スーパーダンガンロンパ ラストパラダイス 作:りょうぴー(創作論破書き)
「起きて…」
「…大丈夫、起きられる?」
「良かった…無事みたいだね…」
「ここがどこだって…?それは…私にも分からないけど…」
「…ねぇ、あなた…自分のことは分かる?」
「…あ、その前に私も自己紹介しないとね…」
「私の名前は、花野井 琴葉。あなたは…?」
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スーパーダンガンロンパ ラストパラダイス
この世界において私の存在は酷くちっぽけなもので、道端に落ちてるその辺の石ころと何も変わらない存在だ。
しかしそんな路傍の石にもダイヤの原石と呼ばれるものが存在する。
そんな原石たちを拾い上げ一流の宝石へと磨きあげるような人々の集まりが存在する。
それが明日守学園だ。
明日守学園は世界の将来を担う人材を育成することに注力していて、高い入学費を払う、もしくは凄まじい倍率の試験に受かるかしなければ入学が困難を極める一流の中の一流校。
しかし、そんな明日守学園には学費や試験を飛び越えて学園の生徒に迎え入れられる特別な制度が存在する。
それが、明日守学園才能育成システム。
このシステムは学園側からのスカウトで学園の欲しい人材を自由に引き抜くことが出来、そのスカウトシステムに選ばれた人は学費、試験免除で明日守学園に入学できるという画期的なシステムだ。
このシステムの導入以降才能のある生徒は次々と明日守学園にお呼ばれされ、多くの生徒の実績をたたき出した偉業から明日守学園は瞬く間に注目され、発展を遂げていった。
生徒一人一人の才能を磨きあげるための授業カリキュラムや評判の高い学校行事…これから私にどんなことが待ち受けてるのか、想像しただけで胸が躍る。
そういえば、私の自己紹介がまだだった。
私の名前は、『仮染 明日海(カリソメ アスミ)』。
私はこれといって特徴がある訳でもなく特別勉強もスポーツも出来る訳では無いけど…
それでもずっと、この学園に入学したかった思いは強く、学園から声がかかる日を夢見て一生懸命にやるべきことに打ち込んでいた。
そしてついに念願叶って、私は明日守学園に入学することになった。
これからこの学園でどんな学園生活を過ごすのか、どんな風に私が変わってゆくのか…
楽しみになってきている自分がやはりそこにいる。
緊張しつつも私は学園の敷地に1歩、足を踏み入れる…
その瞬間、私の視界がグニャリと歪み、だんだん目の前がぼやけてくる…
…
…
聞こえる。
誰かの話し声が。
けど…分からない…
これは…誰の?
確認したくても目が開かない。聞きたくても体が動かない。
そして私の意識は…深い闇に融けていった。
……
「…ねぇ…」
「起きて…」
「…大丈夫、起きられる?」
見知らぬ誰かの声が、頭に響く。
私はその声の主に呼びかけられ、重い瞼をゆっくり開く。
仮染「…ん…うん…」
「良かった、無事みたいだね。」
仮染「ぅ…うぅ…頭がガンガンする…」
「あ…ぶ、無事じゃなかったか…大丈夫?」
仮染「…平気。心配してくれてありがとう。」
少しボーッとする頭を抱えつつも私はゆっくり立ち上がる。
私が目を覚ました場所は、どこか見知らぬ浜辺だった。
仮染「…ここは、一体どこなんだろう。」
「それは私にも分からないけど…」
仮染「…分からない?」
「うん。実は私も気がついたらこのビーチで目を覚ましてたの。もちろん、私だけじゃなくて他の新入生の皆も一緒だよ。」
仮染「あなたも、明日守学園の新入生なの?」
「うん。私は花野井 琴葉。『超高校級のアイドル』って呼ばれてるんだ。よろしくね!」
【超高校級のアイドル ハナノイ コトハ】
仮染「超高校級のアイドル…確か国民的アイドルグループ、ウェルカムプロジェクトのセンターを担当してる人気絶頂のスーパースターだったような…」
花野井「そ、そんな、スターだなんて…確かに大きなプロジェクトのトップにはなったけど、私はそこまで凄いアイドルなんかじゃないよ。むしろ私なんてまだまだこれからだし、先輩たちに追いつけるように頑張らなきゃだもん!」
自慢せずに謙遜するあたり、彼女の控えめで謙虚な所が伺える…けれど、目標に向けての芯の強さは感じられる…何となく、彼女の人柄がわかったような気がする。
仮染「よろしく、花野井琴葉。私は仮染明日海。」
花野井「うん。これからよろしくね、仮染さん!ところで、仮染さんはどんな才能で明日守学園に入ることになったの?」
仮染「私は…」
自分の才能を答えようとした瞬間、一気に言葉につまる。答えられないのか…?理由は分からないが、これ以上の言葉が出そうにない。
花野井「…仮染さん?」
仮染「…ごめんなさい。まだ思い出せないみたい。」
花野井「そ、そっか…もしかして、記憶喪失ってやつなのかな…?」
仮染「…どうなの…かな。正直なところ、私もよく覚えていなくて…」
花野井「気にしなくても大丈夫だよ。時間をかけてゆっくり思い出せればいいから、ね?」
仮染「花野井琴葉…ありがとう。」
花野井「そういえば、仮染さんはまだ他のみんなと自己紹介してなかったよね。」
仮染「うん…といっても、私はずっと気絶していたから…」
花野井「それじゃあ、みんなは島の探索に行ってるみたいだから、私達もその報告を聞いてそのついでにみんなに自己紹介をしてあげよう。」
仮染「分かった。案内はお願いしてもいいかしら?私はずっと気絶していたから、ここの地理は分かってなくて…」
花野井「よーし、それなら任せて!私も一応仮染さんを置き去りにしない範囲でここの辺りは地図で確認しておいたよ。」
仮染「地図?」
花野井「はいこれ、この島のガイドマップだよ。さっきビーチの近くの休憩所でガイドマップが置いてあったんだ。」
