いやいや、そんな主人公の名を間違えるわけないじゃないかと確認。
『レイブン』
ミ゛ッ!(即修正)
女性の621とのお風呂イベント。ぶっちゃけ元男性として色々と悶々するか、もう自分は女だし?他の女に欲情なんてしませんことよとなるか、女の子の裸だうひゃー!と中身を知られていたら即逮捕になりそうな考えに分岐するTS転生者がほぼ必ず通ると言ってもいい一大イベントだろう。
オレは内心見てもいいのかと悶々するタイプだったのだけど、それは621の服を脱がしたところで吹き飛んだ。なんというか、欲情とか申し訳なさとか考える前に……痛ましかったのだ。
あちこちに刻まれた手術の後。そんなものを見て女の身体云々なんて考えてられない。この621の姿を見て喜ぶやつなんてリョナ好きの奴ぐらいでしょ。
ってわけで普通に洗いました。反応しないから痛いところを擦ったりしなかったか心配だったけど、まぁ……大丈夫でしょ!擦ったところから血の匂いとかしなかったし!
そんな一大イベントを女好きのTS転生者達から勿体無いと言われそうなほどあっさりと終えたオレは今日も元気にお仕事です。てっきり暫くは621に僚機としてついて行ってサポートでもするのかなと思い、準備万端で待機していたのだけど、それだとレイヴンとしての実績が積みにくいとウォルターに止められた。
でもすぐに実績が積めたらオレも共に行動させる時があるからその時は期待しているとウォルターは言ってきた。すかさずフォローを入れてくるその姿勢、流石ウォルター。
てなわけで621とウォルターは依頼でテスターACを破壊しにいき、格納庫で現在1人ぼっちなオレは依頼探しをしている。オレはランク圏外の傭兵なので、基本的に受ける依頼はばら撒き依頼だ。まぁ、知名度が足りないということだろう。仮に知名度が足りていても依頼してくる人なんて少ないと思うけどな!理由?パイルバンカーしか装備していない傭兵にやり直しが出来ない依頼をやって欲しいと思う?思わないでしょ。
なんてことを考えつつ、依頼を漁って丁度良いものを2件見つけたのでそれを受ける。なんで一気に2つも受けたのかというと、ばら撒き依頼なので早めに受けておかないと違う傭兵に取られてなくなっていることがあるのだ。
ってことで1件目の依頼内容はベイラムのMT部隊の排除。なんかアーキバスの物資輸送ルートに展開されたようで邪魔だから排除しろとのこと。2件目はベイラムが出したアーキバスの仮拠点を破壊。自分達の部隊でやるつもりだけどもうちょっと手が欲しいから参加出来るなら参加してといった依頼だ。実行日も指定されているので1件目と被ることはない。
2件とも作戦領域がここからそこそこ近いので、これならウォルターに運んで貰わなくても自分だけで辿り着ける。早速と言わんばかりにACに乗って、1件目の依頼を遂行するために出撃の準備を整える。
え?何?新着メッセージが一件?差出人はヴォルタか。……うん、今から仕事だから後にして!ってことで出撃じゃぁ!!
ただいま!戦闘はまるまるカットじゃ!殴って蹴ってパイルバンカーぶち込むだけの簡単なお仕事だった。
格納庫に戻ると既に621も帰ってきており、車椅子に乗ってウォルターに運ばれている。ACにも特に傷らしい傷は無く、問題なく依頼を遂行してきたのだろう。
流石と褒めたいところだけど、それより先にオレはやることがある。それはウォルターに依頼達成報告をして褒めてもらうことだ!もうね、ウォルターに褒められるだけで嬉しいのよ。父性を感じる褒め方にニヤケが止まらなくなるのよ。
ってことで621のACの隣に自身のACを駐留!ウォルター達はオレの帰還に気付いて待ってくれているけど急いでコクピットから出る。え?メッセージが届いている?そんなの後だ後!褒められるのが先じゃぁ!!
