殴りあえルビコン   作:フドル

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所属不明機体のステルスを見た時、もしかしたら自分も使えるのでは?とパーツを全部集めるまで考えていました。

あ、♡マークが嫌いな人は最後らへん気をつけてくださいね。


そのG5、ある意味被害者。

 あの後の所属不明機との戦闘は、スッラと戦ってからだったのかかなり楽に感じた。ちぎった腕でひたすら殴打し、コクピットを潰す代わりにジェネレーターを破壊するか引きちぎる。これだけで相手は沈黙した。

 

 オレからすると初めての無人機戦だった訳だけど……、正直言ってかなり面倒くさい。有人機みたいに中身を殺せないのだ。だから動力のジェネレーターを破壊するか千切り取るかしないと奴らはいつまでも動き続ける。

 

 まぁ、無人機らしく動きにパターンがあるので慣れれば楽になると思う。そこは要練習ということだ。

 

 それにしても、個人的には奴らのステルス機能がとても魅力的に感じた。自分の姿を周囲の景色に紛れ込ませるなんて、近距離戦闘をするオレからすれば垂涎物だ。恐らく胴体部前面にある盾のような装置がステルス機能の役割を担っていると考え、戦利品としてもぎ取って持って帰ってきた。

 

 これを解析して新たなパーツか装備としてACに取り付けれないかなぁとちょっとワクワクしていたのだが、そもそも解析してくれる企業に伝手がなかった。使えないなら適当な企業に売却をと考えたけど、アーキバス辺りが解析して自社のAC達に取り付けたらそれはそれで嫌なのでキャンセル。最終的に何も使い道がなかったので、今は格納庫の隅の方で放置されて埃を被っている。

 

 一応どこにも話していないのにオールマインドが買い取りますって言ってきたけど……。うん、キャンセルするに決まってる。使い道がないから売ってもいいけどなんかオールマインドだけは嫌だった。

 

 多分ジェネレーターの出力さえどうにか出来たらACにも取り付けられると思うんだけどなぁ。他の人からするとENをドカ食いするステルスをつけるぐらいなら高火力装備をってところなのか。

 

 前世からステルス機は大好きだったため、自分だけじゃ実現出来そうにないことにため息を吐くと、対面に座っていた621が首を傾げる。

 

 やはりというかゲーム通りにコーラルの逆流に巻き込まれた621は、やっぱりバルテウスと戦闘していたようだ。現実の621はどのようにバルテウスを倒したのやらと帰ってきてからログを確認させてもらえば、リニアライフルでミサイルの発射口を潰すとかいう意味がわからないことをしていた。

 

 そんな神業を超えて意味がわからないと評するしかないことをしてくれた主人公の対面に座ってオレが何をしているのかというと、スッラと戦っているの最中に思わず約束してしまったこと。即ちメスガキ構文の使い所を教えている。

 

 本当にこれは教えていいのかと帰る途中で散々考えたのだけど、実質メスガキ構文の被害に遭いそうな人物ってイグアスぐらいなんじゃないかと気付いてからは悩む必要は無くなった。

 

 621は覚えたメスガキ構文を使えて嬉しい。イグアスは美人な621にメスガキされて嬉しい。win-winじゃないか!……えっ?ACの中にいるから美人かどうかわからない?んなもん気合いで透視しろ!……ちなみに悩みの範囲にスネイルなどは入っていない。あいつはむしろメスガキの餌食になれ。

 

 ってことでメスガキ構文を教えるついでに621にメスガキ中の表情もレクチャーする。そのためだけに数日も日にちが経過してしまったが、そのおかげで常に無表情な621が人を小馬鹿にしているような表情を出来るようになりました!

 

 これには思わずウォルターも硬直。そして621の肩に手を置き、あまり人前で使うなと注意するほどの出来前!

 

 ……はい、そろそろ真面目になります。正直やり過ぎたと思ってます。まさかいきなり621がウォルターにメスガキを披露しに行くとは思ってなかったんです。そうだよね、出来ることが増えたら見せに行きたいよね。オレだってそうする。

 

 そのせいでウォルターがこれからしばらく野暮用で外すと言った時、タイミングが621のメスガキ構文を聞いた直後だったこともあるけどゲームのセリフだと知っていたのにオレ達に愛想が尽きて二度と帰ってこないんじゃないかと思った。

 

 そんなことがあり、今は621と2人だけです。いや、621の中にいるルビコニアンを入れたら3人かな?