仮染「それじゃあこれを確認すればここの地理がわかるという事か。えっと、この島の名前は…『ククルカン島』…?」
花野井「ククルカン島は今世紀最大の楽園地って言われるくらいの人気のリゾート地なんだ。」
仮染「学校に行くつもりがいつの間にリゾート地に連れ去られたという事になるのね。」
花野井「それに、妙なことは他にもあるよ。ほら、この島には人の気配もないし動物も住んでる気配がない。そもそも、ククルカン島自体数年前にリゾート地としての機能を失ったって聞いてたけど…」
仮染「じゃあ、ここはククルカン島であってククルカン島ではないということ…!?」
花野井「そうかもしれないけど…どっちにしろ今の私たちじゃ分からない事が多すぎるね…だから、皆に探索の成果を聞いて少しでもこの島のことを知るべきだと思うな。」
仮染「それも…そうね。」
花野井「だよね。それじゃ行こっか!それに、みんなのことを知るのも大事だもんね。私も一応分かる範囲で調べてきたから、みんなの簡単な紹介くらいはできると思うよ?」
こうして私は花野井琴葉と共にククルカン島…らしき島を見て回ることにした。
【ホテル】
花野井「ここがホテルのロビーだよ。さっきあなたが起きる前に教えてもらったけど、ここは私達が寝泊まりできる場所みたいだね。」
花野井「まぁ、私達が寝泊まりするかどうかはまず無いと思うけどね…」
仮染「確かにそれは私も思った。」
花野井「とにかく…まずはみんなに挨拶しなくちゃね。少し誰かに声をかけてみる?」
仮染「そうさせてもらうわね。」
私はそう言うとロビーでゲームをしている銀髪の少女に声をかける。
仮染「あの、今少しいいかしら?」
「…んっ、えいっ!!あはっ、やったぁ!!パーフェクトKO勝ちだぁ!」
仮染「あ、あの…ごめんなさい、集中してるのかしら?」
花野井「おーい、美冬?聞いてる?」
「ん?あぁごめんごめん!!反応が1テンポ遅れちゃったよー…よし、いいよ!ちょうどやってたゲームが一段落終わった所だし。そういえば、あなたとは初めましてだったよね?」
仮染「そうね。私は仮染明日海。よろしく。」
「仮染明日海ちゃんかー…うーん…あ、それじゃあ、『あみちゃん』って呼んでもいいかな?」
仮染「あ、あみちゃん…?」
「ニックネームだよ!ほら、これから友達になるんだから、早く仲良くなれたらいいなって!ね、あみちゃんって呼んでいい?」
仮染「か、構わないけど…」
「いいの!?あははっ!じゃああみちゃんよろしくね…っていけない、わたしの自己紹介を忘れてた!!
美冬「わたしの名前は、新城 美冬!こう見えて『超高校級のゲーマー』の名前で通ってるんだ。」
【超高校級のゲーマー シンジョウ ミフユ】
仮染「よろしく、新城美冬。」
美冬「ぶー、フルネーム呼びなんて他人行儀じゃん!私のことは『美冬』でいいよ!」
仮染「そ、そう…」
花野井「あはは…美冬、相変わらず強引だね。」
仮染「彼女はいつも誰に対してもあんな感じなの?」
花野井「うん。美冬は見ての通り誰に対しても明るくて人懐っこい性格なの。お兄さんの柊弥くんは結構素っ気なくて無愛想なんだけど、結構兄妹じゃ似ないものだよね。」
仮染「その話り口だと、あなたと美冬は前々から中が良かったように聞こえるけど…」
花野井「あ、そのことも話してなかったよね。私と美冬と…それから、柊弥くんは小学校からの幼なじみなの。柊弥くんは私よりふたつ上なんだけどね。」
花野井「美冬ってば、普段は無邪気なのにケンカじゃ負け知らずなんだよ?普段は小動物みたいにちんまくて可愛いのに私のことを追い回してたストーカーを軽く捻り潰すくらい強かったからね。」
人は見かけによらぬものとはまさに彼女のことを指してる言葉と言うべきなのかもしれない…人柄の明るさと隠し持つ強さの二面性を持つ超高校級のゲーマー、新城美冬の魅力ね。
美冬「ねえねえ!あみちゃんは好きなゲームとか何かある?どんな超高校級の才能で明日守学園にスカウトされたの?何か好きなお菓子とかある?」
仮染「あ、え?えーっと…」
花野井「もう、美冬。あんまり詰め寄りすぎないの。仮染さんが困ってるでしょ?それに、仮染さんは記憶喪失で今もまだ混乱が引けてないみたいだから、もう少し落ち着かせてあげようよ。」
美冬「き、記憶喪失ぅ!?そっか…無理に色々聞いちゃってごめんなさい…」
仮染「な、何も美冬が謝ることはないわよ。記憶喪失に困ってるのは本当だけど、だからといってあれこれ話すのが嫌なわけじゃないから…」
花野井「そ、そうなの?仮染さんが言うならそれでいいけど…」
美冬「本当?えへへ、良かったぁ…嫌われたらどうしようって思っちゃったよ。」
仮染「とにかく、思い出すまで時間がかかるかもしれないけど…色々思い出せたらあなたとの話も弾むと思う。あらためてこれからよろしくね、美冬。」
美冬「うん!こちらこそよろしく、あみちゃん!」
花野井「それじゃあ私は仮染さんを他のみんなのところに案内しに行ってくるよ。あ、良かったら美冬も一緒に行く?」
美冬「あ、行く行く!そうだ、琴葉ちゃんもあみちゃんのこと名前で呼んであげようよ!!」
花野井「わ、私はいいよ…まだ仮染さんが私に心を開いてくれてるか分からないし…いきなり名前で呼ぶのもなんか馴れ馴れしいって思われるかもしれないし…」
仮染「別に私は好きに呼ばれても構わないわ。琴葉の好きにすればいいと思う。」
花野井「そ、そうかな…うん、そうだよね。それじゃあ…『明日海ちゃん』!」
仮染「うん。」
花野井「な、なんか照れくさいね…」
美冬「もう、2人とも恥ずかしがり屋なんだから!」
私達は談笑しながらホテルのレストランに向かって歩いていった。
【ホテル レストラン】
レストランでは2人組の男女がポーカーに興じていた。
1人は高貴な風貌で気品のある風格を漂わせている女性、もう1人は掴みどころのないような油断ならない態度の男性。
