ライスシャワーお姉ちゃん【完結+おまけ不定期】 作:稗田之蛙
神様。知っての通りかもしれないが、私はなんといっていいか。比較的よく太る。
マックイーンさんやスペちゃんは散々周囲に「太るな」とこすられ倒しているから隠れ蓑になってくれているが、正直なところ彼女達の事を笑えないのではないだろうか。
「ははは、見てよスペちゃん。こんなに膨らんじゃった」
着替えた制服の生地が膨らんでいるのを自覚して、乾いた笑いを浮かべる。
「あはは、この時期は食べ物が美味しいからついつい食べ過ぎちゃいますよねー……」
スペちゃんも乾いた笑いを浮かべながら、私の膨らんだお腹をやわやわと揉みしだく。彼女が太った時には揉む側だから、私は彼女のされるがままでいることにした。
スペシャルウィークとは、同い年というのもあって長い付き合いである。同学年のエース。私はパッとしない成績だから、彼女の華々しい成績を羨ましいと思う時がある。私にとっての『スペシャルウィーク』という存在は"優等生のお坊ちゃま"だ。
「……どうしました?」
私の視線に気付いたのか、スペちゃんはそう問いかける。
とはいえ、彼女はその成績を鼻にかける事はしない。『日本総大将としてもっとらしく振る舞ってもいいんだぞ』と、余計な事を言いたくなるくらいだ。……だからこそスペシャルウィークと共に歩める今を、光栄に思う。
私は軽く首を振って、「なんでもない」と伝えた。スペちゃんは少しだけ不思議そうにしていたけれど、すぐに気を取り直したようで笑みを浮かべた。
「それにしても、クセになっちゃう柔らかさですよねっ……延々揉んでいたくなるというか」
「でっぷり太った犬猫は抱きしめていたくなるからねぇ。スペちゃんが太った時は仕返しに揉んじゃうよ?」
更衣室の隅っこで、お腹を揉ませながら二人っきりでひとしきり笑いあっていると。ふと、ゴールドシップとライスの姉さんが壁際から覗き込むような姿勢でこちらをうかがっていた。
ライスの姉さんは何故か顔を真っ赤にし……ゴルシちゃん目つき悪ッ!! え、すっごい睨まれてるけど私なんかした!?
思わずスペちゃんと顔を見合わせてしまう。たぶん、私も彼女と同じような表情をしていることだろう。
「おーい、ほどほどにしとけよー」
ゴルシちゃんから、そんな呆れたような声を投げかけられた。
はて、程々にしておけとはどういう意味だろうかと考える事数秒後。私はようやく言葉の意味を理解する。なるほど、私はスペちゃんにお腹を揉ませていたから…………。
「…………」
再び、スペちゃんとお互い顔を見合わせる。スペちゃんは、顔を真っ赤にして申し訳なさげに後ろ手に腕を組んでいた。
……いや、確かに……ボディタッチではあるが、同性だし……友人関係だし……。
そう思いながらも、相手が初々しくも顔を赤らめて恥ずかしがっているものだから、余計に私も恥ずかしくなってしまう。
そして、私は、自分のお腹を庇うように、手を当てていた。
まぁ、ここで懺悔が終わってれば、私がスペちゃんとイチャついただけっていう話で終わる。終わったんだがな。
でも、そうはならなかった。
ならなかったんだよ、神様。
だから、この話はここで終わらないんだ。
「……はい、どうぞ」
何が……何が、起きているッ!?
いつも通り、週末にライスの姉さんと二人で遊ぶ段取りをつけていた。そのはずなんだ。
いつも通りでない部分といえば、ライスの姉さんが太り気味であった事だろうか。だからって、他人の前でお腹を曝け出す行為は、はしたないが過ぎる。
………………いや、買い食いして腹が膨らんだ時は結構なヤツがエントランスで腹曝け出してるな……それはともかく。
「ね、ねえしゃん。なにがどうぞですか?」
……噛んだ。なんか「くすっ」と音を立てて笑われた。
「スペシャルウィークさんのお腹触るの好きそうだったから。……お姉ちゃんのお腹も、触ってみる?」
いや、好きかどうかで言えば……うん、好きだが。触り心地いいし。でも、こう、同学年相手が太った時のからかいによるボディタッチであって、決してセクハラ的な、そういう意図は微塵も……いや、太ったからって腹触るのはセクハラなのか……?
