殴りあえルビコン   作:フドル

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誤字脱字報告ありがとうございます!

今回オリジナル武器が出るためそういうのが嫌いな人は注意だ!


その流れ、破壊出来ず。

 あれからその場の流れで負傷者やらフレームが歪んでMTから出られなくなったパイロットやらの救助を手伝い、あらかた終了したところでベイラム勢とお別れした。

 

 救助中は少し前にベイラム勢のパイロット数名を"排除"したこともあるから色々言われるのかなぁなんて考えていたけど、一部から睨まれたりする以外は特に何も無かった。それを意外に思っていたんだけど、それを見抜かれたのかヴォルタから「傭兵ってのはこんなもんだ」と言われた。誰が殺されても恨みっこ無し。正直凄いよね、ウォルターや621が殺されたらオレは恨みっこ無しなんて絶対無理だと思う。

 

 それからお別れ前に部下に回収されたミシガンからお礼を言われたのだけど、やっぱりミシガンはメスガキ適性があると思うの。絶対需要あるよ。

 

 そんなことを考えつつも帰還し、ウォルターに報告。オレの報告を暫く目を瞑りながら聞いていたウォルターがそうかと呟くと、良くやったと言わんばかりに頭を撫でられた。

 

 こうやって褒められると、やって良かったって実感出来る。自己満足の行動とはいえ、やっぱり褒められるのは嬉しいものだ。

 

 むふーと撫でられて満足していると、横で静観していた621が割り込んできてウォルターにヴェスパー部隊伏撃のリザルトを見せた後でズイッと頭を寄せる。その時点で621が何を考えているのかを察したウォルターとオレは一度顔を合わせた後、一緒に621の頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

 無表情なのに先程のオレと同じような感じの雰囲気を纏う621をわしゃわしゃすること暫く。ウォルターが今後の展開をオレ達に話し始めた。

 

 ベイラムは損害を受け過ぎたのでアーキバスに対抗する力は無い。なので邪魔者がいなくなったアーキバスは深部探索を再開するだろうとのこと。

 

 ただウォルターは未だにベイラムがルビコンから撤退していないということが気になる様子。このままここに残ればアーキバスから残党狩りをされる可能性があるのに、そのリスクを抱えてでも居続ける何かがあるのかと思案している。

 

 正直ウォルター的にはここで撤退してくれた方が嬉しかったんだろうなぁ。原作だとここからはアーキバスだけを警戒すれば良かったのにここでは伏兵としてベイラムが加わったって感じだし……。

 

 やっぱり手を出して彼らを生存させたのは間違ったのではと考えてしまい、耳が思わずへにゃっとしてしまう。すると頭にウォルターのものではない手が乗せられ、視線を向ければ621がオレの頭を撫でていた。

 

 恐らくはオレが落ち込む気配を感じて慰めてくれたのだろう。思わず目をパチクリとさせていると、ウォルターも自分の発言でオレの様子が変わったのに気付いたのかオレの前で話す内容ではなかったなと謝ってくる。

 

 自分の行動で少し重くなってしまった空気にどうするべきかと思考していると、621がタブレットをずいっと差し出してくる。それを見れば、誰かを描いた写真のようなものが写り込んでいた。

 

 それがどういった意味を含んでいるのか分からず、思わず首を傾げてしまったオレを621が不思議そうに見つめ、タブレットを確認すると慌てて弄り始めた。そのことから自分が見せたかったものとは違うものだったのだろう。

 

 でも写真、写真かぁ……。壊すつもり満々だけど、原作の流れからしてこれから3人でいれる時間は少ないし、丁度良いかもしれない。

 

 てなわけで2人に写真を撮ろうと提案。ウォルターは少しだけ渋ったけれど、賛成派のオレと621がお願いすることで敢えなく陥落。写真を撮ることとなった。

 

 早速ここに来てから購入した私物のタブレットでタイマーセットをしてから写真を数枚程パシャリ。合流する前にオレが転倒しかけ、そのシーンを撮られるハプニングが一度だけあったけど中々良い写真を撮れたと思う。

 

 その中でも特に良い写真をウォルターと621に送信し、ハプニング写真などはロックをかけて大切に保管しておくこととする。

 

 621がハプニングの方も欲しいと言ってきたけど、恥ずかしくて渡したくないので模擬戦で勝てたらあげると言っておいた。するとあら不思議、次の模擬戦では殺意溢れる装備をしたACが現れたではありませんか!

