近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊   作:名無しの狐信者

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ヒーローvs超常解放戦線なのじゃ

 事前に注意深く観察し、五感を研ぎ澄ませる。

 トゥワイスの居場所は、すぐにわかった。

 

 ちなみに壁をぶち抜いて侵入した先に、ホークスが居たのは意外だった。

 もしかしたら、超常解放戦線に潜り込ませていたスパイかも知れない。

 彼は事前に作戦を知っていたので、直撃を免れたと考えられた。

 

 とにかく壁を破壊した時に被害を受けたのは、吹き飛ばされて再起不能になったトゥワイスだけだ。

 

 

 そして無事に侵入した妾たちが素早くトゥワイスに近づくと、倒れた彼がこちらに気づいて、辛そうに口を開く。

 

「おっ、お狐様!?」

 

 彼は傷だらけで、倒れたまま動けない。

 しかし、ギリギリで意識を保っていた。

 

 妾の姿を見て驚いているトゥワイスに、真っ直ぐ近づいていく。

 

「妾がここに来た目的は、わかっておるな?」

「すっすまねえ! 本当にすまねえ! お狐様!

 そっ、それでも! 俺は! 仲間は裏切れねえんだ!」

 

 トゥワイスは必死に口を開くが、それでも個性を使って抗おうとはしなかった。

 仲間は大切だが妾にも恩義を感じていて、板挟みになっているのかも知れない。

 

 しかし、彼を自由にしておくわけにはいかなかった。

 妾は十分に近づいたあと、軽く殴打して意識を完全に刈り取る。

 

「トゥワイス。今は眠れ。

 目覚める頃には、全てが終わっておるじゃろう」

 

 妾は大きく息を吐いてイズクに目配せすると、弟子は小さく頷く。

 そしてヒーローコスチュームから注射器を取り出して、トゥワイスに違法薬物を投与する。

 

 

 

 昔と同じようにオールマイトに憧れていたら、きっとこのような非道な手段は使わない。

 しかし、今は師匠である妾の影響を受けている。

 危機的状況ならグレーゾーンも仕方ないよねと、ある程度割り切れるようになっていた。

 

 それが良し悪しはともかく、二倍の個性はとても厄介だ。

 味方にならずに敵として立ち塞がるなら、確実に潰しておかないと、もし復活したらヤバいことになってしまう

 

 死柄木弔(しがらきとむら)たちの襲撃を受けて、サンプルが奪われたときは頭を抱えたものだが、全てを失ったわけではない。

 

(まさか本当に、その日のうちに乗り込んでくるとは思わなかったのじゃろうな)

 

 一般的なプロヒーローなら、その日のうちに単独で殴り込みはしない。

 だが現実として当日中に襲撃されたので、証拠の隠滅が間に合わなかったのだろう。

 

 なので完成品こそなくても、未完成なら結構な数が処分されずに保管されたままだった。

 

 まあ違法な個性破壊薬で、使用の許可を取るのはかなり苦労したが、それはそれだ。

 

 ちなみに、研究データもしっかり残っている。

 エリも善意で協力してくれたが、流石に幼い少女に無理はさせられない。

 

 妾としては健全な成長が阻害されそうだし、できればさせたくはなかった。

 

 しかし彼女は、のじゃロリ狐っ娘のことを母親だと思って、とても慕っているようだ。

 せめて協力してもらうのは非常時に限り、極秘プロジェクトに関わるとしても献血ができる年齢になってからと、何とか納得してもらう。

 

 そういうことで再生産できたとしても、非常に限定的だ

 だがそんな貴重品を、トゥワイスに使うことに躊躇いはなかった。

 

 やがて違法薬物の投与が終わったようで、イズクが妾に声をかける。

 

「師匠! 終わりました!」

「うむ、ご苦労。それでは妾たちも、掃討作戦に加わるとしよう」

 

 これで彼は個性を使えなくなった。

 たとえ使えても、不完全な泥人形を一体が限界だろう。

 それ以前に全身がボロボロで再起不能なうえ、当分意識は戻りそうにない。

 

 しかし弟子は色々考えているようで、念には念を入れるようだ。

 重症患者でありながら、手錠や拘束をきちんと行う。

 

 さらに予定通り、他のプロヒーローに連絡を取り、速やかな回収を依頼していた。

 一方でホークスは手持ち無沙汰のようだが、何処となくホッとした表情をしている。

 

 そんな彼に、妾はおもむろに声をかける。

 

