旧Twitterで出てきたカベクラフト・ヘリアンサスクリーナーのような硬い意思で執筆しようと布団に潜り込んだら睡魔に負けて投稿が遅れました。はい。
みんなメスガキ好きなんだなぁ(小声
イグアス、キレた。
元からキレてはいたんだけど、日を跨いでも再戦再戦言うもんだから621と一緒に左右から挟み込んでメスガキしてたらなんか進化した。
怒鳴ることがなくなって、急に世界が静かになったとか意味がわからないことを言って大人しくなった。なんだろう、自分で鼓膜を破壊したのか?それとも苛立ちが一周回って逆に冷静にでもなったのか?
まぁ、大人しくなってくれたしベイラム側からそろそろ帰ってこいって連絡が来てたみたいだからヴォルタにそのまま連れて帰ってもらった。イグアスは帰る際もずっと大人しくてすっごい不気味でした。621もなんか変なものを見た顔をしてたぞ。
そんな騒がしい2人組が帰ったのでオレは改めてここの頭目であるシンダー・カーラにご挨拶。なんでまだしていなかったのかというと、621を連れてカーラがいる場所に向かっている最中でイグアスが衝突して来たんだよね。それでそのまま模擬戦になってしまったのだ。一応イグアス達と別れて格納庫に戻る際にカメラ越しでコッチの様子を見ていたチャティに先にカーラのところへ行くって伝えたんだけど、チャティからボスが先に模擬戦をしたらいいと言っているって教えられたのでああなった。
そんなカーラとの挨拶は恙無く済んだ。一応オレの実力も見ておくかと聞いたら別に必要ないとのこと。レッドガンの1人をあそこまで手玉に取れれば十分だと笑いを堪えながら言われた。はて、何か面白いことでもあったのだろうか。
声を噛み締めて笑うカーラに小首を傾げること暫く。ようやく落ち着いたのかオレに何故か謝罪をした後でカーラは真面目な顔でオレにあの所属不明機体の情報を共有したいと言ってきた。
何故オレが知っている前提で話すのか、なんてことは言わない。だってウォルターも621もオレがあいつらと戦ったことを知っているし、カーラに話していても不思議ではない。なのでウォッチポイントで出会った奴らのことを素直に話した。
どうやらカーラは621とイグアス達が協力して破壊した所属不明機体達のシステムを解析出来たみたいで、次に会うことがあればハッキングして鹵獲するつもり満々である。破壊されているのにどうやって解析したのかと疑問はあるけど、全機体のシステムが同じだったので壊れずに残っていた部位を繋ぎ合わせ、あとは長年の勘らしい。勘が間違えていてもこの程度なら次にあった時に遠隔から調整出来るとカーラは怪しげな笑みを浮かべている。何を言っているのかちんぷんかんぷんだが、出来るものは出来るのだろう。とりあえずスゲーとは言っておいた。
これで顔合わせと挨拶は終わり。あとは気が済むまで好きに過ごせばいいとのことだが、オレにもカーラに用事があるのだ。
カーラが率いるドーザー一派『RaD』は技術者集団だ。非戦闘と言いながら普通に戦闘できるパーツや武器も開発しているし、その気になればガッツリ戦闘用のACを造ることもできる……はずである。ちなみに初代レイヴンのカッコいいACもRaD製だ。まぁ、あの姿なのはパーツを買ってから魔改造したからみたいだけど。
んで、オレはピコンと来たのだ。オーダーメイドをするならRaDでは?と。お前結局オーダーメイドをするのかよと突っ込まれそうだが、やっぱりロボ系の世界に産まれたなら一度は自分だけのロボに憧れるのだ。
でも顔も知らないベイラムとアーキバスの技術者に頼るのは伝手が無いと無理な気がする。ヴォルタを頼ればベイラムの技術者に渡りをつけてくれそうだけど、悲しいことにベイラムのコンセプトがオレに合っていない。