 

 う、うぉぉぉぉ‼︎重ショ×2とワーム砲×2なんかに負けるものかぁ‼︎ 622!行っきまぁす‼︎

 

 

 

 

 

 

 

 なんとか621に勝利してハプニング写真を守りきった日から数日後、ベイラムに戦う力は既に無いと判断したのかアーキバスから仕事が届き、一足先にオレ達は未踏領域を目指して行動を開始した。

 

 解除されたレーザー障壁を通り抜け、その先へ進むと大きなミールワームが所々からこんにちはしてくるが、ACよりは小さいので特に驚異は感じない。が、この芋虫は勝手に出て来るくせにオレ達が近付くと凄く驚くのか自爆をしやがる。銃を持っている621ならともかく、オレとの相性は些か悪いのである。

 

 そのことに621が気付いたのか、積極的に芋虫を排除しようとするけど、それはオレが止めた。ここより少し先のところでラスティとの戦闘が控えているのだ。弾薬は節約するべきだろう。幸いにもすぐに通り過ぎると芋虫は心の安寧を得るのか自爆をやめるので問題にはならない。

 

 オレ達を追いかけてきているであろうラスティが芋虫の自爆に巻き込まれたらいいのになぁ。などと考えながらオレを先頭にして黙々と進み続け、機能を失ったミールワームの培養ポッドを通り抜けた先の広間を通り過ぎようとした時、原作通りに追跡者であるラスティが追いついてきた。

 

 ラスティとはしっかりと親交を深めていたのか、少し嬉しそうな声を滲ませて彼を呼ぶ621。でもラスティの言葉と雰囲気で何かを察したのか、すぐに戦闘態勢へ移行した。

 

 そのまま戦闘開始となったのだけど、如何に速いスティールヘイズでも621の射撃は躱し辛いらしく、無理に躱そうとして体勢を崩したところにオレが襲いかかることで着実に装甲を削っていく。

 

 このままいけば安全に勝てそう。そう思ったのが駄目だったのか、ここで解放戦線のミドル・フラットウェルが乱入。凄い気迫を纏いながらオレに襲いかかってきた。

 

 でも納得出来る。オレは解放戦線のパイロット達を殺した側だ。しかも解放戦線側からの依頼を一切受けたことがない。向こうからすると怨敵と思われていても仕方がない。

 

 解放戦線側の重要人物を殺したことはないと思うのでもしかしたらと思っていたけど、この分だと駄目そうである。仕方ないのでラスティの相手は621に任せ、オレは目の前のフラットウェルの相手をすることとする。

 

 分断されて1対1に持ち込まれた形だけど、戦闘自体は大したこともなく終了した。ラスティはオレと621によってそれなりの損傷を受けていたし、フラットウェルもここまでの道中にいた芋虫にでもやられたのかACにダメージを負った状態で乱入してきたからね。

 

 これ以上は無理だと悟ったのか最初にフラットウェルが撤退し、ラスティもそれに続けてアサルトアーマーを最大出力で展開してから撤退した。追うつもりであれば追えるし、この後のことを考えればラスティは倒しておきたかったのだけど、ウォルターが追跡よりもこの先へ進むことを優先したのでそれに従う。

 

 広間の先にある穴を降り、その先に存在するかつての都市を見つめる。ウォルターが呟くような声音でこの都市の名を呼ぶ中で、ここからだとオレは密かに気合いを入れた。

 

 ……あ、ミシガンからメッセージだ。こんな時に何だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ここからは俺に……いや、お前自身の感覚に従え。……行ってこい、仕事の時間だ。》

 

