ライスシャワーお姉ちゃん【完結+おまけ不定期】   作:稗田之蛙

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キス(ちゅー編)

 神様。友人をからかった事については私だって反省してる。

 しかも、相手はあのセイウンスカイ。小学生の頃は冗談じゃ済まない事だって色々あった。

 それに比べれば、あの程度の茶化し合いは可愛げがあるものだって分かってる。分かっているが…………。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 どうしてこうなった。

 

 マジでわけわかんない。ニシノさん相手なら色々な意味でみんな幸せなんじゃないの。私相手にコレやってるのホント意味わかんない。こういう役割はおデジの方に回していいだろ。こういうの私のガラじゃねーって。

 ……いや「からかわれた時に口の前に指差し出せば逆にからかい返しの定石に出来るんじゃね?」って逆襲企てたのは私ですけど。けど。

 

 ――ちゅ……ちゅく……。

 

 指先に吸い付いてくる唇の柔らかさ、吐息の温もり。それらが心地いいし、背筋にはくすぐったさにも似たものが絶えず走り抜けている。

 ただ軽く触れているだけかと思えばそうではなく、口による甘噛みや舌先でくすぐりを仕掛けてきたりもしてきて――とにかく、手玉に取られているような感覚を味わいながら私は視線を合わせないようにしながら「気持ちよくなんかない」と表情を装うのが精一杯だ。

 それが強がりであると理解しているのか、彼女はすぐにまた唾液を塗布するように私の指へと吸い付いてくる。

 そんな音が指先に絡みつくように聞こえてくるのを感じ、指先に吸い付く舌や唇の感触は、なんだか酷く熱っぽい感じを覚えた。恥ずかしさで頭が沸騰してしまいそうなほどだ。

「へ、へぇ。前よりは、上手、じゃん……」

 私は怒りを隠すように振る舞うと、なるべく平素を装った声でそう評価をくだす。しかし、それは無意味な事だったようで……彼女は上目遣いで私を見つめてきた。

「ディオスちゃん、もしかして照れてる?」

 図星だった。顔が熱くなるのを感じ、私は反射的に顔を逸らしてしまう。

 そんな私を見て意地悪な笑みを浮かべると、彼女は私を煽り始めた。

「ディオスちゃんはさ、素直じゃないしズルいよね。昔から」

 指を甘噛みしてくる唇の柔らかさを感じながらも私は耐えてみせていたが、やがて彼女は私の指を第一関節まで咥え込むと、そのまま舌の上で転がすように弄び始める。

 指紋の皺一つ一つを丹念に舐められ、わざと水音を立てながら吸われたり、絡みつくように蹂躙されたり――そんな風に唇や舌で撫でられると、だんだんとくすぐったさの他にも、ゾクゾクとするような感覚が体中を駆け巡りそうになる。

「……ギブ……ギブ……」

 私は耐えかね、そう言うしかなかった。それで彼女は気分をよくしたのか、ようやく私の指は解放された。

「もうそのからかい方はしないって約束できる?」

 彼女はそう、私へと問いかけてきた。

 するって言ったらまたやってくれるのか。とかなんとかよぎったが、それを振り払うように私はぶんぶん頷いた。

 

「へへ~ん、これでキスが下手とか言えないよねー」

 セイちゃんは、得意げにそう笑った。

 私は、そんな様子を眺めながら、ふと疑問に思う。

 ……なんで上手になってるんだろう。まさか相手が………………ニシノさん相手にやったの……今の……上手になるまでたくさん…………えぇ……犯罪臭い……。

「なんか変な想像してない?」

「してない!」

 セイちゃんは怪訝そうな顔で私の様子を見ていた。私は慌てて取り繕う。

「ま、いいや。……いやー、でも。さっきみたいに相手が喜んでくれるならキスが上手っていうのも案外悪くないかなーって。……ちょっとだけね」

 彼女は笑いながら言う。その言葉に、お互いが思わず無言になる。

 

「な、なに?」

 沈黙に耐えかねたのか、セイウンスカイはそう聞いてきた。私は小声で言った。

「……ど、どうやって練習したの?」

 それを聞くとセイちゃんは、少し驚いた様子で目をぱちくりとさせたが。

「え、前教えたのを自分の指でやっただけ。からかわれた時を想定して、指前提のも練習したけど」

 と、いとも簡単に答えた。……………………マジで? マジで自分の指でやってるとあんな風に上手になれんの……?

「それともなーに? 男の子相手にいっぱいキスして練習したとでも思ったの?」

 彼女は意地悪な笑みでそう聞いてくる。ぶっちゃけ、そのニヤケ面が嘘くさすぎて逆に安心する。

「セイちゃんは誰彼構わずキスするようなキス魔に見えますかー? 心外だなー」

 彼女は重ねて、「そういう事はしてない」と遠回しに釈明してくれながら、続けて言う。

「で、そっちは結局のところ、どうなワケ?」

「何が?」

「キスの上手さ」

 彼女はそう言って指を差し出してきて。

「――あぁ、ウソウソ。ごめん」

 すぐ指を引っ込めた。私も口をパクパクさせながら怒りの言葉を喉奥に押し込め、なんとか飲み込む。

 そして、ムキになった私はこう告げた。

「わ、わたしだって練習たくさんしてくれば、私も上手になるんだからな!!」

 私は恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら言う。

「ふーん……」

 セイウンスカイはニヤニヤしながら、私の口元を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 それから私は一人かつ暇な時間があれば、自分の指と唇でキスの真似事を繰り返すようになった。

「ディオスさーん。今度のチーム練習の事だけれど――」

 まぁ、はい。その光景をライスシャワーの姉さんに見つかるのは時間の問題でしたよね。

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