「配役は…おれがフルハウスでキミがフォーカードか。うーん…これはおれの負けだね。」
「うふふ、また勝ってしまったわね。ごめんあそばせ。」
美冬「わぁ、凄いね!!」
「あら、いつの間にオーディエンスが湧いてでたのね。」
花野井「ご、ごめんなさい、急に話しかけて…その、迷惑だった?」
「いや、おれは大丈夫だよ。別に仕事の邪魔をされたわけではないし、キミたちとはこれから長い付き合いになるかもしれないからね。」
「ええ、わたくしも構わなくってよ?あなた方ショミンのことはわたくしも興味津々ですもの。むしろこちらからあなた達と仲良くしたいくらいですわ!」
花野井「しょ、庶民って…」
気に入られてるのか、見下されてるのか…よく分からない人ね。彼女は…
もう一方の彼も何だか考えが読めなくて飄々としてる雰囲気で…どことなく、掴みどころのない異質さが感じ取れる。
花野井「そういえばまだちゃんと挨拶できてなかったよね。私は花野井琴葉。これからよろしくね。」
美冬「はいはーい!新城美冬だよ!」
仮染「仮染明日海です。よろしく。」
財前「改めましてごきげんよう、わたくしは財前 梨利佳と申しますの。今後ともどうぞよろしくお願いいたしますわ。」
【超高校級の資産家 ザイゼン リリカ】
花野井「明日海ちゃん、財前さんは世界有数の資産家、財前家のひとり娘なの。島や軍事施設を丸ごとひとつ買うのはもはや朝飯前って位の大金持ちで、財前さん一人でも国の経済を回せるとまで言われてるんだよ。」
仮染「国の経済を回せるレベルの財力…それって、どれほどの財力なのか想像もつかないわね…」
財前「うふふ、もっと褒めてくださっても構いませんわ。ですがわたくしの財力はこの程度ではありませんのよ?」
仮染「こ、この程度…?今の話だけでも十分に凄いのに…」
財前「わたくしが18歳になった暁には月の数十分の一程度の大きさですが星を買ってもらうことを約束していますの。」
美冬「星を買うの!?す、凄いスケールだね!!憧れちゃうよ!!!それに何だかリリちゃんって絵に描いたようなお嬢様みたいで凄く綺麗だね!!私みたいなちんちくりんでもリリちゃんみたいになれるかな?」
財前「リリちゃんとは…わたくしのことでしょうか?」
美冬「うん!私、リリちゃんとも仲良くなりたいから親しみやすい呼び方で呼ぶことにしてるんだ。」
財前「なるほど…わたくしの名前が梨利佳だから縮めてリリちゃん、ですか…その庶民的センスが籠ったあだ名、気に入りましたわ!」
財前「それともう少し、美冬さんが親しみやすい話し方で接してくれているのだから、私もくだけた話し方であなたたちと接するのが礼儀というものね。ではこれからよろしくお願いするわね、美冬さん、明日海さん、琴葉さん!」
美冬「うんっ!えへへ…仲良くしようね、リリちゃん!」
花野井「もちろん、困ったことがあったら頼ってくれていいよ。」
仮染「こちらこそよろしく。財前梨利佳。」
庶民と見下しつつもちゃんと親しく接してくれるあたり、根は善良な人だって言うのは何となく伝わる気がする…言葉選びが下手なだけで、内面的には好奇心旺盛で純粋な人なのかもしれないわね…
「あ、そろそろおれも自己紹介を始めてもいいかな?」
花野井「ご、ごめんなさい。すっかり話し込んじゃった。」
「いや、別に大丈夫だよ。おれが間に入って会話を遮るのも、みんなに悪いからね。」
財前「紳士的ですのね。ではわたくしもここは空気を読んであなたの会話を遮らないようにしましょう。」
仮染「そうね。で、あなたの名前は?」
神原「…神原耕一。それがおれの名前だよ。」
【超高校級の探偵 カンバラ コウイチ】
美冬「神原耕一…神原耕一…どこかで聞いたことあるような…?」
花野井「あ、ほらあれだよ!例の海外を騒がせた未解決の強盗殺人事件を時効になる前に犯人を暴き出したことで有名になった!」
仮染「み、未解決事件を解き明かした!?それはそうとうな凄腕の探偵ね…」
神原「とんでもない。別におれがそんなに凄い訳じゃないよ。それにあの事件は結局のところ犯人は数十年前に既に外国の風土病で亡くなってしまっていたから、結局逮捕には至らなかったし…」
神原「みんなおれを探偵業界のホープとか超高校級に相応しい有能だとかもてはやしてるけど、おれ自身は特に秀でたところの無い普通の探偵見習いだよ。」
自分の功績を鼻にかけないタイプなのね、彼は。嫌味ったらしく聞こえなくもないけど、彼自身は自分の凄さをアピールすることなく平素通りに振る舞う堂々とした一面もあるみたいね。
神原「キミたちのこともだいたい調べてあるよ。超高校級のゲーマー、新城美冬さん。超高校級のアイドル、花野井琴葉さん。」
美冬「わたしたちのことも知ってるんだ!でもわたしたちって、まだ自己紹介してないよね?」
神原「知るべきことを頭に予め叩き込むのは調査の基本だからね。それと…あれ?キミは…」
花野井「あ、この子は仮染明日海ちゃん。記憶喪失で自分のことが思い出せないみたいだけど、私達と同じ明日守学園の新入生だよ。」
神原「なるほど…仮染さん…か。幻の16人目の高校生ってキミのことを指している可能性もあるというのか?」
花野井「幻の…16人目?」
美冬「もしかして、情報不明の高校生のこと?」
仮染「情報不明の高校生?」
美冬「あみちゃんが来る前に噂になってた、素性不明の超高校級の生徒のことだよ!あまりにも情報が少なすぎて幻の存在って言われてたけれど…もしかしてそれって、あみちゃんのことだったの!?」
神原「まだ確証は無いわけじゃない。だけど…キミがもしかしたらこの島の…いや、これ以上の変な詮索はよしておこう。せっかくの友達を変な風に疑いたくはないからね。」
花野井「そ、そう…」
神原「人騒がせなことを言って申し訳ない…まぁ、おれはみんなとも仲良くやってきたいとは思ってるから、そこは信じてくれ。今後ともよろしくね。」
