ちなみにオリ主は狼系の獣人です(今更)
雇用から解雇までのスピードが速いよやべーよやべーよとパニックになって、自分の価値を証明するために報酬度外視で自分が取れる中の難易度が高そうな依頼を選んで達成したのだが、どうやら解雇自体が勘違いだったようだ。
はぁー!良かったぁ!!知らない惑星で屋根なしホームレス生活なんて展開はなかったんや!っていうかホームレス生活なんて出来るわけないぞ。何処かの組織か企業に拾ってもらわないと野垂れ死ぬの確定だよ。
まぁそんな未来はなくなったので、再びオレはウォルターの指示で傭兵稼業に精を出すのだ。敵MTにワンツーワンツー、相手は死ぬ!
ウォルターからは小言のようにせめてブレードなどを持っていけって言われるけど、正直関節技をキメにくくなるからいらない。MTをぶった斬った方が速いのは速いけど、四脚MTとかの耐久度が高く、一撃で仕留めることが出来ないやつが出てくれば素手の方がやり易い。
でも安心して欲しい。パイルバンカーが出てくれば素手は卒業するから。あれなら関節技をキメにくくなるデメリットを背負ってでも装備したい魅力がある。一撃で吹き飛ぶ敵AP。ボス相手でもゴリっと削れるAP。あぁ、素敵だぁ……。
しかしそのパイルバンカーはショップの項目に並んでいない。どうやら傭兵としての実績が足りていないようで、まだ販売してくれないのだ。
ルビコン神拳の使い手を名乗るなら素手でいけって言われそうだが、リアル基準のこんな世界では無理があるのです。ゲームの時とは違って通信をジャミングしても時間が経てば外部の者達が様子を見に来る時があるし。せめて堅牢な装甲をぶち抜ける武器を持たせて……持たせて……。
なので目下の目標はパイルバンカーの入手である。そのためには依頼を受けて実績を積んでお金を稼がないといけない。というわけでウォルター、お仕事ちょーだい?
ウォルターの仕事選びは正直言って素晴らしいと思う。無茶な依頼は持ってこないし、オレの実力だと難しいかと考えたものは事前に受けるかどうかを聞いてくれる。
これには感謝せねばならないとオレは貴方に雇ってもらえて幸せだよーと伝えれば、ウォルターの顔に影がさす。あれ?なんか言っちゃまずいことでも言ってしまったか?ど、どうしよう?頭撫でる?それとも尻尾か?いつも手入れはしているからふわふわだぞ?
なんなら全身か!?と素早く床に仰向けに寝そべって腹を見せれば、やんわりと立たされて頭を撫でられる。ウォルターが言うには621より前に雇っていた者達を思い出していたとのこと。
むむ、恐らくその者達はゲーム発売前のトレーラーに登場していた617と619そして620のことだろう。ここで励ましの言葉を言うのは簡単だけど、それを言ったところで何も変わらない、と思う。
今日ほど自分の語彙力の無さを実感したことはないなぁ。最近は身体に引っ張られているのか言動も子供っぽくなっているような気がするし。
語彙力がない故に自分で作り出してしまった空気にまごついていると、ウォルターが気にするなと再びオレの頭を撫でる。ウォルターから溢れ出る父性のようなものに思わずパパと言いそうになるのを堪えているうちにウォルターは行ってしまい、我に帰ったオレは何故パパなんて言いそうになったと暫くの間、恥ずかしさに1人床を転げ回って悶えるのだった。
それから暫く、ウォルターが持って来た依頼を時々イレギュラーが発生しながらも達成する日々が続いた。イレギュラーでビックリしたのはベイラム企業の保有する戦力、レッドガンのG4に依頼の途中で襲撃されたことだろうか。
どうやらオレを敵の保有する戦力と思ったらしい。でもそれは向こうの勘違いだったし、戦闘の最中に向こう側の知り合いらしき人と通信していたウォルターが勘違いを正してくれたみたいで、その後はお互いの標的が近いところにいるとのことで僚機として共に行動した。
いやぁ、タンクは強敵ですわぁ。怯みにくいのなんの。オレには頭部をもぎ取ってから長いタンク脚に乗ってACの真ん前に立ち、ひたすらコクピットがあるであろう場所を殴ることしか出来なかった。
僚機として行動する時は頭部を失ったG4の代わりに弾道観測を引き受けたけど、タンク型の面目躍如と言わんばかりの火力に身の毛がよだつような思いだった。初撃で頭部をもぎ取ったのは英断だったな、うん。
そんな苦労もあったおかげか、オレの実績が認められたようでショップのラインナップが増えていた。そしてその中に待ちに待ったパイルバンカーがあったのだ!
