魔入りました!入間くん if Episode of ポケットモンスター 作:MTHR
そして、今回から非ログインユーザーからの感想受け付けも可にしました。
2023年12月8日 イルマの服装を変えました。
2024年5月16日 挿絵を追加してみました。
リコとイルマを送り届けるため、そしてドットの情報でパルデア地方に向かっていることが判明した黒いレックウザを探すため、ブレイブアサギ号はパルデア地方に向かって行く。
「はー、美味しかった~」
「マードックのご飯なんでも美味しい!」
「本当、マードックさんは料理上手ですね!」
「3人とも良い食べっぷりだ。腕の振るい甲斐があるよ」
マードックの作った朝食を食べ終え、ロイ、リコ、イルマの3人は満足そうに感想を言い、空になった食器を両手に持ちながら嬉しそうな表情で頷いた。
すると、リコは誕生日席に置かれた何も乗っていない皿と、誰も座っていない椅子に目を向けた。
「……ドットは一緒に食べないのかな?」
「面倒臭いんだと」
「「「面倒?」」」
フリードの言葉を三人は復唱した。
「昔から、飯に興味がないんだ」
「この世にそんな人がいるなんて!?」
「ちゃんと食べてるの!?」
「食べてるよ。1日分の栄養が採れるグミばっかり」
「だってあれ非常食でしょ!?」
「それで良いんですか!?」
「良いんだとよ。あッチ等が何度誘っても食卓に来た事もねーしな」
マードック達からの情報に、イルマ達新人は信じられないといった風に驚愕する。
「俺がもっと美味しい物を作れば、ドットも気が変わるさ!」
「今より美味しくなるなんて…どうかなっちゃうかも!」
「ホゲ!!」
「僕、味見係を希望します!」
「もふ」
姪の為に料理の腕を磨くと意気込むマードックに、ロイとホゲータ、そしてイルマの二人と一体は目を輝かせた。そんな中、モクローは食い意地の張った
そこへ、スマホロトムを操作していたモリーが唐突に口を開いた。
「ところでさ、最近食料の減りが早過ぎるんだ。特に砂糖とモーモーミルク、バターにドライフルーツ」
「オヤツの材料……?」
「こっそりオヤツを作っては食べまくってる人がいるって事?」
そこで、リコ、モリー、オリオの3人は
「た、食べてないよ!そもそも僕、お菓子なんて作ったこと無いし!」
「ホント?イルマの事だし、材料のまま食べるとか…」
「リコは僕の事を何だと思ってるの!?」
かなり失礼なリコの言葉に憤慨するイルマに、取り敢えずイルマが犯人でないと(それでもまだ半信半疑だが)言うことにした三人は、今度は船のコックであるマードックにジト目を向けた。
「お、俺じゃないぞ!」
(バレバレです……)
マードックは口では否定しているが、冷や汗をかいて目をスイスイ泳がせている表情を見て、犯人は直ぐに分かった。
そこへ、フリードとバチコがマードックを庇護する。
「犯人探しは止めよう。誰かを責めても何も解決しない」
「フリードの言う通りだぜ。それに、船のメンバーが一気に3人も増えたんだ。食糧が前より早く減るのは自然な事だ」
(多分この2人も共犯です……)
三人のジト目が、今度はフリードとバチコに向けられた。
大方マードックがこっそりとお菓子を作り、それをフリードとバチコがマードックと一緒に食べていたのだろう。
「じゃあどうすんの?このままパルデアまでオヤツ抜き?」
「いや、上陸して買い出しに行こう!」
「良い考えだ!丁度この先に町がある!」
「それもそーだな。あッチも丁度買い物に行きたかったし」
和気あいあいと話す三人だが、他のメンバーからしてみれば誤魔化している様にしか見えない。案の定、モリーとオリオは3人にジト目を向け続けながら口を開いた。
「こー言う時は息ピッタリ…パルデアに着くのが遅れるけど?」
「オヤツ抜きは厳しいか…うーん…」
オリオが悩むように腕を組んで目を瞑ると、フリード達はオリオと同じ様に腕を組んで目を瞑っていたキャップにズイッ顔を寄せる。
「ここはキャップに決めてもらおう!」
「キャップ、上陸しても宜しいでしょうか!?」
「ピカ?」
「OKみたいだな!」
「また適当な……」
「絶対OKって言ってませんよ。だってキャップ、キョトンとしてますもん」
イルマのツッコミも何のその。キャップから許可を得た事にしている3人は既に上陸の準備に取りかかろうとしている。
そこで、モリーが席から立ち上がった。