美冬「えー、せっかく気になってたのに…」
神原「探偵は未来人じゃないんだ。悪い予感は予感のまま胸中に収めておくものなんだよ。」
美冬「そうなの?まぁ耕くんが言うならそうなのかもしれないね。」
思わせぶりな発言が多くて一筋縄じゃ行かなさそうな人ね…私も、彼に翻弄されないように気をつけなくちゃ。
【空港】
続いて私達は空港へ向かった。
…と言っても、空港には飛行機はおろか滑走路を整備したり荷物を運ぼうとする車ひとつすら見つからなかったけれども。
仮染「…何も無いわね。」
美冬「うーん、きっとまだ全部の飛行機がメンテナンスされてるとかだけなんじゃないかな?」
「いや、そうじゃあねーぜ。」
その時、空港にいた1人の男が声をかけてきた。
「この飛行機はどれもハリボテだ。駆動部の部品が根こそぎ奪われてやがんだよ。」
花野井「駆動部が根こそぎ!?」
「左様。某も目を疑ったが、どちらにせよその絡繰がピクリとも動かぬのは間違いない。」
「それにしても…変だと思わない?ぼくらは見知らぬ方法でここへ連れ去られて、帰るための宛もなくこの場所で過ごすはめになるなんて…ぼくらをこの無人リゾート地に閉じ込めた人は何がしたいんだろうね…」
花野井「それは…確かにそうだね。」
仮染「普通に誘拐だけならともかくリゾート地だものね…」
美冬「もしかして、リゾート地好きの誘拐犯がいるとかじゃないかな?」
「けっ、だとしたらそいつは余程の物好きってこったろうなぁ。イカれた趣味してやがんぜ。」
「某は浮世の娯楽は性にあわぬ。やはり忍びて地下の遊郭へ向かう方が余程面白い。」
「はぁ…高校生が不健全な遊びに手を染めないでよ。」
花野井「そういえば、みんな自己紹介がまだだったよね。ちょうど新しい人もここにいるし、改めて自己紹介しない?」
「ま、いいぜ。互いに素性を知らねーまま過ごすのも気味悪いからな。」
仮染「ど、どうも…仮染明日海です。」
「俺は…黒木 凶真だ。一応忠告しとくが、オレとつるんでもろくな事はないぜ?」
【超高校級のアウトロー クロキ キョウマ】
黒木「肩書きは一応…『超高校級のアウトロー』って呼ばれてるぜ。」
美冬「超高校級のアウトロー…あっ!思い出した!」
花野井「美冬、知ってるの?」
美冬「お兄ちゃんが昔話してくれたんだけど、お兄ちゃんが超高校級のゲーマーとして明日守学園に呼ばれる前にいろんな超高校級の生徒のことを調べてたみたいなの。それで、超高校級のアウトローっていう噂だけで詳細が分からない生徒がこの世にいるっていうことを聞かされてたんだ。あなたがそうなんだね!」
花野井「言われてみれば、明日守学園の入学生徒の情報を集めた掲示板でもその噂は立ってたけど…本当に実在したんだね。」
仮染「それって、どんな噂?」
花野井「危険な取引や荒事の処理を請け負い、裏社会で金と力を手に入れた高校生って噂だよ。」
黒木「ま、無理もねーな。俺は裏社会の人間だ。強姦と殺人はやってねーとはいえそれ以外の犯罪はコンプしてっからあんま表に出せねーようなものも抱えてんだよ。表じゃ名前はおろか肩書きくらいしか知らねー奴が多いだろうな。」
黒木「ところで、そこの女は花野井琴葉だろ。確か人気アイドルグループのセンターだったな。」
花野井「あ、やっぱり私のことも知ってるんだね。」
黒木「裏社会に身を潜めてたからって表社会のことまで疎いわけじゃねーよ。名前くらいは知ってら。」
黒木「それとそこの左端のチビ、オレの噂を聞いてたテメーのお兄ちゃんってのは誰のこった?」
美冬「むー、チビじゃないもん!!わたしの名前は、新城美冬だよ!!」
黒木「新城…!!じゃテメーはあの新城柊弥の妹だっつーのか?」
美冬「うん!でも凶くんはどうしてお兄ちゃんのこと知ってるの?」
黒木「どこぞのゲーム大会で知り合った仲だ。そいつとは死線をくぐり抜けた…ってのは大袈裟だがコンビを組んで勝ち上がってきたことがあんだ。」
花野井「柊弥くんとコンビ…か。」
黒木「今のオレから話せるのはこれだけだ。なんのゲームかは知らない方が身のためだぜ?」
一見は尖っていて、話す時はそれなりに饒舌だけど明かせないことは明かさない秘密主義でもあるのね。粗野な態度の裏には彼の読めない思いが隠されているのかもしれない…
数森「じゃあ次はぼくが…ぼくの名前は、数森 学人です。肩書きは…『超高校級の数学者』です。」
【超高校級の数学者 カズモリ ガクト】
花野井「数森くんって、小・中学生の頃数学オリンピックで優勝して連覇記録を誇るあの数森くんだよね?」
数森「そうだね…というよりぼく他にいないでしょ。数学オリンピックに出てる数森くんなんてさ。」
美冬「む、なーんか感じ悪いね。」
数森「え?あぁ、ごめん。不快にさせたのなら謝るよ。もともと人づきあいは苦手な性分でさ…会話に消極的なタイプで話を長く続けるのが苦手で嫌いなんだ。」
仮染「ずいぶん気難しくて排他的な人間なのね、あなたは。」
数森「まぁ…否応なしにこれから君たちとは長い付き合いになるから、極力君たちと仲良くできるように努力するよ。よろしくお願いします。」
花野井「よ、よろしく…」
美冬「…まぁ、わたし達もがっくんにうっとうしがらない程度に話しかけるから、わたしたちの事は避けないでよ?」
数森「時と場合によるね。でも分かった。ぼくは君たちとは対等に付き合うつもりだし、偉そうに文句を言う筋はないよ。」
何というか、自分で自負している通りに人づきあいに対して嫌悪感や苦手意識を持っている人のようね…そっけない人柄で本人も自覚しているみたいだけど、かたくなにその態度を変えない理由でもあるのかしら?
「……」
…何だか南国に相応しくない服装の人がいるわね。
「む、何用か?」
常に警戒心は抜かないとでも言わんばかりの鋭い目つきね…彼は一体何者なのかしら?
