勢の犠牲者が出るし、世界中が大いに混乱するのは避けられない。

 

 何とも、はた迷惑なテロ行為だが、幸い妾たちには爆弾を解除する手段がある。

 あと二時間以内に敵の本拠地に乗り込んで、フレクト・ターンをぶっ飛ばす。

 そして解除キーを使用すれば、災厄を未然に防げる。

 

 まあ正確に言えばフレクト・ターンをぶっ飛ばす必要はないのだが、散々迷惑をかけたり妾の仕事を増やしてくれたので、個人的にボコらないと気が済まない。

 いよいよヤバくなれば別だが、余裕があるなら無視して先に進む気にはなれなかった。

 

『今からテメェを右ストレートでぶっとばす。まっすぐ行くから覚悟しとけよ』の心境だ。

 

 

 

 とにかく集結したヒーローたちは、たとえ罠だとわかっていても、救いを求める人々を見捨てられない。

 トリガーボムの捜索も止めないだろう。

 

 なので今この場に居る妾たちだけで、敵の本拠地を見つけて乗り込み、爆弾を解除するのだ。

 

 

 

 なお、ここで過去に依頼した案件のことを思い出す。

 急ぎイズクにラブラバと連絡を取ってもらうと、遅いと怒られてしまう。

 

 だがおかげで、妾たちが狙われている原因だけでなく、敵の本拠地と25箇所のトリガーボムの詳しい所在も完全に突き止めてくれた。

 

 自称ハッキングのプロは、伊達じゃないと感心する。

 

 ちなみに頭が良くない妾には、どうやって探し当てたかは説明を聞いても良くわからない。

 

「それじゃ、お狐様の名前で一斉送信しておくわね!」

 

 はてと首を傾げてばかりだったが、少し考える。

 

「保証人になるとは言ったが、見つけ出したのはラヴラバじゃろう?」

「情報の信用度が! 天と地ほど! 違うのよ!」

 

 滅茶苦茶実感が込められた言い方だ。

 妾もちょっと引いてしまうが、きっとラヴラバが言うならそうなのだろう。

 

「さっさようか。とにかく助かった。

 日本に帰ったら一度、ジェントル事務所に顔を出そう」

「絶対よ! 私だけじゃなくて、ジェントルも喜ぶわ! あっ! お土産忘れないでね!」

 

 そう言ってラヴラバとの通話を終えた。

 

 雄英高校の外出許可は、必死に頼み込めば一日ぐらい何とかなるだろう。

 しかし、お土産は何が良いかなと頭を悩ませる。

 

(ジェントルは現地の紅茶で良いじゃろう。ラヴラバは──)

 

 ここまで考えた時に、今はそんなことをしている場合ではないと思い出す。

 

 コホンと咳払いをして、この場に居るメンバーに顔を向ける。

 皆は真面目な顔をして話し合っていた。

 

「場所はわかったが! ここから直線距離で400キロ以上ある!」

 

 400キロは雄英高校から九州地方よりも近いので、少しだけ安心する。

 

「何じゃ、思ったよりも近いのう」

「「「えっ!?」」」

「青龍を飛ばせば、一分もかからぬぞ」

 

 ただしその場合、一般人は耐えられない殺人的な加速になる。

 

 それに周囲への影響も考えて、低空ではなく高い位置を飛ぶので、大勢の人に見られてしまう。

 

 イズクは体験したことがあり、ちょっと遠い目をしている。

 なお、他の三人は明らかに引いていた。

 

「じゃが別に、そこまで早う到着しなくても良かろう?

 あと二時間もあるのじゃし、安全第一で飛ぶから心配はいらぬぞ。……多分な」

 

 周りから疑わしい目で見られている。

 これは妾が適当で、大雑把な性格をしているのが悪い。

 

 しかし制御装置の場所は、地下の一番奥だとわかっている。

 最悪、フレクト・ターンをスルーして、青龍波で強引に掘り進めてショートカットすれば良い。

 

 FF5のカルナック城のように、爆発する前に全ての宝箱を回収する目的なら厳しいが、道中はいざとなれば全部無視して良いので楽なものだ。

 

「じゃが、立ち話は時間の無駄じゃし、さっさと出発するか」

「そっそうですね! 師匠! お願いします!」

 

 弟子たちは乗り気なようなので、妾も力強く頷く。

 