「おい、聞いたか?」
「ガリア多重ダムのことだろ? ケッ、土着どもの要塞を落とす前っていうのになんでこんなことしなきゃならねぇんだ。」
「決まったことは仕方がねぇ。本番前の慣らしとでも考えておけ。」
ベイラムが所有する建造物の中で、2人の男性が歩く。そのうちの片方は仕方ないといった風だが、もう片方の男性は不機嫌を隠さず、その雰囲気に通路で出会う者達は無意識に道を開ける。
「それに俺ら以外にも独立傭兵がオマケで来やがるって話だぜ?いつからレッドガンは野良犬の面倒を見るようになったんだ。」
「独立傭兵だと?何処の奴だ?」
「アァ?知らねぇよんなもん。テメェをボコボコにした奴なんじゃねぇか?」
「……狂犬か。」
投げやりで答えられたそれに男性、ヴォルタは苦い顔をする。その様子からどうやら当時のことを思い出したようだ。
傭兵『ドッグ・ウルフ』。射撃武装を一切装備しないが故に超至近距離での特徴的な戦闘スタイルをとる。射撃武装を装備しない理由はわからないが、奴のことを知っている傭兵達の中で1番有力な仮説は、至近距離で戦うスリルを味わっているという説だ。
それ故に狂犬。頭が狂っているとしか思えない戦い方をすることからつけられた名前だ。そして勘違いとはいえ、一度だけ狂犬と交戦したことがあるヴォルタは、その狂犬に多大な苦渋を飲まされた。
「あんな頭の狂ったやつにやられるなんて、射撃の腕が落ちたんじゃねぇか?」
「ならおめぇも一度やり合ってみろよイグアス。きっとミシガンが喜びそうな凹みだらけの愉快なACが出来上がるだろうよ。」
暗にお前でも苦戦すると言うヴォルタにただでさえ不機嫌な男性、イグアスの機嫌が更に悪くなる。露骨な舌打ちも増えていき、いつ怒りが爆発してもおかしくない。ヴォルタが言ったからまだ耐えているが、もし言ったのがそれ以外の誰かであれば既に手を出していたかもしれない。
「(まぁ、実際に交戦しないとわからねぇだろうなぁ。)」
そんなイグアスの姿にヴォルタは声を出さずに共感する。自分だって狂犬と戦う前にあんなことを言われると、あんな死に急ぎ野郎に負けるわけがないと考えるだろう。もしかすればそれ以前に誰だそいつと鼻で笑ったかもしれない。
ヴォルタは思い出す。あの狂犬との戦闘を。ベイラムの依頼で簡単な小遣い稼ぎとして出撃したところで出会ったあのACを。
ブリーフィングでは存在を確認出来なかったAC。しかし武装は一切無し。予想外の事態だが、武装を持っていない今なら楽に殺れる。
これは追加報酬も期待出来そうだとコクピット内で笑みを浮かべた当時のヴォルタは背中を見せている敵ACに向かってマニュアルで狙いを定め、肩のグレネードキャノンを放った。
しかしそこで驚くべきことが起きた。狙ったACがヴォルタの放った弾丸を回避したのだ。マニュアルで狙いを定めたことにより、あのACに搭載されているCOMの危険予測は反応しない。完璧な不意打ちだったはずだ。
キャノン砲を躱した敵ACの頭部がヴォルタを捉えた。自身を襲った攻撃の犯人と判断したのか、アサルトブーストを使用して一気に距離を詰めてくる。
それに対してヴォルタは後退しながら手持ちの火器で歓迎するが──。
「当たらねぇ!なんだコイツは!?」
放った弾丸の悉くが当たらない。グレネードキャノンとグレネード砲は違和感を感じる動きで躱され、ミサイルは直進を妨げることは出来るが有効打にはなり得ない。
それを何度か繰り返し、敵ACの距離がかなり縮んで来たところでヴォルタは感じていた違和感の正体に気付いた。
「コイツ!狙う前に躱してやがる!」
グレネード砲をACに構えるが、その前にACは回避行動を取ってそこからいなくなっている。狙う前に射線から消えているのだから弾を撃っても当たるわけがない。至近距離まで近付かれたから気付けたことだった。
「気味の悪い躱しかたをしやがって!だがこれならどうだ!?」
