真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(テュポーン)
こいつ、出来る!
羽ばたき、この私の間合いに飛び込んで来た緑色の悪魔。
「燃えろ!」
右手から火炎放射をし、私の視界を焼きながら突っ込んでくる。
そして間合いを詰め、突きと蹴りの連撃を打ち込んでくる。
しかし、地上では無いので、突きの威力が半減している。
足の踏ん張りの力や、腰の回転の力が入らないせいか。
だが、それでもコンビネーションに素人では無いものを感じた。
それも、おそらくは空手だ。ということは……
空手を使う悪魔など、あまり聞いたことが無い。
それに、悪魔であるなら、空中での格闘術に対応できていないのも変だ。
ということは……
こいつ、悪魔では無い!
最初……こいつはあの悪魔使いの仲魔だと思っていた。
だが、違うようだ。
おそらく、こいつの正体は人間。
人間でありながら、どのようにしてこんな力を手に入れたのか……
「……異教徒ながらなかなかの腕だ」
連撃を空中でやり過ごし、私は彼を賞賛する。
興味がある。
どこでこんな力を手に入れたのか。
「言え。お前、どこでその力を手に入れた?」
異教徒。沈黙。
だが、しばらくして、こう答えた。
「俺の嫁が……助けてくれたんだ」
……嫁?
嫁だと?
「嫁が?」
すると
「……お前たちに襲われて、俺は銃でハチの巣にされた。だけど、俺の嫁が機転を利かせて、俺と魔王を合体させてくれたんだ。だから、俺は今ここにいる……」
なんと……
それは奇跡か……
悪魔と人間の悪魔合体はまず成功しない。
そのはずだった。
それを潜り抜けたというのか、この男は。
ということは……
「これは運命だ」
私は言った。
「悪魔の精神力に打ち勝ち、悪魔の力を手にすることが出来た人間。君は選ばれたのだ。我らと一緒にテンプルナイトとしてこの世に真の救いを齎そう!」
このような強き心の持ち主が、正義でないはずがない。
必ずや我らの誘いを受けて……
だが。
「断る!」
……なんと?
何故、断るのだ?
「……わけがわからん」
思わず洩らす。
すると。
異教徒の男は、押し殺したような声でこう言った。
「……わかんねぇなら教えてやるよ」
感情を抑えるように。ゆっくりと。
「俺の嫁の名は佐上真月……俺は彼女の夫の佐上忍だ!」
異教徒の男はそう言って吼えた。
★★★(忍)
こいつら……異教徒にまともな感情があると考えていないのか。
そう、思わざるを得ないな。
それは続く言葉で確信した。
「……あのような穢れた女など、君に相応しくはないと思うぞ? 君のように強靭な選ばれた男は、もっと素晴らしい女性が……」
……
俺は、高校時代を思い出した。
言うまでもないが、俺の嫁は美人だ。ずっと綺麗だった。
なので。
一度だけ、俺が彼女の恋人なのを知ってて、彼女を口説こうとした奴が出てきた。
ハンサムで、学校の成績も良くて、スポーツもかなり出来る男だったよ。
まあ、モテ男だ。そいつが「こいつからなら、真月を奪える」と思ったんだろう。
そんで、こんなことを言った。正確じゃないかもしれないけど、だいたいこんなようなことを。
「あんな腕力だけで、他はパッとしない男なんて将来性ないぜ? 話だってつまんないんじゃないの? 俺にしとけよ。絶対に君を幸せに出来るから……」
……そんなようなことを真月に言った。
詳しくは覚えてない。そのときの俺は、嫉妬心と独占欲、そして屈辱のようなものを感じて、平常ではいなかったから。
だけど。
俺はそのときは何もしなくて済んだんだ。暴力事件を起こす羽目には至らなかった。
「……ざっけんなよ、テメエ」
男の表情が引き攣ったのを覚えている。
あのとき、真月は俺以上に激怒をしてくれたんだ。
だから俺は落ち着けた。
落ち着けたんだ。
……今、分かったよ。
あのときの君は、こういう気持ちだったんだな?
これは確かに……
俺は羽ばたき、間合いを詰める。
そして……
「ぐぼおおッ!?」
俺はワニ頭のクルセイダーに正拳で鳩尾、肘打ちを側頭部、そして膝で顔面、最後に浴びせ蹴りを加えて地上に叩き落した。
これは確かに……
……自分のことより、許せない!
「……なんか嚙み合ったな。飛行空手、完成かも」
★★★(テュポーン)
そんな馬鹿な……!?
何故、急に空中での対応ができるようになってるんだ?
私は地上で血反吐を吐いた。
マズい。かなりのダメージだ……
気配を感じた。
見上げる。
あの悪魔人間が、正面から突っ込んでくる!
防がなければ!
私は両手を突き出し、叫ぶ!
「波動よ広がれ!」
その瞬間、私の両手から波動が発生し、放射状に広がっていく。
あの悪魔人間も停止せざるを……
次の瞬間……
吹き飛ばされたのは、私だった!