それなら直接知り合っているカーラを頼ったほうが信頼性とかもバッチリだ。それにRaDっていろんな企業の廃品を回収してるから技術提供なんてされなくても既に集まっていそうだし。
ってことで早速交渉開始!こんな時の為にと懐にしまっていた設計図という名の小学生辺りが書くロボの特徴だけを軽く押さえたものを取り出して机の上に置く。幸い説明しなくてもカーラにはこれが設計図だとわかったらしく、何も言わずに読んでくれた。
しばらくすると、全て読み終えたのか考え込むように目を瞑るカーラ。無償でやるつもりはないので依頼を出してくれれば可能な限り受けるぞと言いたいが、技術者がこういう風に目を瞑って考えているような体勢をとっている時は大体出来るかどうかなどを脳内で組み立てているって前世で見たような気がするので、邪魔をしないように声をかけたい気持ちを抑えてお口にチャックである。
一応カーラが気に入りそうな面白い要素も入れているけど、どうだろう。
やがて目を開いたカーラの一言目は『出来る』だった。これにはオレも大喜びである。思わず机に両手を置いてぴょんぴょん跳ねているとカーラがサラサラと紙に何かを書き始め、その紙をオレに渡してくる。受け取ってその書いたものを見ると、なんだか0が一杯並んでいた。
……スゥー、あの、ちょっと金額が、その……高くありません?そんな気持ちを込めてカーラをチラチラ見れば、言いたいことが伝わったのか、これでも低い方だと言われた。ふぁー!オーダーメイドが高すぎるぞ!?
口をあんぐりと開けて硬直するオレを見たカーラがウォルターに頼めば払えるだろうと言ってくるけど、こんなお高いお買い物にウォルターを頼るのはダメである。
ふっ、やっぱりそう上手くはいかないか。まだ手があるかのような爽やかな笑みで紙を回収し、オレはカーラにこの件は保留することを告げた。オレは借金をしない主義なのだ。
カーラに後から分割払いでも良いよみたいな提案もされたが、なんか借金で絡め取られそうな気配を感じたので丁重にお断りし、自分のACがある格納庫へ帰ってきた。すると中には621が待っていて、オレを見るなり近寄ってくる。
ふむふむ、準備は出来たから後はオレ待ちと……。いや、オレは帰ってウォルターと一緒に中央氷原に向かうつもりだけど?
えっ、なんでそんな驚いた顔をするの?だってオレはベイラムから依頼なんて受けてないし、ここには自主的に来ただけだから。それにウォルターだって護衛が必要でしょ?だから今回は1人で行きなさい。メスガキしても駄目!オレはイグアスみたいにホイホイ釣られないぞ!
どこで覚えたのか知らないが、変態な男なら無意識に腰をヘコヘコさせてしまいそうな動きを追加したメスガキ顔でオレを見る621を抱き上げ、そのまま運んで621のACに搭乗させる。流石に乗れば諦めがついたらしく、621は大人しく出撃していった。それを見送った後、オレもウォルターと合流するためにグリッド086から出撃した。
ウォルターと合流した後、輸送ヘリで共に中央氷原に向かい、621と無事に合流。ACに乗っている621を降ろしたら、そのまま抱きしめられた。
今までそんなことをして来なかったので密かに驚いていると、621が死ぬかと思ったと呟く。ここでオレの脳裏に思い浮かぶのは目標のカーゴランチャー直前で戦闘するボス。『シースパイダー』。
バルテウスを余力を残した状態で破壊した621なら手こずるとは思えなかったのでそのまま見送ったのだが、621の反応的にかなり強かったのだろう。
落ち着かせるように621の背に腕を伸ばしてそのまま撫でれば、621の身体が震え始める。これってもしかしてかなり重症なのでは?
