真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(アスタルテ)
そして私は精神世界にダイブした。
通常の魅了魔法マリンカリンの効果は10分程度だが、私のマリンカリンは違う。
効果は一生続く。
ただし。
それにはこのように、対象者の精神世界に入り込み、その深層心理の奥底に、私の存在を刻み込まなければならない。
そうすることで、対象者は私の事を一生をかけて愛し、必要ならば躊躇いなく命を捨てられるほどの愛の対象として見ることになる。
そうなったときの、あの女の泣きっ面、絶望顔が今から愉しみだ。
思わず、笑みが零れてしまう。
精神世界。
それは一種の迷宮だ。
ぼやけた青い壁。
続いていく通路。
奥に進めば進むほど、佐上忍という男の心の奥底に近づいていく。
……しばらく歩くと、扉が見えた。
まだ深層心理の領域ではないが、少しだけ興味を覚えたから見てみようか。
扉を開けて、中を覗く。
「ボク、おとうさんに空手をならってるの」
「すごーい! つよいんだね! かっこいい!」
……どこかの春の日の公園のような場所での、幼い少年少女の姿が見えた。
二人とも、スモッグ? を着ている。
ということは幼稚園か?
多分、少女があの女だ。
面影がある。
そして少年が佐上忍だろう。
「おとうさん! ボクに空手をもっと厳しくおしえてください!」
「よくぞそこまで吼えた! お前こそ佐上家の跡取り!」
……場面が変わって、道場。
さっきの少年が大人に殴られている。
「まずは防御だ! 防御が出来るかどうかが、素人とそうでない者の差なんだからな!」
「はい!」
……実際に殴られながら、防御のなんたるかを教えられているらしい。
……なるほど。
こうやって、小さい頃から武術で鍛錬していたんだな。
それで、あの身体か……
復讐関係なしで、一度味わってみたい身体ではある。
……帰って来たときに、ここの思い出の映像がどう変わっているかが見ものだ。
扉を閉じて、また歩き出す。
しかし……
この精神世界は、壁の色がなかなか綺麗な色だ。
心の持ち主の性質が、ライトの属性であることの表れか。
まあ、ダーク属性の私からすると、汚したくなる色ではあるのだけど。
するとまた、扉が見えた。
覗く。
「好きだッ! 付き合ってくれッ!」
……時間がだいぶ飛んだな。
これは中学か? 高校ではない気がする。
まだ顔に幼さを感じるからな。
で、相手は……
「はい。お願いします」
ぺこりと頭を下げた女。
……このあたりからもう、あの女だな。
幼さがほぼ無い。
おそらく、相当に男にモテたはずだ。
……そんななのに、寝取られる。しかも、夫を。
ゾクゾクしてきた……
扉を閉めた。
そしてまた歩く。
また、扉。
……どうしよう?
まあ、一応……
覗いた。
「忍……結婚したんだから、セックスしようよ。今しとかないと、いつ死ぬか分からないんだし」
「……そういうことは言わないでくれ。でも、君が許してくれるなら、俺は君を抱きたい……」
ベッドの上で、並んで座ってる成人している男女が居る。
あの二人だ。
また時間が飛んだな。
これは初体験か?
女の方は顏を真っ赤にして俯いて。
男の方は獣欲を必死で制御している顔をしている。
どうみても童貞と処女の対応だった。
……だいぶ遅いんだな?
この分だと、こいつら中学からずっと付き合っていたわけだろ?
少し、ありえなくないか?
……まあ、いいや。
どうせ消える記憶だ。
興味なし!
バタンッ! と扉を閉じる。
そして……
「おお……」
大扉。
装飾も立派だ。
これこそが、深層心理の領域の部屋の扉。
すぐ入ろう。
書き換えの瞬間が楽しみでしょうがない。
私は扉を開けた。
すると……
正面に、あの女の拡大写真があった。
その姿は、現在のあの女。
衣装は、今のあのハイレグアーマーか?
横を見ると別の写真があって、それもあの女。
そしてそれが全部違ってて。
セーラー服だったり。
清楚なワンピースだったり。
ライダースーツだったり。
スモッグだったり。
トレーナーとジーンズの上にエプロンをつけた姿だったり。
ランドセルを背負ったブレザー姿だったり。
年齢は違っても、悉くあの女の写真だった。
そんなのが、壁一面に貼ってある。
……どれだけ自分の妻が好きなんだ。あの男は。
他の女の写真が一枚もない。
……ここまで来ると、狂気を感じる。
ま、まぁ!
貼り換えだ!
写真を貼り換えてしまえば、一緒だ!
この狂気じみた伴侶への想いが、全部私に向くんだ!
それはそれで面白いじゃないか!
まずは写真を剥がして……!
そう思い、私は近場にあったセーラー服姿のあの女の写真を剥がそうとした。
しかし……
「え」
……剝がれない。
というか、剥がしようがない。
壁と一体化している。
……貼っているんじゃないなこれは。
……こういう壁なんだ。
じゃ、じゃあ……
私は深層心理の世界でも通用する「自分の存在の象徴」として、自分の姿が映った写真を呼び出した。
それを、深層心理の世界で通用する糊を裏面に塗り、壁に貼り付けようとした。
だけど……
「あれ……? どうして?」」
……全く、くっつかない。剥がれる。
まるで糊など塗られていないように。
え……? なんで……?
どうして……?
私は頭を抱えた。
そのときだった。
「……面白いと思わんか?」
別の誰かの声がした。
反射的に振り向いた。
そこには……
「お前は魔王アモン……!」
梟の顔に、狼の上半身、蛇の下半身。
そして背中に大きな翼を持つ、異形の魔王。
そいつが居た。
何故、ここに……?
「久しいな。いつ以来だ魔王アスタルテ。魔界での時間は退屈過ぎて、良く分からなくなるからな」
……アモンは、とても愉しそうにそう言って私を嗤った。
まあ、普通の精神では無いよ。
この物語の主人公は。
ヒロインも大概だけどね。