真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(真月)
同じ人間が惨たらしく殺されているのに。
大喜びで見物に来る人々。
彼らは文明人なんだろうか?
私は心の底からそう思った。
……大昔、処刑は庶民の娯楽だった。
それは知識として知ってはいたけれど。
それが、現代でも通用するなんて。
私はあの人たちが理解できなかった。
「……なんかずっと考えている顔だね」
夫が私にそう言ってくれた。
見上げる。
彼は渋面だった。
何か、とても言いづらいことを言おうとしている。
「……君は自分の知識を増やしたり、出来ることが増えることを喜びにして生きていける人間だよね」
……それが何か悪いの?
私にとってはそんなこと、別に普通のこと。
お父様もそうだったし、お母様もそう。
それにあなただってそうでしょ?
そうでなければ、どうしてそこまで強いのよ?
技を鍛えて習得することってとても素晴らしいことだって、知ってるからずっとやれて来たんじゃないの?
「……何が言いたいのかはっきり言って欲しい」
そう言うと。
彼は言ったんだ。
「君はおそらく、庶民の気持ちってやつが理解できないんだよ。実家が裕福だからとか、そういう次元の話じゃなしに」
庶民の気持ち……?
真っ先に浮かんだのは、裕福な実家での何不自由ない暮らし。
両親に愛されて、教育してもらって、色々出来ることを増やしていく日々。
でも、それは大破壊で全部意味が無くなり、皆、平等になった。
そう思っていたんだけど、違うの……?
「庶民の気持ちって、何?」
そう、口について出た。
すると彼は
「庶民の気持ちって言うと、意味が通じにくいかな……庶民が幸せを感じる基準、と言った方がいいか」
幸せを感じる基準?
それって……
「……多くの人のそれは”自分の存在価値”なんだよ」
君は自分の能力を拡大してより大きな存在になることに喜びがあるから努力するけど、普通の人は自分を他者から必要とされる存在にするために努力するんだ。
そしてそれが自分の喜びに繋がる。
「他人から必要とされるって素晴らしいことじゃない。それの何がいけないのよ」
私の言葉に、彼は落ち着いた声音で
「無論、全然悪いことじゃないと思う。俺だって、君に愛されるために自分の能力を上げてきた。君の人生のお荷物にならないように」
……突然、そんなことを言われて夫の愛を感じてきゅんとなってしまう。
そういう話をしているわけじゃないのにね。
彼は続けた。
「問題は、必要不必要って、他者との比較が必須になる、ってことなんだよ」
他者との比較……?
少し理解できなくて、首を傾げたかもしれない。
すると
「例えば、この前チェルノボクとテングを切っただろ」
うん。
役割的に不要だ、と思ったから切った。
……その瞬間、理解してしまった。
つまりチェルノボクとテングは、私には存在価値が無かったのだ。
他の仲魔と比較して。
だから躊躇いなくサラマンダーを作る材料にしたんだけど。
「とび抜けて優秀な才能を持つ人間なら、簡単にそんな自分の価値を見つけるだろうけど」
……そういう人間はあまり居ないからね。だからつい、最も楽な価値の高め方に飛びついてしまうんだ。
それが……あれさ。
あれ……?
あの残虐な凌遅刑が、何故自分の価値を高めることに繋がるの?
「……あの刑を受けていた人間は、彼らの社会では悪そのもの。その悪が無残に裁かれているのは、正義の証明であり、その観客である自分たちは紛れもない善だよね」
そして普通に考えて、悪より善の方に存在価値がある。
悪は放置すれば社会を壊す害だから。
だから嬉しいんだよ。悪の処刑が惨ければ惨いほど。
大喜びだ。それだけ自分たちが善であることが強調されるんだから。
「……そうなんだ」
……ちょっと、ショックだった。
夫が私の愛を得るためにずっと頑張って来た、って言ってたけど。
それはすごく嬉しいと同時に、悲しかった。
だって、私、あなたをそんな理由で旦那さんに選んでないんだもの。
この人なら、きっと最後まで私の隣にいてくれる。
そう思えたから、あなたを選んだのに。
そして……
私はあの処刑場に群がっていたメシア教徒たちが、酷く哀れに見えた。
メシア教って、弱者を救う宗教のはずなんだよね。
だって「法を絶対視する宗教」なんだから。
法は本来、動物の世界では淘汰されてしまうような弱い人を守るためにあるはず。
ガイア教はその逆。
あれは強者を大事にする宗教。
だから法が無い。
法があることで、弱者に強者が虐げられることを防ぎたい人たちが作った宗教。
なのに、法の社会に住んでいながら、自分の価値に自信が持てなくて、善性の自覚という安易な方法で自分の価値を高めようとしてしまうメシア教徒の人たち……
なんかホント……ものすごい人間の業を感じてしまった。
悪を滅ぼして正義を示しているつもり