とりあえず話を聞こうと促せば、ポツポツと621は今回の出来事を話し始めた。
惑星封鎖機構のサテライトキャノンによる狙撃を潜り抜け、その先にいた汎用兵器ドローンも破壊。コンテナにアクセスすれば、C兵器シースパイダーが強襲してきたので戦闘。途中で形態変化を行い、空を飛んで驚かさせられたが特に問題なく破壊したとのこと。
この時点でオレの頭にハテナマークが浮かび始めたが、621がコンテナに入った辺りの話で震えが強くなったことで察した。そういえばカーゴランチャーって人を運ぶことなんて想定していなかったっけ。
カーゴランチャー怖い、死ぬかと思ったと呟く621に、オレはついて行かなくてよかったぁと心底喜びつつ、しかし顔には一切出さずに621が落ち着くまで背中をさすり続けるのだった。
621がウォルターと622の2人と合流するまでの間にアーキバスは別ルートから。ベイラムは621の先行調査の報告を受けてアーキバスを追いかけるようにして、それぞれが中央氷原へと集まっていた。
しかしベイラムは先行調査の報告を待っていた分、アーキバスに遅れを取った。その遅れを取り戻すべく、またはアーキバスより先に行くためにベイラムは独立傭兵達に依頼を出した。そしてその中には、当然621と622も含まれていた。
「これで最後。」
最後の抵抗と言わんばかりにミサイルをばら撒いていた砲台に鉄杭が刺さり、爆発。それによって発生した炎に照らされながら622はようやく終わったとコクピットの中で一息ついた。
622が受けた指名依頼は、アーキバスの調査拠点の殲滅。と言ってもベイラムが依頼を出した段階では小規模な拠点で、調査ドローンを展開している様子もないことからまだ建設途中だろうと思われていた。なので襲う価値は少なく、でもここから展開されたら鬱陶しいから襲ってきて。というのが今回の依頼の詳細だった。
しかし622が現着した時、増員でもされていたのか明らかに人員やMTの数が多かった。この時点で報告とは違うと依頼を放棄しても良かったのだが、622は依頼を続行。それなりに時間をかけたが、たった今殲滅し終えたところだ。
《よくやった、622。ベイラムには俺から話をつけておこう。》
「うん、お願いするぞ。最初から数が多いのに途中から更に増援が来るなんて聞いてないぞ。ここってそんなに拠点価値が高いのかな?」
《いや、ここ自体にそのような価値はないはずだ。おおかた別の場所へ移るための中継地点だったのだろう。》
途中で合流してきたMT部隊のことを思い出し、こんな周りに何もない土地に価値なんてあるのかと622が首を傾げるが、ウォルターの言葉に納得を示した。何もないからこそ中継地点としてはうってつけだったのだろう。
「まぁ、仕事は終わったから今から帰るぞ。」
やるべきことをやったので後は帰るだけ。ウォルターとの通信を切り、アサルトブーストで一気に離脱しようと構えた時、COMからACが接近しているとの警報を受ける。狙い撃ちをされては堪らないため622はアサルトブーストを中断。ACの接近を待ち構える。
やがて現れたACは622の前方で着地した。ベイラムとアーキバスのパーツを使用したアセンブルは独立傭兵のよう。しかし622は目の前の存在が企業所属ということを知っている。
AC識別名、ロックスミス。
『ここに中継地点があると聞いていたが……やったのはお前か?』
『……そうだぞ。依頼だからな。』
その搭乗者、V.Ⅰフロイトからの問いかけに622は少し間を開けたものの、誤魔化す必要は無いと判断して素直に答えた。622の返答を聞いたフロイトは黙り込む。ACの頭部が少し動いているので622のACを見ているのだろう。
《フロイト、何をしているのです。そんな些事は早く片付けて、本来の仕事に戻りなさい。》
『あぁ、そうだな。了解。……というわけだ、悪いが死んでくれ。』
