いきなりですが、後半パートの「」はコクピット内での発言。あるいは独り言。周りには聞こえない。『』は周囲にも聞こえている発言としています。《》はウォルターなどからの通信です。
621との初のお仕事、最高でした。なんというか、コイツの相手をするからもう片方を頼む!って戦う系のあるあるじゃん?それを早速体験出来てもうとても満足です。
ニッコニコで拠点に帰れば直後にヴォルタからメッセージ。流石に無視し続けるのは悪いので開いてみれば、素手オンリーじゃねぇのかよ、あとシミュレーターで戦いたいからお前のACデータを寄越せといった内容だった。
オレのデータを受け取ったところで動かすのはシステムだから弱いと思うけど、それで気が済むのならとACデータを送信。もちろんパイルバンカー付きだ。
やることはやったのでACから降りると、先に降りていた621がイグアスからのメッセージを大音量で聞いていた。しかもメッセージが終わると再び最初から聞き始める。
おぉう、この拠点にいるのがオレとウォルターだけでよかったな。もし621がアーキバスなどの企業に所属していたら、今頃イグアスの負け惜しみメッセージが多人数に知られていたところだったぞ。
流石にイグアスが可哀想なのでもう一度最初から再生しようとしていた621の腕を優しく掴んで止める。
しかし621はイグアスに返信がしたいようで、どう返せばいいか分からないからメッセージを何度も聞いていたみたい。
あれ?これオレに聞いてくるパターンじゃね?などと考えた時には621はオレに質問してきた。これは責任重大だぞぉ!
しかし、だ。こんな負け惜しみメッセージが来た時にどんな返信をすればいいなんてオレにもわからん。前世ではゲームの対戦が終わって暫くしたら何件か来る時があったけど、そういう時は無視一択だった。
今回も無視が一番良いはず。イグアスだって返信が来るとは考えていないだろう。寧ろ来たら不機嫌になりそう。そう言いたいのだが、621から無表情だが確実に送られてくる622ならわかるよね?と言わんばかりの期待溢れる視線が辛い。
オレは敗北した。その期待する視線に耐えきれず、621にあろうことかメスガキ構文を教えてしまった。イグアス、許してくれ。マジですまんかった。
たどたどしい口調でゆっくりと621がメッセージを録音し、イグアスへ送信。その数秒後に『野良犬ぅ!!!』と誰が聞いてもキレているとわかるイグアスの返信が届く。
オレに出来ることは621から視線を外し、片言でイグアスはとても喜んでるよーと言うことだけだった。
次の返信をしようとする621をやんわりと止め、話題の変更を試みる。すると621はルビコン神拳に興味があるとのこと。
その時のオレの衝撃は計り知れない。すぐさまホワイトボードを準備し、ルビコン神拳とはなんたるかの講義を決行した。
とりあえず殴れ。コクピットを殴れ。ACではなく中の敵を殺せ。命乞いは受け入れろ、そして背後を向けたらズドンしろ。向けてなくても不意打ちでズドンしろ。隙あらば蹴れ。困ったら蹴れ。蹴っとけばなんとかなる。
簡易的なACの図面を描き、ここを殴れば効果的というのを細かく教える。でも621にルビコン神拳は必要ないと思うんだよな。
根拠はイグアスとの戦闘。撃った弾が確実に当たる。そんな621にルビコン神拳なんている?いや、使ってくれたら嬉しいけどさ。
あと今思い出したけどヴォルタ。アイツなんで壁攻略で死んだんだ?と疑問に思うぐらい実力がある。至近距離のパイルバンカーを腕がイカれて動かなくなるまで何度も逸らすのは普通無理だと思う。途中からはショットガンより近接武器つけた方がいいだろと本気で思ったほどだ。
これはオレも胡座をかいていられないかもしれない。とりあえず今回の621とヴォルタのデータは取れたから、この講義が終わればシミュレーターで戦ってみよう。
621強い……めっちゃ強い……。流石主人公だ……。もう見てから回避余裕でしたなんて言えない。
何あの超反応。銃口見て、指がトリガーを引き始めたのを確認してから回避したのに瞬時に向きを調整して撃ってきた。もちろん命中した。
もうわけわからん。なんなのあれ?何度か挑んだけど数回も負けた。
自慢じゃないけど、オレは自分の回避力にはかなりの自信を持っていた。それがこのザマだ。
主人公だから仕方ない、なんて言いたくはない。それは言い訳だ。言い訳をして逃げれば成長なんて出来ない。新たなやり方を見つけないと……。
出来ればオレに適した、そして相手の意表を突けてなかなか対策出来ないやり方がいい。目標は621の攻撃を全回避だ。
ウォルターに怒られるまでシミュレーターに籠り、ひたすらデータの621と戦う。中には試行錯誤で自滅する間抜けを晒したこともあるが、まぁそれは気にしない方向で。
そして見つけた。新たな回避方法。名付けるのなら、全部自分で動かせばいいじゃない回避だ。ネーミングがダサイのは責めないで!