花野井「えっと…自己紹介をしたいんだけど…今少しいいかな?」
景村「うむ。ではお主ら、名は何と申す?」
花野井「えっと…花野井琴葉です。」
美冬「新城美冬だよ!」
仮染「…仮染明日海。」
景村「花野井殿に新城殿に仮染殿か。心得た。」
景村「某の名は景村 才蔵…この地に生まれし最後の忍でござる。」
【超高校級の忍者 カゲムラ サイゾウ】
景村「人知れずそびえ立つ山奥より、風雅流忍術の使いとして影に生きる忍、それが某でござる。」
美冬「忍って…才蔵くんは忍者なの?」
景村「左様。だが某はただの忍びでは無い。某はこの世を生き抜くための『てくのろじい』とやらを身につけた、現代最後にして新たなる忍びの二つ名を手にしたのだ。」
仮染「…テクノロジー?」
景村「今はまだ任を受けてないゆえ見せることは出来ぬのだが…雷の力を蓄えし苦無や風の力を受けし草履、様々なてくのろじいを駆使し主からの命を果たす。それが影とともに現世に生きる某の力でござる。」
花野井「ベタにスマホを見せつけて「矢文の勤めを果たす小箱だ」とかじゃないんだ…」
景村「ふむ、スマホのことか?」
美冬「え、そこは普通にスマホって言うんだ!」
景村「某とて現世の常識が皆無という訳はない。この地の言葉に馴染むのにはそれこそ苦労もしたが、稚児の頃より受けし決死の訓練とは非にもならぬ。」
美冬「え、その決死の訓練って?」
景村「一部だけだが紹介してやろう。戦や隠密といった訓練は無論、煮えたぎる湯に浸かり、家族諸共皆その湯に浸かる…風呂と呼ばれし水難訓練でござる。」
美冬「普通のお風呂じゃん!!」
景村「舐めるな!!某の里の風呂の温度は水温50度…赤子の柔肌には耐えられぬ苦痛のような熱さだったぞ…」
花野井「思ってたより普通のお風呂じゃなかった…」
意外と現代に馴染んだりかと思えば子供の頃から訓練を受けて荒事に慣れさせられた…様々な境遇を得て現世に生きる忍となったのが彼…謎めいてはいるけど、何にせよ…変わった人だと言うのは間違いなさそうね。
【ショッピングモール】
続いて私達は巨大なショッピングモールにやってきた。
「うーん…やっぱり人っ子一人居ないね。」
「これだけ大きなショッピングモールなのにお客さんどころか従業員もいないだなんて、何か変じゃない?」
「けど中はオープンしたてみてーにピカピカだぜ?こんなの、どう考えたっておかしいだろ。」
「綺麗な状態の廃墟…って事だったりしないかな?」
「フーム…I Don't know…」
美冬「おかしいって、ここもやっぱり無人だったの?」
「そうだよ。化粧品店もフードコートも洋服屋も誰もいなくてもぬけの殻!みぃも変だと思わない?」
美冬「うん、そうだね。あ、そうそう!まだ自己紹介してない子が1人いるから、皆もこの子に自己紹介してあげて!」
「Oh! Is she also a new student?」
「それじゃ、みんなで自己紹介してあげようか。もちろん順番でね。」
そうして私は5人全員に話しかけることにした。
まずは中性的な顔立ちで容姿も整っている美少年に声をかけた。
仮染「初めまして。仮染明日海よ。あなたは?」
蒼瀬「ボク?ボクは蒼瀬 成海!『超高校級の声優』なんだよー。」
【超高校級の声優 アオセ ナルミ】
花野井「蒼瀬くんは超高校級の声優って言われてて、その高い演技力とルックスで多くのファンを抱えている高校生声優なんだよ。私も彼の代表作は何作も知ってるんだ。」
蒼瀬「最近じゃドラマにも出演してくれって引っ張りだこなんだー。花野井さんとも何回か共演したことあるよ!」
花野井「うん…だけどその時の私の演技はちょっと棒読みだったかもしれないかな…」
蒼瀬「大丈夫!花野井さんなりに一生懸命演技できてたから、そんなに気にする必要は無いよ!」
美冬「蒼瀬くんって…あ!前のゲームでも主人公役で出てたよね!?」
蒼瀬「うん!あのシリーズ、ボクもよく遊んでるから好きなんだー!」
仮染「私は全然声優について知らないのだけれど…今度、あなたの出演作品にもチェックしておくわね。」
蒼瀬「ありがとう仮染さん!良かったらアニメにも興味を持ってくれると嬉しいな!」
蒼瀬成海…人への気遣いができて明るく朗らかにふる舞えるようね。芸能人として培われた人との接し方のスキルの積み重ねかしら?琴葉とは違った人柄の良さを感じるわね…
次に、私はスポーツ選手のような体格の青年に声をかける。
仮染「あなたも、明日守学園の生徒なのよね?」
風間「あぁ、もちろんそうだぜ。そういやお前への自己紹介がまだだったな。」
風間「『超高校級のパルクーラー』、風間烈也とは俺の事だ!!そんじゃ、よろしく頼むな!」
【超高校級のパルクーラー カザマ レツヤ】
仮染「風間烈也…ね。私は仮染明日海。どうぞ、これからよろしく。」
風間「おう、これからよろしく頼むぜ、仮染!」
花野井「風間くんは今でこそパルクーラーとして有名なんだけど、昔は陸上でも活躍してたんだよ。明日海ちゃんは陸上とかは知ってる方かな?」
仮染「いえ…たまにオリンピックで100m走を見るか、ニュースで正月の駅伝の話を聞くかくらいね…」
風間「やっぱりそっか…陸上なんてサッカーとか野球に比べると下火だもんな…ま、俺がどれだけすげーのか、陸上部時代の活躍を少しだけ話してやるよ。」
風間「俺は昔陸上部じゃ短距離から長距離まで、全種目を学校内でトップ記録を保持してたんだ。しかも他の特待生を置き去りにしてブッチギリだったんだぜ?」
美冬「わたしもさっき教えてもらったんだけど、烈くんの学校って凄い歴史あるスポーツの名門校なんだって!だから烈くんが学内トップっていうのは実質、日本一レベルのスポーツの成績優秀者ってことになるんだよ!!」
仮染「日本一…それは凄いわね…でも、何で彼は陸上をやめてパルクールに転向したの?」
風間「まぁなんつーか…いろいろあったけど直線を走るのに飽きてきたんだよな。陸上が嫌いなわけじゃねぇけど、俺はただ走るより色んなところを縦横無尽に動き回りたいって思ってたんだよ。そんで元世界記録のパルクーラーがコーチになって俺を鍛えたいとか言い出して、こうして今の道に進んだ…って訳だ。」
風間「ま、お陰で今は陸上やってた頃よりも楽しくやれてるんだ。風を体全体で感じたりスリルのある空間に踏み出せたり、結構楽しいもんだぜ?」
