余燼よ、ただ共にあれ   作:澱粉麺

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ifルートのifです。
自分で言っててなんだかもうよくわかりません。
ありがとうございました。


ひとりぼっちの余燼

 

 

 

…衛星砲の麓。技研のものであるコーラル燃料を用いる機体の身体を得て、大気圏を眺める。

あなたを待つ時間は、想像より短く済んだ。それは私にとっては有難いことだった。この思案の時間は、少しでも長くあればこの選択を後悔してしまいそうだから。

 

ザイレムの駆動音。

そして、ACのブーストの音。

聞き慣れた機体の駆動音と同胞の声を聞きながら、私は飛翔する。あなたに残る執念と想いを、その速度で焼き切るように。

 

「レイヴン…

あなたは私が止めます」

 

「─この惑星を焼かせはしない…」

 

メインシステム・戦闘モード起動。

 

同胞の命を燃やし戦う機体を用いることを選んだ私が、人間とコーラルの共存をどれだけ言う価値があるだろうか。そうした逡巡も、ただあなたを止める為だと目を瞑る。

そうする事が、これまでの犠牲に報いる為に私たちを焼くことを選んだウォルター達とどれほど違うのかという、自己矛盾に苦しんでも。

それでも、あなたをこのまま通すわけには行かない。大火を起こすわけには、いかないのです。

私はその道を選んだのだから。

 

レイヴン。

あなたと敵対をして、それでも守る。

あなたが選んだように。私も、選んだ。

 

 

 

はず、だったのに。

 

 

あなたはどうして私に銃を向けて。

そのまま、下ろしたのですか。

なんで撃たずに私を見つめたのですか。どうしてその身体に付けた四つの武装を、動かさなかったのですか。

 

なぜ、どうして。

無抵抗のまま、私が放ったコーラルの奔流に呑まれて、ただ爆散していく姿を、スローモーションになった視界のまま見ていた。回避をすることも、反撃をすることもない。

ただ、なにもしないレイヴンが、消え行く様を。

私に反目しながら、それでも。

『私と戦うことを選べなかった』あなたを。

 

どうして。

私と敵対することを選んだのではないのですか。

あなたはコーラルと人の未来を断ち切った。

私とあなたとの未来を、捨ててまで火を望んだ筈。

それなのに、どうして今際の際で銃を下ろしたのですか。まるで、それでも、自分にはエアを撃てなかったとでも、言うように…

 

がしゃ、ん。

C機体が私の意思を反映して膝を折る。

そうして爆破して撃破されたACの残骸を手に取る。

当然の如く、コアも、その中身も粉微塵だ。

そこには何一つ残ってはいない。

 

 

ずるい。

私は、選んだのに。

私はそれでも、同胞の為にあなたと戦うことを決めたというのに。あなたが選んだように、私も選んだというのに。

 

私には、あなたしかいなかった。

私はあなたさえ居ればよかった。それを、切り捨ててまで私はあなた以外を守ろうとした。だから私も、あなたと分かち合うことをやめた。そうあらなければならないと、決心した。

 

それなのにあなたは、最後の最後にまで悩んで、それでも私を切り捨てることができなかった。ずっと、見てきたからわかる。レイヴンが撃ちたくない、撃つことが出来ないと思ったのは初めてのこと。AC操作以外の全てが焼き切れたはずのあなたが、誰かを殺したくなんてないと思ったのは、これまでなかった。

 

今回だけを、除いて。

 

それが表すことはつまり。

私には、あなたしかいなかった。

あなたにとっての私も、そしてまた。

特別な存在、だったということ。

 

 

それはないじゃないですか。

今更すぎる、でしょう。

 

ならば、なんであの時に私の依頼を聞いてくれなかったのですか。どうしてあの時に、シンダー・カーラに手を貸したんですか。あなたの選択は私を、私なぞを切り捨てるものではなかったのですか。あなたにとっては私は、切り捨てられる存在ではなかったのですか?

 

選ぶ事は、仕方のない事。

選択のしない者とは敵にも味方にもなれない。

だから貴方が、今ここで私を切り捨てる選択をしなかったせいで。選ぶ事が、できなかったせいで。

私はあなたと敵にすらなれなかった。故に私は、大切な人をただ殺しただけだ。私を殺すことなどできないという、私の大切な人を、手ずから殺したのだ。

 

私が初めて触れるあなたの体温がこの外気の冷たさだったのならば、私はこの後悔を抱かずに済んだのでしょうか。ルビコンの戦火であるはずのあなたの温度は、全てを失った残酷な冷たさだった。

 

 

「───同胞、たち…」

 

…立ち上がる。私はただザイレムに向けて、砲台を向けて撃ち込む。ただそれだけが私に残されたもの。最後に残った、使命だから。同胞の未来の為に、コーラルの未来の為に。

燃やされ根絶されんとするコーラルの為に…

 

誰にも邪魔をされない空間。

私は誰一人の妨害も受けずに衛星砲を打ち出した。

特攻をせんとするザイレムが宇宙に沈んでいく。

その中にいたであろう、カーラ共々に。

オーバーシアーの最期の灯火が、吹き消えた。

 

 

………レイヴン。

あなたにとって、私は命の瀬戸際になろうと銃を向ける事ができないほどに大切であったように、あなたにとって私がそうであったように。私にとってもあなただけが、命に賭けるに値するものだったというのに。それを斃してまで通さんとした理念が、あなたを殺さなくてもできたのではないかと思えば、どうして正気のままでいられるでしょう。

 

あなたは、すべてを選ばなかった。

背負った全てを放棄した、選択から逃げた鴉。

 

なんで、私に銃を向けてくれなかったの。

なんで、剣を翻してくれなかったのですか。

どうして、それなのに。

 

 

私を選んでくれなかったのですか。

 

 

あなたを殺めてまで為さんとする、私の使命は終わった。

それなのに、私はまだ生きている。

私以外の全てを失って。

私以外の全てだったあなたを失って。

 

ならば私は、この先どうすればいいのでしょうか。

 

アーキバスもオーバーシアーもない。

同胞たちの声も、今は聞こえない。

…交信する声もない。二度と聞こえはしない。

ただ残酷に静寂な宇宙空間。

 

私はただ、この広大な宇宙で一人きりだった。

 

 

「───あ、あああ……」

 

「……あああああ……」

 

 

嘆く私の声だけが機体に響く。

何一つ、反応するものはない。

私と共にいた、あなたの温度はない。

 

あなたは、もういない。

私が殺したのだから。

 

 

 

 





ウォルターもカーラもザイレム特攻で死んで621は直前で銃をおろして討ち死にして一人ぼっちのエア…ううっ…悪くない響きだ…
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