要するに、ACの姿勢制御システムを全て切ってマニュアルで操作する。ちょっとでも油断すれば転倒して自滅する紙一重のやり方だけどその効果は絶大。
必要なのは気合いと根性と常に自身のACの状態を把握する能力と空間把握能力とバランス感覚と強靭な三半規管と操縦能力。どれか一つでも欠けると壁に激突したりブースターを巻き込み転倒して大破させたりと散々な目に遭う。だが全てが揃えば神回避を手に入れることが出来る。
ははは、これは勝ったな。習得出来ればの話だがなぁ!!無理じゃボケェ!必要なのはボクのかんがえたさいきょうのかいひほうほうじゃねーんだよ!
思いついたからやってみたよ?即座に転倒したわ。慣れとか操縦技術とかそんな問題じゃない。システム的な問題がある。2本の操縦桿とペダルで人型の身体を完璧に動かせるわけねぇだろ!やるなら体幹を操作できるやつとか色々取り付けないと無理だ。
そんなわけで更に試行錯誤をした結果、結局は自分の今の回避方法をもっと磨くという結論に落ち着いた。
重心の移動を悟られないような体勢のまま、突発的なクイックブーストで攻撃を躱す。いつも使っていたから技量を向上させるのはボクの考えた最強の回避方法(笑)よりかは遥かに簡単だった。
そして完成したのはノーモーション回避。わかりやすく言えばネット対戦で電波が悪く、カクカクしたあの動きで回避すると思ってくれればいい。クイックブーストを使うので炎は出るし、点から点へみたいな瞬間移動染みた動きは出来ないけどね。
でもそこまでしないと621の攻撃を全回避出来なかった。全て回避しきって完全勝利した時は脳汁がドバドバだったぞ!
ウォルターに隠れて徹夜で挑んだ甲斐があった。まるで新しい自分になったかのような清々しい気分でACから出るが、すぐに気を引き締める。何故ならウォルターにバレないように自室に戻るミッションがあるからだ。
まぁ、明朝だからウォルターだって寝てるでしょ。楽なミッションだぜとルンルン気分で自室へ帰る。
あっ!ウォルター!おはよう!オレ?オレは今からこっそり自室に戻って寝るつも……り?
