近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
AFOとの戦いでイズクのワンフォーオールは活性化して、これまで以上に力を引き出しやすくなった。
そして何処から情報が漏れたのかはわからないが、弟子の個性に関する噂が広まっているようだ。
ヴィランの帝王に狙われているとわかれば、被害を恐れて一般市民からの風当たりも強くなるので、少し不味いことになった。
あとは雄英高校だけでなく、セキュリティや敷地や宿泊設備が整っている場所を、臨時の避難所として解放する。
多くの人々は、しばらくそこで暮らしてもらうことになった。
しかし先の見えない避難所生活など嫌だや、さっさと事態を解決しろなどとヒーローを責める意見も出た。
それでもエンデヴァーは冷静に振る舞い、責任から逃げ出すことなく丁寧に対応する。
流石はナンバーワンだと感心する一方で、わかってはいたけど民度は悪いなと呆れてしまう。
どうせ裏でAFOが煽動しているのだろうが、やっぱり妾はプロヒーローをやりたくないと実感する。
人を助けるのは当たり前のことだけど自分が第一で、そっちは趣味にしたほうが断然マシだろう。
とにかくAFOに狙われている以上、しばらく雄英高校から離れるべきだ。
何しろセキュリティが万全で、警戒厳重のタルタロスもあっさり破られたのである。
ヴィランが徒党を組んで本気で攻めてきたら、あっさり陥落しかねない。
やはり死柄木の傷が癒えて万全の状態になる前に、見つけ出してボコボコにするほうが、被害は軽く済む。
そのような理由で、イズクには一年A組の皆に置き手紙を残す。
ヒーローアカデミアを去ったのは、桜咲く四月のことである。
そして妾は今、実体化してビルの屋上に足をかけて、荒れ果てた街の様子を見下ろしていた。
イズクは適当な場所に腰かけて一息つき、栄養補給用のゼリー飲料を飲んでいる。
「イズクよ。雄英を離れることを、ちゃんと伝えたであろうな」
「もちろんです! 皆には置き手紙を残してきました!」
「ならば良かろう」
今は日本中で治安が乱れて、全国多発的にヴィラン犯罪が発生している。
飽和社会だと言われてはいるが、ヒーローの数が圧倒的に足りていない。
そこで臨時のヘルプ要員として、妾とイズクがエンデヴァー事務所に臨時で入ることになる。
毎日のように、各都道府県を忙しく飛び回っている。
他のヒーロー事務所や警察機関とも連携し、エンデヴァー事務所というフィルターを通して、緊急や脅威度の高い事件や事故に出動要請をかけていた。
この程度、全盛期のオールマイトなら普通にやっていたことだ。
妾やイズクが出来ても、別におかしくはない。
だが治安の回復に時間を取られるため、雄英高校に通う余裕はなかった。
しばらく休学扱いにしてもらうように、相澤先生と根津校長にはきちんと話を通している。
それでも、長期になれば単位や出席日数、それに成績も下がってしまう。
致し方ない理由があるので多少は免除してくれるが、一日も出席してないのに進学は流石に無理がある。
もし上の学年になれても、イズクが勉強についていけなければ本末転倒だ。
なので元凶であるAFOを見つけてボコボコにするなら、断然早いほうが良い。
「しかし、見つからぬのう」
頻繁に呼び出しがかかるので、のんびり日向ぼっこできるのは、一体いつになるやらだ。
疲れてはいないが、心底面倒なので溜息が出てしまう。
「僕も早く、雄英高校に戻りたいです!
せっかく二年生に上がれるのに! 留年は嫌だあー!」
A組のクラスメイトは真面目に勉学に励んでいるので、普通に進級できる。
だがこのまま日本の治安が回復しなかったり、AFOが見つからなかったら、上がれたとしても二年生をもう一度やるハメになりそうだ。
弟子はガックリと肩を落として、肉体はともかく精神的に疲れた顔をしている。
しかし突然、ハッとした表情になって周囲を警戒し始めた。
「師匠! ヴィランです!」
「危機感知の個性じゃな! 早速向かうぞ!」
ワンフォーオールの個性は、様々な種類が扱える。
AFOとの戦いでかつてないほど活性化しているので、引き出しやすい。
危機感知もその一つで、妾が五感を研ぎ澄ませるよりも範囲は狭い。
それでもイズクにとって脅威になる相手を感じ取るので、とても役に立つ。
流石に常時発動は肉体に負担がかかるので、休憩を挟んでソナーのように使っている。
今回も敵を見つけたようだ。
妾たちはビルの屋上をピョンピョン飛び移りながら、ヴィランの元に急ぎ向かうのだった。
街で暴れていたヴィランだったが、予想通り人を襲っていた。
イズクが背後から飛び蹴りを食らわせ、勢い良く吹き飛ばして瓦礫にめり込ませる。
忍スレでは挨拶は大事だけど、この世界は違う。
凶悪なヴィランに情けをかけると、平気でアンブッシュしてくるので、このぐらい雑な対応で良いのだ。
「道理で危機感知が止まらないわけだ!」
瓦礫に突っ込んだ筋肉隆々のヴィランは、すぐに起き上がってきた。
大して効いてなさそうだが、妾は何処かで見たようなと首を傾げる。
それはそれとして、襲われていた人を助け出す。
そして彼の仲間と思われる、女の子に渡しておく。
「嘘っ!? お狐様ぁ!?」
「噂は本当だったのか!」
他にもまだ、大勢人が残っているようだ。
各々がサポートアイテムを装備していることから、自分の身は自分で守る云々で自警団のようなことをしているのだろう。
個人的には、慣れてない人が使うと加減を間違えたり、暴発するので止めて欲しい。
だが、彼らも生きるために必死なので、自己責任でどうぞと気にしないことにした。
「その声はぁ! 忘れられるわけがねえ! お前だ! なあ! 緑谷だ!