 

 ゲーム通りに621はコーラルの逆流に呑まれた時にエアと交信出来るようになったのだ。

 

 彼女も結構好奇心旺盛のようで、621を介してオレに色々と質問してくる。ちなみに何故エアが質問してきたと気付けたのかというと、普段の621が聞いてこなさそうな内容ばっかりだったからだ。

 

 もちろん、その質問は答えられるものは全て答えた。え?メスガキの効果性と必要性?……黙秘します。

 

 まぁ、そんな風にウォルターがいない間は生活していたんだけど、ある日621がベイラムからの依頼で、大陸中央の氷原地帯へ向かうための移動手段を求めてグリッド086へ出撃していった。

 

 グリッド086は『ドーザー』と呼ばれるコーラルを使ってアヘアヘしてるならずものどもの巣窟なのだが、ゲームの進行通りだし、エアがいる621なら大丈夫だろうと見送った。見送ったのだが……。

 

 帰ってこない。そして連絡も来ない。いや、帰ってこないのはそのまま『ドーザー』の一派である『RaD』の頭目、シンダー・カーラの手を借りて氷原地帯へかっ飛んでいくからっていうのは知っているんだけど、連絡が来ないのはわからない。長期の依頼になりそうだから向こうで落ち着いたら連絡を頂戴とは言ったし、621も頷いていた。

 

 嫌な予感が頭を巡る。よくよく考えたらミッション:グリッド086侵入のボス。ルビコニアンデスルンバ(スマートクリーナー)は危険だ。あの破砕アームに当たれば、ゲームならスタッガーと大ダメージで済むけどリアルならそのまま粉々に解体されるかもしれない。

 

 そんなことを考えてしまえばもう止まらない。アリーナで気晴らししようともふとした瞬間にルビコニアンデスルンバにバラバラにされる621の姿が頭をよぎる。

 

 あ、これダメだわ。気になって仕方ない。ウォルターには悪いけど、ここはオレも行かせてもらおう。

 

 ウォルターに休めと言われたにも関わらず勝手に出撃する理由とそのことに対する謝罪などをメッセージで送った後、オレはACに乗り込んでグリッド086を目指して出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 RaDの頭目、シンダー・カーラの協力を取り付けた621とエア。しかしグリッド086に侵入した際にRaDのMTを多数破壊してしまったことで警備がボロボロになり、その隙を突いてRaDの商売敵である『ジャンカー・コヨーテス』のドーザー達が攻め込んできた。そのドーザー達はRaDの開発データを奪うためにハッキングドローンを設置。現在進行形でRaDの開発データが奪われかけている。

 

 そこでカーラは621にボロボロにしたのはあんたなんだから今度は守れと依頼を出し、621はそれを受けた。そしてハッキングドローンを守るドーザーが乗るMT達を蹴散らしつつ、設置されたハッキングドローンを難なく破壊。

 

 しかしコヨーテスも傭兵を雇っていたようで、それの撃破もするために621はエアの案内の元、その傭兵がいる場所へ向かう。

 

『あぁ?てめぇは、ガリア多重ダムの……。』

『G13じゃねぇか。久しぶりだな。』

 

 そこで出会ったのは、G5のイグアスとG4のヴォルタ。知り合いと言うこともあり、話が弾むかと思えばそんな訳もなく、3人は即座に戦闘となった。

 

 そもそもイグアスは多重ダムでACを破壊された上、メッセージで滅茶苦茶煽られたのだ。それなのに仲良く会話なんて出来るわけがない。

 

 絶対殺すと言わんばかりの猛攻を621に仕掛けるイグアスに対してヴォルタは621の仲間である622にかなり強硬手段だったが命を助けられた身。戦闘に参加はするが、積極的に攻撃はしなかった。というのは建前で、本音は無駄な弾薬費を払いたくないだけである。

 

『!? なんだこの訳のわからない機体は!』

『クソが!このAC、まだ借金が残ってんだぞ!』

 

 しかしここで無粋な乱入者。突如現れた所属不明機が不意打ちで放ったレーザーライフルによる射撃、それをイグアスは621と高速戦闘中だったのでそのまま回避、ヴォルタは少し掠ったがまだまだ戦闘可能で、ACが傷付いたことに文句を言う余裕すらある。

 

『チッ……!背に腹か!! おい野良犬!お前も手を貸せ!』

『ここにアイツがいれば気兼ねなく囮に出来たんだがなぁ。』

 

