近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
青龍での移動中に、イズクに本部に連絡を取ってもらう。
とにかく現状を確認するのだ。
先制攻撃の
作戦行動中のオールマイトたちも、何とか無事に脱出し、ヒーロー側は被害はゼロとは言わないが、不幸中の幸いで死者は出ていない。
ただ、ヒーローコスチュームのマントを取られたという報告が一件あった。
どうにも理解できなかったので、何でやねんと心の中でツッコミを入れる。
とにかく現時点では、崩壊の個性は止まっている。
しかし、いつ第二波が起きないとも限らない。
普通のプロヒーローではまず逃げ切れないし、守りながら戦うのも大変だ。
なのでトップヒーローか、それに匹敵する実力のある者のみが参戦するのがベストだろう。
ぶっちゃけ肉壁や足止めにもならず、死体の山を増やすのはマジ勘弁だし、選別は残当である。
やがて妾とイズクは、崩壊した病院跡地で佇む
彼は崩壊を免れた段差に足をかけて、忌々しそうな顔で青龍に乗った自分たちを見上げていたので、こちらから声をかける。
「そこに足をかけるでない! 妾は上! 貴様は下じゃ!」
「違うな! お前が下だ! 狐ェ!
お前が地獄の下にいれば! 何をしようと! もう何も問題はないッ!」
何処かで聞いたやり取りをする。
ちなみにもし原作通りになったら、妾は
まあ、そもそもその場のノリで喋っているだけなので、深い意味はないのだ。
取りあえず青龍を消して、イズクと二人で浮遊の個性でゆっくりと降下する。
瓦礫だらけの地面に降り立ったが、まるでDBのサイヤ人編のこれから荒野で戦うかのような、妙な緊張感だ。
現時点では、この周辺には生き物は殆ど居ない。
戦いに巻き込まれたり、被害を気にしなくて良いのは幸いである。
「なるほど、ここを貴様らの墓場に選んだわけか! くっくっくっ!」
住民の避難は完了している。
離脱したプロヒーローたちが、選別を済ませて再び集結するまで、もうしばらくかかるはずだ。
それまでは、今ここには妾とイズク、それに
「喜ぶがいい! 貴様のようなヒーローが!
超パワーアップを遂げた! この俺に遊んでもらえるんだからなあ!」
まるでエリート戦士のような台詞を口にするヴィランである。
しかし
そういう意味ではヴィランの中でも超エリートと言っても、過言ではなかった。
「勝つのは俺だぁ!」
「ほう、そいつは楽しみじゃな!」
妾と死柄木は、互いに構えを取る。
そのまましばし睨み合い、静かに風が吹き抜けていった。
やがて、同時に超パワーの脚力で地面を踏み砕きながら跳躍する。
双方が激突して衝撃波が発生し、続いて凄まじい速度でラッシュを繰り出す。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」
「無駄無駄無駄無駄ァ!!!」
死柄木は、拳だけでなく蹴りも使う。
さらに地上から空中に移動しながら打ち合い、AFOから移植された炎熱系の個性で牽制まで入れてくる。
それにパワーだけでなく、スピードも前とは段違いだ。
増強や再生は常時発動型だと見当をつけて、妾は面倒なことになったと忌々しそうに舌打ちする。
「ちいっ!」
「はあっ!」
妾も避けたり防ぐだけでなく、逆に反撃してダメージを与えている。
しかしすぐに怪我が治癒してしまうので、あまり効いているようには思えない。
一旦仕切り直しをするために、相手の蹴りに合わせて、こちらも足技を繰り出す。
死柄木も同じことを考えたようで、流れに逆らうことなく、空中で弾かれるように距離を取り、軽く身を捻って軽やかに着地する。
「やはり崩壊は効かないか! 厄介な狐だ!」
「全ての能力が前回とは段違いじゃ! 面倒じゃのう!」
お互いに厄介な相手だと認識した。
だが別に、勝てないとは言っていない。
死柄木もまだ、己の個性を全て出し尽くしたわけではないだろう。
勝負はこれからと考えているはずだ。
「はははっ! しかし、ヒーローは守るモノが多くて大変だなあ!」
「どういうことじゃ!」
「俺が一人で戦っていると思ったのかぁ!」
「……まさか!?」
その瞬間に気づく。いつの間にか、脳無がこの場所に集まってきている。
それに、遠くのギガントマキアも行動を開始していた。
集結しつつあったヒーローたちも対応に追われ、必死の攻防を繰り広げている。
このままでは、逃げ遅れた市民に大勢犠牲が出てしまう。
「さあ! どうするヒーロー!
