魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
今回、前半はモクローのバトルになります。色々ご都合主義なところがあると思いますが、ご了承下さい。
評価バーに色が着きました!これもこの作品を評価してくれた皆様のお陰です。本当にありがとうございます!
「キャタピー!」
「ビードル!」
「「“いとをはく”!」」
マードックとオリオの指示を聞き、数体のキャタピーとビードルは口から粘着性の高い糸を吐き出した。吐き出された糸がブレイブアサギ号に空いた穴を塞ぐように貼り付き、ストライク達が両腕の刃でキャタピーとビードルの口から糸を切り離した。
同時に、傾きかけていたブレイブアサギ号が体勢を立て直し、ゆっくりと海面から浮かび上がった。
「ここにいて…」
「ラッキー」
モリーとラッキーは、ライジングボルテッカーズとエクスプローラズの気迫に怯えていた砂浜に住む野生のクラブ達を海岸の岩影まで避難させていた。
「サイドン、“ロックブラスト”!」
「モクロー、かわして“このは”!」
「もっふ!」
「サイドッ!?」
サイドンが撃ち放った無数の岩石をモクローは高く飛んで回避すると、上空から翼を大きく振って緑色に光る木葉を放った。
技を放った直後であったサイドンは避ける暇がなく、両腕を交差して“このは”を防いだ。両腕に振り掛かった“このは”が直撃する。
モクローが地面に着地したのとほぼ同時にイルマはサイドンに目を向けると、そこには所々に傷を負いながらもしっかりと地面に立っているサイドンの姿があった。
「…威力が足りない…!」
イルマは苦々しい表情で呟いた。
もしもイルマとモクローが立っている場所にいるのがリコとニャオハならば、ニャオハの十八番である桁違いの“このは”でサイドンは一発KOになっていただろうが、モクローにはあれ程の威力を持った技など出せない。地面と岩の複合タイプであるサイドンには草タイプの技は通常の四倍のダメージになるとは言え、流石に一撃で終わりとはいかなかった。
(でも、四倍弱点の“このは”を二回も受けて効いてない筈はない…後2、3回当てれば倒せる…。でも、あの人とサイドンがそれを態々それをさせてくれる訳ないし…。ノーマルタイプの“たいあたり”はサイドンにはいまひとつだし、この前モクローが
「来ないのか?ならば此方から行くぞ!サイドン、“メガホーン”!」
「ッ!モクロー、かわして!」
すると、今度はサイドンが鼻先の角を光らせて、物凄い勢いで突進してくる。モクローは再び羽を羽ばたかせ、空を飛んでサイドンの突進を避ける。
「“このは”!」
「かわせ!」
モクローは上空から再びこのはを放つが、サイドンは横に飛んでそれをかわす。空振りになった“このは”が砂浜にぶち当たった。
「よし、着いた!」
「!イルマ、モクロー…!」
そこへ、森の方からリコとニャオハ、そしてロイとホゲータがやって来た。しかし、イルマとモクローは相手に集中しており、それに気付かない。
一方で、コニアとバトルをしていたフリードや、アメジオと激闘を繰り広げているバチコが、リコとロイに目を向ける。
「アイツら、来ちまったのか…!」
「…、フリードに任せるしかねーな」
二人の安全を考えてフリードが村に置いてきていたのだが、どうやら来てしまったらしい。
「……アーマーガア、“ぼうふう”!」
「ッ、かわせ!」
そこへ、再び余所見をされたアメジオがアーマーガアに指示を出し、それを聞いたアーマーガアは強力な風を起こし、咄嗟にバチコがチルタリスに指示を出し、それを聞き入れたチルタリスはアーマーガアが起こした風をスレスレで避けた。
「真剣勝負だ!余所見をするな!」
「悪りーな!」
アメジオの相手で手が離せないバチコは、早急にフリードとリザードンがコニアとゴルダックを倒して二人の護衛を巻かせるしかないと、直ぐにアメジオとアーマーガアに意識を集中した。
「ゴルダック、“みずのはどう”!」
「リザードン、“かえんほうしゃ”!」
コニアの指示を聞いたゴルダックが口から猛烈な勢いの水流を放ち、対するリザードンは口から強力な炎を吐き出し、互いの技がぶつかり合った。