 流石に無差別で所属不明機に襲われている最中に戦闘なんて続行出来るわけがなく、3人は一時的に手を組むこととなる。イグアスとヴォルタの完璧な連携に621の的確な射撃が合わさることで、所属不明機は難なく撃破された。

 

『邪魔者は消えた!次はてめぇだ!野良犬!!』

 

 そして改めて621へ戦闘を仕掛けたイグアスだったのだが……。

 

 

 

 

『ねぇ、これどういう状況?……いや、わかるぞ?わかるけど一応聞いとかなきゃな〜って。』

『狂犬か。悪りぃが俺にも正確には答えられん。』

 

 これ以上は弾薬費と修理費が報酬額を上回ってしまうと考え、巻き込まれない位置まで下がったヴォルタの元へ622が乗ったACがやってくる。622は前方で繰り広げられている戦闘の説明をヴォルタに求めるが、ヴォルタも解答に困っているようだ。

 

『っていうかおめぇ、今まで何処にいたんだ?』

『えっ?今来たとこだぞ?来て早々にRaDの連中に621が何処にいるか聞いたらさ、2機のACと戦闘中って言われて滅茶苦茶慌てたぞ。そういうヴォルタ達は何故ここに?』

『ちょっとした小遣い稼ぎだ。このACの借金を返すためのな。』

『あぁ、成程。』

 

 ヴォルタの質問に622は気楽そうに答えたが、当初は本当に大慌てだった。何しろここで2機のACと戦闘する依頼なんてゲームには無かったのだ。まさかイレギュラー!?と大慌てで加勢しに来たら見知った者達が争っているのを発見。ヴォルタは戦闘に参加している様子が見れなかったので自身のシグナルを送信しながら刺激しないようにゆっくりと接近してきたのだ。

 

 そして622の質問にヴォルタが答えると、622は納得したようにヴォルタのACを見た。武装は前と同じだったが、タンク脚ではなく2脚だったのだ。恐らくタンク脚を買うほどの金を持ってなかったのだろう。

 

『でも借金を背負うぐらいならタンク脚で良かったのでは?』

『俺も最初はそう思った。けど被弾面積が増えて修理費が洒落にならねぇことに気付いたからしばらくはコッチだ。』

 

 621とイグアスの戦闘音を聞きながら2人は呑気に会話を続ける。しかしある程度話したところでお互いに話すのをやめて、同時に同じ方向を見つめた。

 

『そろそろ止めるか。』

『オレはもうちょっと見たいけど……イグアスの血管が切れないか心配だから手伝うぞ。』

 

 2人が見た方向は未だに戦闘を続けている2機のAC。片方は時々射撃はするが基本的に回避に集中しており、もう片方は回避など知らんと言わんばかりに苛烈な攻めをしているが、大した有効打にはなっていない。

 

『ざぁこ、ざぁこ、へなちょ、こ弾幕。のろの、ろ移動。あー、当たりそう、だったのに、弾切れ、だね。弾数管理、下手下手。ほら、避けないと、こっちが撃った弾、当たっちゃう、よ。イっちゃえ、イっちゃえ。』

『グ……ギィ!?!?!?』

『これほど通信に相手の顔が出ないことを悔やむ時が来るとは思ってなかったぜ。ぜってぇ今のイグアスの顔は面白ぇことになってるのにな。』

『621のことを野良犬とすら言えないって相当だぞ。』

 

 途切れ途切れだが小馬鹿にしてくるように煽る621に喉からそのまま音が出力されるようになったイグアス。その姿にヴォルタがコクピット内でゲラゲラと笑い、622はちょっとした罪悪感で思わず目を逸らす。

 

『なぁ、そう言えばちょっとヴォルタに聞きたいんだけど。』

『あぁ?何だ?』

『どうしてオレが背後から近付くと急いで距離を取るの?』

『…………さぁな。そのパイルバンカーに聞いたらどうだ?』

『これ二代目だから聞いても何も答えてくれないぞ。』

『そうか……。ならてめぇの頭に聞いておけ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、621の射撃でシールド以外の武装を破壊されたイグアスが怒りのままに近接格闘を挑もうとした時に背後からヴォルタに押さえつけられて戦闘は終了。現在は4機ともRaDで補給を受けていた。

 

 そう、4機だ。イグアスとヴォルタは敵であり本来なら補給などここでは出来ないはずなのだが、621と面識があることと、ここの頭目であるシンダー・カーラの鶴の一声で補給を受けることとなった。ちなみにカーラの言い分は、コヨーテスの連中に雇われた事実を忘れてしまうほど面白いショーを見せてくれたお礼らしい。もちろんイグアスはキレた。