果たして、どれだけ人が死ぬかなあ!」
無関係な人が、大勢が死ぬ未来を想像したようだ。
死柄木は勝ち誇ったように笑い続ける。
「お前は! 人の命を何だ思って!」
そんな嫌らしい笑みを浮かべる彼を見て、妾の中の何かがプッツンした。
別にジョジョのように決定的な何かが切れたわけではなく、精神的なモノだ。
まあつまり、あまりにも好き勝手に人を殺す死柄木に、とうとうブチ切れたのである。
妾は怒り心頭で、今までで最速で距離を詰め、ヴィランの腕を掴んだ。
「いい加減にせよ! このクズ野郎!
罪もない者を、次から次へと殺しおって!」
なお、別にクリリンは殺されてはいない。
しかし妾をガチ切れさせるには、十分過ぎる程の行動や発言だ。
死柄木の腕を握り潰し、骨をへし折る。
どうせすぐに回復するのだ。構うことはない。
続いて左手の人差し指を、遥か遠くのギガントマキアに向ける。
声を発したりはしない。その必要はなく、ただ念じるだけだ。
それだけで狐火は収束されて茨に変わり、高速で放たれる。
サイズは小さく一本だけだが、生命エネルギーの密度はこれまでの比ではない。
それは一瞬で、遠く離れた地に到達する。
麓の都市に足を踏み入れたばかりのギガントマキアを縛りあげて、さらにキツく締めつけて、全身の骨を砕いていく。
巨大なヴィランの生命力が、みるみるうちに減少していくのを感じ取った。
拘束されてたったの数秒で再起不能になり、これでもうまともに動けない。
周囲のヒーローや、麓の都市の人たちの安全は確保した。
少しだけ拘束を緩め、茨を本体から切り離す。
「きっ貴様! まさか! ギガントマキアを!?」
だが妾が奴を倒す間に、死柄木が思いっきり蹴りつけてきた。
妾はまともに受ける気はない。
彼の腕を握り潰していた手を離すと、死柄木は冷や汗をかきながら慌てて飛び退いて距離を取る。
「なっ、何故! 貴様に、そっそんな力が! まっ、まっ……まさか! 貴様も!」
土壇場で、超パワーアップしたのかと言いたいのだろう。
だが、別にそんなことはない。
一尾のセーフモードを、少しだけ解除しただけだ。
おかげで今は二本の尻尾が生えて、全ての能力が二倍になっている。
一時的にブチ切れて毛が逆立ったが、今は落ち着いている。
それ以外に見た目で大きな変化はない。
ちなみに三本になると、さらに倍になる。戦闘力は一尾の四倍だ。
ただ、強くなるのは良いが力加減が難しい。
九尾はもはや日常生活が不便極まりどころか、まともに暮らせないので絶対になりたくはないし、なる気もなかった。
それはそれとして妾は大きく息を吸い込んで、大声を出す。
「妾は怒ったぞおおおー!!! 死柄木弔あああーッ!!!」
とにかく大声でブチ切れ宣言をした妾は、死柄木に急接近し、奴が反応できない速度でぶん殴る。
そして吹き飛ばした先にまた回り込み、空中ピンボールのように滅多打ちにした。
たった今気づいたが、射程距離も倍の二十メートルまで伸びていた。
これは地味に嬉しい。ハイレベルな戦闘にイズクを巻き込まなくて良いのは、本当に助かる。
四方八方から殴る蹴るの滅多打ちにして、死柄木を地面に叩きつけた。
衝撃に耐えきれずに、巨大なクレーターをできたが、彼はまだ動けるようだ。
瓦礫を吹き飛ばして立ち上がり、荒い息を吐きながらも、真っ直ぐ妾を見上げてくる。
「偉そうなことを言いやがって!
貴様らヒーローは、罪のない者を殺さなかったとでも言うのか!」
オタクとしては原作のように、だから滅びたと返したいところだ。
だが別にヒーローは滅んではいないし、殺されるのはとても困る。
返答に迷う妾の沈黙に、気を良くしたようだ。
死柄木が大声で笑い出す。
「はははっ! 答えられないだろう!
だったらそんな奴ら! 殺されても仕方ないよなあ!」
流石にそれは看過できないので、すぐに反論する。
「いいや! 今度はこの妾が、貴様を滅ぼす!」
「この俺を? 図に乗るのも、それぐらいにするんだな!」
死柄木は冷や汗をかきながらも、妾を真っ直ぐに見つめて大声をあげる。
「この俺に勝てるわけがない!
もっもし! 本当に! きっ貴様が、超パワーアップしていたとしてもだ!