 ルビコン技研都市、その上空。そこにはアーキバスの先行調査依頼を打ち切られたのにもかかわらず、それぞれの目的のために動くウォルター達がいた。

 

 意味深な言葉を呟いた後、アーキバスと技研都市に配備された無人機達の戦場から少し離れたところでウォルターは621と622を投下する。本命の前に邪魔者を排除するためだ。

 

『おや……?あなた方は──』

『先手必勝だぞ!』

『閣下、例のカラス──』

『ん、こっちは、私が、相手。』

 

 戦場に乱入し、622はレッドガンを裏切ったであろうG3 五花海へ攻撃してACごと乱立するビルの奥へ押し込んで分断し、621はスネイルへ報告しながらも2人を追おうとしたV.Ⅵ メーテルリンクを行かせないと言わんばかりに狙撃で足止めする。

 

『困ったものです。あのハンドラー・ウォルターが飼う噛み付き癖が酷い狂犬。ベイラムにいればその名を知らぬ者はいないでしょう。まさか泥舟から乗り換えてすぐに遭遇するとは……。』

 

 強制的に622と戦闘に持ち込まれた五花海は落ち着きつつも困ったような声で弾幕を張るが、その顔は苦虫を噛み潰したような表情となっている。

 

 それもそのはず、五花海は622がどんな存在かを知っている。ましてや教え子(ヴォルタ)を何度か救った存在だ。興味が惹かれ調べたこともあるので他の者よりかは知っている自負がある。

 

 どんな状況でも無手、もしくは近接武器を一つしか装備しない異質で特にその真価を発揮するのはタイマン戦闘時。そしてウォルターの指示があれば、どれだけ親しい仲でも容赦無く排除を行う思考回路。

 

 それらを知っているからこそ出来れば無人機などに押し付けたかったのだが、初手でその手は潰された。勢いそのままに押し込まれた廃墟となったビルが乱立する狭い空間では左手や肩部の分裂ミサイルではその能力を十分に発揮できない。

 

 ならビルを撃って倒壊させ、質量に任せて押し潰してやろうと思っても、倒壊させるには些か火力が足りない。

 

 ここは多少の損傷を見込んででもメーテルリンクなどがいる場所へ戻るべき。そう五花海が結論を出し、行動しようとした時だった。622が道を逸れ、ビルの影へと姿を隠す。

 

 しかしその姿はレーダーが捉えている。レーダーでは大まかな場所しかわからないが、居場所さえわかればそれで十分。五花海は622の居場所をレーダーで確認しながらも、メーテルリンクのいる場所を目指す。

 

 ビルの道幅が狭いためか、四脚の先端が時々掠りそうになる。だがこの道が1番早く合流出来るのに加え、ACはこの程度では損傷しないので五花海はシステムが送ってくる警告を意図的に無視する。

 

 622は五花海の近くをピッタリと追いかけているが、時折姿を現しはするも五花海が攻撃する前にただ横切っただけだと言いたげな様子で再びビルの影に姿を隠す。一体何を考えているのかと五花海は622の行動を考察するが、大通りに出る道の先が見えてきたため、飛び出た先にいるであろう無人機からの不意打ちに対応するため、一度その思考を打ち切った。

 

 あと少しで合流出来る。622がタイマンでの戦いを目論んでいるのなら、仕掛けるチャンスはここが最後。仲間と合流出来るという気の緩みを突くつもりでしょうと五花海が油断なくレーダーに映る622を確認すれば、予想通り622が動き出した。

 

 すぐさま対応出来るように構えた五花海だが、622の武装を考えるとどこから飛び出してくるかは大体わかる。

 

「(狂犬は近距離専門、逃げる私の背後から姿を現しても攻撃が届かなければ意味がありません。なのでこの状況では必ず前に出てくるはず。彼女が今いる位置、そしてここに繋がる道を考慮すると……あそこからですね。)」

 

 五花海は一つの曲がり角に向けてマシンガンを向けた。数発程度はACなら耐えれるだろうが、この細道だ。上以外なら大した回避行動も出来ないため、それなりのダメージを期待できるだろう。

