近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
轟少年と別れたあとに、さらに奥に進む。
やがて頑丈そうな大扉があったので、躊躇いなく青龍を突っ込ませる。
無理やりぶち抜ぬいてダイナミック入店を決め、教団の最深部に到着した。
正面の舞台には、全身青肌でローブ姿のフレクト・ターンが立っている。
妾とイズクは気を引き締めて青龍から降りて、地面に両足をつけた。
そして深く息を吸い込み、気持ちを落ち着ける。
「失せよ! お前のような重病者が、立ち入って良い場所ではない!
ここは人類を救済する! 神聖なる場所だ!」
ちなみに戦いに巻き込まれたらカードキーが壊れそうなので、念の為にロディに持たせていた。
彼は安全のためにも青龍に乗ったままで、さらに屋根付きに形態変化させている。
それはそれとしてイズクは、フレクト・ターンの主張に真っ向から反論した。
「何が人類の救済だ! 個性終末論は科学的に実証されていない!
ただの俗説じゃないか!」
こちらにゆっくり近づいてくるフレクト・ターンを、イズクは睨みつける。
実際に、そんなあやふやな主張を鵜呑みにして、全世界を恐怖に陥れるテロ行為をしているのだ。
妾にも理解できなかった。
「純粋なる人々は、個性という病魔や、その脅威に晒されている!
それは時と共に混ざり、進化し、コントロールを失って、人類を滅亡させる!」
再びフレクト・ターンは主張するが、すぐにイズクが反論する。
「そんなことはない! 個性も無個性も! 病気でも何でもない!
皆生きてる! 同じ人間だ!」
「……重病者は度し難い!」
会話の内容は、ぼんやりとしか理解できないし、そもそも興味はない。
話し合いで解決するのは無理そうだと、妾は何となく察した。
「やはり私がやらねばならぬ!」
「絶対にトリガーボムは止める!」
そして、いよいよ戦いが始まる。
だが妾は何故か、猛烈に嫌な予感がした。
血気盛んに飛び出したイズクに大声で呼びかける。
「待て! イズク!」
「
しかし慌てて止めたのは良いが、弟子が飛び出してからだ。既に行動は終了していた。
そしてイズクの拳は、見えない壁に阻まれる。
フレクト・ターンに当たる直前で止まってしまう。
どうやら彼の個性のようで、与えた衝撃がそっくりそのまま返ってきた。
妾は咄嗟に弟子の腕を掴み、後方に放り投げた。
そして反射された攻撃を、代わりに受ける。
イズクが振るった右腕と、同じ箇所の巫女服が破れてしまう。
ちなみに、腕は無事だ。
弟子の一撃を受けた程度で、どうこうなるほどやわではない。
「攻撃を反射させたのか!」
取りあえず、一度状況を整理したかった。
その場に留まらずに、あえて吹き飛ばされて空中で身をひねる。
フレクト・ターンを見据えながら、浮遊し速度を落とす。
「そうだ! 私は生まれながらに病を患っていた!
決して消えることのない! 全てを反射してしまう病を!」
フレクト・ターンから少しだけ距離を取り、二人揃って危な気なく着地する。
生命エネルギーの桁が違うので、大したダメージは受けていない。
さっさと巫女服を再構築して、腕を軽くほぐす。
「すっ、すみません! 師匠!」
「気にするな! 弟子を助けるのは、師匠として当然のことじゃ!」
「師匠ォー!」
腕を何度かブラブラさせたが、特に異常はないようだ。
巫女服のようにわざわざ再構築しなくても、たとえダメージを受けていても自然治癒力だけですぐ全回復するし、このままで問題ないだろう。
しかし、とても珍しい個性なので驚いた。
イズクは早速相手の分析を始めて、急ぎ思考を整理していく。
「体に動けた衝撃を、反射する個性! 多分、常時発動型です!」
弟子の分析を聞いて、妾はなるほどと頷く。
「AFOも似たような個性を使っておったな。
アレの常時発動型か」
AFOの個性は、過去に打ち破ったことがある。
なので、きっと今回も何とかなるだろう。
「ならばここは、妾が戦おう! 援護は任せるぞ! イズク!」
「はい! 師匠!」
イズクは妾のことを無条件で信じてくれる。
だが反射の個性を破ると言っても、特に打開策があるわけではない。
いつもの脳筋ゴリ押しで、反射できなくなるまで殴るのだ。
取りあえず、悠長に考えている時間はない。
作戦を決めたあとは、今度は妾が前に出て、フレクト・ターンに突進する。
防衛システムが作動して、壁のあちこちからレーザーが射出される。
しかし構うことなく無視して突っ込み、イズクは回避と迎撃に専念して後をついてきてくれた。
妾の行動を妨げないことが、弟子ができる師匠への最大限の援護だ。
まあ気合で耐えればノーダメージだし、レーザーに焼かれたぐらいで足が止まるはずがない。
そもそも当たったところで柔肌どころか巫女服に傷一つつけられないだろうし、何も問題はないのだが、服や体が汚れて再構築の手間がかかるので、やっぱり嫌である。
「学習能力がないのか! 愚かな!」
フレクト・ターンが見下した発言を口にするが、確かに妾は頭は良くない。
しかしパワーやスピードは、並の増強系より遥かに上だ。
「のじゃあっ!」
フレクトに接近してぶん殴ったが、見えない壁に阻まれて届かない。
このあとは反射されて、ダメージを受けることはわかっていた。
だがあえて、無視してラッシュを叩き込む。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」
お馴染みの、のじゃのじゃラッシュだ。近距離パワー型守護霊の得意技である。
それに百発のスリケンで倒せないからと、一発の力に頼ってはいけない。一千発のスリケンを投げる極意もあった。
ゆえに反射の限界を越えるまで、ひたすら殴り続けるのはある意味では正しい。
(まあ、それで打ち破れるかは知らぬがのう!)