「はいはい、じゃ上陸準備。それでいいね?」
「「「了解!」」」
元気良く返事をして上陸の準備を始める面々。イルマ達もパートナーを抱えて席を立ち、自然とフリードの元に集まった。島から出て初めての上陸になるロイはワクワクした面立ちでフリードに問い掛けた。
「上陸準備って何するの?」
「3人のやる事は別にあるだろ」
「「「えっ?」」」
『…今日の授業はここまでだ。次の授業までに課題をしっかりと終わらせておけ』
スマホロトムの向こうで、イルマとリコのクラスの担任であるカルエゴがそう言ったのと同時に授業終了のチャイムが鳴った。
3人のやるべき事、それは各々が受講しているリモート授業であった。ここ最近の濃すぎる経験で忘れていたが、イルマ達新人は学生の身だ。冒険の途中だろうと、授業はしっかりと受けなければならない。故にフリード達が上陸準備をしている間、リコはミーティングルーム、イルマは自室、ロイは展開されたウイングデッキの上でリモート授業を行っていた。
そしてリモート授業が終わった頃には既に町は目と鼻の先にあり、ブレイブアサギ号は数分後に町の港に停滞した。
ランドウとドットを除いたライジングボルテッカーズの面々は船から降り、船の前で円になるように並ぶ。
「よし、じゃあ何時ものやるぞ!」
「何時もの…っていうのは?」
「全員でじゃんけん。負けた奴が留守番だ」
「…絶対に勝つ!」
(何…その気合い?)
何故かポケモンバトルにでも挑むかのようにヤル気満々なロイに戸惑うリコ。足元にいたホゲータとニャオハの間でも同じような光景が繰り広げられている。
そして、フリード達8人のじゃんけんが始まった。
「じゃんけん……」
「「「「「「「ポン!」」」」」」」
そうして出されたのは、パーが7つでグーが1つ。
グーを出した人物、ロイが涙目で自分の手を見ているところへ、フリードがポンッとロイの肩に手を置いた。
「じゃあロイ。留守番中、ポケモン達の世話を頼んだぞ」
「これも立派な任務、よろしくねー!」
そう言って町の方に向かって歩きながら手を振るオリオ。イルマ達も横に並んで町の方へ向かう。
しばらくそんな彼らを後ろ姿を眺めていたロイは、後ろにいたリコの方にバッと振り返り、ズイッと詰め寄った。
「リコォ!!変わって~!!」
掴みかからんばかりの勢いで悲願するロイ。
初めての上陸とはいえ必死すぎじゃないかとリコが戸惑っていると、ロイは懐から一枚の紙を取り出した。それは、この前キャップの特訓の後にドットからクワッス経由で渡された、黒いレックウザとパルデア地方が描かれたメモだった。
「黒いレックウザが、パルデア地方に向かったなら、見た人がいると思うんだ!だから、お願い!!」
「うーん…そうだな~……」
ロイの悲願にリコは苦笑いしながら悩む素振りを見せる。
フリード達と町へ向かいながらチラリとその様子を見ていたイルマは、モクローを肩に乗せた状態で腕を組みながらぼんやりと考えた。
(多分、リコは留守番変わるだろうなー…。この後って確かぐるみんのライブ配信の筈だし……)
イルマの記憶が確かなら、今日はリコが大好きなぐるみんのライブ配信がある日だった筈だ。各地方で人気を誇るぐるみんのライブ配信は滅多に行う事がないらしく、ぐるみんの大ファンであるリコはぐるみんのライブを常にリアルタイムで見ており、ロイの留守番交代はリコにとっては寧ろ渡りに船なのだ。
余談だが、イルマはぐるみんのファンである訳ではない。元々、イルマはネット動画に見たりする事が少なく、どちらかと言えば読書を娯楽としているのだ。ぐるみんの配信も、限界オタクな一面を持つリコに勧められて一緒に見た事がある程度なのだ。確かに面白くはあったが、リコのように熱中したりする事はなかった。
「そうだな……いいよ、変わってあげる」
「やったーーー!!ありがとうリコーー!!」
「ホゲーー!!」
イルマの推測通りロイと留守番を交代してくれたリコに、ロイはホゲータと共に大きく飛び上がって喜びを露にしながらリコに礼を言う。
そんな二人の様子を眺めながら、イルマは此方にフリード達と共にロイを迎えるために歩みを止めた。
「おぉ~!知らない町……知らないポケモン……!すっげーー!!」
「ロイは島から出るのは初めてだったか」