622の武装がパイルバンカーしかないことをフロイトは弾切れによるパージだと判断した。仕事の途中で中継地点から炎が上がっているのを発見。興味を惹かれて降りてみたが、出会ったのはこの程度の規模の拠点制圧に弾の全てを撃ちきる傭兵。
そんな傭兵に自身の食指が動くことはなく、時間の無駄だったと内心でガッカリしながらフロイトはレーザードローンを起動。飛び立った6機のドローンを622の方へ囲い込むように飛ばし、今通信してきたスネイルの言う通りに素早く片付けようとする。しかし─。
『その程度じゃオレは死なないぞ。』
放たれたレーザーを622はジャンプとクイックブーストを織り交ぜた動きで回避。フロイトがドローンの位置を修正し再び攻撃するもそれすら回避しながらフロイトに接近。間合いに入るなり強烈なドロップキックをコクピットへ向けて放つ。
そのキックをフロイトは後退することで躱し、更に距離を置く。その置いた距離はフロイトが持つ武器の有効範囲外でもある。このことからかなり距離を離したことがわかるだろう。しかしこれは622を警戒したからでは無い。自分の考えを纏めるためだ。
「成程。武器を捨てたのではなく、元からつけていなかったのか。」
フロイトの脳裏に先程の622の動きが浮かび上がる。あの動きは常日頃飛び道具を使っている者が咄嗟に出来る動きではない。更にあの洗練された動きは、ずっとあのスタイルで戦っている者が取れる動きだ。
それに至近距離まで近付いてきたことから確認できた腕部と脚部パーツ。特に腕の先と脚の先の塗装が剥がれていたことから、そこを主に使っている。つまり、殴ったり蹴ったりする格闘が主武器。
622の考察を進めていくうちに、フロイトの口角が徐々に上がっていく。スネイルが言った通りの些事?とんでもない、コイツは極上の獲物じゃないか。
『そこの傭兵、すまなかった。俺はお前を実力を見抜けていなかったようだ。』
『いや、別に見抜けなくてもいいぞ。お前に目をつけられたと思うと身体がゾワってしたぞ。』
そんなフロイトからの謝罪に622の尻尾はブワッと膨れ上がった。今ので目をつけられたと判断したからだ。フロイトみたいな戦闘狂に目をつけられるなんて罰ゲームみたいなものだと622は考えている。
もし正直に622がそれをフロイトに言えば、フロイトは罰ゲーム扱いされたことに眉を顰めながら、自分の気が済むまで戦うだけだと答えただろう。フロイトの気が済むまでは相手の技術を全て吸収し終えるまでという意味なので、常人からすると普通に罰ゲームだ。
そんなことを622が考えているとはつゆ知らず、フロイトはまじまじと622の姿を見ていた。
「それにしても……。無手、無手か……。」
フロイトは自身のAC技術を高めるため、様々な経験を積んでいる。しかしその中に拳や蹴りのみで戦ったことはあったかと思考してみるが、結果は無し。そもそもACが拳で戦うのは武器が弾切れ、または損失した時の最終手段だ。それに武器がなくなったとしても自分にはレーザーブレードがあるため決して無手ではない。それは相手もパイルバンカーがあるため同じことだが、パイルバンカーは突きしか出来ないので実質威力と貫通力が高い伸びるパンチだ。
「ふむ、そうか。そうだな。」
これは良い機会ではないか?そう考えた直後、フロイトは全ての武装をパージし、ファイティングポーズを取った。そしてアサルトブーストを起動させ、一気に622へ距離を詰める。
わざわざ自分から622の得意な戦闘に持ち込んできたフロイト。これで銃火器やブレードなどの近接武器を持っていたのなら、622はカウンターの準備をして迎え撃つのだが、今回は飛び上がって後ろへ退避。安全にフロイトの攻撃範囲外へ離脱する。
その622の行動にフロイトは裏で高まっていた興奮が冷めていくのを感じた。相手のパイルバンカーのみといったアセンブルに自身と同じ戦闘を楽しむ匂いを感じ取っていたのだが、それは勘違いだったのかと。