……話がある?いや、今から寝ようと……。え?まだ元気が有り余っているようだがって?はい、おっしゃる通りです。はい……。
オレ、いい子。徹夜は任務中以外はしない。うん、覚えました。
しっかりウォルターに見つかり、淡々と説教されました。言葉の端々にオレを心配する意図が籠っていて罪悪感で辛かった。
でも何故いつも寝ている時間にウォルターが?と疑問に思えば、オレに指名依頼が来ているみたいなのだ。思わずもう一度聞いてしまったが、間違いなくオレ宛の依頼らしい。
ウォルターに怒られたことを忘れてテンション上げ上げよ!依頼を見せてとウォルターにせがんで見せてもらうと、ベイラムからの依頼だった。
内容を読み進めると、解放戦線の要所。『壁』攻略の協力依頼だった。その時点でオレの上がったテンションは地に伏した。
だってこれ、失敗するやつじゃん。誰が好き好んでこんな依頼受けるのよ。
思わずウォルターを見上げると、ウォルターもこの依頼は前向きに捉えていない。失敗する確率の方が高いと言ってくるほどだ。それでもオレにこの依頼を見せたのは、指名依頼が来るほどオレが有名になってきていることを伝えたかったかららしい。
こちらからこの依頼は拒否しておく。そう言って離れようとするウォルターを引き止め、初めての指名依頼だから受諾すると伝える。ウォルターは少しだけ驚いた様子を見せたが、オレの判断を尊重して頷いてくれた。
そうして621に見送られて指定日の指定時刻に到着するように出撃する。しかし『壁』が近くなったことで視認出来た光景に、思わず少し離れた丘に着地して依頼を再確認。作戦開始時刻と今の時刻を数回見比べ、しっかりと間違いがないことを確認する。ついでに確認に使った時計にも狂いがないか、予備のものを取り出して確認する。確認が出来たのでもう一度目の前に広がる光景を見れば、丁度『壁』の上に配備されている重装機動砲台ジャガーノートの砲弾が、何故か展開して進行しているMT部隊を吹き飛ばしたところだった。
作戦開始時刻前に到着したのに既に作戦が開始されていた件について……。もう帰っていいかな?でも初の指名依頼だしなぁ……。
どこを見ても敵、敵、敵。そんな中で、ヴォルタは1人ACを走らせる。味方のMT部隊は壁の前に配備されたガトリング砲台やキャノン砲台の弾幕に進行を止められ、壁上から放たれるジャガーノートの砲弾に地面ごと吹き飛ばされて数を減らしていく。その現状を変えるためにヴォルタはアサルトブーストを使用し、砲台を飛び越えて無理矢理街区に侵入、砲台の破壊を試みようとしていた。
しかし単騎で突入したこともあり、街区に配備されているMT部隊のほぼ全てがヴォルタの排除に動き、更には壁本体に配備された砲台がヴォルタを狙い続けている。鳴り響き続けるCOMの危険予測に流石のヴォルタも対処が追いつかず、ACに被弾が目立ち始めた。
「アイツがいれば楽になっただろうに!あぁ、無能な上の連中をぶっ殺してやりてぇ……なぁ!」
死の危機を常に感じ、身体が恐怖で硬直しないように愚痴を常に言い続けながら、グレネード砲をMTが密集している箇所へ撃ち込む。数機のMTが爆散するが、数が減ったように感じない。現に別のMTが建物の壁からヴォルタに向けてキャノン砲を放ってきた。
それに対してヴォルタはグレネードキャノンで迎撃。2連装のグレネード砲弾は1発目は相手の放った砲弾に命中し、爆発。もう1発は爆発で発生した爆煙を突き抜けてキャノン砲を放ったMTに命中する。
「次ぃ!!」
胴体を反転。武器を捨て、ヴォルタの動きを止めようと飛びかかってきたMTの胴体をショットガンで突き、怯んだところで発砲。至近距離でショットガンの弾丸をぶち込まれたことで撃たれた箇所を中心にして上下に別れ、一拍置いてMTは爆散。
『AC一機如きで……!』
『囲い込め!応援はまだか!?』
『ガトリング砲台に近寄らせるな!』
暴れ回るヴォルタをMT部隊がなんとか止めようとするが、止まらない。
