近距離パワー型のじゃロリ狐っ娘守護霊 作:名無しの狐信者
AFOが潜伏していると思われる森の奥の屋敷に、信用できるトップヒーローたちと突入する。
しかし中はもぬけの殻で、予想はしていたがとっくに逃げ出したか、そもそも誰も利用していなかったようだ。
だが罠は配置していたようで、突然部屋の隅に置かれていた投影機が作動した。
「レディ・ナガンとの問答は楽しんでくれたかな?」
そこに映し出されたのは言うまでもなくAFO、声も彼のモノだ。
「これが起動したということは、そういうことだ」
妾的にはこの場に居ないAFOの声を聞くだけで、露骨に嫌そうな顔になってしまう。
「予想するのが好きでねえ。
君たちのような人間なら、あの手の人種は見捨てられないだろう。
僕は強制してないぜ? 彼女の意志だ」
相変わらず言いたい放題言っているが、この場にはレディ・ナガンも同行している。
そして今、彼女は静かにブチ切れていた。
ライフルの個性で、投影機を今すぐ撃ち抜きたそうだ。
周囲のプロヒーローたちが、一生懸命なだめている。
「許さない! よくも私を、ここまでコケにしてくれたな! 殺してやる!」
「ヤバいですよ! オールマイト!」
「ああ! 大変だな! AFOも!」
AFOの爆弾が原因で、女の尊厳を破壊されたことを知る者は極少数だ。
そして彼女がそっちの意味で、ヴィランの帝王を恨んでいるのは想像に難しくない。
なお女の尊厳を犠牲にして超パワーアップを遂げたので、身体能力も向上している。
普通のプロヒーローでは抑え込むのが難しく、オールマイトが背後から羽交い締めにしていた。
「殺してやるぞ! オールマイト!」
「ちょっと待って! 私は関係ないよね!」
どういう理由か、ところ天の助のような展開になっている。
AFOは殴れないし目の前の投影機も壊せないので、その代わりにオールマイトに怒りをぶつけてストレスを発散したいのだろう。
あまりのショックで彼は久しぶりに吐血するが、波紋の呼吸で傷はすぐに塞がったので問題はなかった。
なおそれは、AFOの預かり知らぬことである。
彼はきっと、妾たちを巻き込んで自爆し、そのまま死亡したと信じているのだろう。
続いて聞こえてくる音声も、レディ・ナガンの生存に気づいた様子は全くなく、楽しそうに話している。
「躓いちまった人間が、ヴィランと呼ばれるのさ。
個性だなんだと個人主義を謳っていても、結局管理社会。
合わない子は排斥するだけ。例外はないよ。
民主主義でも社会主義でも、根は同じだ。社会以前の問題。群生生命の原則だよ」
何やら難しい話になってきたなと思いつつ、あまり頭が良くなく日向ぼっこが大好きな妾は、一人ぐらい寝ててもバレへんやろと考え始める。
この場には、自分よりも遥かに真面目で頭が良く、正義の味方をしている人たちが多く居るのだ。
終わったあとに、要点だけ聞かせてもらえばそれで良い。
そもそもAFOの長話に、いちいち付き合ってられるかだ。
もしこの場に本人がいたら、十割の確率で問答無用で殴りつけて黙らせていた。
「君たちの選んだ道は茨だぜ。
戦うたびに心はすり減り、終わりは来ない」
あまりにも退屈すぎて、ついにアクビが出てしまった。
しかしどうやら、皆はAFOの話を真剣に聞いているようだ。
誰も見ていないようだし、せっかくなので軽く腕を振って体をほぐす。
「獄中でねえ。ずうっと君のことを考えてた。
僕の興味はもはやあのウド、オールマイトにはないよ。
次は、……君だぁ! お狐様!」
「気持ち悪っ!!!」
AFOのオリジナル笑顔が心底気持ち悪くて、鳥肌が立った。
妾は反射的に、投影機を蹴り飛ばす。
咄嗟のことだったので加減に失敗したようで、一瞬で屋敷の天井を突き抜けて大空高くまで飛んでいく。
そして、大爆発が起きた。
やはり罠だったようだ。特に手がかりもなかったし、とことん嫌がらせに定評のあるヴィランの帝王だと、再確認させられたのだった。
それからしばらく、日本全国ヴィラン狩りをしていると、その途中で一年A組の皆と出会う。
彼らは協力し、あっという間に敵を倒した。
妾の出番がないのは良いが、今回はイズクも手持ち無沙汰のようだ。
「皆! どうしてここに!?」
「心配だからだよ!」
イズクの質問に、麗日少女がはっきりと答える。
「僕は大丈夫だよ! だから、心配しないで!」
その後も、イズクと一年A組のやり取りが続く。
しかし、どうにも話が食い違っているように思えた。
彼らは何故か弟子を凄く心配しているけど、本当に大丈夫だ。やはりこれはおかしい。
やがて無理やり雄英高校に連れ戻そうという流れになった時、妾は両手をパンパンと叩いて大きな声をあげる。
「イズクよ!」
「はい! 何でしょうか! 師匠!」
「ちゃんと手紙は出したのであろうな!」
「もちろんです!」
「では、何故ここまで心配されておる!」
「それは、……わかりません!」
こりゃアカンわと、溜息を吐きながら、一年A組の生徒たちに顔を向ける。
すると麗日少女が何かに気づいたようにハッとして、妾に一枚の紙を差し出した。
どうやらイズクが書いた手紙のようで、お礼を言って読ませてもらう。
やがて最後まで読み終えると、妾は渋い表情で頭を押さえてしまう。
そして溜息を吐いて、弟子をチョイチョイと手招きする。