有効射程内に敵ACが入ったことで左手に装備しているショットガンを構える。しかし狙いは敵ACではない。誰もいない空間にショットガンをいつでも撃てるように構えながら、グレネードキャノンを敵ACに角度を調整しながら放つ。案の定当たりはしなかったが、予想通り。
「歓迎してやるよ!盛大にな!」
グレネードキャノンを躱したACが誘い込まれるようにショットガンの範囲に入ってきた。再び回避される前に素早くトリガーを引く。
相手の予想しなかった展開に加え、ショットガンの広い攻撃範囲。流石にこれは躱せないのか、ACにショットガンが直撃する。
しかし足りない。コクピットを貫くには威力が足りず、ショットガン一つでは中の相手は怯まないしACの姿勢も崩せない。それを理解していたのか、相手は防ぐ素振りすら見せず、アサルトブーストで距離を詰めてきている。
直撃したことで気を緩めたヴォルタ。直撃を織り込んで前進を選んだ相手。その結果は明白。
「ぐぅおおお!?」
衝撃。機体が揺れ、ヴォルタは怯む。その隙を見逃す敵ACではなく、さらなる追撃を仕掛けてくる。
体勢を立て直す前にギギギギとヴォルタのACが嫌な音を鳴らす。頭部を動かしてもいないのにカメラに映る景色が横に流れていき、ブツンと映像が途切れたと思えば再び強い衝撃が機体を襲う。
『届かない。』
「クソッ!カメラをやりやがった!」
初めて聞いた相手の声など気にしている場合ではない。メインカメラが破壊されたことで映像が途切れ、真っ暗となったコクピットの中でヴォルタは慌てずに素早く記憶頼りにシステムを操作してサブカメラを起動させる。
再び外の景色が映るが、画質はサブというだけあってメインに比べると遥かに悪い。不意打ちをされないために急いで敵ACを捕捉しようとするが、その必要はなかった。サブカメラ起動時にすぐ目の前にいたからだ。
ヴォルタのACはタンク脚。その空いているスペースに乗った敵ACは拳を引き、ヴォルタが乗っているコクピットを目掛けて引き絞った拳を放つ。
金属同士がぶつかる轟音と先程とは比にならない衝撃がヴォルタを襲う。それにヴォルタが怯んでいる間に、今度は逆の拳が襲いかかる。
なんとか距離を離そうとするが、相手ACはタンク脚の上に乗っているので一緒についてくる。アサルトブーストなどで一気に引き剥がそうとしても、足裏に滑り止めの鉤爪でも展開しているのか、剥がれない。メインカメラをやられたせいでロックオンは使えず、肩のグレネードキャノンは揺れのせいで狙いが定まらない。ミサイルを放とうとしてもこの密着具合だと自身も巻き込まれる可能性があり、両手のグレネード砲とショットガンは長い丈のおかげで腕を限界まで引いてもこの距離の敵ACに銃口が届かない。
その間にも相手は殴打を続けている。時々腕に蓄積された熱を冷ますために攻撃を中断しているが、それは僅かな間だけだ。すぐに攻撃が再開される。
「(コイツ、機体じゃなくて俺を殺しにきてやがる!)」
殴打の度にコクピット内に響く轟音と衝撃を何度も受けているせいか、クラクラし始めた頭の中でヴォルタは相手の狙いに気付いた。コアを潰すのが難しいならパイロットを殺す。成程、合理的だ。
ACという鉄の鎧に身を隠している相手の表情はわからず、黙々とコクピットを潰すために殴りかかってくる姿には恐怖すら感じる。並大抵のAC乗りならパニックになるかもしれない。
ヴォルタは相手の姿を見ないように顔を伏せてぷるぷると身体を震わせる。しかしそれは恐怖からではない。素手相手にいいようにされている自分自身に対する怒りだ。
このまま殴り殺される?それは許されない。レッドガンに所属する自分がこんな無様を晒して死ぬなど死んでも遠慮する。
しかし手持ちの武器は全て相手には当たらない。その自分自身の判断にヴォルタは笑った。冗談キツイぜ、と。あるじゃないか、相手が今も意気揚々と使っている、自分にも備わっている武器が。その有効性は現在進行形でヴォルタ自身が味わっている。
「舐めてんじゃ……ねぇぇぇえ!!!」
