近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
嵐の前の静けさなのじゃ
ヒューマライズの事件を解決して日本に帰ってきた。
妾は約束通り現地のお土産を配りながら、これでまた平穏な日々を過ごせると喜んだ。
実際に。しばらくはのんびり日向ぼっこしていた。
だが状況は、少しずつ不穏になっていく。
最初は妾には関係ないと無視していたが、とうとう相澤先生に呼び出される。
所定の部屋には担任の先生だけでなく、根津校長。
さらにオールマイトや他に信用できる雄英教師、追加で名だたるプロヒーローがズラリ勢揃いし、おまけに塚内さんも居た。
取りあえず席が二つ開いていたが、どうやら妾とイズクの椅子のようで、弟子と師匠は並んで座らせてもらう。
そしてあまり聞きたくはないが、大会議室で日本中を巻き込む極秘計画を聞かされるのだった。
長いので簡単にまとめると、超常解放戦線と呼ばれる巨大な組織と、日本のヒーローたちの全面戦争が始まるらしい。
脳無を研究開発していた、ドクターの所在も突き止めたようだ。
準備が出来次第、同時攻撃を行い、速やかに捕縛する。
その際に片方を攻めると、もう片方に感づかれて警戒されてしまう。
なので一度に両方を奇襲するのが、被害がもっとも少なく作戦の成功率も高い。
そのように聞かされたものの、妾は基本的に成り行き任せだ。
我関せずで、弟子の自主性に任せている。
しかしイズクやこの場の面々は、何かを期待する表情でこっちをじっと見てきた。
塚内さんも真剣な顔つきで、妾に質問してくる。
「お狐様の考えを聞かせて欲しい」
「妾の考えとは?」
当然の疑問を口にすると、すぐに説明してくれた。
「超常解放戦線との全面戦争と、
何か気づいたことがあれば、聞かせて欲しい」
今始めて聞かされたのに、急に言われても困ってしまう。
そもそも今回の作戦も、他にも大勢のヒーローが居るし、率先して動く気はなかった。
なので、殆ど右から左に聞き流していた。
しかし塚内さんだけでなく、他の面々もそんな自分に期待している。
ここで特にないと答えたら、ガッカリされてしまうだろう。
だが、あまり悠長に考えている時間もなさそうだ。
どうしたものやらと思案し、やがて一言だけ口にする。
「トゥワイスに注意じゃな」
「トゥワイス? 二倍の個性だったね。
確かに彼は、超常解放戦線の中でも特に厄介だ」
妾はうむと頷きながら、たった今思いついたことを行き当たりばったりで説明していく。
「二倍の個性は、抹消でも消えぬ。
ゆえに敵も、襲撃の備えとして使うじゃろう」
林間学校で、相澤先生は複製を相手に抹消を使ったと聞いている。
その時には炎は消せても、二倍は消せなかった。
だからこそ厄介この上ない個性で、ある意味では
次に妾は、
「申告が事実とは限らぬが、少なくとも戦闘向きの個性ではなかろう。
そうなると
大量の脳無を隠しておっても、表に出すと目立つし、命令なしには動けぬじゃろうしな」
ここまで言えば、この場の皆はわかるだろう。
しかし妾も考えを整理するため、口に出していく。
「表で勤務しておる
本物は恐らく、地下の研究所に隠れておるじゃろうよ」
秘密の研究所の情報は掴んでいる。
しかし、妾の発言で大会議室はざわめく。
敵も当然、襲撃に備えているだろうし、油断は禁物だ。
「では、お狐様ならどう動くのかな?」
「……そうじゃなぁ」
基本的に行き当たりばったりの妾は、考えて動くのが苦手だ。
そもそも近距離パワー型に、脳筋ゴリ押し以外求めるなと言いたい。
しかし、立場的には後方腕組み師匠ポジである。
弟子の前で恥ずかしい真似はできないので、頑張って考える。
「まずトゥワイスを捕縛し、個性を解除させる。
総攻撃はそれからと言いたいが、襲撃が遅れるのは不味いのう」
どれだけ偽者を増やしても、彼を倒せば全てが消える。敵戦力が大幅に低下するのだ。
それに偽者の泥人形を相手に、命を奪わないように気をつけて戦うなど、面倒極まりない。
そういう点でも、トゥワイスを一番最初に倒すメリットは、とても大きい。
しかし同時に襲撃するはずが、遅れて隙を作るのは良くないので、もう少しだけ計画を練り直す。
「トゥワイスは妾が倒そう」
「お狐様が? 理由は?」
塚内さんが率直に尋ねてきたので、妾は条件反射で返事をする。
「お主らは、トゥワイスの本物がわかるのか?