「イズクよ。これは誤解されても仕方ないぞ。
確かに雄英高校を離れる時は、断腸の思いじゃったのは否定はせぬがな」
一年A組の皆、家族や友人を巻き込みたくない。
その思いがなかったと言えば嘘になるし、手紙の内容もある意味では正しい。
だが、そこに書かれていないこともある。
イズクと妾は、辛く苦しい日々を過ごしているわけではない。
引子さんを泣かせるのは厳禁なので定期的に連絡を入れているし、過密スケジュールでも、毎日三食きっちりとしていた。
全国各地のヒーロー事務所の支援を受けて、夜はしっかり休んでいる。
雄英高校に通えないのは残念だが、治安が回復するかAFOと死柄木を倒すまでは、致し方なしだ。
しかし、その誤解は、ちょっとやそっとでは解けそうにない。
難しい顔でしばらく考えたあと、妾はある結論を出した。
「わかった! 雄英高校に戻ろう!」
「良いんですか?」
「誤解を解くために、一度しっかり話し合うのじゃ。
それに、イズクは仮免許を持っておるが、まだ高校生じゃしのう」
過密スケジュールを休日なしにやり続けるのは問題だが、非常時なので百歩譲って良しとする。
だがイズクの本業はヒーローではなく、高校生だ。
今しているのも正規の職員ではなく、臨時のバイトのようなものである。
間違っても未成年に、強要するようなものではない。
根っからのお人好しやら使命感が強いだけでなく、個性も優れている。
やれば出来てしまうから、皆に頼りにされるのだ。
弟子も放ってはおけないので、躊躇いなく手を貸していた。
しかし、それはそれこれはこれだ。
「これだけ探しても、AFOが見つからぬのじゃ。
早急に状況が動くこともあるまい。
一度しっかり休んで英気を養い、腰を据えて取り組むのも大切じゃろうよ」
休んだあとは、しっかり働く。
平日と休日はしっかり分けて、メリハリのある生活をするのだ。
モチベーションや心身の健康を保つ秘訣という程でもないが、割と当たり前のことである。
非常事態だが、イズクや妾はもう十分に働いた。
あとは他のヒーローや警察に、足並みをそろえてヴィランを追い詰めてもらう。
幸い、妾たちは日本中で八面六臂の大活躍をした。
AFOが大暴れした最初期と比べれば、治安はかなり回復している。
今なら警察やヒーローが頑張ればヴィランを捕縛できるし、少しずつ仕事も減ってきている。
なので、一度ゆっくり休むタイミングとしてはちょうど良い。
ちなみに妾とイズクがAFOに狙われているのは、何故かバレていた。
一般市民にとっては、いつ爆発するかもわからない危険物のようなものである。
てっきり暴動が起きるかと思いきや、別にそんなことはなかった。
むしろ何日でも休んでいってOKと、大歓迎状態だ。
どうせ民度が低いんだろうなと最悪を予想していた妾は、AFOお得意の煽動はどうしたと逆に困惑してしまう。
一体何が起きたのかと言うと、少し前にヒーローと超常解放戦線が全面戦争した。
だがそこで妾が乱入して、この戦争を終わらせに来たと言わんばかりの滅茶苦茶な大活躍をして、本当に終わらせてしまう。
死柄木には逃げられたしヴィランだけでなく、ヒーロー側にも市民にも被害が出た。
本来なら負け戦のところをギリギリ引き分けにできたのは、妾の影響が大きい。
『お狐様鬼つええ! このまま逆らうヴィラン全員ぶっ殺していこうぜ!』
大体そんな感じに、AFOや死柄木がなんぼのもんじゃいという、イケイケドンドンのやるじゃんヒーローという空気になったのだ。
もちろん、それが全てではない。
爆弾を雄英高校に入れるなと、頑張って抗議している人たちもいる。
しかし、全体を見れば極僅かだ。
妾たちが全国各地を飛び回り、ヴィラン犯罪や事件や事故を解決していることは、日本中が知っていた。
全盛期のオールマイトを彷彿とさせる大活躍をしているヒーローを、大勢の前で叱責したらどうなるかは、火を見るよりも明らかだ。
彼と違って自分はあくまで嫌々手を貸していて、場合によってはあっさり見捨てる。良くわかっているようだ。
それに妾が、日本中の市民に向けて啖呵を切ったことも知れ渡っていた。
ヒーローを舞台の役者ではなく、観客の自分たちと同じ等身大の人間だと理解し始めて、今後は全面的に協力してくれるらしい。
あとは、絶対に怒らせてはいけないヒーローとも認識されている。
ブチ切れることなんて極稀なのに、何でやねんだ。
そして雄英高校の避難民を煽動したのは、どうやら青山少年のご家族らしい。
イズクが、気にしてないので許してあげてください的な発言をして、取りあえずその場は丸く収まる。
だがしばらく大人しくしていないと、色んな意味でヤバいことになりそうだ。
そこまで面倒は見きれないので、もう何もしないで欲しい。
そはそれとして、イズクは久しぶりに一年A組の皆と会えて楽しそうだ。
これまで積み重なった誤解を解くために、互いに本音で語り合う。
なお、プロヒーローの面々とカラオケをした話が出たら、凄く盛り上がった。
爆豪少年がイズクに謝罪して仲直りをしたのは意外だったが、長年のわだかまりが解消したのは良いことだ。
妾は弟子や友人、家族との交流を見守りながら、これからまだまだ大変そうだけど一先ずゆっくり休めそうで良かった。
そう思いながら、久しぶりの日向ぼっこを満喫するのだった。