水と火は最悪の相性である筈だが、ポケモンのスペックと技の威力は炎タイプであるリザードンの方が遥かに上であり、リザードンの炎がぶつかり合ったゴルダックの攻撃を押しきり、ゴルダックは一瞬で炎に包まれた。
「ゴルダック!」
「ゴダ~…」
炎が収まると、そこにら真っ黒焦げになって、目を回して倒れているゴルダックの姿があった。誰の目からみてもこれ以上戦闘は出来ないだろう。
「ホゲー…」
「!ホゲータお前…もしかしてリザードンに憧れているのか…?」
リザードンの圧倒的な戦いを遠目で見ていたホゲータは、キラキラと目を輝かせてリザードンの後ろ姿を眺める。それに気付いたロイが呟く。
一方、ジルのサイドンと睨み合いを続けていたモクローは、チラリとイルマに視線を向ける。
イルマは真っ直ぐにモクローを見ていた。お互いの視線が交差し、イルマとモクローは頷き合う。そして、イルマは声を張り上げた。
「モクロー、走って!」
「もふぅ!」
何と、イルマはモクローに前に突っ込んでいくように指示を出し、モクローはサイドン目掛けて真っ直ぐに突っ込んでいく。しかも羽を使って飛ばず、短い両足で砂浜を蹴って。
「フン!バカな奴だ!“ロックブラスト”!」
「サーイッ!!」
無策に突っ込んで来る様にモクローに指示を出したイルマを嘲笑いながら、ジルはサイドンに指示を出す。それを聞き入れたサイドンは再び大量の岩石を発生させ、それをモクロー目掛けて一斉に発射した。
「モクロー、避けて!」
イルマは腕を前に出しながら指示を出す。
モクローは未だに羽を使わないで疾走しながら、右へ左へと動き、降り注ぐ岩石をスレスレでかわしながら、徐々にサイドンとの距離を積めていく。
殆どの岩石を避けたその瞬間、岩石の最後の1つが、モクローの目前まで迫っていた。距離があまりにも近く、いくらモクローでもかわすことが出来ない程の地点まで迫っている。
「モクロー!
絶体絶命といえるその瞬間、本能的に打開策を割り出したイルマの声が、モクローの耳に届く。
その声を聞いたモクローは、高い知能によってイルマの考えを瞬時に理解し、迫り来る岩石に向けて
「もぶッ……!!」
モクローは自身の3倍近い岩石を受け止めようと試みるが、いくらなんでも質量に差がありすぎた。羽を器用に使って岩石を掴むことは出来ても、モクローはそれだけで後ろにすっ飛ばされそうになる。
その瞬間、モクローは両腕で岩石を掴んだまま、左の軸足で体を支える。
「何ッ!?」
「サイッ!?」
そして、モクローは巨大な岩石を持ったまま、高い脚力で体を独楽のようにグルリと一回転させる。まさかの光景に、ジルとサイドンは驚愕して、動きを止めた。
その隙を見逃さず、モクローは発射された勢いをそのまみに、自身の回転の勢いも加えた岩石を、全力でサイドンに投げ返した。
「もっふぅうううっ!!」
「サイィイイイッ!?」
岩石は一直線に飛んでいき、硬直していたサイドンの顔面に直撃する。
自身が放った技が自分の顔面に直撃し、衝撃で岩石が砕け、サイドンは思わずドシンドシンと足音を鳴らしながら大きく後退る。しかも、岩石が砕けた際に土煙が目に入ったらしく、サイドンは目に入った砂を取ろうと両腕で目を擦る。
「行くよ!“このは”!!」
「もふぅーーっ!!」
「サイッ!?」
「サイドン!!」
そこへ、続けて放たれたモクローの“このは”が、正確無比にサイドンに命中する。
自分が放ったロックブラストを投げ返され、目に細かい砂が入っていた所で四倍弱点の技の直撃を受けてしまい、サイドンは遂に限界を向かえ、ズドオォオン!という音を立てながら仰向けに倒れた。倒れたサイドンは目を回しており、起き上がる様子は一切みられなかった。
「やった!やったよモクロー!」
「もっふ!」
イルマはモクローを抱え上げ、互いに喜び合う。
「す、凄い…!」
「ニャオハ!」
その光景を見たリコとニャオハは、思わずといった風に呟いた。
そのバトルの一部始終を遠目で見ていたバチコも、チラリとイルマに目を向けて笑みを浮かべる。
「メチャクチャな奴だな…しかも、態々前に出たとしても相手がロックブラストが使って来なきゃ成立しない筈だっつーのに……」