妾は見分けられるし、離れていても本体を追える。適任じゃろう」
なるほどと彼らは納得する。
そして妾は、もう少しだけ補足説明しておく。
「仮にじゃが、超常解放戦線にスパイを紛れ込ませたとしよう。
トゥワイスの暗殺に成功したと思うても、もしそれが偽者じゃったら?」
「状況は一気に、我々の不利になるね」
「そういうことじゃ」
やはり塚内さんは賢く、この場の皆も納得してくれたようだ。
妾は満足そうに頷き、続きを口にする。
「まずは妾が、デカい花火を打ち上げよう。
他の者は、その後に一斉に突入すれば良かろう」
島がドンパチ騒がしくなったら突入の合図ぐらい適当だが、敵が混乱している間にという判断は間違ってはいない。
取りあえず、作戦開始前に言うべきことは口にした。
次に妾は、オールマイトに声をかける。
「それで、少しは力が戻ったのか?」
「おかげさまでね!
全盛期と比べると大きくパワーダウンしているが、それでも遅れは取らないさ!」
オールマイトが参戦してくれるなら心強い。
怪我は完治しても年齢的な衰えはどうしようもなく、戦える時間は限られている。
若い頃よりも弱体化しているが、それは仕方のないことだった。
とにかく作戦会議はその後も続き、難しいお話なので妾は途中で面倒になる。
弟子に任せてあとで教えてもらうことにして、我関せずとのんびり日向ぼっこさせてもらうのだった。
その後は色々あったらしく、突入作戦は妾の案が採用された。
雄英高校に入学してから、二度目の春に実行に移される。
全国のヒーローたちが極秘に集められ、さらに二手に分かれる。
気づかれないように、敵から見え難い場所で待機していた。
妾たちは森の中に隠れているが、相変わらずのマイペースだ。
しかし、イズクや他の者は物凄く緊張している。
超常解放戦線とヒーローたちの全面戦争なので、きっと大勢の犠牲者が出て自分もその一人になるかも知れないと考えてしまうのだろう。
震えが止まらなかったり恐怖を感じるのは、仕方のないことだ。
だが遠くの超常解放戦線の総本山を注意深く観察する限り、強い奴はいても妾が出張れば何とかなりそうだった。
「あの程度の戦力、妾だけで十分じゃな」
「ほっ、本当ですか!?」
「うむ、確か十一万じゃったか? それぐらいなら何とかなるぞ。
まあいちいち相手をするのは面倒じゃし、有象無象は任せるがな」
妾は、とにかく大物狙いだ。
そういう奴らを残しておくと、無駄に味方の被害が増える。
なので第一目標のトゥワイスと同じように、さっさと倒してしまったほうが良い。
とにかく妾は巨大な青龍を召喚して、イズクと一緒に背中に乗る。
さっさと片付けて日向ぼっこに戻るために、少しだけ気合を入れた。
「では、行くとするか!」
「はい!」
弾丸よりも遥かに速く青龍を飛ばし、超常解放戦線の重要施設に突っ込む。
しかし建物が完全に倒壊したら、生き埋めになって大勢が死んでしまう。
せいぜい入り口を壊して、少し揺さぶる程度だ。
「まずは! 挨拶代わりの
上空から小さな龍を断続的に降らし続ける。
建物やその周囲を穴だらけにした。
直後に突撃し、正面の壁をぶち壊す。
結果、入り口よりも遥かに巨大な穴を開いた。
さらに青龍は、頭を引っ込めて建物に巻きつく。
ジワジワ締めつけていく。
放っておけば、いずれ崩落する。
外に脱出するか青龍を排除するしか、助かる道はない。
なお、地下の非常口は全て封鎖済みだ。
出口は、正面に開いた大穴しかない。
ちなみに妾とイズクは、他のヒーローとは違う作戦を実行中だ。
青龍が激突する直前に、こっそり飛び降りている。
そして目的の人物が居ると思われる部屋のすぐ前で、拳を振り上げる。
外壁を勢い良くぶん殴って破壊し、ダイナミック入店するのだった。