真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(真月)
鬼女郎保育園で夏子が夏美ちゃんを迎えてきた。
今、私たちの隣で手を繋いで歩いている。
……正直、少しだけ羨ましい気持ちがある。
私も欲しいなぁ……
絶対に大変なのは予想つくけど。
「ねぇ」
隣を歩いている夫に、ちょっと聞いてみたいことがあった。
夫が、ん? という感じで私を見る。
「あのさ、アナタは息子産まれたら強制的に空手をやらせるの?」
……なんか、男の人って、自分の積んで来たことを息子に引き継がせたい欲求あるみたいじゃん。
そういうの、彼にもあるのかなぁ、って。
前から燻るような感じで考えていたんだけど。
なんか、ナマで育児をしてるところを見てしまったら、どうしても聞きたくなってしまった。
……どうなの?
「いや?」
すると、ものすごくアッサリ、そう答えられてしまった。
……え? ホントに?
「……ホントにぃ……?」
「いや、別に嘘じゃ無いって」
彼はヒラヒラ手を振りながら。
「俺の場合は手解きは強制だったけど、続けたのは俺の意思だから」
そう、思い返す様子で言いながら
「自発的にやらないと、ある程度から上にはいけないんじゃないかな」
それが俺の得た結論だ、って言いたいみたい。
うーん、それはそうかもしれないなぁ。
あなたの技、無理矢理やらされて身につくとはとても思えないし。
『スーパー・マハーカーラ』
……天魔マハーカーラが経営しているスーパー。
かなりでっかい。
総菜類は堕天使ニスロクが作ったのを売ってるらしい。
品質は良さそうだ。
マハーカーラは、日本で言うところの大黒様。
スーパーを経営するのに相応しい悪魔だ。
今日はここで夕飯の鍋の材料を買うんだとか。
ちなみに寄せ鍋。
……なんか、今日は泊めてもらえるらしいんだよね。
桃井家に。で、夕飯も呼ばれるの。
なんか、ありがたいけど……複雑。
……一応敵の設定だったのになぁ。
そんなことを考えつつも
私たちは鍋の材料を考えながら、スーパーに入っていく。
その途中、幟が目に入った。
こんな幟を。
『毎日が価格破壊!』
……そういえばマハーカーラは破壊神シヴァの化身のひとつだったっけ。
スーパーの中は……
とても綺麗だった。
どこも、そうだね。
で、予想がついてしまう。
この綺麗さ、労働者の命がけの献身の結果なんだろうな、ということに。
品揃えもとてもいいし、鮮度も良さそう。
そして……
来てるお客、女性が多いんだけど……
全員、美人。
ハイセンスの服装。
……これって……
「……ここのスーパーを利用できるのは、ある程度の実力を持つ男か、その持ち物の女だけなの。女が美人ばかりなのはそういう理由」
私の思考を読んだのか、夏子がコッソリ耳打ちして教えてくれた。
うわあ……真実を知ると息苦しくなる街だな……!
「白菜あるのか……要るよね。え? 魚もあるの? どうやって入手したの?」
並んでる食材で、寄せ鍋に必要そうなものをカゴに放り込んでいたら。
視線を感じた。
……夏美ちゃんだ。
手に何か持ってる。
……これは板チョコレート?
……このご時世だと高そうな気がするな。
どうしよう……?
すごく買ってあげたいけど、勝手に子供にお菓子買うのは良くないのでは?
虫歯とか太るとか、ご飯を食べなくなるとかありそうだし。
チョコの名前は……ロッチカオスミルク?
ロッチって、パチモン臭すごいね。
これは……と悩んでいたら。
「これは駄目」
言って、チョコを夏子が売り場に戻しに行った。
……駄目なのか。
行って、棚に戻し、戻って来て一言。
「太るとね……上野では女は死活問題なの。昔の世界とは違うのよ」
……うわぁ……。
言い方にものすごい闇を感じてしまった。
材料を全てカゴに入れ、さあ会計だとレジに並んだ。
ここは普通のスーパーの風景だ。
私たちの前には3人の美人の奥様方。
おそらく、ガイア教でそれなりの地位にある男の配偶者。
身なりもいいし、立ち方もピシッとしてる。
いかにも……と感じるなぁ。
そんなことを彼女たちを見ながら感じていたら。
「レジ打ちが遅い」
「何分待たせるの」
「モタモタしないで」
……いきなり。
その3人が一斉にレジにクレームをつけたんだ。
うぇ……?
思わず、絶句。
見ると、レジ打ちをしている子は素朴な女の子で。
一生懸命やってるっぽいんだけど……
確かに手際が悪くて、無駄な動きが多くて。
時間が掛かってる。
女の子、顔を青ざめさせていた。
そして
「も、申し訳ありません……」
そう、消え入りそうな声を出して謝罪する。
すると
「だったら早くして」
「言っとくけどぴえんしたらその場で店長に報告してあげるから」
「そしたらあなたクビね。無職は上野では生きていけないわよ」
……奥様方の地獄の連携。
「……これが上野の名物その2。地獄のレジ係よ……」
後ろに並んでいる夏子が、ポツリと言った。
うん……上野にだけは住みたくないなぁ……。
必死で泣くまいと耐えながら、レジ打ちに専念する女の子に私は同情しつつ。
自分の番のときにはイライラした様子は見せないようにしようと心に決めた。
ぴえん勢に厳しい街。それが上野。