『なっ!?』
両手の武器を捨て、溜まりに溜まった怒りと鬱憤を晴らすように吼えながら拳をカウンター気味に放つ。通信から聞こえてくるのは相手が思わず発したと思われる驚愕の声。まさかタンク型が拳で反撃してくるとは考えていなかったのだろう。拳は敵ACに直撃し、僅かに怯ませる。
有効打が入ったと笑みを浮かべたヴォルタだったが、お返しと言わんばかりに振るわれた拳がコクピットを揺らす。
「いいぜ、やるならとことんやってやる。」
そうして始まる殴り合い。金属と金属がぶつかり合い、何もない大地に轟音を奏でる。お互いに一歩も引かず、先にコクピットを潰した方が勝者だと胸部を殴り続ける。
相手は軽量二脚。頑丈さはヴォルタ側に分がある。しかし反撃を開始する前にかなり殴られ続けたこともあり、ACの状態はヴォルタ側が不利と言っていいだろう。
ならばとヴォルタはACの腕に溜まる熱を無視して殴り始めた。コクピット内で両腕部の熱異常を知らせるアラートがなるが、ヴォルタはそれを無視する。両腕が使えなくなっても肩部のグレネードキャノンとミサイルがあれば本来の標的程度なら問題なく殺せる。今両腕を壊してでも殺すべき相手は目の前のコイツだと判断したからだ。
ヴォルタの攻撃頻度が増し、このままだと不利になると悟ったのか相手も腕部の熱を無視した動きが目立ち始める。
自身のコクピットに響く音がすぐ近くで聞こえ始めた時、ヴォルタの放った拳が敵ACの胸部を大きく凹ませた。しかし相手は怯まない。先程と同じように拳を引き絞る。
だがその拳が振るわれることはなかった。不自然に硬直したと思えば、敵ACはヴォルタから距離を離す。その行動に次は何をしてくるとヴォルタは訝しみ、来ないならと肩部のグレネードキャノンを構えた時、コクピット内に聞き慣れた声が響いた。
《G4!愉快な遠足をサボっていつまで他所の飼い犬と遊んでいる!貴様はいつからハンドラーになった!役立たずはその飼い犬と共にさっさと遠足会場に突っ込んで来い!!》
狂犬との初戦は、ミシガンの一喝によって終了した。その後は狂犬と共に標的を始末し、連絡先を交換してお別れとなった。
そして帰ってきてから機体の状態を知った時、ヴォルタは思わず空笑いをした。胴体はボコボコで1番酷い箇所はコクピットまであと鉄一枚程度まで凹んでおり、修理よりか新しいものに変えたほうが早い状態。頭部はもがれて喪失、ついでにもがれた部分から胴体へ攻撃された形跡がある。恐らく狂犬が最初に発言した『届かない』は露出した部分から腕を突っ込んで直接ヴォルタを殺そうと試みた結果なのだろう。
自身のACの有り様といつも以上に高い修理費に、いつもなら面倒を増やしやがってと悪態の一つでもついていたところだが、今回は真逆の清々しさを感じていた。
生死に関わるところ近くまでお互いに引かず殴り合ったのだ。ヴォルタは元々相手が実力を示せば見知らぬ相手でも素直に認めるタイプだ。それも相まって、根性のある奴だとヴォルタは微かに今回殴り合った相手へ尊敬の念を感じていた。
それに近接戦の課題も見つけた。あの狂犬みたいな至近距離戦闘は今後ないと思いたいが、ないとも言えない。
どうせなら対策を作るのに付き合ってもらおうとヴォルタは少し前に狂犬へメッセージを送っているのだが、未だに返信は来ない。墜とされたなどの話も聞かないため、生きてはいるのだろう。
後でメッセージを確認して、返事が無いならまた送るか。そう考えたヴォルタは、いつの間にか距離が離れていたイグアスを早歩きで追いかけ始めた。
オリ主(目がいいからニュータイプもどきのことも出来るぜ!え?殴ってくるの?ならば受けてたとう!)
ウォルター……621の出撃前に自身のAC近くで一緒にいくぞと言わんばかりにフンスフンスしていたオリ主に待てをした。しかしオリ主が落ち込む前にフォローは忘れない。
各企業のゆるキャラとか大豊娘娘とかの架空キャラが無から生えてきてて笑っている自分がいる。