 

 タイミングを測るため、再び五花海はレーダーに視線を落とす。そこではちょうど622が五花海の予想した通路を通っている最中だった。

 

 そのことに五花海は予想は正しかったと確信しながら、レーダーから視線を外して狙いを定める。しかし出てくるはずの622は通路から現れず、そのことに五花海が訝しむ表情をしながら再びレーダーに視線を落とそうとするが、直後にハッとした表情をしながら上を見た。

 

「迂闊っ!」

 

 上を見た五花海の視界には、ビルの影から上昇したであろう622が五花海目掛けて落下しているところだった。

 

 そう来る可能性が頭にありながらも知らず知らずのうちに排除していたことに五花海は自分自身に向けて思わずといった風に叫ぶ。そして迎撃しようとシールド以外の全武装を622へ向けようとするが、ACの構造上、真上には腕部を向けれない。

 

 苦し紛れに唯一攻撃出来る右肩部のミサイルを放つがミサイルは622へ近付くと分裂。そのまま対象を包囲するように動くが、回り込むように動いたことによって目標に命中する前にビルへ命中。瓦礫と煙を撒き散らす結果で役目を終えた。

 

 そして煙を突っ切ってきた622は踏み潰すように五花海が搭乗するACの両肩部へ着地。(トン)を越す重量を持つACがブースターで落下速度を緩和させずにそのまま落ちてきたことにより、それを受け止めてしまった五花海のACに多大な負荷がかかる。

 

 しかし五花海のACは四脚型。受け止めた際に脚と接している地面がヒビ割れたり、関節部がいきなりかかった重量の負荷に耐えきれず火花が散ったりしたが、上手く衝撃を流せたようで機体は健在。まだ戦闘継続は可能だろう。

 

 だがこの状況に持ち込まれた時点で五花海は既に詰んでいる。彼の視界に映る映像には、622がパイルバンカーの先端を五花海がいるコクピットへ向けていたからだ。その気になればいつでも杭を打ち出せるに違いない。

 

『待ちなさい!私はミシガン総長の──』

『オレには関係ないぞ。』

 

 このままでは殺されると悟った五花海は一か八かと622へ本当の目的を話そうとする。そもそも五花海は本来ならベイラムが壊滅したことでアーキバスへ鞍替えするのだが、この世界線ではまだミシガンもヴォルタも生きている。なので泥舟であることに違いはないのだが、鞍替えしないといけないと思ってしまうほどまだこの乗り心地の良い泥舟は沈んではいないため、鞍替えをする必要が無い。

 

 なら何故ここにいるのかと言えば、やられっぱなしは性に合わないミシガンからの命令だからだ。ルビコンから撤退することは確定しているのだが、撤退する前に嫌がらせの一つや二つはしたいとミシガンは考え、アーキバスへスパイを放った。そのスパイとして白羽の矢が立ったのが五花海だ。

 

 ミシガンに指名された五花海は自身の経歴などをフルに使ってアーキバスへ潜入。そして有益な情報を集めている最中で今回の任務に駆り出された経緯だ。

 

 その旨を622へ伝えようとするが、622はそちらの事情なんてどうでもいいと言わんばかりに五花海の話を打ち切った。

 

 話の全てを聞けば考え直してくれると五花海は考えていたが、聞いてくれなければどうしようもない。本題の前にまどろっこしい話をするのは悪癖ですねと自分の話し方に反省しながら五花海は目を閉じ、その直後に622の杭が打ち出された。

 

 

 

 

 

 

『あ、もう終わってたの?待たせてごめん。』

『そん、なに、待って、ないから、大丈、夫。』

 

 戦闘を終え、細道から621がいる大通りへ戻ってきた622が辺りを見渡せば、残骸となったメーテルリンクのACや無人機が621の周りに転がっていた。そのことからそれなりに待たせたのだと確信し、621へ軽い謝罪をするが621は大丈夫と言いながら先に進み始めた。

 