相手の技を投げ返して攻撃するなんて荒業は、バチコも始めて見た。
そもそもあの戦法は、サイドンがもしも“メガホーン”を使ってくればパワーの差でモクローの敗けだった筈だ。ジルが“ロックブラスト”に強い信頼を寄せていたのかは知らないが、この勝利はかなりギリギリだったと言える。危なっかしい奴だと、バチコは呆れながらも笑みを浮かべる。
その時、アメジオを乗せたアーマーガアが、バチコとチルタリスを無視して飛んでいく。その先には、未だにイルマの方をみているリコの姿があった。
「ッ!?ヤベッ!」
「だから言った…余所見をするなと…!」
バチコは直ぐ様チルタリスの背に乗ってアーマーガアを追うが、それでも速いのはアーマーガアだ。既に戦闘を追えていたフリードがリザードンにリコを守らせようとするが、その瞬間、フリードの前にジルが、バチコの前にコニアが、エアームドに乗って立ち塞がった。
「「“ふきとばし”!」」
「リザッ!?」
「うぉっ…!」
「くっ…!」
「チル~……」
次の瞬間、エアームド達が起こした猛烈な風が、リザードンとフリード、バチコとチルタリスの2組を呑み込んだ。
リザードンもチルタリスも、風によるダメージは一ミリも受けていない。しかし、“ふきとばし”はその名の通り相手のポケモンを遠くへ吹き飛ばす、または相手のポケモンを強制的に交替させる技だ。ダメージがなくとも、リザードンとチルタリスはその場に踏ん張るだけでも精一杯であり、フリードとバチコもその場から動けなくなってしまった。
その間にも、アーマーガアが起こした竜巻がリコを包み込み、駆け寄ろうとしたイルマとロイの行く手を阻む。
そして、その竜巻の中心にいたリコとニャオハは、上空から迫ってくるアーマーガアの姿を捉え、顔を強張らせる。
その時、
リコの首にかけられたペンダントが目映い光を放ち、緑色に光り輝く球状のバリアがリコとニャオハを包み込み、アメジオを乗せたアーマーガアは思わず動きを止める。
その光景に、ロイは驚愕し、その光景に見覚えのあるイルマ達も目を見開き、緑色のバリアに目を向ける。
一方、バリアの中にいたリコは、バリアを破ろうと嘴でバリアを突いたり技を放っているアーマーガアの姿を見て、茫然とした様子で未だに目映い光を放つペンダントに目を向ける。
「また守ってくれたの…?」
「うわぁっ!?」
「ッ!?」
その時、バリアの向こう側から聞こえてきた声に、内側にいたリコとニャオハは目を向ける。すると、バリアの前までやって来ていたロイの手元から、目映い金色の光が放たれているのが見えた。
「あれって、モンスターボール…?」
ロイと同じ様にバリアの前までやって来ていたイルマがロイの手元を見てそう呟く。
イルマの言う通り、ロイの手には従来の物と違う、スチームパンクチックなデザインをしたモンスターボールのようなものがが握られており、そのボールがまるでリコのペンダントの光に反応している様に、目映い黄金の光を放っていたのだ。
やがてリコのペンダントの光が少しずつ弱くなってきたかと思うと、光は完全に消えて行き、同時にバリアも消失する。ロイも変わったデザインのモンスターボールも、同時に光が収まっていった。
「今のって……」
「リコ、そのペンダント……」
「あの、二人とも?気持ちは分かるんだけど、今は此方の方に集中してくれないかな?」
イルマに促され、茫然とペンダントを眺めていたリコとロイはイルマが指差した方に視線を向ける。そこには、砂浜に降り立ち、アーマーガアをモンスターボールに戻しているアメジオの姿があった。
「ペンダントと一緒に来てもらおう」
鋭い目でリコを見据えるアメジオに、リコの両隣にいたイルマとロイが声を上げる。
「そんな事、絶対にさせません!」
「そうだ!このペンダントはリコの宝物なんだ、渡すもんか!」
「ならば…バトルするまで!ソウブレイズ!」
「ブレイズッ!」
アメジオが投げたモンスターボールから飛び出してきたのは、彼のパートナーであるソウブレイズだ。
「3人纏めて掛かってこい!」
(勝てる気がしないんですけど…!)
