ライスシャワーお姉ちゃん【完結+おまけ不定期】 作:稗田之蛙
神様。正直なこと言っていいか。「むちっ♡むちっ♡」とか下品なシチュエーション挟むよりプラトニックな親戚関係が私達の性に合ってると思う。『作風』っつーの? よくわかんねーけどそーいうの。
……いや、私がライスの姉さんを意識しすぎなのかもしれないが。どっちにしろボディタッチなんてのは、まぁ、ウチらの年齢になったらあんまりやるべき事じゃないんだろうと思うんだがね。
「どうしたのディオスちゃん。なにか悩み事?」
練習の終わり際にいつものように懺悔をしていると、そんな事を聞かれた。
「ウララか」
ぶっきら棒にそう答える。同学年同クラスだからこその間柄だ。
「悩み事があるなら相談に乗るよっ!」
ウララの能天気な問いかけに、私は思わず笑みを浮かべた。相変わらずこの子は愛嬌がある。だから気軽に色々な事を話せた。
「……ライスの姉さんとの距離感に悩んでる」
「距離感?」
オウム返しに問うウララに対し、私は頷く。
私は、どちらかといえば『言葉の掛け合い』だとかで親愛を表現する方が好みである。ライスシャワーの姉さんも普段の性格から考えればそのはずである。たぶん。
しかし、近頃では密接すぎるスキンシップが多すぎる気がするのだ。一緒にお風呂に入るだとか。ベッドの上で押し倒されるだとか。腹を揉み回すだとか。
そんな事をウララに打ち明けてみる。甲と乙の名誉の為にもこういう悩みはこの子以外に打ち明けられる気がしない。
「お人形抱きしめるみたいにしながら『ライスお姉ちゃんですよ~♪』だとかさ。そういう可愛がられるガラ(体格)じゃないだろう。私は」
彼女は私の話をうんうんと頷きながら聞いてくれた。そして、一通り聞き終わるなり、きょとんとした顔で言いのける。
「でも、ウララもキングちゃんとそういう事するよ?」
……一瞬思考が止まるが、合点がいく。こいつらは同室だからウララが寝ぼけてキングのベッドに入り込んだり、共同風呂を使う時に一緒の時間帯に入るだとかシチュエーションは容易く想像出来る。
「そりゃあ……二人は仲が良いから」
「そう? でもライスちゃんとディオスちゃんも仲良いよね?」
まぁ、それはその通りだと思う。チームメイトとして年単位で付き合いがあるし、不仲な方ではない。
「でも、誰かと一緒に風呂に入る事には抵抗がある。そういう年頃だ」
お互い少しの沈黙。たまらず、私は付け加えてしまう。
「ウララが同い年なのは知ってるけどさ」
たまに忘れてしまいそうになるが、ウララと私は同学年だ。
「そっかー……あれ、でもディオスちゃんって誕生日何月何日だっけ?」
ウララがそんな事を不意に問いかけてきた。私は、素直に答える。
「5月12日」
そう答えると、ウララはパッと花が開くような笑顔になる。彼女は満面の笑みを浮かべながら嬉しそうにこう言った。
「ウララは2月! こういうの『早生まれ』っていうんだよね? じゃあ、ウララの方がお姉ちゃんだ!」
うん。うん?