それに狐までいやがる! 会いたかったぜえ!
雑魚ばかりで物足りなかったんだよ! ずっとよおっ!」
ヴィランの相手など面倒なだけだ。
妾は、これっぽっちも会いたいとは思っていない。
近距離パワー型守護霊ではあるが、別に戦いが好きなわけではないのだ。
それより、のんびり日向ぼっこしているほうが遥かにマシである。
しかし筋肉を身にまとう個性を持つヴィランと会うのも、これで三度目だと思い出す。
つくづく縁のある男である。
「それはそれとしてじゃ。イズク、どうする?」
「僕がやります!」
「では、任せるぞ」
後方腕組み師匠ポジの妾は、必要に迫られれば、戦うのもやぶさかでない。
そうでなければ弟子を見守っているし、ぶっちゃけ自分が戦うのが面倒臭かった。
それにヴィランとの実力差は明白なので、多人数で一方的にボコボコにする必要はない。
今はエンデヴァー事務所からヘルプも入ってない。
弟子がピンチになったら、助けに入るぐらいで十分だろう。
とにかく戦うことになったので、イズクがマスキュラーの前に堂々と歩いていくのを、妾は後方で静かに見守る。
「緑谷ああああー!!!」
雄叫びをあげながらヴィランが動き、イズクと激突する。
「オラオラオラオラオラァ!!!」
「うおおおおおーーーっ!!!」
弟子はあの頃よりも、遥かに強くなっている。
打ち合いながら相手の行動を予測し、危な気なく避けては反撃する。
「オラァ!」
さらに隙を見つけ、黒鞭で拘束した。
そのまま相手の勢いを利用し、振り子のように河川に叩きつける。
きっと周囲の被害が少なくなるように、場所を移動したのだろう。
「小細工を!」
「お前を逃がした死柄木とAFOは、今何処にいる!」
黒鞭での拘束は解かずに、ヴィランを尋問する。
「知らねえ! 奴らがくれたのは! 好きにしろの一言だけだ!
目移りすんなよなあ! しらけるぜ! こんな小細工も! つまんねえよお!
あの日のようにぶつかろうぜえ! 全力でえええっ!!!」
彼が言っていることは、恐らく事実だ。
マスキュラーが、計略を用いるタイプでないことは知っている。
過去にボコボコにしたヴィランも、似たようなことを言っていた。
AFOが用意した使い捨ての駒は、質はともかく数だけは多くて面倒だ。
「何でそこまで暴れたいんだ!」
「悔いのねえ人生を送るためさ!」
「悔いって! 何だ!」
「楽しみを存分に味わえねえことだ!」
「他に道はなかったのか!
イズクは優しいので、ヴィランさえも救おうとする。
弟子の良いところだが、下手をすると己の身を滅ぼしかねない弱点でもあった。
いよいよとなったら妾が強引に止めるけれど、今のところはその必要はなさそうなので、外からのんびり眺めている。
「皆無だねえ! 俺に同情でもしてんのかあ! そういうの! 他所でやんなあ!
俺の心にあるのは! 死と! 闘争だけだああああっ!!!」
マスキュラーは全身の筋繊維の密度を高めて、黒鞭を引き千切って拘束から逃れる。
イズクの説得を聞く気はないようで、完全にやる気だ。
「全力出せよぉ! 緑谷ああああ!!!」
ヴィランは、今にも飛びかかってきそうなほど姿勢を低くする。
イズクも迎え撃つために、腰を下げて呼吸を整えた。
コオオオオッと原作のような独特の効果音が見えるような気がしたが、別にそんなことはない。
イズクは
そして再び打ち合う直前に、何故かヴィランの筋繊維が剥がれていく。
どうやら知らないうちに消耗していたようで、きっと弟子が駆けつける前に戦っていたヒーローのおかげだ。
「震えるぞハート! 燃え尽きるほどヒート!
おおおおおっ! 刻むぞ血液のビート!」
イズクは、絶好の好機を逃しはしない。
一時的に個性の制御が困難になったマスキュラーに、砲弾のように一直線に突っ込む。
「小賢しいいいいっ!!!」
「「
ヴィランも迎え撃とうとしたが、反応速度がまるで追いついていない。
瞬間的に100パーセントを越えたため、オールマイトの
つくづくマスキュラーは不運というか、
当然ヴィランが耐えられずはずもなく、あっさり気絶したので手早く拘束する。
妾たちは彼を最寄りの警察署に届け、エンデヴァーからのヘルプに対応するために青龍に乗り、次の現場に移動するのだった。