ライジングボルテッカーズでアメジオのソウブレイズと渡り合えるのはフリードとバチコの二人しかいないが、肝心の二人は未だにジルとコニアのエアームドの“ふきとばし”によって動くことが出来ない。新米トレーナーである自分達があのソウブレイズに勝てるビジョンが全く浮かばない。
「けど、やるしかない!」
「あぁ!」
「う、うん!」
三人の声に答えるように、ニャオハとホゲータとモクローは前に出てソウブレイズと対峙する。
「ニャオハ!」
「モクロー!」
「「“このは”!」」
「ニャァ…ハーーッ!!」
「もふぅーー!!」
リコとイルマの指示が同時に響き、ニャオハとモクローは同時に宙へ飛び上がり、2体は同時に“このは”を放つ。2体の“このは”がソウブレイズを呑み込み、姿を隠す。
「よし!ホゲータ見せるぞ、僕たちの力!“ひのこ”!」
「ホ~~……」
イルマとリコに続くようにロイの指示を聞き入れたホゲータは大きく息を吸い、口内にエネルギーを溜め込んでいく。
そしてホゲータは、口内に溜め込んだ炎を、ソウブレイズ目掛けて撃ち放った。
「ゲッ…!」
…しかし、ホゲータが吐き出したマッチの火の様な物凄く小さな火であり、口から出たと同時にフッと消えてしまった。それからホゲータは何度も炎を吐こうとするが、やはり口から出た瞬間に消えてしまう。
「え?ホ、ホゲータ…?」
「……“サイコカッター”」
ロイが唖然とした瞬間、ソウブレイズは両腕を振るって体の周りの“このは”を凪払い、同時に剣からマゼンタ色の斬撃が放たれ、その斬撃はニャオハ達目掛けて真っ直ぐに向かってくる。
「ニャアッ!」
「もふぅ!?」
「ホゲーッ!」
「ニャオハ!?」
「モクロー!」
「ホゲータ!!」
斬撃がニャオハ、モクロー、ホゲータに直撃し、三体は悲鳴を上げながら砂浜に倒れる。
リコ達がポケモン達の名前を呼び、同時にニャオハ達はふらつきながらも立ち上がる。すると、ホゲータからは赤、ニャオハからは緑のオーラの様な物が溢れだした。
「追い詰められてパワーが上がったか……」
2体の様子を見たアメジオが呟く。ニャオハの特性“しんりょく”と、ホゲータの特性“もうか”により、2体は草タイプと炎タイプの技の威力が上がっているのだ。モクローはそれ程ダメージを負っていないのか、もしくは特性が違うのかモクローに変化は見られない。
だが、アメジオの有利は変わらない。レベルの低い草タイプのニャオハとモクローに、技をマトモに使えないホゲータの相手等、アメジオにとっては赤子の手を捻る様な物だ。
「くっ…どうすれば…」
「ロイ、落ち着いて!」
「!リコ……」
「大丈夫、ロイなら絶対出来るよ!ホゲータに気持ちを伝えてあげて!」
「気持ちを…それってもしかして…」
真っ直ぐにこちらを見つめてくるリコに、ロイはハッと何かに気付いた様な表情になる。
そこへ、考え込んでいたイルマの脳裏にある考えが浮かび上がり、イルマはアメジオに聞こえない程度の声量でリコとロイに話し掛ける。
「2人とも、一か八かだけど、モクローにソウブレイズの動きを少しだけ止める手がある。リコはソウブレイズとアメジオの注意を引き付けてくれる?」
「わ、わかった!ニャオハ、“このは”!」
「ニャー…ハーーーッ!!」
ニャオハが再び膨大な量の“このは”を放つ。大量の木の葉がソウブレイズを襲い、ソウブレイズとアメジオの視界は緑で埋め尽くされる。
「お得意の目眩ましか……ソウブレイズ、蹴散らせ!」
量は膨大で視界は殆ど効かなくなったが、ダメージは全く負っていないソウブレイズは両腕の剣を交差して振るい、木の葉の嵐を凪払う。同時に発生した衝撃波が砂浜の砂を巻き上げ、辺り一面を砂煙が覆った。