今からでも捨てたライフルを取りにいこうか。そうフロイトが考え始めた時、それは早計と言わんばかりに622のパイルバンカーが外れて雪原に落ちる。
『相手が素手の格闘戦を望めば、コチラも素手で応える。それがルビコン神拳のルール……と、オレは勝手に考えている。』
622のACが左腕の手のひらを仰向けにし、指を水平に真っ直ぐと伸ばした状態で、数回折った。つまりこう言っている……かかってこい、と
それに応えるようにフロイトはアサルトブーストを起動させ、622に飛びかかる。そして間合いに入ったことでブーストキックを622に向けて放った。
『遅い、それに直線的。』
622は一歩下がることでその蹴りを躱し、カウンターでフロイトの頭部に拳を叩き込む。その衝撃で怯んだフロイトへ更に前蹴りで追い討ちをかけ、フロイトは後ろへ後退することでこれを回避。
『今のがコクピットへ当たっていたらそのまま死んでいたかもしれないぞ。』
そう言いながらも622は退がったフロイトへ向けて距離を詰めるためにアサルトブーストを起動する。先程のフロイトを真似するように蹴りの動作を取った622に、フロイトも同じく先程の622の動きを思い浮かべ、それを迎え撃とうとする。
しかしその蹴りは途中で中断された。蹴り自体がブラフだとフロイトは気付き、クイックブーストで退避しようとするがそれよりも速く622はクイックブーストで懐に潜り込み、拳をコクピットに向けて放つ。
だがその拳が当たることはなかった。後ろに退がり、622から距離を離したフロイトは訝しむように622を見つめる。
先程の拳はAC乗りが見たら誰もが当たっていたと判断するだろう。なのに当たらなかったのは、コクピットの手前でその拳が意図的に止まったからだ。
フロイトは戦闘狂だが自身の価値を正しく知っている。そんな自分を殺せるかもしれない絶好のチャンスを、目の前の傭兵はわざと逃した。
どういうつもりだ?その問いかけは、フロイトの口から出ることはなかった。フロイトの視線は目の前のACに釘付けだからだ。先程と同じようにかかってこいと言わんばかりに指を折るACに。
フロイトは理解した。相手の意図を。やはりコイツは俺と同じ戦闘を好む同士だと。
《フロイ──。》
『あぁ……。ではその胸、存分に借りさせてもらおうか!』
誰が聞いても苛立っているとわかる声をしたスネイルからの通信。それを聞こえるなりすぐに切断し、フロイトは622へ接近する。相手の方が近接の腕が遥かに上で、その上コチラを殺す気はない。なら存分にその技術を観察して吸収させてもらおうか。
622へ近付いたフロイトは自身が思い付いた攻撃を622へ試していく、せっかくの機会だから実用性が全くない攻撃も試すが、622はそれにすらアドバイスを送りながら付き合っていく。
『腕は武器。盾じゃない。攻撃は避けて当たらないのが大前提。』
『成程、ならこれはどうだ?』
『甘い、部位を壊すなら確実に。それが無理ならコクピットを狙え。そっちの方が圧倒的に早いぞ。』
622のアドバイスを随時適応させていく。自身の近接の腕が上がっていくのを感じられ、それに対してフロイトの気分がどんどん高揚していく。
次はどんな風に攻めようか。次々と頭の中で攻撃手段を組み立てていくが、その思考は突如622がACを後退させ、別の方向を眺めて動かなくなったことで中断された。
『どうした?これからもっと面白くなる──。』
『うーん、悪いけど組手は中断だぞ。……面倒なのに目をつけられた。』
自身の問いかけを遮って届いた622からの通信に、フロイトが622が見ている方向を見れば大量の強襲艦が空を飛んでおり、その内の2隻がフロイトと622の方へ向けて接近していた。
『あれは……惑星封鎖機構か?』
『みたいだぞ。』
戦闘はやめたが危機感もなく呑気に会話している2人に、強襲艦の後部から降りてきた機体が6機接近してくる。