しかし他に良い考えが浮かばないし、ひたすらタコ殴りにする。
反射されてダメージを受けているが、元々の生命エネルギーが桁違いなので何も問題はない。
巫女服が破れるが一瞬で再構築し、表面上は無傷で殴り続けている。
AFOのように超パワーで殴りかかってくることもないので、わざわざ上着を脱ぎ捨てて下着姿になることもないだろう。
弟子が邪魔くさいレーザー攻撃を迎撃や破壊してくれるので、目の前のサンドバッグを殴り続けられる。
しかしイズクにはこの手に限ると自信満々に豪語しても、内心ではこの手しか知りませんだ。
我ながら、情けないことこの上ない。
それでも後方腕組み師匠ポジとして、せめて弟子の前では頼りがいのある師匠でいたかった。
少なともイズクが独り立ちし、妾など必要なくなるまでは、保護者代わりに見守るつもりだ。
引子さんにも、よろしく頼むと頼まれている。
それまでは、形だけでも師匠を続けるつもりだ。
まだ弟子のお眼鏡に叶う候補も見つかっていないので、今引退するわけにはいかなかった。
「ばっ、馬鹿な! 反射が効いていないのか!?」
別に効いていないわけではない。
ただダメージを受けてもすぐに回復しているので、表面的には変化がないのだ。
「妾はお狐様! ヒーローじゃ!
退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! ヒーローに逃走はないのじゃあーっ!!!」
何処の聖帝だよとツッコむ者は、この場に居なかった。
そのまま不敵な笑みを浮かべて殴り続けていると、やがてフレクトの個性の鏡が少しずつヒビ割れていく。
つまり反射限界を越えたということで、一度亀裂が入れば、あとは早かった。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」
「ぐわあああああーーっ!!?」
すぐに個性の鏡が砕けて、フレクトを直接殴れるようになった。
今までやりたい放題された恨みを晴らすべく、目の前の男を徹底的に叩きのめす。
ただし殺さないように十分に気をつけて、加減してぶん殴る。
「のじゃあっ!」
「ぶべええええっ!!!」
そして最後の一撃で、何故か部屋の隅に置かれていた、大型のゴミ箱に吹き飛ばした。
全身を複雑骨折して気を失ったフレクトは、頭から突っ込んだ。
彼はもう教祖ではなく、痙攣しながら情けないプリケツを晒す、ボロ雑巾になったヴィランの成れの果てである。
「アリーヴェデルチなのじゃ!」
外国なのでいつもとは違った台詞を口に出して、ビシッとポーズを取る。
だがすぐに、こんなことをしている場合ではないと気づく。
再起不能にしたラスボスを放置して、弟子と少年と共に、急ぎ奥の部屋に向かうのだった。
結論から言えば、一時間以上も余裕がある状態でトリガーボムを停止できた。
教団員たちは自分たちの敗北を理解したあと、降伏したり死を選んだりと色々あったが、現場のヒーローたちが頑張って事態の解決を図ってくれた。
こうして、世界を騒がせたヒューマライズ絡みの事件は幕を下ろす。
妾たちはロディとその家族に会って親睦を深めたあとに、名残惜しいがお別れをする。
現地のお土産も忘れずに購入して、無事に日本に帰国するのだった。