 その声は均一で棒読みのようにも聞こえ、621と付き合いの短い者なら口では大丈夫だと言っているけど、本当は怒っているのかもと考えてしまいそうだが、それなりに長い付き合いの622はしっかりと621のことを理解出来ているため、明るい声で話しながらも警戒しつつ、621の後に続いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 廃墟となったビルが乱立し、その横道で沈黙するAC。胸部装甲には上から巨大な杭で穿たれたであろう穴があった。

 

 そのことから完全にパイロットは死亡しているとパッとこの状況を見た人間は思うことだろう。しかし突如穴の底から人間の手が飛び出て装甲を掴む。その後に穴から這い出てきたのは搭乗者である五花海。彼は自身のACの胸部装甲の上に乗ると、首を左右に傾けたりして自身の身体をほぐし始めた。

 

「どうやら、まだまだ私の運は無くならない様子。しかしミシガン総長の命令は不達成、ですか。……まぁ、ここは生きていることを喜びましょう。」

 

 パイルバンカーを受けて何故彼が生きているのかと言えば、622が元から狙いを逸らしていたからだ。元より、622は五花海が本格的にアーキバスへ鞍替えをしていないことを知っていた。

 

 何故なら事前の説明がなければ622なら殺しかねないと察したミシガンが622だけに向けてメッセージを送っていたからだ。そこは621やウォルターにも送っておけと言われそうだが、確実に殺したふりを出来るのは622の方だし、それにミシガンは621のことをイマイチ信用出来ていない。そしてウォルターは自分の目的を達成しやすくするためにベイラムがまだ諦めていないとアーキバスへ情報をリンクする可能性があったため今回は見送った。

 

 622ならウォルターに教えそうなものだが、意外にもメッセージの内容を622が他人に漏らしたことはあんまりない。せいぜい怒ったイグアスの相手が面倒臭くなって621へパスした時ぐらいだ。

 

 ならもし五花海の相手が621だったらどうするのかといわれたら、その時は運がなかったと言うしかない。622が気を利かせて早々にタイマンへ持ち込んだことも含めて五花海の運が良かったということだろう。

 

「……ふむ、ヴォルタが迎えに来てくれますか。」

 

 途中で622に打ち切られたとはいえ、トドメを刺される直前に咄嗟に話してしまった内容が内容なのでもしアーキバスの誰か……特にスネイルに聞かれていればマズイ。それに気付かず何とか生きていました風を装ってアーキバスの最寄りの拠点へ帰ってしまえば待っているのは拷問だろう。

 

 ここは念を込めて任務を中断し、帰るのが得策だ。そう判断した五花海がミシガンへ連絡すると、迎えとしてヴォルタが行くからしばらくそこで狂犬に噛まれて負傷したところを押さえて待っておけといつもの大音量で返事が返ってきた。

 

 幸いにも甘噛みだったので怪我は無いですよと返事を返そうとしたが、しばらく考えてから了解とだけ打ち込んで返事を返す。その後、しばらく待機していれば、遠方から爆発音が五花海の耳に入る。

 

 動かないのが現状の得策だが、興味を惹かれた五花海は大通りへ出る。そして音が聞こえた方向を見れば、技研都市に来た時から目を引いた巨大な建造物辺りで戦闘が行われているのが目に入る。状況からしてウォルターの猟犬が何かと戦っているのだろう。

 

「あなた方に吉兆が訪れることを祈っていますよ。」

 

 戦っている2人に向けて呟くように言葉を溢した後、五花海は自身のACがある場所へ戻ってヴォルタの迎えを待つのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『これ、でッ‼︎』

 

 621がトドメと言わんばかりに左肩部に装備されたスタンニードルランチャーを高速で飛行する機体に向け、タイミングを測り発砲。撃ち出された弾丸は寸分違わず目標へと飛んでいき、狙い通りの場所へ命中した。

 

 元々ダメージが蓄積していたのか、この攻撃で各所の部位がイカれたのか赤いコーラルの爆発を起こす敵機。重なるように小さな爆発が起きたかと思えば一際大きな爆発を起こし、戦場となっていた湖に墜落。熱された装甲が湖の水に触れ、気化したのか白い湯気となる。