「妾たちはもう行くが、ホークスはどうする?」

「俺は──」

 

 ホークスがそこまで喋った時、扉の外に殺意を感じ取った。

 妾は素早く前に出て、こちらを焼き尽くそうと放たれた青い炎を、右手をかざして迎え撃つ。

 

魔術師の青(マジシャンズブルー)!」

 

 狐火を収束して放ち、相殺した。

 周囲が高温になって、施設のあちこちが焼け焦げる。

 扉や近くの壁が巻き込まれて、消し炭になっていた。

 

 そして扉の外から、火傷だらけのヴィランが笑いながら歩いてくる。

 

「俺に気づいてなかった! 絆されてんじゃん!

 ミスってんじゃんか! ヒーロー!」

 

 最初は荼毘(だび)が、何を言っているのかわからなかった。

 しかし冷静に考えると、なるほどと納得する。

 

 多分だがホークスは、最初はトゥワイスを最悪殺害する予定だったのだろう。

 だが土壇場になって、妾が介入して作戦を変更し、個性を封じたうえで他のヴィランと同じように捕縛した。

 

 スパイとして侵入していた彼が、直接手を下さなくてホッとしていた。

 敵同士だけど、きっと仲は良かったのだろう。

 

 しかし、安堵して気を緩めた瞬間を狙われた。

 

 自分が割って入らなければ、荼毘(だび)の炎に焼かれていただろう。

 

「トゥワイス、お前は何も悪くない! 悪いのは、いつだってヒーロー!

 ……そうだろうっ!!!」

 

 ヴィランが、先程よりも強烈な炎を放ってきた。

 妾は右拳を振り上げて、青い炎を勢い良く殴りつける。

 

「のじゃあっ!」

「何っ!?」

 

 風圧で炎を吹き飛ばすと、荼毘(だび)の周りが大火事になる。

 次々と燃え広がっているので、この部屋も長くは保たない。

 

「危ないのう! 仲間も燃えるところだったぞ!」

「大丈夫! ヒーローってのは、咄嗟に人命救助しちまうもんだ!」

「皮肉が冴えておるのう!」

 

 ヴィランのくせに、上手いこと言うなと思いはした。

 だがそれで、妾から荼毘(だび)への好感度が上がることはない。

 そして今は作戦行動中で、長話をする気もなかった。

 

「ホークスはトゥワイスを確保し、外の仲間と合流せよ!

 目の前のヴィランは、妾とイズクが倒す!」

 

 ほんの少しだけ躊躇いが見えるホークスを、無理やりでも動かす。

 妾が大声で指示を出すと、すぐに冷静さを取り戻して決心したようだ。

 

「……っ! どうやら俺の個性とは相性最悪のようだ! そうさせてもらう!」

 

 もし荼毘(だび)の炎で翼を燃やされたら、ホークスの戦闘力が大きく落ちてしまう。

 なので、一番良いのは戦わないことだ。

 

 彼はトゥワイスを確保して素早く離脱してもらい、目の前のヴィランの相手は、妾たちがすることになった。

 

「おいおい! 二対一かよ! ヒーローが卑怯な手を使って良いのかぁ!

 正々堂々戦おうぜ!」

「抜かしおる! 殺さぬように加減しておる時点で、正々堂々どころか大甘じゃろうが!」

 

 荼毘(だび)と言い争いをしながら、炎の応酬をする。

 本当に殺さないように加減して戦うのは苦労するが、目の前のヴィランは施設が焼けるのも気にせずに、全力を殺しに来る。

 

「イズクは一度も攻撃しておらん! 妾と荼毘(だび)の一対一じゃ!」

「はっ! モノは言いようだな!」

 

 しばらく炎vs炎で戦っていたが、いい加減に面倒になる。

 妾は右だけでなく左も使い、青い茨を高速で伸ばした。

 

隠者の青(ハーミットブルー)! 荼毘(だび)! そろそろ落ちよっ!」

 

 ヴィランを拘束した妾は、強引に引き寄せる。

 そして勢い任せにぶん殴った。

 

「のじゃあっ!」

「しまっ……がはぁっ!?」

 

 荼毘(だび)が吹き飛んだので、隠者の青(ハーミットブルー)を解除する。

 彼は壁をぶち抜いて吹き抜けの大広間に到達し、意識を失ったまま落下していく。

 

 どうやら吹き飛ばした先は、大乱戦の真っ最中のようだ。

 容易に捕縛できる状況ではなく、ラッシュを叩き込むとタイムロスになってしまう。

 

「ヴィランの数が多すぎて、いちいち再起不能にする時間も惜しい!