次の瞬間、辺り一面に巻き上がった砂煙を突き抜けて、モクローが一直線にソウブレイズの元へと飛んできた。視界が悪くなっていたソウブレイズは、一瞬だけ反応が遅れてしまった。
「モクロー、“おどろかす”!!」
「もっふ!!」
「ソウッ!?」
次の瞬間、モクローはソウブレイズの目前で両手の羽を叩き、その際に起こった大きな音にソウブレイズは驚いて後退る。
やがて砂煙が晴れて行くと、そこには地面に降り立ってソウブレイズを睨み付けるモクローと、それに対峙するソウブレイズの姿が見えてくる。
「ソウブレイズ!」
「ブ、ブレィ…!」
「ッ!?これは……!」
アメジオが呼び掛けても、外傷は1つも見られないソウブレイズは小刻みに振るえているだけで一向に動く様子がなく、硬直してその場から動けないでいる。
そこでアメジオは、これがイルマの狙いだったのだと気付いた。
“おどろかす”はゴーストタイプの基本物理技。しかしこの技の効果はダメージだけではなく、30%の確率で相手をひるみ状態にする事が出来る技だ。ひるみ状態になったポケモンは、少し間だけ動くことが出来なくなってしまう。てっきり目眩ましの隙に攻撃してくるのだと思っていたアメジオは、ダメージではなく追加効果が狙いだった事を見抜くことが出来ず、こうして攻撃するのを許してしまった。
このチャンスを、彼等が見逃す筈がなかった。
「今だよ!」
「うん!ロイ!」
「あぁ!」
イルマが作ってくれたこのチャンスを無駄にはしないと、リコはロイに声を掛ける。今度こそ、ロイとホゲータの気持ちが重なって“ひのこ”が出来ると信じて。
リコの言葉に頷いたロイは息を吸い込む。
「ホ・ホ・ホ・ホゲー♪」
「「え!?」」
…しかし、ロイの口から飛び出してきたのは技名ではなく、先日ホゲータとロイが練習していたという歌であった。何の脈絡もなく歌い出したロイに、そんな場合ではないと分かっていながらも、リコとイルマは目を丸くする。
しかしロイは周囲の事など気にも止めず、ホゲータの背中を見つめて歌い続ける。
すると、ソウブレイズと対峙していたホゲータも、自身を鼓舞する様に歌い続けるロイに目を向けると、やがて顔を引き締め、再びソウブレイズに向かい合い、大きく口を開けて歌い出した。
「「ホ・ホ・ホ・ホゲー♪」」
やがてロイとホゲータの声が重なりあい、同時に2人の心が1つになっていくのを感じ、ロイは声を張り上げた。
「負けるなホゲータ!“ひのこ”だ!!」
「ホォ…ゲェーーーッ!!」
ロイの指示が再び響き、ホゲータは口から赤く燃える炎の球体を吐き出した。
ホゲータが放った“ひのこ”は、真っ直ぐにソウブレイズに向かって飛んでいく。
「ッ!私達も!ニャオハ、“このは”!!」
「ニャァ…ハーーッ!」
それを見てハッとなったリコもニャオハに指示を出し、ニャオハはホゲータの“ひのこ”に続くように膨大な量の“このは”を放つ。そして未だに動くことが出来ないソウブレイズに、ホゲータの“ひのこ”とニャオハの“このは”が直撃した。
「ブレィ…!」
効果抜群の“おどろかす”を受けてひるみ状態になった所で、特性の効果で威力が上がったホゲータとニャオハの技が同時に炸裂し、流石のソウブレイズも無傷ではいられず、ソウブレイズは2、3歩後退する。
喜びを露にする3人だが、アメジオは表情1つ変える事はなかった。
「……お前達の戦い方は理解した。だが結果は変わらん……“ゴーストダイブ”!」
次の瞬間、ひるみ状態が解けたソウブレイズが地面に沈むようにして姿を消した。
イルマ達の表情が強張った瞬間、ニャオハとホゲータと共に自分達の健闘を喜びあっていたモクローの背後からソウブレイズが現れたと同時に、ソウブレイズは右腕の剣でモクローの背中を斬りつけた。