 

《コーラルの共振が弱まって──》

『621!跳んで‼︎早く‼︎』

 

 完全に沈黙した敵機……コーラルを動力とする『C兵器』であり、コーラルの危機を未然に防ぐ役割を持つルビコンの安全装置である『アイビスシリーズ』。その機体反応が無くなり、共振していたコーラルが弱まっていくことで何か感じ取るものがあったのか、エアが何かを喋ろうとしたようだが、それは622の鬼気迫る声で中断された。

 

 エアの話に耳を傾けていた621だったが、流石と言うべきか622の言葉を聞き聞き返したり戸惑ったりすることは一切なく、即座に自身のACを上空へ飛ばした。そしてその直後、先程まで621が佇んでいたすぐ隣に弾丸が突き刺さり、広範囲に電撃を撒き散らす。

 

《……既に追いつかれていたというわけか。》

 

 不意打ちの一撃を躱した621に安堵しつつもウォルターは都合が悪いと言いたげな声を漏らす。621が弾丸が飛んできた方へ視線を向ければ、そこには多数のMTと撃ってきたであろう一機のACがコチラを見ていた。

 

『アレを避けますか。まぁ、いいでしょう。次です。構えなさい。』

《追いつかれた以上はやむを得ない。排除しろ。》

『わかったぞ。』『了、解。』

 

 621を狙ったACの搭乗者、スネイルは強大な敵を倒したと確信した際に発生する隙を狙った一撃を難なく躱されたことに驚くことはなく、寧ろ予定通りと言わんばかりに部下へ次の指示を飛ばす。その一方でウォルターはスネイル達企業勢の排除を621と622へ命じた。

 

『……今です、撃ちなさい。』

 

 622がアサルトブーストで加速して即座に距離を詰め始め、621は武装の有効射程より少し離れたところから攻撃を始める。それでも異常な命中精度を誇る621の攻撃はMT達へ命中し、一撃でその姿を残骸へと変えていく。

 

 しかしスネイルは眉を顰めることはあっても621の攻撃は自身へ来ない限り無視し、冷静に自分たちの方へ飛んでくる622との距離を測る。そして予定の距離まで622が近寄って来るなり部下達へ発砲指令を飛ばした。

 

 弾を撃ったにしては軽い音が周囲に響き、622の方へ向けて放物線を描きながら撃ち出された弾が迫る。その正体が何かを622は見破ることは出来なかったため急いでアサルトブーストを中断し、即座に後退を始めた。

 

「んー、もしかしてグレネード弾?」

 

 ある程度飛んでから爆発した弾を後ろに退がりながら観察していた622は、前世の記憶からその正体に辺りをつけた。だがグレネードキャノンなどを使わず、榴弾を飛ばすグレポンを使う理由は理解出来ていなかった。

 

 なにせAC戦でグレポンなどは使ってもまず当たらないからだ。緩やかな放物線を描いているうちに目標が範囲外へ逃げていることは想像に難くない。

 

 色々とここで使う意味を622は軽く考えてみたが、本命を使う前のブラフと結論を出した。ここで自分に鈍い攻撃だと認識させたところで本命の速く威力の高い攻撃を当てるつもりなのだろう、と。

 

 スネイルなら確かに考えそうだとコクピット内で何度か頷いた622。しかしこれは好都合だと笑みを浮かべる。何故ならそれを躱す自信があるからだ。

 

「──などと、奴は考えているのでしょう。」

 

 再びアサルトブーストを起動させて距離を詰めてくる622のACを見ながらその行動をスネイルは鼻で笑う。

 

「おおかた、自分程度なら私の眼中に入らないとでも思ったのでしょう。」

 

 部下に指示を飛ばし、撃ち出された本命を眺めながらスネイルは622へスタンニードルランチャーを向ける。肝心の622は先程と同じ放物線を描いて飛んでくる弾に臆せず距離を詰めていた。

 