 イズクにも手伝ってもらうぞ!」

「はい! 頑張ります!」

 

 一先ずイズクと共闘して、十一万もいる無駄に多いヴィランの制圧を急ぐ。

 妾たちは勢いのまま、大広間に飛び込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 大勢の敵の中から目立つ奴から片っ端に、弟子と一緒に問答無用で叩きのめし、大型のゴミ箱に押し込む。

 

 その場で放置したら邪魔になるし、拘束具も有限だ。

 これならヴィランを無力化したことを周りに教えられる。

 

 偶然たまたま、都合良く大型サイズのゴミ箱に近くにあって助かった。

 コレを使わない手はなかった。

 

 数えるのが面倒なのでカウントはしていないが、再起不能にしたヴィランは千どころか万を越えていそうだ。

 

 そんなことを考えながらボコっていると、猛烈に嫌な予感がした。

 妾は一時的に戦闘を中断し、周囲を見回して五感を研ぎ澄ます。

 

「師匠!」

「イズクも感じたか!」

 

 どうやら弟子も感じ取ったようだ。

 

 イズクのワンフォーオールと、オールフォーワンは影響し合っている。

 ならば、予想もつくというものだ。

 

 恐らく、死柄木弔(しがらきとむら)が目覚めたのである。

 こうなった以上、もはや事態は一刻を争う。

 

「行くぞ!」

「はい!」

 

 今は説明している時間も惜しい。

 妾たちは強引に壁をぶち抜いて、施設に外に出た。

 

 そして次代のヴィランの帝王の居る方角を見据えて、右だけでなく左も合わせて気合を入れる。

 

「これはあっ! 挨拶代わりのおっ! 邪王炎殺青龍波(じゃおうえんさつせいりゅうは)じゃああああーーーっ!!!」

 

 先手必勝とばかりに邪王炎殺青龍波(じゃおうえんさつせいりゅうは)を放った。

 

 奴の崩壊の個性が、どの程度強化されているかは不明だ。

 もしかしたら都市や日本、最悪世界中を塵に変える可能性もある。

 

 なので、大技キャンセルのために、開幕の超ロングレンジ攻撃が必要なのだ。

 

 しかし当初の予定では、死柄木弔(しがらきとむら)は目覚めるはずではなかった。

 

 だがどういう理由か不明だが、復活してしまう。

 作戦は失敗したか、もしくは作戦は成功しても、何らかの要因で目覚めたのかも知れない。

 

 何にせよ今の妾には知る術はないし、別に説明は求めてはいない。

 

 長くなりそうだし、自分の足りない頭では、理解できる気がしなかった。

 しかし、それでも一つだけはっきりしていることがある。

 

(妾の日向ぼっこの時間を奪い続ける憎きヴィランめ! 許すまじ!)

 

 死柄木弔(しがらきとむら)が目覚めたのなら、これまでの恨みを込めてボコボコにしてやるまでだ。

 そうでなければ、妾の気が済まない。

 

 向こうも同じように、狐憎しと思っているだろうし、決着をつける良い機会と言える。

 ただし周辺被害が酷いことになるが、コラテラルダメージと思って我慢して欲しい。

 

 とにかく妾とイズクは、割と緩い感じで建物を締めつけていた青龍に乗る。

 

 

 

 そして弟子が死なない程度に加速して、急ぎ救援に向かう。

 

 それから少し遅れて、先制攻撃の邪王炎殺青龍波(じゃおうえんさつせいりゅうは)が着弾した。

 

 雲を吹き飛ばすほどの青い火柱が巻き起こるが、この程度で再起不能になるはずがない。

 

 ちなみに、周辺住民の避難は完了している。

 遠くからでも邪気を感じるので、攻撃対象を間違えたりはしない。

 

 ヒーローらしくないし無法ではあるが、このまま遠距離から一方的に攻撃し続けて倒すこともできる。

 だが高確率で死体蹴りになるし、周辺被害が酷いことになって塵一つ残らなそうなので、流石にそれは止めておく。

 

 取りあえず一発当てたが、それぐらいで倒せたらパワーアップとは何だったのかだ。

 個人的にはそっちのほうが面倒がなくて助かるのだが、そう簡単に終わるはずがないのだった。

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