様々な店が並んだ商店街。町の住人と仲良く暮らすロトム、ロゼリア、エーフィ、ホシガリス、ヤミラミ、ヌイコグマ、マラカッチにガラル地方のダルマッカ、ルクシオといったカントー地方には存外しないポケモン達。その光景を見て、ロイは瞳をキラキラさせながら町を見渡した。
そんな中、フリードの肩に乗ったキャップとモリーが声を上げた。
「ピーカッ!」
「スマホロトムに買い出しのメモを送ったから、それぞれ手分けして食材の買い出し。パッと買ってスッと戻る!」
「「「「「了解!」」」」」
「大きい町だからって、余計なものは買わないように。今月カツカツなんだから」
「ピカピカ!」
「早速、レックウザの情報を聞いてくる!」
「おっと!その前に買い物だ」
「はーい…」
走り出そうとしたロイの肩を掴んで制止させたフリードは、ロイを連れて買い出しに向かう。
他もメンバーもスマホロトムを手に歩きだし、バチコはイルマのシャツの襟首を掴んで引きずるように歩き出した。
「そんじゃ、あッチも行くとするか。イルマ、来い」
「え?は、はい…」
「バチコ、ちゃんと指示された物を買ってよ。あんたが一番無駄遣い多いんだから」
「わーってるよ!」
モリーの言葉に手をヒラヒラとさせながら軽く返し、バチコはイルマを連れて町の方へ歩いて行く。そんな二人の後ろ姿をしばらく眺めていたモリーは頭に手を置いて溜め息を吐きながら、自分が担当する食材を買うために踵を返して歩き始めた。
「それで、バチコさん。僕たちは何を買いにいくんですか?」
「砂糖に小麦粉、それと調味料各種……後はオメーの服だな」
「え?」
「いつまでも
確かにバチコの言う通り、イルマは未だに制服のズボンにシャツの姿だ。夜の内にちゃんと洗濯はしているが、流石にこれでは無理があるのとしばしば。
「でもお金とかは…」
「ガキがそんな事気にしてんじゃねー。こーみえてもあッチは他の連中より稼いでんだ。オメーの服一着くらい何でもねぇよ」
「バチコさん…ありがとうございます!」
イルマとバチコがそんな風に話しているうと、バチコの目にある店の看板が写り込み、バチコの足を止めて笑みを浮かべながら、その店の看板を指差した。
「おっ、そう言ってる間に見ろ。店に着いたぜ。買い出しより先に服を揃えるぞ」
「…………え?」
「オイオイ、以外と似合うじゃねーの」
「…嬉しくないですよ」
イルマはバチコが選んだ服を試着し、試着室のカーテンを開けて試着室から出てきた。自分が選んだ服を着ているイルマの姿を見て彼を誉めた。しかし、イルマから返ってきたそっけない言葉に、バチコはイルマにジト目を向けた。
「おい、人が選んでやったのに何だその態度、気に入らねーのか?失礼な奴だな、ったく…」
「お言葉ですがね、バチコさん。気に入る気に入らない以前に……
──これ女物でしょうがぁあああああっ!!!」
まるで銀○の眼鏡を掛けたキャラクターの如く、イルマはシャウトするようにツッコミを入れた。店の中にいた客や店員達がイルマの怒声にビクッとしてイルマとバチコの方を向いた。
そう、バチコが指差してイルマと共にはいったのは、女性服専門の店だったのだ。品揃えも豊富でセンスも良く、値段も手頃な物ばかりの良い店だったのだが、あるのは端から端まで女性用の服だ。イルマの言う通り、気に入る気に入らない以前の問題である。
尚、イルマの今の服装は、水色と白を基調としたヒラヒラでフワフワのメイド服に丈の長いブーツを履いている状態だいつも外ハネしている髪は内側にカールされ、花の飾りがついたカチューシャを着けている。
イルマは顔・体格・声は全て中性的だ。同年代の男性よりやや小柄で華奢な体躯で、声は高くすれば本当に女に聞こえてしまいそうなレベル、顔は童顔ではあるが整っている方であり、美少女と間違われてしまいそうなレベルである。
だが、イルマはれっきとした男である。女物の服など着るわけがないし、女装の趣味などない。誉められても嬉しくないどころか不本意だ。
「うぅ…もうお婿に行けません……」
「大丈夫だろ。多分オメーの趣味を受け入れてくれる奴はいるだろーよ。イルミナティちゃん」
「イルミナティって誰ですか!?」
「それで、その服のしたとかどーなってんの?」
「勘弁してください!!」
完全に面白がっているバチコはスカートを捲ろうとし、イルマはそれを両手で抑えて抵抗する。イルマの相棒であるモクローは爆笑していた。ギャーギャー騒いでいる二人に、店にいた客や店員はチラチラと二人の方を見た。
やがてバチコも気が済んだのか、ニヒヒッと笑いながら口を開いた。