花野井「それで、話を戻すけど…風間くんは高校生でパルクールでの人気テレビ番組「HANZOU」で優勝したり、海外のパルクールチャレンジで難関ステージ全制覇っていう、パルクール界に火をつけた立役者なんだ。」
風間「お、さっすが花野井ちゃん!!もしかして花野井ちゃんも俺の活躍をテレビで見てくれたとか?」
花野井「ま、まぁそうかな…」
風間「フッ…嬉しいなぁ…!!パルクーラー冥利に尽きるぜ…やっぱりパルクール初めて良かったなぁ…前以上に俺のスター性が上がった気がするぜ…!」
仮染「…風間烈也。あなたがパルクールの道へ転向したのって、もしかして…」
風間「も、モテたいからだってかぁ!?なわけねーだろ!!確かに俺は常日頃からモテたい願望はあるけど下心だけで陸上捨ててパルクールに行くなんて裏切りできっかよ!!!何も下心だけで自分の生き方決めねぇっつーの!!!」
風間「…っと、いっけね。花野井ちゃんと美冬ちゃんの前でついキレ散らかしちまった…ごめんな2人とも、目の前でキレられて不快じゃなかったか?」
花野井「あ、え?ううん、全然!」
美冬「わ、わたしも気にしてないから大丈夫だよ!」
仮染「…あなたがそこまで怒るとは思わなかったわ。不快にさせたのならごめんなさい。」
風間「…や、大丈夫だ。よくブスでムカつく女連中に好き放題言われてたから条件反射でキレちまった。わりかったな。お詫びに今度ココナッツミルクでも奢るよ。」
花野井「そ、そこまでしなくてもいいよ!」
風間「いや、そうじゃないと俺の気がすまねぇ。この詫びは近々させてもらうからな。そんじゃ、今後ともよろしく!」
美冬「あ、あはは…まぁ、こんなふうに良く烈くんは気になってる女の子に声を掛けてくるんだ。」
仮染「…言われなくても分かってるわよ。けど、実際迷惑なんじゃないの?」
花野井「うん……迷惑だよね。……本当に。」
仮染「…琴葉?」
花野井「あ、ううん、なんでもない!確かに迷惑だけど、彼自身好意でやってくれてるところもあるし…別にセクハラまではされてないから…その点、会社の偉い人やストーカーなんかよりはマシかなって…」
美冬「さすが琴葉ちゃん…アイドル時代の過去が強い…」
とにかく、彼は軽薄で自由奔放ではあるものの嫌な人という訳ではないようね。好青年然とした爽やかさもあってフレンドリーな人柄で、こっちも親しみやすく感じる…良くも悪くも感情表現豊かで、どこか憎めないような人物ね。
次に私は背の高い明るい金髪の女性に声をかける。
仮染「…あの、少しいいかしら?」
「Oh, you're probably a new student, right?」
仮染「え、英語…?い、イエス…アイムアニュースチューデント…」
「Wow! I've made new friends again! My school life will be even more fun from now on!」
「What's your name? Where are you from? What is your favorite food? What snacks do you eat at home parties?」
仮染「あ、あー…その…」
美冬「ま、待って待って!!セレナちゃん、落ち着いて!!あみちゃんがグルグルしてる!!」
花野井「ほ、ほら明日海ちゃんも、大丈夫?セレナちゃんは英語でよく喋るし、それにペースも早いから…」
仮染「ど、どうやらそのようね…」
「sorry…ミー、ジャポンの友達とこうやって仲良くスクールライフ送るのが夢だったから…つい嬉しくてお国が出ちゃったヨ…」
仮染「だ、大丈夫よ。それより私も自己紹介しなくちゃね。私は仮染明日海。あなたは?」
セレナ「Oh, 自己紹介?I see! じゃあ始めるネ。My name is Serena Eastlake.ミーの才能(タレント)は『超高校級の芸術家』なんだヨー。よろしくネ!Nice to meet ya!」
【超高校級の芸術家 セレナ・イーストレイク】
セレナ「ミーのことはセレナでいいヨ!ミフユやコトハにもそうコールして貰ってるからネ!」
仮染「わかったわ。それじゃあそう呼ばせてもらうわね、」
美冬「セレナちゃんはアメリカからの留学生で、色んな絵の作風を取り入れながらエキゾチックな独自の世界観を絵にして描き上げているんだよ!」
セレナ「キュビズム、ヒッピー、ポストモダン…色んなカテゴリをミックスしてミーはアートをクリエイトしているノ!」
私はセレナが描いたというスケッチを見る。
絵画にはあらゆる画風が混ざりぐちゃぐちゃしつつも見ようによってはどこか前衛的で芸術的にも見える独特な絵が描かれていた。
仮染「…なんというか…エキゾチックね。」
セレナ「デショ?これはジャパニーズアートの水墨画?を取り入れてそこにフォビズムやデカダンスのエッセンスを…」
仮染「ふぉ…フォビズム…?デカダンス…?」
花野井「セレナちゃん!明日海ちゃんまた混乱してるよ!」
セレナ「Oh!! Oh my gosh…また迷惑をかけて、どうもスミマセン…」
仮染「い、いいえ…私の勉強不足だから…ねぇ、セレナ。今度時間がある時に私にアートのアレコレを教えてくれないかしら?」
セレナ「Really? Of course!! ミーで良かったら教えてあげるヨ!!」
美冬「あ、じゃあ私も!セレナちゃんとももっと仲良くなりたいもん!!」
花野井「私もお願いしていいかな?」
セレナ「3人とも…Thank You! これから良いアート仲間になれるといいネ!」
アートに対して情熱的で、一途な人間だと言うのは分かるわね…少し熱意がありすぎるけれど、自分のことを夢中になって語って…私もあれくらいの自己表現が出来る人間だったらなって羨ましく思う。セレナとはいい友人関係を築き上げていきたい…そんな気がする。
次に私はトランプの札を切る一人の少年を見る。
仮染「…彼は、何をしているのかしら?」
美冬「あ、りっくんのこと?」
花野井「天上くんはあぁいう風にマジックの準備をする時はこうやって空いた時間で練習をしているみたい。」
琴葉がそういうや否や、彼は私に4枚のトランプを近くのミニテーブルに置いて見せつけた。
「ねぇ、そこのまだ名前も知らない新入生のキミ!」
仮染「わ、私?」
「うん。ぼくは今4枚のトランプをこの机の上に置いてるんだけど…この4枚の中のどれかを選んで隠してみてよ。」
