真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(真月)
私はイザナミ様を召喚した。
これからする交渉に、絶対に立ち会っていただかないといけないから。
覚悟を、決める。
「……日本政府がガイア教徒と敵対する可能性があるとするなら、現行あなたたちが支配しているこの東京23区を取り返しにくる場合、ですよね?」
私の召喚に驚いている幹部たちに、私は畳みかけるように提案をする。
「だったら……東京23区はガイア教徒の領土にします。私たちに協力してくれたら、それを認めます!」
その瞬間、その場の全員に驚愕が走った。
「何言ってるんですか真月さん! 東京をガイア教徒に差し出すなんて!」
ケイスケくんが真っ青な顔でそう叫び声をあげた。
うん……気持ちは分かる。
私がキミの立場なら、同じことを言ったと思うから。
でも……これは仕方ないことなの。
「その提案の正当性の根拠を聞いて良いか?」
脇で自分の席にも座らず、やりとりを見続けていた桃井明氏が、私にそれを聞いてきた。
そりゃそうだよね。
例えば、日本の旅行者がどこかの外国に行って「対馬は君たちのものだ!」と言ったとしても。
何でその旅行者がそんなことを決められる? 権限無いだろ?
そういう話になる。
だから私の言葉が国の言葉だと言って良い根拠が求められるんだ。
「それは……」
私は息を吸い込んだ。
「旧世界での日本の国家の意思決定は、国民の意思……その国民の意思の総意が、総理大臣が決めたこと」
続ける。
「総理大臣はそのときの天皇が任命することにより、その地位に就く。つまり、最終的に総理大臣を決めているのは天皇。国民はその候補者を選定するだけ」
周囲の反応を見る……うん。聞いてくれている。
続けた。
「天皇が総理大臣を任命するのは、本来は国家の意思決定は天皇にしかできないから。総理大臣は代役に過ぎない。その証拠に、全ての法律は天皇の承認を経て成立する」
周りの反応を見ながら
「天皇が国家の意思決定を出来るのは、天照大神に日本を統治することを命じられたから。天照大神がそんなことを出来るのは、高天原の統治を伊邪那岐神に命じられたから」
……ここだ。ここが勝負所。
目に力を込めて、私は……
「そして伊邪那岐神と伊邪那美神はともに日本を作った創造神。持つ権力は同等とみるべき。つまり……」
ここで、手をイザナミ様に向けて
「ここに立ち会うイザナミ様が、私の言ったことを認めれば、日本の国家としての意思決定の辻褄は合うの!」
……言い切った!
ざわざわしている。
私の言ったことの正当性を認めて貰えたんだろうか?
……認められていると信じて……
畳みかける。
「イザナミ様、今私が彼らにした提案、内容を認めていただけますか?」
問われたイザナミ様は……
しゅるるる、と元の幼女の姿に戻って。
腕を組みながら。
こう、言ったんだ。
「……こやつらの協力が無いと、草薙の剣が取り戻せぬというのであれば、致し方あるまい」
その顔は、渋面だった。
そりゃそうだよね。
自分の作品である日本の一部を、他者に割譲することを認めろと言われてるんだもの。
だけど……
私は品川での一件で、私たち2人で解決するのは無理だと判断したんだ。
それは、昨日夫と寝る前に散々話をした。
ここから先は他の組織の協力がどうしても必要だから……
東京を取り戻すのは諦めようと。
そしてイザナミ様は厳かな感じで言ったんだ。
「ガイア教徒共よ。ここにいる佐上真月に協力するなら、東京23区に関してはお前たちの領有を認めようぞ」
★★★(桜井直哉)
……一応、言ってることに正当性はあるな。
あの悪魔、間違いなくイザナミ。
俺自身悪魔使いだ。その程度の識別眼はある。
日本の権力の出所を考慮したなら、確かにイザナミが認めるなら国家の意思として扱っても問題あるまい。
だが……
「伊邪那美神よ。少し良いか?」
一応、確認しておこう。
「なんじゃ?」
反応して、俺を見た。
俺は続ける。
「伊邪那岐神が異を唱えたらどうする気だ?」
これはな。
確認しておかねば。
日本の創造神は伊邪那岐神も同じだ。
伊邪那美神だけじゃない。
すると……
「我の元夫も、これには同意するはず。どうしようもないのだから。それに……」
イザナミは、少し意地の悪い顔をした。
「アイツは我の言うことを否定するような立場にない。我に恥を掻かせてくれたからのう」
……なるほど。
だったら問題ないな。
あとは……
「佐上真月よ、聞いておきたいのだが」
俺たちの反応が気になるのか、周囲を見回している彼女にも声を掛けた。
すぐさまこちらを見てくる。
続けた。
「……何故、自分たちで草薙の剣を取り返すことを諦めた?」
そこが理解できなかったから。
★★★(真月)
何故、独力で剣を取り戻すことを諦めたのか?
