真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(忍)
クルセイダーロード……?
クルセイダーどもの親玉ってわけか?
そんな……こんな女の子が?
「……あなたがクルセイダーのリーダーなの?」
真月が、まずそこまでの言葉を絞り出す。
油断なく、そっとアームターミナルに手を伸ばす。
「いかにも」
クルセイダーロードは言いつつ、バイクを降りた。
そして腕を組み、仁王立ちになる。
右手を、左腰に吊るしている剣の束に置きながら。
「……悪いがアンタらには容赦しない。人を殺すのは嫌だが、あんたらはそうしないと駄目な気がする」
言いつつ、俺は構えた。
右半身の構えで。
そして構えながら
……今までのクルセイダーは全員怪人状態だった。
だから悪魔を倒す感覚で倒すことができた。
だけど……
この子は、最初は人間の姿で現れた。
だから、人と認識してしまっている。
大丈夫だろうか……?
そんな心配をしてしまう。
それが、この子と戦う上で、大きな障害になりはしないか? と。
すると
「……神の王国を邪魔する悪魔の使いが、我らクルセイダーを悪だとでもほざくつもりか……なんと愚かな汚物どもよ」
激しい嫌悪感が入り混じった声。
こちらを見る視線も冷たくなった。
冷えに冷えた、救いようのない汚物を見る目に。
「……何が悪魔よ。悪魔はアンタたちでしょうが」
すると。
真月が口を開いた。
……声に怒りが籠っている。
「誰彼構わず布教して、入信した人から全財産奪い取って! しかも入信しない人に集団で嫌がらせをして改宗を迫ったり! 大学でも入学したときに注意喚起来てたわよ!」
……そういやあったな。
メシア教の学生を標的にした勧誘が後を絶たない。気を付けるように、って。
大学の担当職員がオリエンテーションで言ってた記憶がある。
だけど。
クルセイダーロードを名乗る少女は、それに全く動じなかった。
「……何を言っている? 馬鹿なのか? それのどこに問題がある」
そう、馬鹿にした口調で吐き捨てるように言い、後をこう続けた。
「……入信時に全財産を寄付しても、後の生活は教団が面倒を見るのだ。何も問題は無い」
全く後ろめたさなど感じていない顔でさらにこう言った。
「入信しない者が悪いのだ。こちらは一番の宗教を勧めてやっているというのに、改心しない愚かさをまず恥じろ」
……全く悪びれてない。というより
お前、頭がおかしいだろ? 冷静に考えてみろよ?
そう、説教をされている気分になってしまうような、そんな落ち着きぶりだった。
だが、真月にはまるで関係が無く
「……一番の宗教ですって?」
真月の声は震えていた。
……彼女、こういうの嫌うんだよな。
他人の価値観を侮辱するような行為。
神話や伝説が好きで、その過程で色々な宗教の在り方を学んだから、そういうのに敏感なのかもしれない。
「宗教は人の心の支えであって、そこに一番も二番も無いわ!」
「メシア教が一番だ」
……二人は全くの平行線。
目つきが険しくなる真月。
呆れ顔のクルセイダーロード。
クルセイダーロードが続ける。
「一番も二番もないとか。そういう考え方がそもそも間違いなのだ。メシア教が一番。それで良い」
ふぅ、やれやれ。
そんな声が聞こえてきそうな言い方。
それに真月が激高する。
「他の宗教を馬鹿にしてるんじゃないわ! なんて傲慢なやつら―」
「馬鹿にしてるとは心外だ。認めてないだけだ。お前たちが犯罪行為と呼ぶものを認めていないように」
真月の声に被せるように、クルセイダーロードは言った。
「犯罪行為を認めないのが傲慢な態度なのか? それはそれは、多様性の精神とやらに満ちた、視野の広い考え方だな?」
嫌味を交えた口調。
さらにクルセイダーロードは続ける。
愚か者を諭す口調で。
「他の宗教を信仰することは犯罪なのだよ。神の法においてはな。多様性という言葉は、悪魔の言葉なのだよ」
そこには何の迷いも無かった。
さらに続ける。
「……多様性。そのせいで旧世界がどれほど腐っていったのか、お前たちは気づかなかったのか? 愚かしい」
……少し。思い当たることはあった。
多様性という言葉は優しい言葉だ。
世の中には、色々な人が居る。
その違いを認め合い、許し合う。
それが多様性。
それは人種や肌の色だけじゃない。
高尚な趣味なんて持たなくてもいい。
収入が多くなくてもいい。
結婚に向いて無くてもいい。
異性を好きになれなくてもいい。
そういうことを認めること。在ることを許すこと。
そういうことなんだけど。
それを盾に、自分の頭の中で思い描いた妄想を実現するために、暴れまわっていた奴ら。
確かにそういう奴らが居た。
多様性。そのせいで旧世界がどれほど腐っていったのか。
……一瞬、俺は詰まってしまった。
だけど。
真月は……俺の嫁さんは黙らなかった。
「それとメシア教が一番であることとは全く何の関係も無いわね」
全く淀みなく、堂々と。
……こういうとき。
俺は、嫁さんとの頭の差を感じてしまうんだ。
誇らしかったり、情けなかったり……
それを受け、クルセイダーロードは沈黙する。
そして……
「……とある少女の話をしようか」
口を開いて、語りだした。
こんな話を。
とある一組の夫婦がいた。
男は所謂高所得者で、女に惚れぬいて、必死で稼げる男になった。
女はそんな男の能力を認め、晴れて二人は結婚。
そしてその二人の間にひとりの女の子が産まれた。
娘が産まれたので、男はさらに一生懸命働いた。
女は稼げる夫を持ち、幸せだったはずだった。
だが。
女が裏切ることにより、この家庭は崩壊する。
自分の言いなりで働き続ける男がつまらなくて、他に男を作ってしまったのだ。
つまり、不倫をしたんだ。
そして夫婦は離婚することになった。
しかし……女は困らなかった。
……娘の養育費を毎月貰えることになっていたからだ。
女はこう言った。
この子の養育費を節約して貯金すれば、私の老後は安泰よ。もう、結婚なんてこりごりね。
聞いて、思った……酷い話だと思う。
これは……
クルセイダーロードは語り終えた後、少し、震えていた。
これは……
「少なくとも」
そして再び語りだす。
「メシア教で同じ罪を犯せば、この罪人の女は間違いなく斬首だ。凌遅刑すらありえるな」
その視線には……何の迷いもない。
そして断言する。
「この一点だけでメシア教は間違ってないと断言する! 私は否定を許さない!」
これは……
俺は思った。
……今の少女の話は、おそらく、この子自身の話だ。
この子は、実の母親が犯したあまりにも醜い罪に絶望し、母の罪を断罪する宗教……メシア教に入信したんだろう。
ある意味、この子も被害者かもしれない……だけど
一瞬、本当にこの子が間違っているのか? と、思ってしまった……
伝説の92の知能高い版ですな。
〇すしかない。