真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(真月)
この人に席を代われと言われて。
素直にそうすべきだと思ったのは。
この人が、ガイア教徒たちを納得させられる答えを持ってる。
そう感じたからだった。
そして、私は彼と交代し。
彼に任せてみたら
彼が出した案は「日本人を奴隷狩りで襲う分を、メシア教徒で間に合わせろ」
……私が何が悪かったのかを一瞬で理解できた。
ようは私……自分を正義だと信じて、ガイア教徒に変わるように要求してたんだ。
奴隷を殺すなんて酷い、殺すのは長期的に見たら損だ、なんて。
倫理やら可能性やらを持ち出して、説得しようとした。
それが間違いだったんだ。
だってこの人たち、基本的に違うんだから。
前の世界の倫理観だとか、法律とか。
そういうのが一切合切嫌になり、日本を捨てた人たちなんだから。
意味が無いんだ。
だから、こっちの要求を通すには……
相手には一切変わることを要求せずに、自分たちの要求を通すには?
これを考えないといけなかったんだ。
……それをこの人はやってのけた。
とても非情な提案を。
この人さ、気に入らない人間を残酷に殺して、それを喜ぶような人じゃ無い。
もしそうなら、私はこの人と結婚なんてしてないよ。
だから、この人はこれしかガイア教徒を納得させられる答えは無いって思ったんだよ。
だからやむなく提案したんだ。
……そしてそれは、正しかった。
そして私だったら散々揉めていたのに。
この人はあっという間に話を纏めてしまったんだ。
それが私は申し訳なくて、ありがたくて、どうなんだろう……尊敬もしたかもしれない。
話が纏まったので、彼は席を立った。
また交代、ってことなんだね。
代わり際に私が「ありがとう」って言うと、彼は「こういう汚れ役は俺がする」って短くボソりと私に言い。
私の心臓は高鳴った。
「大体、事後の話は詰めたな。それでは第二の議題に移るとするか」
神取氏はそう、話を切り替える。
次の議題……それは
草薙の剣を如何に取り戻すか?
これだ。
このことに対して
「品川を攻め落とす手は、どの程度のコストが掛かりますか?」
……私は正攻法を提案する。
それでいくと、どの程度のコストがあるんだろうか?
「……大量のクルセイダーに、テンプルナイトと天使その他。重火器系の武装もある。……分かってると思うが、あまり良い手では無いな」
と、神取氏。
まぁ、その答えが出てくるのは分かっていたけど。
ならばどうするんだ?
ここから発展させるのか、違う方式で行くのか。
すると
「品川のメシア教徒の一般信徒を大量誘拐して、草薙の剣を出さないと一人ずつ惨たらしく殺していくとか言って脅すのはどうかしら?」
橘千晶がそんな血も涙もない提案。
すると桜井氏が
「あいつらはいざとなれば信徒を見捨てる。どうしようもないクズ。だから無意味だ」
言い切った。
まあ、それは品川に関しては「ありそう」と思ってしまったんだけど。
橘千晶は不満だったようで
「桜井さんさぁ、私の意見をそう簡単に切って捨てるからには何か他のアイディアあるの?」
そう、円卓に突っ伏して膨れ気味の声で意見した。
すると
「……あるな」
桜井氏の言葉に、皆の身体が反応する。
一斉に彼を見た。
「ええマジ……どんなですか?」
ヒメネスさんはとても興味津々のようだ。
身を乗り出している。
桜井氏は知恵者のようだし、それは気になるよね。
私もそうだし。
そんな皆の視線を受けながら
彼は言ったんだ。
「魔王ラーヴァナを召喚する」
それが彼のアイディアだった。
魔王ラーヴァナ。
古代インドの英雄譚「ラーマーヤナ」に出てくる魔王。敵役だ。
千年に及ぶ苦行の末、最高神ブラフマーからその苦行を認められ、不死の身体を得た魔王がいた。
彼はその不死性を実現するために、唯一自分を殺せる存在を定める際、人間を指定。
それは自分が敗北する可能性があるのは神仏のみであり、人間に敗北などあり得ないと侮ったため。
そして誰も自分に勝てない状況を実現し、増長した彼は、世界中を荒らし回り、悪逆の限りを尽くす。
だが、彼の悪行に苦しめられた人々の祈りを受けたヴィシュヌ神が、人間の王子として転生。
こうして唯一ラーヴァナを倒せる存在に転生したヴィシュヌ神が、仲間と共に魔王を倒す。
ラーマーヤナはそういう物語だ。
「……ラーヴァナって召喚できるんですか?」
桜井氏に私は訊いてしまった。
できるのであれば確かに強力。
人間にしか倒されないというのであれば、悪魔には無双できるってことだから。
戦力としてはものすごく頼もしい。
「……できる。場所と方法が限定されるがな」
桜井氏は言い切る。
自信たっぷりだから、本当なんだろう。
おお……!
それに、その状況はひとつの作戦が立てられるよね。
「だったら、仮面ライダーサタンを誘い出すことができますね」
思わず言ってしまった。
すると桜井氏は腕を組んで眉を片方上げて
「おお、そこに気づくとは。感心したぞ」
なんか褒められてしまう。
そしてそのまま
「お前の知っての通り、魔王ラーヴァナは人間にしか倒されない。つまり天使の大群を嗾けて物量で倒すという手が取れん」
尊大な笑みを浮かべながら続ける。
「そして並の人間ではラーヴァナを倒すのは不可能。死体が増えるだけだ」
……つまり
「だからラーヴァナを倒すためには、ラーマーヤナのように勇者を用意せねばならん。そしてヤツらでその条件を一番満たすのは……変身していない仮面ライダーサタンだな」
仮面ライダーサタンは変身しないなら人間だ。そして草薙の剣を持った状態であれば、決してダメージを受けない。
この状態であれば、逆に一方的に魔王ラーヴァナを殺すことができる。
だから、魔王ラーヴァナを召喚すれば、仮面ライダーサタンを誘き出すことができる。
……完璧じゃん!
希望が見えた、そう思った。
だが……
「……とはいえ、話はそう単純でも無くてな」
桜井氏が、真顔に戻って。
そんな風に、問題点を語りだした。
本作では天魔ではなく魔王です。
ラーヴァナは。
作者的にはこの手段は原作ゲームへのリスペクトが示せてちょうどいいと思ったんですがどうでしょうか?