見たところ種も仕掛けもない、100円ショップにありそうなありふれたトランプね…私は無造作にカードを1枚選び、それを彼に見られないように隠す。
先に確認だけしたところ、私のトランプは♡のAだった。
「それじゃあ当ててみるね…キミは♡のAを選んだ、そうでしょ?」
仮染「…!?何で、分かったの?」
「あはは、やっぱり。でもこれがぼくの才能なんだ。へへへ…という訳で…」
天上「ぼくの名前は天上理人。『超高校級のマジシャン』って呼ばれてるんだ。」
【超高校級のマジシャン テンジョウ リヒト】
花野井「天上理人って…あなたがそうだったんだね…テレビでは何度か見かけたことあるけど、共演したことはなかったから…」
仮染「そんなに有名なの?彼って…」
美冬「もちろんだよ!!だってりっくんの手品は凄くて、連日お客さんが止まないくらいに人気があるんだよ!水中脱出、人体切断、イリュージョンはお手の物なんだから!!」
天上「あはは、まぁ大した特技じゃないよ。ぼくの才能は世間で役に立つってほどのことじゃないから。」
花野井「高レベルのマジックをやり遂げるのを堂々と謙遜出来るのも凄いよね…」
天上「けど、マジックなんて仕掛けが分かれば「あぁこんなもんか」ってなるでしょ?それと何ら変わらないよ。結局のところマジックにできるのはせいぜい人を少しの間驚かせたり楽しませるだけだからね。」
仮染「だからあっさり言い切れるのね…」
天上「うん。けど、ぼく自身はそう思っても観客をガッカリはさせたくないからね。もちろん、マジシャンとして、エンターテイナーの道を行く人間としての務めは果たしてるよ。」
天上「人を楽しませることこそが、エンターテイナーとして成すべき役割だからね。」
仕事に対しては真摯で、自分なりに仕事と向き合いながらエンターテイナーとして人を楽しませているのね…にこやかでマイペースな性格と案外リアリティのある性格…天上理人という人間は、その2つの人間性を使い分けて人と接しているようね。
最後に私たちは派手な格好をしている少女に声をかける。
仮染「あの、少しいいかしら?」
「ん、あたし?全然大丈夫だよ。」
仮染「そう。それじゃあ自己紹介するわね。私の名前は仮染明日海。あなたは?」
矢野目「矢野目由美奈。『超高校級の弓道部』だよ♪」
【超高校級の弓道部 ヤノメ ユミナ】
仮染「弓道部…なの?」
矢野目「そうだけど、それがどうかしたの?あ、もしかしてあたしが弓道部らしからぬ服装をしてるから気になってたとか?」
仮染「…そうなるわね。」
矢野目「あー、この格好ね。よく言われるんだよね、弓道部ぽくないとかギャルみたいとか。深い理由はないんだけど、強いて言うならあたしってさ、格式とか決まり事とか苦手なタチなんだよね…」
花野井「由美奈ちゃん、家が厳しいから古風な格好や家のしきたりとかの格式ばったことや服装が好きじゃないみたいなんだ。」
仮染「なるほど…それでこういう派手な格好をしているのね。」
矢野目「派手って…別にあたしはそんなハデハデな格好してる自覚はないよ?それにあたしはそこまで可愛げに持ってる訳でもないし…」
美冬「ううん、すっごく可愛いと思う!!だって私と違ってオシャレポイント高いし、写真で見せてもらった時の弓道姿もかっこいいんだもん!!だからゆみちゃん、もっと自信を持ってよ!!」
花野井「あはは…美冬ったらすぐアプローチ仕掛けるんだから…そういうグイグイくる所はある意味風間くん以上かもね。」
矢野目「そうかな…ま、みぃがそう言うなら褒め言葉として有難く受け取るね。」
美冬「えへへ…あ、そうそう!ゆみちゃんも何かあみちゃんのあだ名を付けようよ!」
矢野目「いいね!じゃあ仮染明日海だから…アスミンで!それでいいかな?」
仮染「…好きに呼べばいいと思うわ。呼び名に固執はしないもの。」
現代っ子ぽい性格で、古風なやり方が嫌いっていうステレオタイプなイマドキっ子なんだろうけど…弓道家としての実力はしっかり持っていて根はちゃんとしているのよね…強さと人柄の良さを感じる人だと思うわ。
【農園】
最後に私たちは農園に足を運んだ。
農園には牛や豚、鶏などの色々な動物がおり、立派な畑や無人販売所まで存在した。
「牛さまや豚さま…可愛らしうございます。」
「んだねぇ。でもこの子達も食べられるって分かってると、ちょっぴり寂しくなるもんだべ…」
「…いたし方ありません。私達はそのようにして生きておりますゆえ。」
「はは、優しいッスね。あ、あっちの野菜、農家の乃木さん的にはどう思うッスか?」
「あれだべか?んー…ちょっぴり形が悪くてちっこいねぇ。けど、食べられんことはないと思うべさ。」
仮染「…ここも個性的な生徒揃いのようね。誰から声をかけようかしら…」
私は早速、ここの3人に声をかけてみることにした。まずは無人販売所の野菜を眺めてる人に声をかける。
仮染「あの…あなたは何をしてるの?」
「ん?あたしかい?あたしはここの畑で育った野菜達を見とるんだべ。」
少し田舎訛りが喋り方に出てるわね…田舎から上京してきたって感じかしら。
「あたしが思うにここの畑はもう少し肥料の質を変えたりした方がいいと思うんだわぁ。」
仮染「そうなのね…私はあまり畑仕事のことは詳しくないからなんとも言えないのだけど…あ、自己紹介がまだだったわね。私は仮染明日海。」
「仮染さんかい?いい名前だねぇ。」
乃木「あたし、乃木 亜久里って言うんだわぁ。これからよろしく頼むねぇ。」
【超高校級の農家 ノギ アグリ】
花野井「亜久里ちゃんは超高校級の農家って呼ばれてて、地元は北海道にある大きな農場なんだよ。そこで色々な野菜を掛け合わせたり、出荷する肉の品質を品定めしたり…農業や畜産の世界だとかなりの有名人なの。亜久里ちゃんの農場は彼女が生まれてから一気に発展したんだって。」
美冬「それでねそれでね!グリちゃんのお家は自分の家の野菜を使ってレストランも経営してるんだって!」
仮染「レストランまで!?自給自足の極みね…」
乃木「大したことないよぉ。レストラン言ってもチェーン店なんてもんじゃない地方の小さな食堂だべ。でも、あたしが大人になったら東京や横浜、大阪にも店を建ててみたいって思ってるんよ。」
農家としても大成しているのに、店を東京に構えるという大きな夢を持っていて…純粋で素朴な見た目や優しい口調とは裏腹に夢に対する思いはかなり大きいようね。