……スペちゃんの事はこの際置いておこう。
「いや……あの、さすがに、ライスお姉ちゃんのお腹を揉み回すのは、失礼がすぎるというか……不遜というか……」
私は、しどろもどろにそう答えた。すると、彼女はきょとんとした表情を浮かべて、それからまたクスリと笑った。
「……じゃあ、『いいこいいこ』ってするみたいに。優しく撫でてほしいな。……だめ?」
それは、あまりにもズルい言葉だ。
私は下唇を力一杯噛みながら、言われるがままに……ライスの姉さんのお腹を、遠慮がちに撫でた。
その柔らかな肌触りに、思わずため息が出そうになる。腹回りは比較的摩擦や圧迫が少なく、かつ脂肪が溜まる部位なので、触感が良い。
スキンケア自体も欠かしていないといったところだろうか。綺麗な肌艶であると、私は確かめるようにその肌へ指を沈めた。
「んっ……」
ライスの姉さんがくすぐったそうな声をあげたのが耳に届いて、反射的に手を引っ込める。
「ご、ごごご、ごめんなしゃい」
顔がカッと熱くなるのを感じながら、私は頭を下げる。
ライスの姉さんはといえば、またクスクスと笑った。
「ううん、大丈夫。……くすぐったかっただけだから」
そうしてまた、彼女は私の手を取って、自分の腹部へと導いていく。
姉さんの掌は温かいのに。私の掌は、例の如くじっとりと汗をかいていて。また一つドキリと心臓が跳ねる。
まるで、いけない事でもしているような気分だった。
相手の手に導かれながらゆっくりとその柔らかな腹を撫で回していると……ライスの姉さんは、身をよじった。
思わず手を止めようかとも思ったが……ライスの姉さんは、まるで続きを促すかのように私の手を握ってくる。
「…………♪」
……ニコニコと楽しげなライスの姉さんの眼差しを受け続けた私は観念して、彼女のお腹を撫でまわすことを再開したのだった。
しかし今度は意識してしまうともう駄目で、手の中の感触が気になって仕方なかった。
ライスの姉さんも、私が動揺している事は分かっているだろう。
彼女は私の手を誘導しながら、自分のお腹を撫で回させるように……動かしていく。その行為にはきっと意図があるのだろうけれど、私はそれどころではなくて。
まるで、自分がやましい気持ちで彼女の身体をまさぐっているような気分だった。
「……あ、……ぁ……」
ゆでだこみたいに顔を真っ赤にしているだろう私は、羞恥のあまりかプルプルと震えてしまう。
まるで、本当にいけない事でもしているような気分だった。いや、実際に今やっている事はイケナイ事だと頭の中で警鐘が鳴っている。
「これ以上は!!」
この手のやり取りで初めて、バッと力強く手を引っ込めた。
ライスの姉さんは、少しだけ驚いたような様子を見せた。それから、困ったように微笑むと……まるで私をあやすような声色で話しかける。
「ごめんね、嫌だった?」
嫌ではない。ただ、いけない事だと思う。
「いやというか…………相手の好意につけ込んでひどい事をしてる気分に……」
私はそう正直に答えた。
彼女は少し考え込んだ後……困ったように小首を傾げた。……それからニッコリと笑って、こう続ける。
「貴女になら、ライスはひどい事されても平気だよ?」
……ライスの姉さんは、いつも優しいけれど。今ばかりは私を困らせて楽しんでいるようだった。私がゆでだこになっているサマを楽しんでいるに違いない。
いやしかしそれでも、だ。平気だと言われても。私はいけない事をしている気分を拭いきれないのだ。
「……姉さんに対しては、ひどいことはしたくありません」
また下唇を噛んだ。滑稽である、という自覚はある。私がそう言うと、ライスの姉さんはクスクスと笑った。
それから彼女は私の頭に手を置くと、「いい子いい子……」と言いながら撫でられた。