「ぶふぁ!?」
吹っ飛ばされながら、あの悪魔人間が視界に捉えられる。
奴は、両手をくるりと回転させ。
正面から来るものを受け止めるような構えをとっていた。
あれ、確か廻し受け……
廻し受けって……魔法も反射できるんだっけ?
★★★(忍)
……今の俺なら、何でもできる気がする。
アイツの魔法が来ると読めたので、真月考案の防御技「魔反鏡」を実行したら、間に合ってしまった。
『絶好調だな。実に愉快』
アモンも上機嫌らしい。
俺は最悪に気分が悪いけどな。
俺は地上に降り立つ。
……こんなもんじゃ済まされない。
『決めろ』
ああ。
俺は……腰を落とした。
★★★(テュポーン)
体術でも圧倒され、魔法も反射された……
勧誘は絶望的。
もう、こうなっては、私に勝ち目は……
絶望しそうになるが、閃くものがあった。
石化の息……ストーンブレス!
これならどうだ?
この魔法は反射できんぞ?
一種の即効性の呪いだからな。
このタイプの呪いを反射する術はこの世に無い。
ただ、息を溜める間と、放射するまでの間、私は動けない。
だからカウンターになる。
……あの、腰の落とし方……。
あれは踏み込んでくる構えだ。
待ち構えていれば、いずれ突っ込んで……
ようし……見ていろ異教徒の男。
息を浴びせてやる。
そして後悔しろ……!
私は念を込めて、息を大きく吸い込み……
吸い込んだ瞬間。
背中に大きな衝撃を受け、私は吸い込んだ息を全て吐き出してしまった!
思わず後ろを振り返る。
そこには……
物憂げな表情の、白いローブを身に纏った美女。
その美女が、拳を私の背中に叩き込んでいた。
ねじ込むように。
ただ一撃を、思い切りぶん殴るように。
そして。
その後ろに、女がいたのだ。
あの……生贄の巫女。
涜神の罪を犯した大罪人の異教徒!
……佐上真月が!
奴は水着姿のまま、手に鞭をもった状態で立っていた。
……馬鹿な!
この女は、あいつの仲魔か!?
どうやって呼んだ?
アームターミナルも無いのに!?
★★★(真月)
必死で金縛りを解くために足掻いた。
金縛りは、どこか身体が一か所動くようになれば解けると聞いたことがある。
だから、必死で足掻いたよ。
そしたら。
右足首が動いた。
それを自覚したとき。
一気に金縛りが解け、私は動けるようになった。
……こうしちゃいられない。
忍たちは戦っている。
聞こえてたんだから、全部。
……忍が私のために怒ってくれたことも。
車から降りると同時。
私は鞭型COMPを取り出し、振るった。
振るい方と音声入力で召喚する仲魔を選択する。
……持ち運びはゴテゴテしてなくていいけど、これはちょっと面倒では?
少し思ったけど、まあいいや。
これがあるから、今助かってるんだし。
今だけはありがとう。菅野さん。
「女神召喚」
私は虎の子、私の切り札……女神ヘラを召喚した。
物憂げな顔のまま、立ち尽くす女神に、私は命じた。
忍に打ちのめされて、片膝をついた姿勢でへたり込んでいるあのクルセイダーを指差す。
「ヘラ! そのオリンポスから授かった筋肉で、あいつの背中をただ思い切りぶん殴れ!」
忍は必殺の技を決めようとしている。だけど、あいつはそのときになにかしてくるかもしれない。
……だったら……
何も、させないよ!
クルセイダーめがけてカッとんでいくヘラの背中を見守りながら、私はそう思った。
★★★(忍)
真月……ナイスアシスト!
女神ヘラの一撃で、あいつの注意が俺から逸れた。
今だ!
鎧通しをする決意をする。
して、飛び出す。
滑るように、一直線に。
拳に魔法を込める。
究極の火炎魔法「トリスアギオン」
「……え?」
そして直前に、ワニ頭のクルセイダーはこちらに気づく。
だがもう、遅い。
気合の声と共に、必殺の鎧通しの一撃に乗せて、繰り出した。
「トリスインパクト!」
その一撃はクルセイダーの鳩尾に決まり
その衝撃で、クルセイダーの身体は宙に浮き、そのまま転がるように吹き飛んだ。
……決まった。
「あああああああ!!」
はじまる。
この魔法の真価。
トリスインパクトを喰らったクルセイダーが、立ち上がろうとした瞬間。
拳が当たった個所を中心に、放射状のヒビが入っていく。
そしてそのヒビから、地獄の炎が噴き出してくる。
「そんな……何故この私が……私はギリシャ神話の大邪龍テュポーンで調整を掛けられたクルセイダーなのに……!」
その声は、もはや先ほどの傲慢さは無くなっていた。
「貴様ら……この私を相手にこんな真似を……! 許されると思うのか……呪われよ……!」
あるのは、ただ虚勢と困惑、そして……
「神よ私を救い給えええええええ!」
絶望。
その叫びと同時に
クルセイダーは、大爆発を起こした。
このヒロインは、守られるだけじゃないのです。