「よしよ~し、ウララお姉ちゃんですよ~♪」
そう言いながら、彼女は私に手を回してぎゅっと抱きしめてきた。位置と姿勢の関係で、ちょうど首と肩が抱きしめられ、頬同士がくっつき合う。
……いや、同学年の『早生まれ』だとむしろウララが妹な気が……。
そんな事を思いつつも、ふわりと甘い匂いがした。キングが品定めしたであろう、香りの強くない制汗剤辺りだと思う。ウララに似合う、桜を思わせる甘い香りだった。
「ディオスちゃんは良い子だねー。いつもがんばってて、ウララえらいって思うよ!」
彼女の柔らかい髪が頬に触れてくすぐったいし、ウララ自身の体温が『暖かい』せいかこそばゆい。けれど、それは不思議と嫌な感じはしなかった。むしろ心地良いとすら思ってしまっていて。
……ウララにこうしてお姉ちゃんぶられるのは悪い気分ではないな…………なんて事を思う私がいるわけであって……この子もライスの姉さんと同じく、お姉さんみたいな振る舞いは似合ってはないが……その……。
ひとしきり彼女にお姉ちゃんぶられてから、心に巣くう蓼食う虫を振り払うように咳払いを一つ。話題を戻した。
「……やっぱり、私は他人とくっついたり一緒にお風呂に入ったりとか、得意じゃない」
そう呟くと、ウララは考えこむように腕を組んでこう答えた。
「さっきの嫌だった?」
「……」
先を思い返し、真面目に考えてみる。嫌かどうかといえば、むしろ嬉しい気持ちが大きかった。ライスの姉さんに抱きしめられている時も似たような気持ちである。
苦手意識がある理由は、恋愛的に意識しているというわけでもなく、性的に感じているなどというわけでもない。同性相手にそれは論外だとハッキリ理解している。
で、あるならば。己が立場を踏まえれば判然とする。
「私みたいに大きいヤツがさ、誰かに可愛がられたりするの似合わないんじゃねーかって……」
誰かを撫でる側、抱き上げる側、だったらそこまで抵抗はないものの……やはり、誰かに可愛がられるというのは不似合いだと自覚している。
ウララはそういうスキンシップに慣れているのだろうけど……私は違うのだ。
ウララは私の話を聞いて、少し考える素振りをして、こう話しを始めた。
「ディオスちゃんって、弟がいるんだっけ」
「あー、いるな。五歳下」
私がそう応えると、ウララはまた少し考えこんでしまった。彼女なりに思考を整理しているのだろうと思うと、私も何か言うべきではないかという不安に駆られてしまう。
また少しの沈黙。そしてウララがクイズの答えを導き出したかのように明るい顔で口を開いた。
「そっか。だったら今までお姉ちゃんとして振る舞ってたから、逆に甘やかされるのが恥ずかしいんだよきっと」
……確かに、弟が生まれた時から「自分はお姉ちゃんだ」という自負はあった気がする。
その頃から、母親父親が弟を優先していた事を内心嫉妬していた覚えもあるが。今考えれば乳幼児に付きっきりなのは当たり前だと感じて、それも恥じた。
「確かに。慣れてないな。甘やかされるのは」
私が呟くと、ウララはとても嬉しそうに笑う。それから彼女はこう続けた。
「それに、ディオスちゃんを甘えさせてあげたいっていうライスちゃんの気持ち、ウララはちょっと分かるかな~」
なんとなくウララの方を睨む。彼女はそれに気づいてか気づかないフリをしているかは分からないが、ニコニコとした笑みを絶やさずに視線を返していた。
「だって、ディオスちゃんって時々寂しそうなお顔をしてるんだよ。自分じゃ気づいてないかもしれないけど」
……心当たりがないわけじゃない。が、それについては語るだけ無駄だ。
「親に甘え不足だったのかもしれないな。五歳っていや幼稚園児の時だし」
そのように表現すると、ウララは納得したように頷いた。
「きっとそうだと思うよ。今までお姉ちゃんとして頑張ってきたんだから、ライスちゃんも甘えて欲しいんだよ~♪」
話しながらに制服に着替え終えた彼女は、また腕を広げてハグのジェスチャーを向けてくる。幼い子供にするような優しい手つきであったが、今度は黙って受け入れ、私の方も彼女を抱き返す事にした。
たぶん、私みたいな大きな女が小柄な彼女達に甘える事は見た目おかしいという感覚は拭いきれない事かもしれない。
それに、幼子のように誰かに抱きついて甘える年頃でないのも事実だ。
しかし、こうして誰かの温もりを感じられるのであれば……それは悪いものではないのだと私は思う。
その優しさを向けられて恥ずかしいと感じる事は、あるかもしれない。
けれど、彼女達が私を甘やかしてくるのがそういう理由なのならば。過剰に抵抗を感じる事はないのだろうと……これからはそう考えてみる事にするよ。神様。
「よしよし、ハルウララお姉ちゃんですよー♪」
「…………また小さな女の子侍らせてる……」
「……………………まぁ~、そういう趣味の人だってのは昔から分かってますしね~……」
いややっぱ抵抗感じるわコレ。
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