 

 しかし補給を受けれることになったとは言え、自由に動けるわけではない。イグアスとヴォルタは格納庫からトイレ以外の理由で外に出るのを禁じられたため、乱雑に置かれていた椅子に座って補給が完了するのを待つ。

 

 そんな時だ。2人の耳にパタパタと子供が走る音と、車輪が回る音が聞こえてくる。徐々に近付いてくる音に特に反応したのは未だにイラつきが止まらないイグアスだ。

 

「おいイグアス。何処に行く気だ?」

「あぁ?トイレだよ!」

 

 イライラした様子で扉へ向かうイグアスに、ヴォルタは文句を言いに行くつもりなのかと止めようとしたが、全く別の理由だったようだ。

 

 ヴォルタの勘違いのせいでさらに機嫌が悪くなったイグアスがズンズンと扉まで歩いて行き、横開きの扉を開いて廊下へ一歩踏み出した瞬間。何かが通り過ぎてイグアスを攫っていった。

 

『グゥア!?て、てめぇらいきなり何しやがる!?』

『えっ!?ちょっといきなり誰!? 621!不審者を掴んでいないで早くペイするんだぞ!ペイ!』

『…………!』

『むしろ強く抱きしめちゃってるぞ!? あっ!待って!この際何でもいいから体勢低くして!前が見えないしこのスピードで車椅子は急には止まれうひぁぁぁぁぁ!?!?』

 

 イグアスを攫って行った人物の声が響き渡った後、ヴォルタの耳に何かが転落する音が聞こえてくる。トイレ以外は外に出るのを禁じられたが、明らかに怪我人が出ていそうな音が聞こえてきて相方もそれに巻き込まれたのだ。流石に無視をするわけにはいかない。

 

 ここに入る前にこの部屋は常に監視されていると聞いているので、その監視しているであろう者に様子を見てくるとカメラ越しに伝えた後、ヴォルタはイグアスが連れ攫われていった方向へ向かう。しばらく歩くと階段があり、その下を見れば、包帯を巻いている女性に抱きつかれて倒れているイグアスと、頭をぶつけたのか両手で頭を押さえて座り込んでいる獣耳と尻尾が生えた奇妙な少女を発見した。

 

 

 

 

「……で?おめぇがあの狂犬だと?」

「あのがどれを指しているかは知らないけど、パイルバンカーだけのAC乗りはオレだぞ!」

「……嘘だろ?」

 

 事態を収拾させ、ヴォルタ達は格納庫に戻ってきた。そして軽く自己紹介をした今、ヴォルタの目の前にいるケモ耳少女の回答に軽く混乱していた。

 

「嘘じゃないぞ!ほら、ヴォルタが壁の時に『ミシガンの顔面に1発ぶち込むまで俺の居場所はレッドガンだ。』ってカッコよく言ってたのを聞いていたぞ!」

「あぁ、わかった。もういい。おめぇは狂犬だ。」

 

 似ていない自身の声真似を聞きながら、まだ証拠が足りないのかと考えた622が次の言葉を言う前にヴォルタはそれを止めた。あの時の会話を聞いていたのは狂犬だけなので、コイツは確実に本物だ。本人から又聞きした関係のない人物である可能性もあるが、そもそも声が同じなのだ。若作りなのかと今まで思っていたが、まさか見たまんまとは思ってもいなかった。

 

「それでヴォルタの怪我はもういいの?壁でそれなりの怪我を負ったって聞いたぞ!」

「鍛えているからな。あの程度ならどうってことねぇよ。」

 

 でも怪我の大半が最後のパイルバンカーのせいだからな?そんな咄嗟に出かけた続きの言葉はほぉ〜っと感心しながらヴォルタの割れた腹筋を見つめている622の姿を見て飲み込んだ。結果的に自身の命を助けた相手に言うのは大人気ないと考えたからだ。

 

「ヴォルタの腹筋ってどれだけ鍛えたらこうなるの?腕もムッキムキでカッチカチだぞ!」

「さぁな、ミシガンの野郎にしごかれているうちにこうなった。あと登ってくるんじゃねぇよ。」

 