肉体の負荷は相当なもので! 限界も近いはずだ!」
叫んだ死柄木は、両手をこちらに向ける。
今度は炎熱系の個性を連発したり、黒い爪を伸ばしてきた。
妾はそれを最低限の動きで避けたり、軽く手で払って粉砕する。
「あっ、当たりさえすれば! 貴様なんか!」
心底悔しがっていたので、彼にチャンスをやることにする。
ただしあまり長く続ける気はなく、これがラストだ。
「ならば、当ててみるが良かろう!」
「なっ、何をぉ! ふざけやがって! 後悔しやがれえええーーーっ!!!」
今までよりも、遥かに強烈な個性が連続で放出されて、妾を中心に大爆発が起きる。
しかも炎熱系だけでなく、対象にダメージを与えるタイプを無差別に使っているようだ。
イズクにはバリアを張って防いでいるが、妾にはそのようなものは必要ない。
気合で十分なので、わざわざ防ぐ必要はなかった。
やがて煙が晴れたあとには、無傷でブチ切れ中の妾が彼を睨みつける。
死柄木は震えて一歩退く。
「なっ、何者だ!?」
「とっくにご存知じゃろう?
妾はお前を倒すためにやってきたヒーロー! お狐様じゃあ!」
はっきりと宣言したあと、妾は今度こそ奴を完全に再起不能にするために、彼が反応できないほどの超スピードで急接近する。
「お前はもう! 謝っても許さぬ!」
そして、力任せに殴りつけた。
しかも一発だけでなく、凄まじいラッシュだ。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!」
「こっこのっ! この俺がっ!?」
死柄木弔の全身の肉や骨や内臓、細胞の一片すらも残さず破壊する。
今の彼は回復能力がとても高いので、二尾でも加減する必要はない。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!」
「こんなっ! こんな! やっ奴にィ!?」
どれだけ肉体の損傷を回復できても、限界はある。
宇宙に寿命があるように、無限のエネルギーなどという都合の良いものは、存在しないはずだ。
そうなると必然的に妾と死柄木弔、どちらの生命力が上かの勝負になる。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」
「ばっ馬鹿なっ! さっ再生が……追いつかっ!?」
一発殴るたびに、死柄木弔の肉体を完膚なきまで破壊する。
並のヴィランなら、一撃で再起不能になる程のダメージを与えていた。
対して、こちらは攻撃を受ける頻度が1パーセントもなく、さらにペチッと殴られてもカスダメので、ほぼ無傷である。
彼のほうが生命力の消耗が激しいのは、言うまでもなかった。
やがて頃合いを見計らい、今まで守りに徹していたイズクに声をかける。
「イズク! 最後は譲ってやる!
「えっ!? はっ、はい! ……コオオオオッ!!!」
イズクは妾の指示に若干戸惑いながらも、
だが今回はいつもと勝手が違うようで、オールマイト以外も参戦する。
「これは! オールマイト! っと、お師匠さん!?」
正確には七代目継承者、
なおイズクの師匠ではなく、オールマイトの師匠だ。
ワンフォーオールの力を引き出しやすくなったことが、影響しているのかも知れない。
今回は彼女も
(ジョースターの血族ではないが、引かれ合う定めか)
個性は意志を持っているなら、何かしらの影響は受けると思っていた。どうやら予想通りのようだ。
とにかく妾はイズクに目配せすると、弟子は真剣な表情で頷く。
さらに
「今まで辛かっただろう! 苦しかっただろう! 一人にして、ごめんね!
たとえ声が届かなくても、お婆ちゃんはずっと、お空から見守っているからね!
大好きだよ!
今の死柄木弔が聞こえているかはわからないが、それでも彼はほんの少しだけ戸惑いの表情を浮かべる。
「きっ……貴様は! きっ貴様なんて、知らない! やめろ! やめろッ! 思い出させるな!
俺のそばに近寄るなああーッ!!!」
何やら取り乱しているが、今は戦いの最中だ。
妾たちは死柄木に急接近して、拳を振り上げて勢い良く振り下ろす。
「のじゃのじゃのじゃのじゃあっ!!!」
「「「オラオラオラオラァーッ!!!」」」
合計で四人がかりで一方的にボコられる死柄木は一見すると可哀想に思えるが、散々やりたい放題してきたので自業自得である。
なので妾は一切の容赦はなく、死ななきゃヨシの精神で殴り続けた。
やがて死柄木の個性因子が限界を迎えたのか、傷が癒えなくなる。
これ以上殴り続けると、本当に殺してしまう。なので、最後の一発を叩き込む。
「のじゃあーっ!!!」
「「「オラァーッ!!!」」」
「ぶべらあーーーッ!!?」
たとえ相手が極悪なヴィランでも、ヒーローは殺していけない縛りがある。
トドメとばかりに顔面に強烈な一撃を叩き込んで、死なない程度に満身創痍で気絶させたうえで、地上に向けてぶっ飛ばす。
その先には、何故か奇跡的に原型を留めていたゴミ収集車があった。
そこに寸分違わす、彼の師匠と同じようにホールインワンさせるのだった。