『2機のACを確認。しかし武装解除をしているようだ。』
先程までお互いに素手で戦闘していたこともあり、接近してきたLC機体のパイロットはこの2機は警告に従って武装解除したと勘違いしたのか間違った報告を行う。622とフロイトがなんの武器も持っていないからか、封鎖機構のパイロット達もそこまで2人を警戒していないようだ。
《フロイト、しょうがないから強襲艦とLC機体の相手は引き受けてやるぞ。》
さてどうするか。隙だらけの6機を見ながらそうフロイトが考える前に、隣の622から秘匿通信が届いた。しかしその提案をフロイトは即座に拒否する。
《やめてくれ、こんな面白いことを独り占めするつもりか?同士なら分け与えるべきだろう?》
《えぇ……?手伝ってくれるなら歓迎するけど……。あとなんかオレのこと戦闘狂扱いしてないか?》
《違うのか?》
《違うぞ!?》
622は自身のことを戦闘狂では無いと言い張るつもりだ。あんなに楽しく戦っていたのに何を言っているのかとフロイトは呆れつつも近寄ってくる封鎖機構との距離を測る。
『この反応は……V.Ⅰフロイト!?』
『行く!』
『なっ!ぐぅう!?』
機体照合でもしていたのか、出てきた名前に封鎖機構のパイロットが驚き、それと同時に彼らの機体が622の攻撃範囲に入った。622は一気に飛び出し、驚愕したことで隙だらけとなったLC機体に組みつく。
『敵ACの抵抗を確認。排除せよ。』
そこから相手が体勢を立て直す前に強引にLC機体が持っていた盾を剥ぎ取り、墓標のようにコクピットへ突き刺して中のパイロットを殺した622。その周囲を囲むように移動したLC機体達が一斉に銃口を向けた。
『流石LC機体。SGよりかは頑丈だぞ。』
そして放たれた弾丸とレーザーを、622は布団を被るように今し方無力化したLCを自身へ覆い被らせて防いだ。しかし流石に無理があったのか、レーザーに焼かれたLCが溶解し始める。コアも大破したのか火花が散って爆発の兆候も見られたので、622はLC機体達の銃撃の僅かな合間に機体を蹴落として距離を離した。
『うーん、盾に使えるのはほんの少しかぁ。弱々だぞ。』
『貴様……!』
『おいおい、俺も混ぜてくれよ。』
まだイグアスの時に使ったメスガキが抜けきっていないのか、思わず言ってしまったその言葉はこの場にいる封鎖機構のパイロット達のヘイトを買うには充分だったようだ。だがそれで生まれた隙を突いたフロイトが飛んでいたLCの一機に飛びかかり、そのまま組みつくことに成功する。
『武器がなければ例えランキング1位の貴様でも……!』
しかし組みついたは良いものの、暴れ始めたLC機体にしがみつくのが精一杯。一応コクピットを殴ってはいるものの、密着しているからか大した威力が出ていない。
こんな時はどうするのかとフロイトが622の方を見れば、意図を察した622は奪った盾で攻撃を防ぎながら1番近くにいたLCへ接近。迎撃に放たれた蹴りを回り込むように回避して背後に回ると、持っていた盾を邪魔じゃない位置に移動させつつ今のフロイトと同じようにLC機体にしがみついた。
そしてLCが抵抗する前に脇辺りの部位を貫手で破壊。その後に上からブースターを殴り付けて機動力の低下を狙う。しかしここで他のLCが後ろに回り込んできたので、一旦攻撃を中断。組みついていたLC機体を蹴り飛ばして解放した。
そのお手本を見たフロイトは即座に実行。自身のACで相手LCの右脇部を狙って貫手を行う。少々不恰好だったが上手くいったようで、相手の右腕が力無く下へ垂れ下がった。なら次はブースターを、と考えたところでフロイトの視界にLC機体の右腕に装備されているライフルが映った。
予定変更。ブースターの破壊をやめ、ライフルを奪い取る。右腕の操作回路が貫手の際に壊れていたのか、抵抗が弱く楽に奪い取れた。今度はライフルをコチラの火器管制システムに接続するのだが、コチラも上手くいった。惑星封鎖機構は自身らの武器が鹵獲されるとは考えていなかったらしい。