 座るヴォルタに622が近付き、そのまま身体を登り始める。身軽なのかスルスルと登りきった622はヴォルタの肩に脚を置いて座り、満足そうに息を吐く。ヴォルタからすると無許可で勝手に肩車をさせられた形だが、622の子供体型と大して重くないことから軽い文句を言いながらも降ろすことはしなかった。

 

「それより、いいのか?おめぇの相方を置きっぱなしでよ。」

「うん。ACで勝てないからってどうしても排除しなきゃいけない状態でもないのに満足に身体を動かせない相手パイロットに直接手を出すような人には見えないから。」

 

 2人が見つめる先、そこには車椅子に座った621と目線が合うようにしゃがんでいるイグアスがいた。イグアスは621に睨みつけるような視線を向けているのだが、621はそれに無反応。

 

「おい野良犬。今すぐ俺と勝負しろ。さっきは邪魔が入っただけだ。最初から1対1で戦えばどちらが上かってことをわからせてやる。」

 

 そんなイグアスの要求に、621は622の言葉を思い出していた。曰く、困ったら取り敢えず笑顔になっとけばなんとかなる。

 

 しかし621は笑顔なんて出来ない。なので一つだけ出来るようになった表情をイグアスに向けた。

 

「っっ!!上等だおらぁ!」

《はぁ、レイヴン。……いえ、何でもありません。》

 

 コーラルの逆流に呑まれた時から頭の中に響く声。その声の主であるエアから人を小馬鹿にしたような笑顔と評された顔をイグアスに向ければ、上手くいったのかイグアスはそのまま離れていった。イグアスからすれば挑戦状を送りつけた返答がメスガキ顔だったので挑発されたと感じているのだが、当の621はそれに気付いていない。

 

「ちょっと待って!621の今日の予定は休息だぞ。流石にシミュレーターでやるとしても許可は出来ないぞ。」

 

 シミュレーターでだが今からAC戦をする。そんな空気が漂い始めた空間に割り込んだのは、この世界にも理解(わか)らせ概念があるんだなぁと変な感動していた622だ。イグアスの進行を阻むように立ち塞がった622に、イグアスは邪魔をするなと言わんばかりに鋭い視線を向ける。

 

「これはオレ達の飼い主、ハンドラー・ウォルターの決定であり、オレ達では変えることは出来ない。」

 

 しかし退けと言うために開きかけた口は、622から続け様に放たれた言葉で閉じることになる。上からの命令は絶対。レッドガンでもそれは変わらないからだ。もし逆らおうとしたならば、よっぽどの理由が無い限りはミシガンに命令を理解出来るまでボコボコにされることだろう。

 

 だがイグアスの闘志は衰えない。622の言葉に622自身が含まれていないことに気付いたからだ。

 

「おい、だったらてめぇはどうなんだ?」

「オレ?オレがウォルターから言われたのはお菓子は1日に一回までと寝る前に歯を磨くことと興味を惹かれて危ないところにいかないことと何時には寝ることとカーラに迷惑をかけないことと──。」

 

 イグアスの問いかけに指を折りながらウォルターからの注意事項を言い始めた622。その姿を少し離れたところで見ていたヴォルタは自身の中のハンドラー・ウォルターのイメージが、厳格な人物から親戚に孫が迷惑をかけないように思いつく限りの注意事項を教え込む苦労人へ変わり始めた。

 

「つまり、てめぇは休息を命じられていねぇんだな?」

「うん、そうだと……思う。」

 

 律儀に622がウォルターから言われた注意事項を聞き終えたイグアスは、その中に戦闘行為の禁止が入っていないことを確かめ、622は自信なさげに頷いた。

 

「だったら丁度いい。てめぇが野良犬の代わりに俺と戦え。多重ダムの礼がまだ出来てなかったからなぁ。」

「別に構わないけど……621の『代わり』に戦えばいいんだよね?」

「あぁ、そうだ。」

 

 イグアスの要求に622は代わりをやけに強調しながら質問し、イグアスはそれであっていると頷いた。

 

「わかったぞ。理解していると思うけど実戦は無し。シミュレーターでの戦いにするぞ。」

「わかってんだよ、んなことは。」

 

 念の為に622は確認すると、イグアスは吐き捨てながら自身のACに乗り込んだ。それを確認した622は621を連れて自身のACがある格納庫に移動しようとするが──。

 

「おい、ちょっと待て。」

 

 それをヴォルタが引き止めた。何事かと622が視線をヴォルタに向けるが、当の本人は悩ましげな様子。

 

