真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(圭介)
助かった、のか……?
絶体絶命だと思ったのに。
アイツが突如ボクと同じタイプの悪魔召喚に目覚め、ボクの攻撃が反射され。
頼みの綱の忍さんも、手も足も出ない状態にされた。
真月さんはボクの治療のために仲魔を召喚し、回復魔法を掛けてくれたけど。
そのせいで、旦那さんへのサポートが出来なくて。
気が付いたときには手遅れ。
……いや、手遅れとかそういう問題じゃ無いかな。
予測も出来ない強力な魔法……足立はウソブキって言ってたけど。
そんなものを出されたんだ。
そしてそれは、魔反鏡では防げなかった。
どうしようもない。
旧世界の常識でいけば、相手に戦いで勝つために、相手の使う武術、思考パターンを研究し尽くして喧嘩に挑んだら。
相手が窮地に陥ったとき、いきなり拳銃を抜いてきた。
そういう話だ。
相手が拳銃を直前にこっそりヤクザから購入したなんて知らない!
そんな近い情報を予測できるか!
それで負けても「相手を侮っていた」なんて言われる筋合いはないよね。
だけど、それでも負けは負けなんだけど。
そして、今の世の中、戦いで負けることは死を意味する。
1回のウソブキで、忍さんは膝を突くほどのダメージを受けてしまった。
そして足立は2回目のウソブキをさらに撃つという。
足立が言うには、普通は2回喰らうと死ぬらしい。
強くても3回喰らうと死ぬそうな。
絶対絶命だ。
どうするんだ?
考えろ……!
ボクは必死で頭を回した。
でも、答えが出ない……
ボクのヤマの放つ火炎魔法は反射されることが分かってる。
だったら残りは呪殺魔法だけど、呪殺魔法は命中してもすぐには効果は出ない。
それではウソブキを防ぐことは難しい……。
……殴りかかるか?
それを一瞬思ったけど。
疑問が1個、あった。
……何で空手家の忍さんは、積極的に空手を使って足立を失神に追い込まなかったの?
変なんだよ。それ、確実に。
忍さんも真月さんも、相手を侮ったりしない人だ。
足立を攻略する際、確実に不意打ちが決まるように作戦を練りに練って挑んだんだから。
……ということは、何か理由があるんだ。
空手を使えない理由が……!
そこに思い至ったときだった。
ダッ、と真月さんが飛び出した。
旦那さんの方に向かって。
え、と思った。
飛び出してどうするの?
と。
真月さんが出ていくなんて。
何か手を思いついたんだろうか?
そんな期待があったんだけど。
……違っていた。
やったことは、旦那さんの前に出て、両手を広げて立ち塞がること。
つまり、旦那さんを庇う。
それだけ。
……ダメだよそれ。
そんなこと、ボクにだって分かる。
何の解決にもなってない。
そんなの、忍さんの死を数秒先延ばしにするだけだ。
足立は絶対に女性を殺すことを躊躇するやつじゃないから。
それだったら、殴りかかる方がマシかもしれない。
それも意味がない可能性が高いけど。
でも……
真月さんの表情を見たら、その気持ちが分かった。
真っ青だったんだ。顔色が。
……あ、真月さん、死を覚悟してる。
自分が生き残る目を全く考えてない。
これは……一か八かの人間の盾じゃない。
確実に数秒持つ人間の盾として、彼女は夫の前に立ったんだ。
ボクはその行為に、この夫婦の絆の深さを感じてしまった。
……するとだ
信じられないことが起きた。
……なんと、足立が泣き出し、攻撃を止めたんだ。
ボクらは、唖然とした。
何こいつ泣いてんの? と。
ボクはそれがどうしても分からなかった。
この極悪人がなんで? と。
だから……ボクはヤマの能力を使った。
地獄の裁判官に相応しい能力……
相手の罪を見通すという能力を……
能力を発動した途端、足立の人生で犯してきた数々の罪が流れ込んでくる。
人間、生きているだけで罪を犯す。
だが、当然罪には大小があり、くだらない罪はノイズとして除外され……
大きな罪が拾い上げられる。
罪状に、殺人が多かった。
当然だろう。
こいつはガイア教の幹部なんだ。
殺人をやっていないはずがない。
その殺人がどういう経緯で行われ、その結果この男がどうなったか。
そこまでの情報がボクの中に流れ込む。
……どれも、気になるものは無かった。
だけど……
1件だけ、殺人じゃない罪状があった。
少女相手の強姦。
その結果、少女は自殺した。
そしてこの罪を犯した後、この男は不能になっている。
ボクはこの事実を知ったとき。
こいつの心の動きが分かってしまった。
……こいつ、自分の夫が殺されるくらいなら、先に自分が盾になる。
そんな選択を全くなんの躊躇いも無く選択した真月さんを見て……
自分の経験と比較し、酷く惨めになったんだ。
自分も女に死を選ばせたけど。
意味合いが全く違う。
自分は嫌悪。拒絶。
忍さんは、愛であり、献身。
そこを思い知らされて、攻撃できなくなったんだ。
ここで攻撃してしまうと、それは嫉妬で攻撃したことになる。
……それはあまりにも惨めすぎる。
自尊心なんて、もう保てない……
だからか……
最後の……矜持なんだ。
そうしてボクが足立の行動に納得し、彼が部屋から出ていく姿を見送って
バタン、と扉が閉じられたとき
真月さんが崩れ落ちるように、へたり込んだ。
……真っ青なままだ。
本気で死ぬと思ってたんだな……
「真月」
忍さんがそんな自分の奥さんを。
変身を解いて、後ろから抱きしめていた。
★★★(真月)
「じゃ、後はよろしく。ボクの召使たちは出来れば飼い続けて欲しい。解雇しちゃうと、その子たち生きていけないからね」
笑顔で足立はそう言って、自分の家だった一戸建てを出て行った。
服装は私たちを応対したときのような油断したものでは無く、紺色のスーツと白シャツ、そしてネクタイ。
大人の男性としては恥ずかしくない格好だった。
そんな格好で、リュックみたいな鞄を1個だけ背負って歩いていく。
そこに当面の生活物資でも入れているのだろうか。
……何で勝てる戦いを捨てたんだろう?
そこが本当に分からなかった。
とはいえ、本人に確認するわけもいかないし。
分かんない……
彼の背中を見送りながら、思考を巡らせる。
「……どうした?」
そんな私に、忍が、私の夫が声を掛けてくる。
……ウソブキの影響はもうだいぶなくなってるけど、まだちょっと調子悪そう。
私は彼を見上げて
「……何で勝てたんだろうね?」
そう言ったけど、彼の方も顔を顰めて
「……分からん」
そう言って
「……もうああいうことはやらないでくれ。頼むから」
そう、弱り切ったような声で言われてしまう。
ああいうこと?
そんなことを言われたら……
私は彼の顔を見て、にっこりと笑い
こう、言ってあげた。
「絶対嫌」
上野編は今回で終わりです。
次回から別の話。