『ありがたく使わせてもらおう。じゃあな。』
『貴様──。』
奪ったライフルの銃口をLC機体のコクピットがあるであろう場所に向け、装甲越しから接射する。放たれた弾丸はコクピットを貫き、中のパイロットが悲鳴をあげる前に殺害した。
綺麗にコクピットのみを撃ち抜いたからか爆発することなく墜落していくのを見送り、次を探すが……。
『成程、一つを極めればこうなるのか。惹かれるな……。』
既にLC機体は壊滅しており、倒れた最後の一機のコクピットに622が盾をゆっくりと捩じ込んでいる最中だった。中のパイロットはLCの操縦を放棄、コクピットの装甲を食い破って徐々に自分へと近付いてくる盾を両手で必死になって押し返そうとしているが、どうにもならない。
『強襲艦!助けてくれ!頼む!!』
常に冷静さを見失わない封鎖機構のパイロットといえど、この迫る死の恐怖に精神がやられたのか、血眼になって強襲艦へ救助を要請する。その要請を受けた強襲艦は船底の砲台を622のほうへ向け、砲撃した。
『む、損切りしたぞ。』
その砲撃は盾で受けきれないと判断したのか、622は飛び上がって砲撃を回避。砲撃は味方のLC機体を消し飛ばすだけで終わる。
『あとは強襲艦だけだぞ。』
『なら俺にくれ。LC一機だけでは消化不良だ。』
『んー、じゃあ任せたぞ。』
『あぁ、これが終わればさっきの続きをやろう。何個か思いついた攻めを試したい。』
そう言い残し、フロイトは近くにあった垂直上昇カタパルトに乗って強襲艦と同じ高さまで上昇。そのままアサルトブーストで飛んでいく。それを見送った622は周囲を捜索し、無事だったパイルバンカーを拾うとフロイトから背を向け──。
「早く帰ろ。このままここに居たらいつ帰れるか全くわからないぞ。」
フロイトが気付かないうちにアサルトブーストで逃げるように離脱した。
オリ主(素手で来たなら素手で応えないとね!でもフロイトの腕がメキメキ上がってくるのは見ていて楽しかった。それはそれとして念の為にオールマインドにはオレの情報をフロイトに渡さないようにしてもらっとこ。)
621……裏で俺達はやりすぎたんだをしている。ちなみに変態の腰をヘコヘコさせる動きは独自に研究しているエアの提案。しかしメスガキ属性にメスガキ攻撃は相手が百合タイプを複合してなければ効果がないのである。
エア……ふむ、メスガキで相手を挑発してさらに誘惑すれば効果が相乗すると思ったのですが……まだまだ研究不足のようです。
フロイト……努力の人。強襲艦の弾幕を楽しんでいたらいつの間にかオリ主がいなくなってて不満。オールマインドに登録されているオリ主の連絡先を見てメール爆撃する予定。
スネイル……フロイトの勝手行為にそれなりにキレてるのに封鎖機構が排除行為に移ったので余計にキレた。帰ってきたフロイトにネチネチ文句を言うが、メールをずっと送信していてキレる。次の日もミーティング中にフロイトがメールを送信していてキレる。その次の日もってあなたはいつまでメールを送っているのです、いい加減やめなさいと止めた。
イグアス……ミシガンのASMRで元に戻った。しかし今度はミスするたびに頭の中でオリ主か621音声のメスガキが沸いてくるようになった。
オールマインド……嫌でーす!パーツを返してくれない人のことなんて知りませーん!
ちなみにオリ主がLC機体に盾をゆっくりと捩じ込んだのは強襲艦の増援を誘き出すためであり、決して遊んでいるわけじゃないぞ!
いきなり隙自語なんですが、自分はロボ系の武器だとハサミとかニッパーみたいな挟んで潰す系の武器が大好きなんですよね。挟まれたパイロットの無駄だと分かっていても咄嗟に抵抗してしまって、それごと押し潰される描写を見てから好きになってしまいました。だからガン◯ムのグシ◯ンの最後のニッパーとかニコニコしてました。