即買いよ即買い。買った後は嬉しくてはしゃぎまわり、ウォルターに落ち着けと注意されたほどだ。でも仕方ないじゃないか、欲しかったものが手に入ったのだから。
だがもう一つ欲しいパーツがある。それは腕パーツの一つ、近接攻撃のお供であるAA-J-123 BASHO。通称芭蕉である。近接攻撃主体でいくなら脳死でこれを選べと言われている芭蕉パイセンだ。
しかしお前にはまだ早いと言わんばかりにショップには並んでいない。オレは621と同じACではなく、引き取り時についでに貰ったオンボロACを可能な限り修理したものがこの星に来た時の初期ACだったのでそのままだと辛いものがある。なので軽量二脚を主軸にちょくちょくパーツを取り替えてはいるけど、早く自分のACはこれだ!というアセンブルにしたいものである。
購入したとはいえ、パイルバンカーが届くまではまだ時間がある。ラインナップを見ているうちに近くにいたはずのウォルターは通信室に入っているし、通信室にいる間は余程のことがない限り入ってくるなって言い含められているし、なんやかんやで縁を結び、連絡先を交換したG4のヴォルタにいきなり連絡するのは任務中だったら申し訳ないし。……つまり暇である。
うーん、久々にシミュレーターモードでルビコン神拳チャレンジでもするか!!
シミュレーターに夢中になり、満足したのでコクピットから出たら見慣れたACが横に駐留してたでござる。
アレェー!?621さん!?いつの間に来ていたの!?
「上手くいったか……。」
通信室でウォルターは息を吐く。621の密航は成功した。目標だった身分も手に入れた。惑星封鎖機構の大型ヘリに襲われた時はキモを冷やしたが、621はそれを退けた。
これからの動きを頭の中で整理した後、ウォルターは立ち上がる。621は既にコチラに合流しているが、1人では私生活すら満足に出来ない身体だ。自力で動くことも難しいため今もACのコクピット内で待機しているだろう。
まずは621を休ませる。そんな思いでウォルターは621がいる格納庫へ向かう。
「……この声は。622か。」
格納庫に向かう途中、後は目の前のドアを通れば格納庫といったところで、ウォルターの耳にドア越しから元気の良い622の声が聞こえてくる。
恐らく622が621のACを見てはしゃいでいるのだろう。そのはしゃぎようはいきなり凄いサプライズでも受けたかのよう。一応通信室に入る前に621が今日到着する予定だと伝えてはいたが、あの時の622はタブレットに映るパーツショップのラインナップに夢中だったので聞いていなかったのかもしれない。
これからは共に行動させる時があるかもしれないので自己紹介をさせておくか。そう考えてウォルターはドアを開けた。
「ねぇねぇねぇねぇ!!君は何処から来たの!?あのACは君の物!?匂い的にあの場所出身だよね!?」
「…………。」
格納庫に入ったウォルターが最初に見たものは、椅子に座っている身体のところどころに包帯を巻いた少女から脱したばかりの見た目をした女性、621。そしてその周りを興味津々といった具合にグルグルと周りながら、次々と621へ質問を投げかける622の姿。その尻尾はブンブンと振られており、目も心なしかピカピカ輝いているように見える。それから621の匂いを覚えようとしているのか、しきりに621の近くに顔を寄せてはすんすんと鼻を動かしている。
その姿にウォルターは思わず犬の姿を幻視した。初めて家に訪れた者に人懐っこい犬はこういう行動を取ると聞いたことがあるが、622の行動はまんまそれだった。
そんな622に621は無反応。と思ったが、包帯の隙間から覗く目が622の姿を追っているので621も興味は持っているのだろう。
622が強化の影響で感情などが欠落した621の良い刺激になればと考えていたが、なかなか良さそうである。自身の目論見が上手くいったことでウォルターは無意識に頬を少しだけ緩ませた。
「622、そこまでにしておけ。621はコチラに来たばかりで疲れているはずだ。」
「あっ!ウォルター!」
このまま見ておきたいが、あの様子だとずっと続けそうなのでウォルターは621達のほうへ歩み寄る。声をかければ622の耳がピンと立ち、振り返るなりウォルターのほうへ走り寄ってきた。
「622、621をあの椅子まで運んだようだな。」
「うん!でも621も自分で動いてた。まぁ、すぐに倒れて芋虫みたいになってたけど。」