「もふうぅっ!?」
「モクロー!!」
不意を突かれ、勢いよく吹っ飛ばされるモクローにイルマが声を上げるのと同時に、ソウブレイズは再び地面に沈むように消えて行く。そこでニャオハとホゲータは、まだバトルが終わっていないと理解し、周囲を警戒する。
すると、今度はホゲータの背後に現れたソウブレイズの剣で、ホゲータはモクローと同じ方向に吹き飛ばされた。
「ホゲーッ!!」
「ホゲータ!!」
ニャオハがキョロキョロと辺りを警戒する中、ニャオハの目の前にソウブレイズが現れ、ソウブレイズはニャオハが反応するよりも速くニャオハを切り裂いた。
「ニャァーー!!」
「ニャオハ!!」
ニャオハはモクローとホゲータが倒れている場所と同じ地点まで吹き飛ばされ、力なく倒れる。先程の“サイコカッター”の直撃を受けたことで既に大ダメージを負っていた所で再び強力な攻撃を受けてしまった3体には、これ以上バトルできる程の体力は残っていなかった。
そんな満身創痍の三体の前に、ソウブレイズが歩み寄る。
「とどめだ!」
「ッ!ホゲータ!」
「ロイ!危ない!」
「ちょっ、二人とも!!」
アメジオの声と共に、ゆっくりと剣を振り上げるソウブレイズに、ロイはホゲータを助けるために走り出す。リコとイルマもロイに続いて走り出すが、その間にもソウブレイズは右腕の剣をニャオハ達に向けて振り下ろそうとする。
リコはニャオハ達の元に向かって走りながら、首にかけているペンダントをギュッと握り締める。
「お願い…皆を!!」
リコの言葉に応えるように、ペンダントが緑色の光を放つ。
しかし、それだけではなかった。
「ッ!?」
リコのペンダントが光出したのと同時に、ロイがずっと手に持っていたスチームパンクチックなデザインのモンスターボールが目映い金色の光を放ち、辺り一面に金色の光に照らされる。
「眩しッ……これって、あのモンスターボールが…?」
「またバリアか……違う…!これは一体…!?」
リコとロイは各々が持つペンダントとモンスターボールを凝視し、二人と最も近くにいたイルマとアメジオはあまりの眩しさに腕で目元を覆う。エアームドに乗ったコニアとジル、そしてフリードとバチコも、その光景に戦闘を中断してリコ達の方に目を向ける。
やがて、ロイの手の中にあるモンスターボールの一部が動いたかと思うと、モンスターボールが独りでに開く。
開かれたボールから飛び出した黄金の光が天に登って行き、空を覆っていた分厚い雲に大きな穴が開いた。
開いた雲の空洞の向こうからキラキラとした粒子のようなものが降り注ぎ、砂浜にいた全員は、雲の穴から見える青空から、黒く光輝く何かがこちらに向かって降りてくるのが見えた。
東洋竜のような外見をした、宝石のように煌めく漆黒の体を持ったそのポケモンは、砂浜で自分を茫然と見上げている者達を見下ろしながら、咆哮を上げた。
『きりゅりりゅりしぃぃ!!』
モクローが岩石を投げ返すシーンは、魔入りました!入間くん16話のオマージュです。色々と無理があるとは思いましたが、他に戦闘シーンが思い付かなかったのと、前々から書きたい描写だったのでこのような
アメジオ戦でモクローが使った“おどろかす”ですが、その技をモクローを覚えた時期は『夜の出来事』と『大型連休』の間という設定です。描写が完全に“ねこだまし”みたいになっていますが、どうか大目に見てください。
イルマくんのモクローの特性と使用技(現時点)の設定を書いておきます。
モクロー(♂)
特性:えんかく
技:このは・たいあたり・おどろかす
感想、評価お待ちしております。