「何か用なのか?早くしないとまたイグアスがわんわん言ってくるんだぞ?」

『聞こえてんだよ!!クソ犬!!』

「オレは犬じゃなくて狼だぞ!」

「あー、その、だな。」

 

 ヴォルタはなかなか言い出せないのか頬を指で掻いていたが、少しすると覚悟が決まったのか622をしっかりと見据え──。

 

「『壁』では世話になった。強がっていたがあのまま行けば俺は死んでただろう。ありがとうな。」

『……ケッ。』

 

 622にお礼を言った。助ける方法など諸々が強引すぎたが、命が助かったのは事実なのだ。イグアスもこれを揶揄うつもりなんてないのか、つまらなそうに言葉を吐き捨てるだけだったが、そこに嫌味などは一切混じってない。

 

「どういたしまして。」

 

 そのヴォルタの礼に対して622は笑顔で返事を返す。先程までの子供の笑顔とは違った大人の笑顔にヴォルタは一瞬だけ思考が止まるが、直後に先程のウォルターによる注意事項がその笑顔のインパクトを押し流していく。

 

「命は助けられたが俺達は傭兵だ。敵で出会ったなら容赦はしねぇ。」

「うん、ヴォルタもオレに殺されないでね。助けたのに自分で潰すのは嫌だぞ。」

 

 ある意味傭兵同士のやり取りを済ませた後、ヴォルタはイグアスと622のシミュレーター戦闘を観戦するために自身のACへ向かう。622はその姿を眺め、ヴォルタがACの中に消えていったのを確認してから再び自身のACがある格納庫に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ざぁこ♡ざぁこ♡とろとろエイムに運動不足キック、可愛いね♡指が弱々すぎて武器を奪えちゃったよ♡あっ、そこでアサルトブーストするんだ、予想通りすぎて笑っちゃう♡それにミサイルはまだかな?放たないといつまで経っても捕まえれないよ?えっ!?本当に撃つんだ!タイミングが合っていないのにムキになっちゃったのかな?急かしちゃってごめんね♡でも近接相手にシールドをずっと張る意味なんてないのにいつまで展開しているの?もしかしてオレが怖いのかな♡んんー、動きが直線的になったよ?図星なんだ♡それにしても……イグアスちゃんも近接するんだね。あ、そっか!武器盗られちゃったもんね♡ほら、手で受けてあげるよ。ワンツーワンツー♡』

『代わりってそう言うことかよ!!!クソガァァァァァァァ!!!』

 

 その後、621のように途切れず、さらに声の抑場がついたせいでイラつき度が上がったメスガキ全開の622に煽られ、苛立ちが天元突破したイグアスの咆哮が格納庫内に響き渡る。その声を聞いたヴォルタは自身のAC内でゲラゲラと笑いながらも冷静に思考する。

 

 この相手を腹立てる話術はG13と狂犬のどちらも使える。そしてどちらも使えるなら最初から使っていたものではなく、教えられたものの可能性が高い。2人の内、片方がもう片方に教えた可能性もあるが、G13は時々言葉を選ぶような間があるし、狂犬は結構純粋な性格に加え年齢的にあんなものを元から使っていたなんて考え辛い。それらのことを考慮すると、これを教えた人物はただ1人。

 

「ハンドラー・ウォルター。厳格な奴だと思っていたが、なかなか面白ぇ奴じゃねぇか。」

 

 ウォルターは静かにクシャミをした。




オリ主(621の代わりにってことだからメスガキでいかないとダメかぁ。教えたけど自分で使うのって初めてなんだよなぁ。上手くいくかな?)

621……まだまだ話すのが途切れ途切れなのでメスガキの火力が低い。

エア……成程、ああやって相手の精神を誘導するのですね。

イグアス……メスガキで苛ついたのに再戦相手もメスガキだった。ある意味不憫な奴。苛つきすぎて幻聴がまだ聞こえていない。

ヴォルタ……RaDの補給を受けれて今回の修理費とか弾薬費が浮いた。1番得をしている。

カーラ……ずっと爆笑してる。

チャティ……オリ主に621の居場所を伝えた。今は爆笑しているカーラを見ながら621にメッセージを作っている。



Q、何でイグアス達が戦闘している時にカーラは通信を一度も繋がなかったんですか?

A、621のメスガキとそれにキレまくるイグアスを見て爆笑してたからです。


 オリ主はよく「〜ぞ!」と言いますが、口癖みたいなものです。狼っ子はなんか語尾に「ぞ」をつけているイメージがあるんです。
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