『クソッ!我らはコーラルの戦士!あとは頼んだぞ!』
「さっきから特攻ばかりで飽きねぇ野郎共だな!」
ガトリング砲台まで後がないことを悟った1人のMTパイロットがヴォルタへマシンガンを放ちながら特攻する。その無謀を呆れはするが決して笑わず、せめて一撃で楽にしてやるとグレネード砲を放つ。悲鳴を上げながら爆散したMTにまた一つとヴォルタがカウントした時、危険予測が一切に鳴り響いた。
「なっ!?ぐぅお!?」
ヴォルタは気付いていなかったが、MT部隊によって彼は少しずつ見晴らしの良いところへ誘導されていた。そして狙いやすいところに出た今、ヴォルタを狙える砲台全てから一斉砲撃を浴びせられたのだ。
幸いにもコクピットに弾は当たらなかったが、それ以外の被害は甚大だ。右肩のミサイルポッドは大破し、爆発した影響で右腕も機能が停止。左腕にも弾が貫通し、動きはするがその動きは遅い。更に左側の装甲を突き破って履帯を射抜かれたせいで通常の移動はほぼ不可能となった。
『今だ!確実に仕留めろ!』
これをチャンスと見たのか、四脚MTのパイロットが声をあげる。しかしもう動けないと考えているのか、その姿は隙だらけ。
「戦場では油断をするなって……なぁ!」
そんな攻撃してくださいと言っていそうな姿にヴォルタはアサルトブーストを使用しようとし──その瞬間、ヴォルタを狙っていた砲台の一つが爆発した。
『なんだ!?新手か!?』
『ヴォルタ生きてる〜? っていうかなんでもう始まってるの?オレはいつも途中参加を決めつけられてるの?』
『はっ!前と同じで良いタイミングで来るなぁ狂犬!!既に始まっているのはアーキバスが壁越えに挑むと情報を得た無能な上の連中が焦ったからだ!』
『えぇ……?数時間早めたところで意味なんてあるの?』
『ある時はあるが、今この時に限っては、全くねぇ……よ!!』
砲台を破壊して現れた622の質問に手早くヴォルタは上の無能さを伝えた。622の呆れた様子に最大限の共感をしつつ、ヴォルタは始めに狙っていた四脚MTへ改めてアサルトブーストを使用した。
『何っ!?ぐぅァァァア!!?』
『おらよ!テメェらが大好きな壁だぞ?喜べよ!なぁ!』
『わ、我ら、コーラルの──うわぁぁぁぁ!!!!』
『うわっ、エッグ。なんだか必要ないと思ってきたけど、援護するぞ。』
迫るヴォルタに押し出され、守るべき壁とヴォルタに挟まれたパイロットは抵抗を試みるが、ヴォルタがアサルトブーストの出力を上げたことでコクピットがひしゃげ始め、悲鳴を上げながら押し潰された。
そのヴォルタの行為に622が引いていたが、次の敵へと意識が向いていたヴォルタが気付くことはなかった。もし気付いていれば、お前が言うなとツッコミの一つぐらいはいれていただろう。
『おめぇ、援護出来るのかよ。』
『援護って言ってもオレは敵の集団に突っ込むだけだぞ。でも人によっては安全圏と思っていた場所に突っ込まれると、それ自体が圧になるんだ……ぞ!!』
この場所に有効打を狙える砲台を破壊し終えた622はヴォルタの隣に着地するなりすぐにアサルトブーストを起動。敵の集団に突っ込んでいき、手が届く位置にいたMTの一機を掴み取る。アサルトブーストという莫大な推進力を得たACに掴まれたMTが踏ん張れるわけがなく、そのまま連れ攫われたかと思えば近くのビルに叩き込まれる。
ビルにめり込んだMTは、項垂れたかのように動かなくなったことから叩き込まれた衝撃で中のパイロットは気絶、もしくは死亡しているだろう。そんなMTの姿を確認した622は後退。次の敵を狙うかと思えばブーストで加速し、速度が乗った拳をめり込んだまま動かないMTのコクピットへ突き刺した。
確実なトドメを刺し、引き抜いた拳でそのMTを掴んで今度は背後から622を狙っている者達からの盾とする。そんな姿を見せられれば、重装備だが死に体のヴォルタとパイルバンカーのみだが無傷の622。どちらの危険度が高いかなんて明白だろう。