同じ場所の出身ということもあり、もしかしたらと考えていたが、ウォルターの予想通りに622は621の状態をある程度把握していることが今のやり取りで知ることが出来た。これならウォルターが逐一621の様子を見ていなくても、622がフォローしてくれるだろう。
だがウォルターは少しだけ勘違いをしている。622は前世のゲームを通して621を知っているのであって、この世界での621は全くと言っていいほど知らない。なんならこれが初対面である。しかしまぁ、知っていることに変わりはないので特に問題にはならない。
「622、知っているようだが紹介する。彼女は621だ。傭兵としての名は『レイヴン』。そして621、お前の前にいるのは622だ。傭兵としての名は『ドッグ・ウルフ』。これからは同じ拠点で暮らすことになる。」
ウォルターがそれぞれにそれぞれの紹介をすれば、622が621の手を取って笑いかける。しかし621は無反応。そのことに622が気を悪くすることはなく、ニギニギと痛くない程度に手を握りしめて握手を済ませる。
「顔合わせは済んだな。なら621はもう休め。622、621の身体を洗ってから部屋に送ってやれ。621の部屋はお前の隣だ。621の移動には物置に用意してある車椅子を使うといい。」
「分かった!取ってくるぞ!」
ウォルターの指示を聞くなり622は走ってこの場を後にする。走る音が小さくなっていき、人が増えたことでいつもより興奮しているのかとウォルターが推測しているうちに再び足音が大きくなる。
「取ってきたぞ!そして621を乗せて……出発だぁ!」
「……待て、622。そっちには階段──」
「うひぁぁぁぁぁア!?」
「──遅かったか。」
ドンガラガッシャン。文字にするならそのような音が鳴り響き、ウォルターは思わず顔に杖を持っていないほうの手を置いた。622の種族からくる優れた身体能力と丈夫さを知っているのであまり心配はしていないが、何かがあってはいけないので様子を見に行く。
「622、興奮しすぎだ。少し落ち着け。」
「はい……、ごめんなさいぃ。」
「…………。」
階段まで辿り着き、ウォルターがため息を吐きながら眼下にいる622に注意する。それに対して車椅子から投げ出された621を咄嗟に庇い、座り込む621の下敷きになってうつ伏せにノびている622が間延びをした謝罪をおくった。
その後、621の身体を洗ったあと、包帯の巻き方がわからない622が下着姿でウォルターに助けを求めるなどの些事があったものの、特に何事もなくその日は終わった。
「身分は手に入れた。次は実績だ。」
その数日後、ウォルターが取ってきた仕事で621が出撃する。輸送ヘリから621のACが投下されたことを確認したウォルターは安全な場所までヘリを移動させ、問題がないことを確認してから621のサポートに移る。
拠点のものと同じACが取得する観測データを利用して展開されるマップを眺めるが、危なげなく621はMTを破壊していく。その安定した立ち回りに少し安堵しながら、ウォルターはもう片方のマップへ目を移した。
そこには621とは真逆の危なっかしい立ち回りで銃弾飛び交う戦場を突き進む622の姿が映っていた。
近接武器とはいえ、やっと武装を一つ取り付けたと思ったところでこれだ。本来なら621のほうを見るべきなのに、ウォルターの視線は自然と622のほうへ向いてしまう。
MT達の銃撃をクイックブーストを混じえた回り込むような動きで躱して近付きつつ、撃鉄を起こして炸薬の威力を乗せた鉄杭がブレードを振ろうとした四脚MTを貫き破壊する。血のように飛び散ったオイルが622のACを汚すが、622は気にせず排熱を済ませたパイルバンカーの鉄杭を元の位置に戻す。四脚MTはかろうじてコアの破壊を免れたようだが、コクピットを貫かれた四脚MTは二度と動かない。
一撃で四脚MTが破壊されたことで周りのMTが怯む。通信から困惑するパイロットの声が多数聞こえ、その姿は隙だらけ。そんな襲ってくださいと言わんばかりの隙を逃す622ではなく、杭を元に位置に戻しながら近くにいるMTへと襲いかかる。
「危なっかしいが、いつも通り……か。」
蹴りで敵MTを破壊している622に心配は尽きないが、彼女を信用してマップを縮小させる。そしてその分621のマップを拡大し、ウォルターは先程感知したMTの増援を621に知らせるためにマイクを手に取るのだった。
オリ主(階段から飛び出した621を庇うために先回りしたら尻が落ちてきた。)
このオリ主、パイロットが死ねばもう動かないよね理論で基本的にACを壊すのではなくコクピットを狙ってパイロットを殺しにきます。