この質問が来る。
これが意味するところ。
それは……
ガイア教徒は、草薙の剣の持つ神力を知らないということ。
振るう者の絶対の無傷を約束する武器。
そんなものを、最強のクルセイダーが持ち歩いている。
そのどうしようもなさ。
それを彼らは知らないんだ。
……正直、そんな情報を彼らに渡すのは危険かもしれない。
だけど……
「……草薙の剣を武器として振るう者は、どんな方法でもダメージを与えられない。そしてそんなものを、最強のクルセイダーが持ち歩いているからよ」
私は正直に言ったんだ。
この情報で、またざわっとなる。
……ガイア教徒は力の論理で組織を作ってる。
そんな彼らに、そんな超強力なアイテム、超魅力的だろうね。
……でも
「言っとくけど、草薙の剣を横取りしようとするのはオススメしないわ」
釘を刺さなきゃね。
「……それは東京の領有がならなくなるから、って意味かしら?」
私の言葉に食いついてきたのは橘千晶。
その顔は、笑みを含んでいた。
もしそうなら、即座に馬鹿認定してやろうという、そんな意地の悪さが隠れてる。
だから私は
「……そんなわけないでしょ? 違うわよ」
そう一蹴した。
その後に
「……ガイア教徒で一番偉いのは一番強い人間。つまり……」
彼らを強い視線で睨め付けながら
「間違いなく、剣を巡って殺し合いになるわ。……知ってる? 仲の良いスナネズミのオスの集団に、メスのスナネズミを一匹投げ込むと、メスを巡ってオスが殺し合いを始めるの。さっきまで仲良しだったのに、ね」
動物に例えられて不快かもしれないけど、実際そうだし。
強い者が正しい、法律なんて無くていい、なんて。
動物そのものじゃん。
それに彼らは頭は良いはずだから、この例えで一瞬で分かるでしょ。
組織崩壊が起きかねない劇物だって。ガイア教徒にとっての草薙の剣は。
すると案の定、彼らはしばらく黙り込み、時折頷いたりしながら。
やがて
「……分かった。その2つの要求を認めよう。代わりに成功したら東京の領有権はガイア教徒のものになる。それでいいな?」
また、別の男性が周囲のガイア教徒たちに向けてそう発言する。
体格が良くて、ビシッとしたスーツに身を包んだ典型的な強者男性。
顔つきも精悍な感じ。精力的な会社経営者っぽい面構え。
「ああ」
「それでいいわ」
「神取の意見に同意する」
口々に彼の発言が肯定された。
こうして……
東京は、近い将来日本ではなくなることが決定された。
この話を書くのはだいぶ悩みました。
かつて幕末に日本が海外勢力に領土割譲を迫られたとき、神話を理由に頑として撥ねつけた歴史があるので、この展開を安易にすると当時の日本の偉人を侮辱する内容になりそうだなと思ったので。
なので、理屈の上では文句の出ない方法でガイア教徒に東京を支配させる方法を考えた次第です。
どうでしょうか? 感想を聞かせていただけたら幸いです。