次に私は、一際目立つ長身の男に声をかける。
仮染「あ、あの…」
「あ、自分になにか用すか?」
「お、大きい…!近くで見ると身長の高さが目立つわね…」
「あ、やっぱりビビってますか?すんません、自分タッパでかいんでどうしても初対面の人をビビらせちゃうんすよね…」
「いえ、大丈夫。少し驚いただけよ。えっと改めて自己紹介を…私は、仮染明日海。」
「あ、うっす。どうも仮染さん、よろしくッス。自分は山手環太郎って言います。『超高校級の鉄道博士』なんス。」
【超高校級の鉄道博士 ヤマノテ カンタロウ】
仮染「鉄道博士?」
山手「鉄道の知識に詳しく、実際に電車を動かせる権利を持ってるって感じッスね。」
美冬「ワタロー君は高校生でいろんな電車を動かしてるんだよ!新幹線とか特急電車とかも動かしてて、かっこいいよね!」
山手「いやぁ、さすがに本職の鉄道運転士ほどの信頼がある訳じゃないッスよ。確かに新城さんの言う通り、ありとあらゆる種類の電車には触りましたけど。」
仮染「ありとあらゆる…それは凄いわね。」
山手「一応ッスけど、将来はリニアやドクターイエローみたいな電車も任される予定ッス。」
花野井「実際、山手くんが鉄道業界で働いた功績は凄いんだよ!ここだと今の所電車が無いから、山手くんの運転技術や鉄道知識が発揮できないのが残念だね…」
山手「そッスね…こんな島じゃトロッコの一つも無いのが本当に残念ッス。」
山手「まぁとにかく、みんなとは今後長い付き合いになりそうなんでこれからもよろしくッス。一応、この中のメンツだと自分が最年長っぽいんで、何かあったら頼ってくださいッス。」
第1印象の時点で身長の大きさでびっくりするけど、いざ話すとのほほんとしてて話しやすいし…穏やかや人柄であまり動じない感じだから、きっと彼は頼りになりそうね。
最後に私は華奢な風貌の少女に声をかける。
仮染「あ、少しいいかしら?」
「何用でございますか…?」
仮染「えっと…自己紹介をしようと思って…私は仮染明日海というの。」
「仮染様…でございますか。」
「私は…草薙縁と申します。何卒、よろしくお願い申し上げます。」
【超高校級の華道家 クサナギ ユカリ】
美冬「ゆかりんは名門華道家の次の家元で、草薙流っていう流派で通ってるんだって!」
花野井「縁ちゃんの実家は結構有名な流派で、格付け番組だとわりとよく名前が挙げられたりテレビ出演で審査員もやってるみたいだよ。」
草薙「そうなのね。華道のことはあまりよく分からないのだけど…」
草薙「いえ…良いのです。次期家元とはいえ、私の腕は未だ華道の花形達には遠く及びません。今後とも精進いたしますゆえ…」
仮染「ええ。私も、応援するわね。」
草薙「誠に有難く申し上げます。では、何卒…」
控えめで落ち着いた、上品な女性としての風格が出ているわね…華道のことはそこまで知ってるわけじゃないけど、彼女もかなり積み重ねをしてきたはず…もっと話して、彼女のことをよく分かってあげなくちゃいけないわね。
私たちが話し終えた所で突然、どこからともなく島にとある声が響いた。
「あー、あー、マイクテス、マイクテス!ミナサン、聞こえまちゅか?」
「うん、聞こえてるよね!ミナサン、ようこそククルカン島起こしくだちゃいまちた!」
花野井「…?だ、誰の声だろう…」
仮染「少なくとも、私たちの中の誰かという訳ではなさそうね。」
美冬「って、さっきの声、ククルカン島って言ってたよね!?」
花野井「そ、そうだね…でも、なんなんだろう…」
「ミナサン、お手数でちゅが、これからお集まりいただきたい場所がありまちゅので、是非とも中央の『ククルカン自然公園』に起こしくだちゃい!」
「ぷすー、くすくす!それじゃあお待ちしてまちゅよ!ばいばーい!」
それだけ言うと声の主の再生された声は消えてしまった。
花野井「ほ、本当になんだったんだろう…さっきの声…」
仮染「…何にせよ、行ってみるしかなさそうね。」
美冬「誰だかわからないのに…誰なんだろう?まさかイタズラじゃないよね?」
正体不明の声の主を探りに、私たちは早速自然公園へ向かって歩き出した。
この小説で1番好きになったキャラは誰ですか?
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仮染明日海
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花野井琴葉
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新城美冬
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財前梨利佳
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草薙縁
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乃木亜久里
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セレナ・イーストレイク
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矢野目由美奈
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神原耕一
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山手環太郎
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蒼瀬成海
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風間烈也
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景村才蔵
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数森学人
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黒木凶真
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天上理人