「えぇ、貴方は先程その弾の影響範囲をしっかりと見ていました。ならばギリギリまで距離を詰めるのは当たり前。ですが──」

 

 

 

 

「対処済みです。」

 

 

 

 

 瞬間、622へ向けて飛んでいた榴弾は弾け、強烈な光と音を周囲に撒き散らした。

 

「いつもは私の神経を苛立たせるフロイトも今回は有益な情報でした。普段からそうしてくれると助かるのですが、ね。」

 

 恐らくは光に目がやられ、音によって平衡感覚も失っているのだろう。ふらふらと湖に不時着し、パニック状態にでもなっているのかひたすら周囲にパイルバンカーを打ち出す622の姿はスネイルにとって滑稽に見える。

 

 しかしこれで自身を傷付けられれば捕まえるためにわざわざ製作した特殊なフラッシュバンが無駄になってしまう。なのでスネイルは622のすぐ隣にスタンニードルランチャーを撃ち、弾に込められた大容量の電撃でACの機体制御システムをダウンさせた。

 

「さて、残りの駄犬も手早く終わらせましょう。餌もすぐそこにあるので簡単でしょう。」

 

 622を捕まえる間にそれなりの数がやられたが、まだまだ数はある。スネイルはそれらに指示を出し、指示を受け取った彼らは621ではなく動けなくなった622へ向けて攻撃を開始する。

 

「所詮は駄犬、やはり庇いに来ますか。浅ましいことです。」

 

 622の前に飛び出し、その身を盾にしようとする621の愚かな行動をスネイルは軽蔑しながらも装填が終わったスタンニードルランチャーを先程と同じように発砲する。その攻撃を盾となっている以上、621が回避することは出来ず、622と同じように撒き散らされた電撃によって機体がダウンした。

 

「企業を出し抜くどころか、見つかれば排除しようとするなどと……そんな駄犬どもには教育が必要です。それから──」

 

 部下達が眼下で動かなくなった2機のACを確保するために降下していくのを見送った後、スネイルはとある方向へカメラを向ける。今頃は別働隊が捕縛を完了させている頃だろう。

 

「──その飼い主にも。」




オリ主(…………。)

621……早々にオリ主がやられた上に集中攻撃をされ始めたので慌てて庇いに行き、さらにエアからウォルターの通信が妨害されたと報告されて軽いパニック状態に。その結果、迫るスタンニードルランチャーの弾丸に気付けず無力化された。

ウォルター……2人が無力化されたことを知り、さらに逃げれる状況でもなかったためこれ以上抵抗しても無駄だと判断し、投降した。

スネイル……フロイトからコイツは良いぞ、映像見ろよ見ろよと仕事中にもかかわらず四六時中ずっと勧められ、あまりのウザさに仕方なく見れば確かに凄かった。これは脅威になると判断を下しつつも再教育すれば良い手駒になると確信。情報集めを開始し、対策を練った。 ちなみにフロイトの勧めがなければオリ主をただの脳筋の猿だと軽視し、些事ではなかったのかルートになってた。

オリ主対策フラッシュバン……スネイルのお財布からそれなりの金額を吹き飛ばして制作したオリジナル。フラッシュバンとはいうけれど厳密には炸裂時に周囲に特殊なフィールドを形成し、その中に入ったACのシステムを一時的に改竄して画面が眩しく真っ白になるのとひたすら爆音を鳴らすようにするだけ。そう聞けば脅威に思うかもしれないが、もし入ったのが621なら少し眩しくてかなりうるさい程度にしか思わなかった。ある意味オリ主特攻武器。なお予め対策されたらただのゴミとなる。急造だから仕方ないね!



 ちなみにオリ主は解放戦線の重要人物は殺してないとか言ってますが、1人だけぶった斬ってます。ミドル・フラットウェルからすれば質問に惚けられたのと同じなので怒りますよね。





 そろそろ流れを不穏にしても……まぁええか。この作品はフロムなんだ、フロムなんだよ……。


 あ、あと投稿が遅くて申し訳ない。理由?信号機が青だからといって安心してはならない。
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