「なるほどな、確かにこれは援護だ。」
よそ見をすればいつ622の手が伸びてくるかわからない。その見えない恐怖に怯えた者達はヴォルタから622へ狙いを変更する。この場では一機ずつしか潰せない622よりか、纏めて殲滅出来るグレネード砲を持っているヴォルタのほうが危険だというのに。
ヴォルタがグレネード砲が最大限効果を発揮出来るように、上昇しながら構える。狙いはもちろん下にいるMT部隊。範囲内には622が元気にMTの一機に蹴りを繰り出しているが、どうせ躱すだろうとここまでで築いた信頼のもと、グレネード砲を放った。
落ちていく砲弾。それに1番最初に気付いたのは勿論622。MTを踏み付けて上昇し、即座に範囲外へ退避する。そして次にその622の姿を追って空を見上げたMT部隊が砲弾に気付いた。しかしこの時点で砲弾は地面に着弾しており、爆発。広い爆発範囲に巻き込まれたMT達が大破し、沈黙する。
『連絡も無しにいきなり撃ってくる?』
『どうせ躱すのに何言ってやがる。それよりここらの奴らは片付いた。次はガトリング砲台だ。あれを潰せば外にいるベイラム部隊が街区に進行出来る。』
『壊して意味あるの?もう味方は全員撤退しているぞ?』
『……なんだと?』
グレネード砲の反動で完全に腕が破損。それでも肩のグレネードキャノンがある限りは戦えると言わんばかりにヴォルタはガトリング砲台へ移動しようとしたが、622の言葉でその脚を止めることになる。
『どういうことだ、撤退だと?俺にそんな連絡は来てねぇぞ?』
『さぁ?オレも既に始まってたから全体の指揮をとっている人のところに行ったらさ、お前なんて雇ってないの一点張り。事故を装って殺してやろうかと考えてたら顔見知りのMT部隊の隊長さんがヴォルタが単騎で街区に突撃したって教えてくれたから来ただけだぞ。あぁ、あとあの偉そうな奴、どこかに連絡を取ってたみたいだったから興味本位で盗み聞きしてみたらなんか目的は達成したとか言ってたぞ。』
「……あぁ、そういうことかよ。……クソがぁ!!」
622の話した内容を聞き、ヴォルタは今回の作戦に隠された別の目的を理解した。その瞬間に頭の中が怒りで染まり、無意識にコクピットの壁を殴りつけていた。
初めからきな臭いと思っていた。大掛かりな作戦の割に参加する人数は少なく、作戦実行の1日前に指揮官が交代。代わりに来たのは今まで指揮すらしてなさそうな胡散臭い奴。そして参加が決まっていたG5のイグアスが説明無しで突然外され、622が聞き取った目的を達したという連絡。
つまりだ、初めから上の連中は『壁』の攻略が目的ではない。本当の目的は、レッドガンの隊員の排除。イグアスを外したのは連携されると生き残る可能性が上がるとでも考えたのだろう。何故そんなことを計画したのかはヴォルタにはわからなかったが、悪意を持って実行されたのは事実だ。
拳を全力で握りしめる。恐らく額には多数の青筋が立っていることだろう。こんなふざけた計画のために、『壁』の攻略に本気で挑んで死んでいった者達はなんだったんだ?犬死にか?ふざけるな!!そんな思いがヴォルタの脳裏を駆け巡る。
『怒っているところ悪いけど、どうするの?撤退するなら援護するけど……。』
目の前が怒りで真っ赤になり始めた時、ヴォルタの耳に聞き慣れた声が入ってくる。そこで自分が今どんな場所にいるのかを思い出したヴォルタは深呼吸を一回したあと、頭を冷やしながら状況を確認する。
恐らく自分が生きて帰れても上の連中がなんらかの手を入れてくるだろう。そして撤退するにもこんなボロボロのACでは壁上から撃ち出されるジャガーノートの砲撃を躱しきれるかわからない。
今の自分に必要なのは、上の連中を黙らせる功績とジャガーノートの砲撃を封じる何か。となれば、やるべきことは一つ。
『今から壁に侵入して、ジャガーノートを……撃破する。』
『そんなボロボロのACで?っていうかよく修理間に合ったな、あんなに穴だらけだったのに。』