「うむ、任せておけ。

 轟少年と爆豪少年。それとロディも、よろしく頼むぞ」

「おっ、俺もか!?」

「ロディは命を狙われておるのじゃ。妾たちと一緒のほうが、安全じゃろうよ」

 

 敵の本拠地に乗り込んでも安全なのは、色々とおかしい。

 しかし短い付き合いだがロディは良くわかったようで、素直に同行する。

 

 情報チップに父親が出ていたのもあり、自分が何とかしないとの使命感もあるのだろう。

 

 とにかく二時間あるとはいえ、ここからはRTA走者のように焦らず落ち着いて、なるべく効率良く世界を救わなければいけない。

 

 失敗して時間を無駄にするのが、一番駄目だ。

 一先ず外に大きめサイズの青龍を呼び出して、全員に乗ってもらうのだった。

 

 

 

 

 

 

 ヒューマライズの本拠地は人里離れた山の中にあり、外からは切り立った崖にぽっかり開いた洞窟のように見える。

 

 取りあえず、あらゆる攻撃は青龍を強化して弾く。

 脳筋ゴリ押しに相応しく、一直線に突っ込んでいった。

 

「突っ込むぞ! 掴まれ!」

 

 人生で一度は言ってみたい台詞を口にできて、妾のテンションがちょっと上がった。

 

 ちなみにロディは、イズクと轟少年と爆豪少年に護衛してもらっている。

 自分は敵の排除に集中するため、右手を天に掲げた。

 

「まずは外の敵を一掃する! 龍星群(ドラゴンダイヴ)!」

 

 空に放った青龍が、無数の小龍に分裂して地上に降り注ぐ。

 妾が感知した敵を狙って突っ込んでいき、接触と同時に大爆発が起きる。

 一応加減はしているので死にはしないが、当分は満足に歩けずに入院生活も長引くだろう。

 

 だが全員倒したと思いきや、無駄にしぶといヴィランが残っていた。

 まあ一般人も混じっているし、殺さないように力を抑えるのは必須である。

 強者は避けるか防ぐかして当然だ。

 

「我々はヒューマライズに選ばれし者!」

「彼らに協力し! 我々は新たな世界を生きる!」

 

 全身を刃に変える二人のヴィランが立ち塞がる。

 彼らは両手を剣に変えて、蛇のように伸ばしてきた。

 

 そして妾たちが乗っている青龍を切り裂こうとしたが、残念ながら傷一つつけられずに弾かれてしまう。

 

「鋼鉄をも切り裂く刃が!?」

「弾かれただと!?」

 

 今回は飛び道具ではなく、青龍で本拠地に突っ込む予定だった。

 なので普段より生命エネルギーを増やしていたので、その程度の攻撃で傷つくわけない。

 

「ここは俺に任せて先に行けやあっ!」

 

 爆豪少年が青龍から飛び降りて、妾が突入したあとに入口に立った。

 

「では、遠慮なく行かせてもらうが、妾たちが戻って来るまで死ぬでないぞ」

「へっ、そいつは無用な心配だぜ!」

 

 どうやら、追手を防ぐ役目を買って出てくれたようだ。

 妾は内部に入った瞬間に、青龍のサイズを縮める。

 

 続いて、低空飛行で通路をどんどん進んでいく。

 

「はぁ、次から次へとキリがないのう」

 

 青龍は全く速度を落とさずに進んでいる。

 しかし壁に仕掛けられた罠や、次々と湧いて出てくる教団員が鬱陶しい。

 

 ある程度進んだところで轟少年が飛び降りて、レーザー装置を破壊する。

 

「先に行け! 時間がねえ!」

「まだ、一時間四十分以上あるが?」

 

 コスチュームに着替えたり、安全第一のために速度を落として飛行したりと、本拠地に突入するまで時間がかかってしまった。

 その気になれば、もっとタイムを短縮できる。

 

 しかし、今回は一般人のロディの身を守りつつ、二時間以内の完走が目的だ。

 安全第一だが、取りあえずは問題なしとしておく。

 

「では、妾たちは先に進むとしよう」

「そっ、そうですね! 轟君! 気を付けて!」

「おう! 緑谷たちもな!」

 

 取りあえず追ってくる敵を食い止めてくれるというなら、轟少年に任せる。

 目的はフレクト・ターンの捕縛と、トリガーボムの停止だ。

 

 妾たちは地下の最奥部を目指して、先に進ませてもらうのだった。

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