「まっ、あッチの悪ふざけもここまでだ。さっさと服買って買い出しすませるぞ」
「貴方の悪ふざけで僕のメンタルに大ダメージが入ったんですけど……」
笑いながら踵を返して店を出ていくバチコに恨みがましい目を向けながらも、イルマは急いで試着室で着せられた服を脱いで元の場所に戻し、小走りでバチコの後を追っていった。
「…はぁ、何とか買い出しは終わらせたけど、こっぴどく怒られちゃった……」
その後、改めて近くにあった別の服屋でイルマの服を買ってもらい、モリーから指示された物を買い終えた後、バチコのショッピングに付き合わされ、気が付けば夕方になってしまった頃にイルマはバチコと共にブレイブアサギ号に戻ってきた。
バチコが購入したイルマの服は、白いスラックスとシャツの上に黒いサスペンダーとネクタイを着け、白いジャケットを袖を通さずに羽織り、外ハネしている髪は一つに束ね、頭には角のような2本の尖りがある白い中折れ帽を被っていた*1。スーツなんてあまり着ないから落ち着かないが、それでもメイド服に女装するよりは遥かにマシである。因みにバチコがこの服を選んだ理由は、『何か似合う気がしたから』らしい。
しかしそこそこ時間が掛かってしまったので、パッと買ってサッと帰る事は出来なかったのでモリーに怒られてしまった。まぁイルマもイルマでショッピングを楽しんでしまっていたので自業自得であるが。
「……衝動買いなんてするもんじゃないなぁ。まぁ、良いものは売ってたんだけど…」
「もっふふぅ」
購入した帽子を手に持ってイルマは自分の手に持った紙袋の中身をチラリと見て、何時もの様に肩に乗ったモクローが呑気な声をあげる。
帰りに立ち寄った書店で偶然発見して自腹で購入した恋愛小説の最新刊だ。イルマがパルデア地方に住んでいた頃から愛読していたシリーズであり、ライジングボルテッカーズと共に冒険をしている間にいつの間にか最新刊が発売されていた様であり、思わず衝動買いしてしまった物だ。
「えっ!?クリームまみれ!?いいな!僕も~!」
「ホゲ、ホゲホゲーー!!」
ドットの部屋がある廊下まで歩いてきた所で、ロイが意味不明な事を言いながらイルマの前を通りすぎた。方向からして、恐らく向かっている先はマードックの調理室だろう。
イルマは目をパチクリと瞬かせながら廊下を走り抜けていったロイの後ろ姿を眺めていると、ドットの部屋の扉の前から歩いてきたリコとニャオハがイルマの前までやって来た。
「イルマ、おかえり」
「あ、リコ」
「ニャオハ」
「もっふぅ」
互いに軽く挨拶を交わした後、当然リコはイルマの服装に目が行った。
「その服と帽子、どうしたの?」
「これ?今日町で買ったんだよ」
「いつも制服だったからね……うん、似合ってるよ」
「ありがとう。今日バチコさんに選んで買ってもらってさ。スーツなんてあんまり着ないからちょっと落ち着かないんだけど、結構気に入ってr……ッ!?」
イルマの説明はそこで止まった。『バチコに買ってもらって』の辺りから石化したように固まっていたリコが、ガシッとイルマの腕を掴んだからである。
当然の出来事に、イルマは小説が入っている紙袋を落としてパチクリと目を瞬かせ、この後の展開を読んだモクローはイルマの肩から飛び立って床に降り立った。
「イ、イルマ!バ、バチコと…か、買い物デートしたってどういう事なのッ!?」
「は、はぁっ!?買い物デートッ!?何の話!?」
イルマは一言もそんな事言っていないしそんな事実もないのだが、男女で一緒に買い物をしていたのは事実であるために、リコの脳内ではそんな風に捉えられてしまったようだ。意味不明なリコの糾弾に困惑するイルマの言葉にも耳を貸さず、リコは息もつかずに捲し立てた。
「な、なんでバチコとデートしてたの!?」
「デート何てしてないから!単純に手分けして買い出しすることになって、一緒に買い物してただけだから!!」
「そ、それなら私に言ってくくれば私が一緒に行ったのに……」
「いや、リコは留守番してたでしょ!?」
だんだん滅茶苦茶な事を言い始めるリコに、イルマは未だに困惑しながら返事をする。いつかのカントー離島と似た様な光景が繰り広げられ、彼等のパートナーは揃って呆れ顔である。
結局、彼等の口論(?)は夕食になる直前まで続くのであった。
次回からパルデア編に入ります。
感想、評価お待ちしております。