『穴だらけだったから新しいのを買ったんだよ!クソッ!キマらねぇな!』
覚悟を決めて呟いた言葉は、622の陽気な質問に掻き消された。なかなか良い感じに言った自覚がヴォルタにはあったので、悔しさを滲ませながらツッコミを行うが、おかげで幾分か気分が軽くなった。
『おい、狂犬。俺からおめぇに私的な依頼がある。』
『大体想像できるけど、何?』
『ジャガーノートの撃破に付き合え。おめぇがいれば今の俺でも、ジャガーノートを撃破出来る。……どうだ?』
ヴォルタの誘いに、622の尻尾がブワァと立つ。その内心は急に訪れた激アツ展開に興奮でいっぱいだ。これは行くでしょとヴォルタの誘いに乗ろうとした時、622のコクピットに別の通信が入った。
「ウォルター?どうしたの?」
《622、依頼の内容が変更された。確認しろ。》
ウォルターからの通信に再度622が依頼を確認する。その依頼内容と変更した依頼人の名義を見たことで目を見開き、直後に残念そうなため息を吐いた。
『ごめん、オレはついていけない。』
『そうか……。いや、無理を言って悪かったな。』
622からの返答に、ヴォルタは少し残念そうな様子だったが、すぐになんでもなさそうな様子で謝罪を送り、ACを反転させる。向かう先は壁内にアクセスが出来る扉だ。
『行くの?確実に死ぬぞ?』
『あぁ、だが行かなきゃならねぇ。どっち道なんの手柄も持たずに帰れば終いだ。』
そんなヴォルタに622が声をかけながら、その向けられた背後に接近する。
『匿ってやれるぞ?』
『悪りぃな。ミシガンの顔面に1発ぶち込むまでオレの居場所はレッドガンだ。』
そしてパイルバンカーをゆっくりと構えた。ヴォルタは気付かない。
『そう……、じゃぁ、お別れだな。』
『あぁ、じゃ──』
鉄杭が、放たれた。
《G4、ヴォルタの無力化に成功。622も対象を確保した状態で作戦領域からの離脱を完了した。……ミシガン。》
《ご苦労だったな!ウォルター!貴様が飼っている暴れ犬の噛み付き癖にはキモを冷やしたが、ちゃんと噛む対象は選べるようだ!》
《622にもそれぐらいの分別はある。……これで借りは返した。この後のことはコチラ側からは一切関与しない。》
《当たり前だ!無能な奴らに一泡食わせる仕込みは既に終わっている!愉快な遠足を再び貴様らの介入で台無しにされてたまるか!》
《……今、622から連絡が入った。対象を無事に指定地点に置いたそうだ。》
《……確認した。回収にはレッドが向かわせた!そして再度言わせてもらおう!ご苦労だったな!》
オリ主(ヴォルタを連れて帰ってこい?差出人はミシガンだから問題ないと思うけど、ジャガーノートを倒す気満々のヴォルタをどうやって連れて帰ろう?……せや!気絶させればいいんや!ヴォルタは頑丈そうだけど、パイルバンカーをコクピットスレスレの場所に突き刺したら音とか衝撃とかで気絶するやろ!)
ヴォルタ……ミシガンから連れて帰ってこいって依頼が来たとオリ主が伝えれば、文句は言うけど最終的には素直に帰ったのに早とちりでいきなりパイルバンカーをぶち込まれた。その際の衝撃で目論見通りに気絶はしたが、打撲やむち打ちなどで暫く療養生活になった。
621……単語を一つ一つ喋ることはできるけど、意味が伝わらないことの方が多い。オリ主にはその喋り方でも今のところ確実に伝わるのですっごく助かる。この度メスガキ構文を覚えた。喋りが流暢になってきたら戦場で使ってくるかもしれない。
ゲームの壁越えミッション。要所の割にMT配置が少ないのは直前でヴォルタが大暴れしていたから説を推したい。あとミシガンは隊員を救える手段などがあればなんやかんや助けるタイプっぽい。レッドガン部隊迎撃のミッションでは部下達に逃げてもいいって言ってたし。
ちなみにヴォルタのACは壁に放置されたままです。コクピットだけ引き抜いて持って帰りました。ヴォルタの貯金はそろそろ無くなるかもしれない。