私は何だか恥ずかしくて。でも、それが心地良くて……されるがままになっていた。
やがて満足したのか、手が離れていくのを感じたので。私は思わず名残惜しい顔をしてしまった。
……すると今度はそのまま手を握られてしまったものだから……私は再びドキドキする羽目になった。
「頭撫でられるの、好き?」
ライスの姉さんが、からかうような笑みを浮かべて問うてくる。
私は……しっかりと頷いた。彼女は満足そうに微笑むと、また自らのお腹に手を導いていく。
「前にも言った通りにね。ライスは、好きな人とは、いっぱいいっぱい、触れ合っていたいなって……」
その言葉は……とても甘ったるいもので、くらくらしてしまう。
そうして、彼女の柔らかな腹部を撫で回しながら……私は、姉さんのお腹を揉む行為がクセになってしまわないかという恐怖に震えつつ。
ただただ、彼女の柔肌を堪能している。
「ハッ……ハッ……」
私は呼吸困難に陥りかけながらも、荒い呼吸を何度も繰り返しながら、それでも懸命に理性を保つ。
いけない事をしている、という自覚は消えない。それどころかどんどんと強くなっていく。でも、手を引っ込める事もできないままに、彼女のお腹を撫で回す。
綺麗な形のおへそのふちを、私の指先でゆったりと円を描くように触らせてくる。
一回転する度に彼女はくすぐったそうに身をよじって……それからまた、ふちを触らせるように円を描く。
……甘い。微かに香る彼女の匂いが、甘い。
まるで砂糖菓子のような甘さが鼻腔を通り抜けては……私の思考を麻痺させていくような感覚に陥る。
その内、自分の意思で動いているのかそうでないのかすら分からなくなってきた。ただ目の前の柔らかそうな肌に触れる事だけが、今の私の全てになっていたのだ。
ああ、駄目だ。これはいけない。
頭では分かっているはずなのに。どうしても、その脳髄は私にカタブツを気取らせてはくれなかった。
まるで、彼女に触れていたくて仕方なくて……彼女の虜になってしまっているような気分だった。
けれど同時に、罪悪感に心を苛まれ続けているのも確かで。脳髄はぐるぐると混線し続けていて……。
まるで夢の中にいる気分であったけれど、それでも夢ではないから余計に始末が悪いんだ。
私は、何をしているんだろう。どうしてこんな事になってしまったんだ。
「……だいじょうぶ?」
コトが終わって、ベッドの上でぐでっとしてると。
ライスのお姉さんは、心配そうに顔を覗き込んで来た。
彼女の瞳に見つめられると……先程までの自分の行いが思い出されてしまって、思わず罪悪感にも苛まれてしまうので、私は慌てて目を逸らしてこう言った。
「あぁいうのは……恋人とかとやる行為だと思います……」
私がそう呟くと、彼女はクスクスと笑った。……冗談だと思われたのかな。でもあながち間違いでも無いような気もするし……。
「じゃあ、貴女はスペシャルウィークさんと恋人さん?」
私は一瞬言葉に詰まってしまう。私にとって同性は恋愛対象という訳ではないし……スペちゃんなら尚更だ。私はやつれた顔でこう応えた。
「…………スペちゃんとは、友人関係ですよ」
すると、彼女はニッコリと笑顔を浮かべてこう言った。
「じゃあ、人に見られる場所であぁいうやり取りはあんまりしちゃだめだよ?」
それはごもっともな意見だった。……チームメンバーの目に毒な過剰なスキンシップだと、窘めたかったのだろう。これは、私が悪い。
………………いや、それにしたって……他にやり方が……あるような……。
「あと、ライスのお腹、触りたかったら、二人っきりの時なら触っても大丈夫だよ?」
…………もう、深く追求しないコトにした。
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