真・女神転生外伝 仮面ライダーアモン 作:XX(旧山川海のすけ)
★★★(忍)
菜々子ちゃんが、俺たちの前に立っている。
下がらせておいたのに。
「危ない、菜々子ちゃん。下がって」
真月もそう、彼女に言う。
俺たちはふたりとも切羽詰まっていた。
こんな小さな子を、俺たちの都合に巻き込むわけにはいかない。
その一点で。
すると。
「……お姉ちゃん。昨日、魔王マーラの魔力に耐えたあなたの想いの強さには感動したよ」
菜々子ちゃんが、真月にそう言ったんだ。
え……?
「そしてお兄ちゃん」
そこで菜々子ちゃんは俺を振り返った。
振り返って、言ったんだ。
「神器の真の力を理解していながらも、妻を守るために前に出るその姿」
ニコリ、と微笑みながら。
「……とても尊いと思う」
えっと……
俺は、いや……俺たちは、こう思った。
この子、何者だ?
本当に年齢一桁の小さな子なのか?
それぐらい、仕草が大人びて見えたんだ。
まるで、母親のように。
「……そこの子供。どかないと一緒に殺すぞ。異教徒め」
クルセイダーロードが、突如立ち塞がって来た菜々子ちゃんにそう言い放つ。
彼女は冗談では言ってない。本当にやるだろう。
彼女の中では異教徒は人間では無いのだから。
だけど……
「法の神の尖兵に成り下がりおって。……もはや、お前は、お前たちは我が国土に住まう住人ではない」
菜々子ちゃんは一歩も引かない……というより。
本当に、何者だ?
そしてそう言い放ち。
菜々子ちゃんは、真月の肩に手をポンと置いたんだ。
「少し、いただくぞ……」
目を閉じて……
「お前の、マグネタイト……!」
カッ、と見開いた。
その瞬間だった。
菜々子ちゃんの身体が膨張する。
膨れ上がる。
膨れ上がって、全然別のものに変わっていく。
え……?
数瞬で、変身が完了していた。
菜々子ちゃんだったものは……
身長は10メートル近く。
全体的なフォルムは巨大な骸骨。
複数対の腕が生えた赤黒い骸骨だ。
その骸骨は二重構造になっていて。
本来、頭蓋骨がある位置に、女の上半身が生えていた。
……ミイラのような、干乾びた長い黒髪の女の上半身が。
菜々子ちゃんだったものは、そんなものに変わっていた。
「……」
流石の真月も絶句していた。
呆然とした表情だった。
……いきなりこんな悪魔が出現するなんて。
菜々子ちゃんは人間では無かったのだ。
……何なんだ……? これ……?
疑問、驚愕、動揺、混乱。
全く動けなかった。
その場の誰もが。
「……我が名はイザナミ。冥府の神。この国の人間の死を司る創造神の一柱……」
イザナミ……?
イザナミだって……?
「……悪魔め! 討伐してくれる……!」
クルセイダーロードは羽ばたきと跳躍で舞い上がろうとする。
だが
「……させぬわ!」
イザナミの、何本もある巨大な腕が振るわれた。
その瞬間だった。
……地面から、何十本もの細長い腕が生えてきて、クルセイダーロードを絡めとったのだ。
「!」
絡めとられ、藻掻くクルセイダーロード。
彼女は草薙の剣を握っている。
どれだけ絡めとられようと、それでダメージを負うことは構造上、無い。
無いハズ……。
そして。
突如、拘束が解かれる。
自由になったクルセイダーロードは、困惑するが、気を取り直したのか。
「今度こそ死ぬがいい!」
俺に向かって、草薙の剣を振り上げながら突っ込んで……
こようとした瞬間。
突如、止まった。
空中で、停止したんだ。
そのまま、ゆっくりと舞い降りてきた。
……これは、一体……?
俺も、きっと真月も理解が出来ないこの状況。
その答えは……
「……どうじゃ? 苦しかろう? お前の運気を全て吸い尽くしてやったからのう」
……え?
「……剣を持っていても、運気の流出は止められぬ。運の悪化を「傷つけられた」などとは言わんからな」
イザナミの言葉を、俺は考えた。
つまり、だ。
今、クルセイダーロードは運の良さがゼロの状態になっているってことなのか?
でも、そうなると確か……
アモンは前に言っていた。
呪殺魔法を喰らい続けて運がゼロになってしまうと、何かが起きて人は死んでしまうんだ、って。
ということは……
「剣を持つ限り、負傷を防ぐ効果がある。だから事故が起きたとしても死にはせん。……しかし。運気の悪化による体調の悪化は止められんなぁ」
イザナミの声は愉しそうだった。
クルセイダーロードは、その言葉に苦しそうに反逆を試みる。
「……お、おのれ……旧世界の邪神め……」
だが
「恐れ多いわ人間が。……その状態で戦えるというなら、そのまま戦うがいい。ただし、剣を手放した瞬間、命を落とすと心得よ」
イザナミの声は、冷たく、突き放す感じだった。
それに対し、クルセイダーロードは
「くっ……覚えていろ。このままでは絶対に済まさぬ。絶対にだ!」
そう、吐き捨て、大きく羽ばたいた。
……体調が最悪である。
そんなイザナミの指摘が、噓のような。
そんな、跳躍と飛翔。
そのまま、高速で飛び去って行く。
……乗って来たバイクを置いて。
よほど、苦しいのか。
……これを追いかけること。
それをやるべきなのかもしれないが、最悪の体調であそこまで動けるのだ。
……返り討ちに遭う可能性がすごく高い。
悔しいが、ここは俺たちも命を拾ったと考えるのが、正しい道の選び方かもしれない。
本物の菜々子ちゃんはどこに行ったんでしょうねぇ?